綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
毎年言ってる気がしますが、本当に今年早かったですね
やぁやぁ、諸君。
良い朝だね。
オレ──────綾小路清隆は今、かなり危機的な状況に陥っていると言っていいだろう。
…………助けてくれ。
「ちょっ…………まじで………退いてくれ」
朝にお手洗いに行こうとしたら、男女別で二つあるテントで一緒になった柴田の寝相が悪すぎる。
今は彼と、更に渡辺が覆いかぶさっているし、気付いたら神崎の足がオレの腕に乗ってた。
「嘘だろ…………」
流石に、ここでかますことはないが、早く退いて欲しい。
左手首につけた腕時計は、午前六時半を指している。
確か、昨日の夜に一之瀬が「みんな、七時には起きようね」と言っていた。
つまり、そのくらいの時間になれば彼女は最低でも起き、続いて皆を目覚めさせてくれるだろう。
──────二十分後──────
まともに身動きが取れないまま、約二十分が経過した。
そろそろ女子たちが起きる時間、の筈だ。
…………早く、助けてくれ…………
「──────みんな~!朝だよ~~!」
更に数分経つと、ジャージ姿の一之瀬がテントの入り口を封鎖していたチャックを開けた。
朝の眩しい光が、木々の隙間から注ぎ込む。
「…………ふっ、ちょっ、あははっ。綾小路くんなんて顔してるの」
手足を大の字に広げ、覆いかぶさられているオレを見て一之瀬が笑い転げる。
顔には笑みが溢れていて、余程楽しいだろうことが窺えた。
「笑ってないで助けてくれ…………」
「んも~、それくらい解決できるでしょ? みんなを起こして」
「あい心得た」
「柴田………っ、朝だ。起きろ」
オレは自身の胸を枕代わりにしている柴田の頭にチョップを入れる。
ついでに、神崎の腕もしれっと振り払っておいた。
「あいてっ?! 朝っぱらから何すんだ…………」
「それはこっちのセリフだ。邪魔だから退いてくれるか?」
「何言って…………あ、すまん」
柴田は視線を下げ、自身の状況を理解したらしい。
素直に起き上がり、いの一番にテントを出て行った。
「全員起こせ。規則正しく、それがBクラスの無人島試験でのモットーだろ?」
そう男子生徒諸君に呼びかけると、それぞれが近くで寝ている者を起こし始めた。
Bクラスのメンバーは基本的に皆仲が良い。
休み時間には一之瀬の席には人が集るし、そうでなくとも一人でいる者は少ない。
よって、朝食も皆で食べることになる。
「あ、綾小路、そこのやつ取ってくれ」
「ああ、分かった」
紙皿に心無しの肉をのせて頬張る柴田に野菜をプレゼントする。
こうしていると、サバイバルも悪くないように思えるな。
これで、更にクラスの団結力も上がってくれればいいのだが。
和気藹々と話している彼ら彼女らを眺めていると、隣から声を掛けられた。
「─────綾小路、少しいいか?」
相手は神崎。
しかも、かなりボリュームも下げている。
オレが座っているのはグループの端の方だが、聞かれるリスクを考えた上での行動か。
なら、オレも合わせないとな。
「なんだ?」
表情を変えず、手元の肉の欠片を口に運びながら訊き返す。
声量は抑えているため、オレたちにしか聴こえない筈だ。
「今回の試験。今日のうちに他クラスのベースキャンプを探っておきたい。スポットの占有優先度なんかも考えたいからな」
確かに、彼の言っていることは正しい。
昨日時点でベースキャンプ地以外に既に七カ所の占有を済ませている現状。
それを維持するのも良いが、今回の試験で重要視すべきなのはあくまで【リーダー】という概念だ。
これを把握されるだけで、一気にスポット占有は意味を無くす。
あまり他クラスのベースキャンプから近い場所だと、見張られている可能性も、鉢合わせる可能性もあるからな。
賢い神崎ならではの不安要素だ。
「それに、オレも同行しろと?」
「そういうことだ。綾小路は体育での成績もまあまあだし、前に水泳の授業のときに見せた肉体、あれで運動が苦手とは言わせないぞ」
確かに、オレは体を鍛えていた。
がしかし、最近では体育以外で使う場面もないし、多少衰えたのは隠しようがない事実なんだ。
「─────日中ずっと付き合うことは出来ないが、多少ならいいぞ。それが、クラスのためになるならな」
オレの答は、同意だった。
オレが役に立てるのなら、出来ることはしたい。
それが、友人、そして仲間というヤツだ。 多分。
「当たり前だ。だが、言いづらいが口の軽そうな者を同行させたくはない。そして、Bクラスには少しそういうヤツが多い。オレと綾小路、二人で行きたい」
おお、まじか。
神崎からランデヴーに誘われてしまったぞ。
ここまで熱烈な視線を向けられてしまっては、オレも応えないといけない。
「─────ああ、いいぞ。神崎は話も合うし、一緒にいて楽だからな」
「同感だ。綾小路は状況を判断できる奴だからな。普段はおちゃらけて他の奴の雰囲気に合わせていても、いざってときはしっかり口は堅い。だろ?」
「そこまで言われると照れるぞ。だが、肯定はしておく」
実際、オレの口は堅い。
渡辺が網倉に恋をしていることも、柴田が一之瀬に恋をしていることも誰にも言っていない。
まぁ、言われてもいないわけだが。
「なら話は早い。あとで、そうだな、九時になったらここに集合だ」
「了解。それまでは、自由行動ってことで」
「なら、食事を再開しよう」
「だな」
「────まずは、どこから行くべきだと思う?」
約束通りの時間、オレたちは一之瀬に一言入れてからベースキャンプを離れていた。
向かうあてを決めているわけではなく、ただ目標しかないのが現状だ。
だが、これならオレの都合がいいように動けるな。
「正直、どのクラスも位置は予測不可能だな。接触しておきたいクラスなら、Dクラスだが」
「同感だ。どうせ同じことを思っているだろうが、あえて言っておく。今回の試験、Cクラスが攻めてくる可能性が高い」
神崎は静かに言った。
「同意見だ。接触してくるなら腹いせにオレたち、若しくは崩しやすそうなDクラスだろうな。今回の試験のメインはあくまで【リーダー当て】にある。アイツの得意分野だろ」
「警戒しておくに越したことはないな。まずは、北西部に向かってみよう。向こうは森が広がっていてスポットもある。生徒さえ見つけられればベースキャンプの特定も出来るからな」
「行くか」
「ああ。出発だ」
目の前に広がる森を見ながら、オレたちは歩み出した。
私──────松下千秋は今、天秤に掛けられている。
完全に綾小路くんたちBクラス側について、Dクラスを裏切るか。
若しくは、Dクラスはまだ捨てずに他クラスの情報収集に徹するか。
だけど、悩んでいる暇はない。
私はこの試験で結果を出さないと、絶対に切られる。
だって、私にとって彼は必要だけど、彼にとって私の価値は0に等しいから。
この試験で役立たずだと判断されたら、もう一生機会はない。
私は自分をそこそこ優秀だと自負しているけど、Aクラスに取り入れる自信はない。
それにCクラスの龍園くんの場合は、「仲間にしてやってもいいぜ?俺の女になるならな」とか言ってきそう。
最悪、絶対にAクラスで卒業できると契約してくれるなら身体くらい売る。
でも──────
はぁ…………どうしよう。
この試験では、他クラスのリーダーを当てれればポイントを貰える。
だから、私がDクラスのリーダーの名前さえ言ってしまえば、多分結果を先延ばしに出来る。
でも彼のことだから、多分証拠がないと信じてはくれないよね…………
あのときは焦って結果を出すとか言っちゃったけど、しくったなぁ…………
こんな試験って知ってたら、あんなこと言わなかったのに。
でも、今はやるべきことをやるしかないよね。
決断するのは最悪五日後でいい。
だからそれまでに、胸を張って成果だと言えるものを見つけ出す。
それに、綾小路くんがわざわざ私に接触してくれるとも思えない。
スポットの場所なんかを言って点数を稼ぐにしても、まずは合流して色々決めないと。
森の探索、汗かくの嫌だから行きたくないけど、背に腹は代えられない。
「平田くん、私も今から探索に──────」
そこまで言って、言葉を区切った。
だって…………
「綾小路くん」
丁度目の前で、彼が同じクラスの神崎くんと一緒に出向いているのを見つけたから。
そして、目が合う。
『このあと、合流しろ』
そう、語っている。
私はゆっくりと周りに勘づかれないように頷いてから、彼らの会話に耳を澄ませることにした。
さて、少し希望が見えてきたかな?
松下ネキの未来はどうなることやら…………
Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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軽井沢恵
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長谷部波瑠加
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三宅明人
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松下千秋
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Dクラスに救う価値無し