綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
尺が嚙み合わなかったので、ユキちゃんの出番は次話に先送りです
松下と別れベースキャンプに帰還すると、驚きの事態となっていた。
「…………誰だ。アイツ」
オレは思わず呟く。
だって目の前に、知らん奴がいるからな。
「あ、綾小路くん。彼は、ちょっとね…………」
オレの存在に気付いた一之瀬が気まずそうにする。
一体、なんだというんだ?
「渡辺くんたちが見つけたらしいんだけど、どうやらCクラスから追い出されたみたい」
オレは頭を抱えた。
おかしいだろ。
なんだよ、クラスから追い出されるって。
そんなの嘘に決まってるだろ。
「…………いや、普通に考えておかしい。スパイだろ」
「そう、だね。一度私たちを騙してきた相手だし、信じてるわけない。でも、彼を放置するのとは別問題だよ」
「…………分かった」
オレは目の前のおかっぱに近づいていく。
「なぁ、名前はなんて言うんだ?」
オレは木の根元に座り込む彼に呼びかける。
すると、恐る恐るといった様子で顔を上げた。
「金田、悟と言います」
「その頬の傷。龍園に?」
彼の頬には、痣があった。
しかも、かなりの威力で殴られたんだろう、赤黒く染まっている。
「は、はい。方向性の違いで口論になってしまいまして…………」
方向性の違い、ね。
まぁ、何とでも言うことは出来る。
問題は、コイツの扱い方だろう。
「それは本当か?」
オレは金田の目を見て問いかける。
多少の殺気も放たないように、気を遣いながら。
「え、ええ。はい」
「そうか。その状況は、Cクラス全員の前だったのか?それとも、龍園と二人きりか?」
「二人きり、です」
「目撃者がいる可能性は?」
「ない、と思います。ベースキャンプから離れた場所に呼び出されたので」
駄目だな。
詰めてはみたものの、収穫はない。
証言からあとで矛盾を突こうと思っていたが、計画は変更せざるを得ないな。
「そうか。一先ず、お前はオレたちBクラスの仕事をこなしてもらう、いいな?」
「は、はい。置いてもらえるだけでもありがたいので」
とりあえず、コイツにリーダーを知られないようにしないとな。
もしバレたら、CクラスだけでなくAクラスにも伝わる可能性がある。
葛城、ってヤツは成果を挙げたいらしいからな。
「因みに、Cクラスのリーダーは龍園か?」
オレは試しに金田に訊いてみる。
だが、反応はいまいちだった。
「クラスから捨てられた私が知っていると思いますか?」
「いや、知ってるだろ。まぁ、龍園なら他人を信用しないだろうから、ほぼアイツだと確信しているがな」
オレはあえて自信を見せる。
それで、金田の反応を見るためだ。
「なら、私に聞く必要はないのでは?」
「知っているかもしれないからな。それなら、話が早いだろ?」
「知らないですね。お役に立てず、申し訳ないです」
あくまで白を切り通す、か。
まぁ別に、どうでもいい。
どうせCクラスのリーダーは龍園だし、知ろうと思えばいくらでもやりようはある。
「────リタイアする、だと?」
神崎が小さく反応する。
が、顔は不機嫌そうだ。
「なんでそんなことをするんだ」
「金田の話では、Cクラスは全員リタイアしてる。だが、リーダーだけは絶対に島に残ってる、だろ?」
「確かに、そうだな。あの龍園が簡単に勝ちを見逃すとは思えない」
「だが、金田は口を割らないし、確証もないのに指名するのは少し不安要素だ」
「船に戻って何をする気だ?」
神崎の質問にオレは悩む。
松下には悪い気もするな。
アイツはオレがリタイアしたことも知らずに、ずっとあの場所でオレを待ち続けるのかもしれない。
「まず前提として、ポイントで無線機を二台買ってもらう。そこまではいいな?」
「だが、リタイアしたら意味ないだろう?何故そんなことをする」
「星之宮の説明を忘れたのか? 消耗品以外の購入品は…………」
「──────
神崎が声を上げた。
だが、そのまさかだ。
「そういうことだ。あの裁判時の録音を使ってCクラスの小宮近藤を脅す。金田は言わないが、絶対に個人でリーダーを決定することは不可能。必ず共有されている筈だ」
ただ、忠誠心か暴力で脅されて言わないだけでな。
あのときの判断は間違っていなかったと、胸を張って言えそうだ。
「ん、待てよ…………いや、もっといい案があるな」
オレはずっと探していた落し物を見つけたような気分になった。
まさか、オレとしたことがこんな簡単なことに気付かなかったなんて。
「綾小路、また何か思いついたのか?」
「ああ。素晴らしい作戦をな」
「教えてくれ」
「こうだ。────を────に────してから、─────する。そして───を──────に──────させて、────を二重に破壊する」
「それは…………端的に言えば、エグイな」
神崎からエグイって言葉が出てくるのは初めてだ。
なんか、感動するな。
「うちのクラスを嵌めようとした落とし前は、まだ付けさせてなかったからな。まぁ、これで終わりにする気はないが」
「敵に回したくない男だな、お前は」
「褒め言葉として受け取っておく」
翌日・早朝四時。
無人島・南西部森林の中にて。
「おはよ、綾小路くん」
寝起きのまま歩いてきたオレに向かって微笑む松下。
今日は、指定密会初日だ。
だからといって、どちらも迷ったり遅刻をすることはなかったが。
「ああ、おはよう松下。何か、収穫はあったか?」
そう尋ねると、松下は頷いた。
大体予想はついているが、一応尋ねておこう。
「なんだ?」
「昨日、綾小路くんが去った後にクラスの男子がCクラスの女子を連れて帰ってきた」
やはり、Dクラスにも送り込まれていたか。
だが、ここまでは想定内だ。
「誰だ?」
「伊吹澪って子、頬に殴られた痕があったから、みんな信じてる。疑ってる人は、私だけなんじゃないかな?」
殴られた痕までつけられれば、信じても仕方ないよな。
まぁ、うちの生徒は誰一人信用してなかったが。
それでも金田がうちにいられるのは、一之瀬の善意のお蔭でしかない。
事実、このまま彼を放置すれば無人島で野垂れ死ぬ可能性もあるからな。
「うちにも、昨日Cクラスの男子生徒が来た。偶然にしては、出来すぎてるよな」
「やっぱりそうなんだ。ってことは、やっぱりリーダーを探りに来たスパイ、だよね」
「だな。その可能性が極めて高いだろう」
Dクラスなら、リーダーを把握されてもおかしくない。
そうなればCクラスもポイントを得るが、オレからしたらそれは面白くない。
Cクラスを徹底的に叩き潰して、今後のAクラス争奪戦からリタイアさせてやるのが目標だ。
「ところで松下。DクラスとBクラス、どっちのポイントが大事だ?」
「勿論、今はBクラスだよ。私の為にもね」
オレの質問に、松下は即答する。
これで、オレの作戦の手筈が全て整ったな。
「なら、リタイアしてくれないか? 理由は何でもいい、頭痛でも、吐き気でも。結果が重要だ」
「え? 私がリタイアするの? 意味なくない?」
確かに、Dクラス側には意味がない。
だからこそ、オレがこれから作戦を説明しないといけないわけだが。
「─────────というわけだ。出来るか?」
「凄…………こんな作戦、よく思いついたね」
「マニュアルを読んでいたら、たまたま思いついてな。出来るか?」
「うん。やれるよ、説得、頑張ってみる」
「ああ。実行できるなら、お前の評価も上がる」
松下は力強く頷いてから、去っていった。
綾小路くんの考えた作戦、皆には分かるかな?
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櫛田桔梗
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軽井沢恵
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長谷部波瑠加
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三宅明人
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松下千秋
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Dクラスに救う価値無し