綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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少し長め


26話:作戦・第二フェーズ

 

 

「よし。それじゃあ、麻子ちゃん。またね」

 

「うん。じゃあまた、三日後、かな?」

 

 

一之瀬を筆頭に、クラスの皆が去り行く網倉を送り出す。

 

そう、金田がリタイアしたことで網倉の番も回ってきたからだ。

 

 

「────じゃあ綾小路くん、あとはお願いね?」

 

 

網倉がオレに視線を流す。

 

それを正面から受け取る。

 

応えてくれた彼女に、オレも応えるべきだろう。

 

 

「ああ、任せろ。この試験、最高の結果を船に持ち帰ることを約束する」

 

 

自信に満ちた顔を作り、彼女に勝利宣言を伝える。

 

それに満足したのか、網倉は一瞬こちらに微笑んでから踵を返した。

 

 

「じゃあ、ちょっと頭痛になってくる!」

 

 

そう茶化しながら去っていく網倉の姿を見ながら、オレは作戦を次の段階へと進める。

 

 

 

 

 

 

 

「で、次の問題は誰をリーダーにするか、だね」

 

 

リタイアする前の網倉に同行した白波によれば、次のリーダーは今日の夜の点呼までに決定しなければならないらしい。

 

つまり、タイムリミットは今日の夜八時だ。

 

 

「残りの約三日間、最後のリーダーにはスポットを巡ってポイントを荒稼ぎしてもらうことになる。個人的には、身体能力の高い者が望ましいな」

 

 

オレは自分はリーダーにはならないのをいいことに、理想を口にする。

 

本音を言うのなら神崎に任せたいが、彼は一之瀬と共にベースキャンプで指揮を執るのでもいいな。

 

正直、神崎はオールマイティすぎてどこに置いても成果を出してくれる。

 

 

「なら、俺がやろう。運動にもある程度の自信もあるし、綾小路と一緒ならもっとスポットを見つけられるかもしれない」

 

 

ここで、オレの望み通り神崎が名乗り出た。

 

がしかし、後半の部分は余計だ。

 

 

「え、オレも行くのか?」

 

「ああ。当然だろ、その方が効率も良い」

 

「…………分かった」

 

 

仕方ないな。

 

リーダーからの直々の指名だ、断るなんて野暮なことはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ごめん。頭痛くて…………」

 

 

試験開始から六日目。

 

私──────松下千秋は、クラスメイトである軽井沢さんに頭痛を訴えていた。

 

特別視されているってわけじゃないけど、彼女とはいい関係を築いていると自負してる。

 

だから、私が体調不良を訴えればすぐにでもリタイアさせるために皆に協力を仰いでくれるだろう。

 

 

「松下さん大丈夫? でも、四日目から少し具合悪そうだったし、納得かも。早くリタイアしよ?」

 

 

女子用のテントに中、心配そうに声を掛けてくる。

 

彼女はどこか、横柄な態度が目立つ子だと思っていた。

 

でも、少し優しいとこもあるじゃん。 と、評価を改めておく。

 

 

「でも、皆に悪いし…………これ以上、ポイント減らせないよ」

 

 

でも、ここですぐにリタイアするわけじゃない。

 

ちゃんと、『私はDクラスのことを考えてますよ』とアピールしておくのも大事だからね。

 

 

「そんなこと気にしないで良いって、これ以上友達減って欲しくないからさ。ね?」

 

 

軽井沢さんに同調するように、佐藤さんなども心配してくれる。

 

普段ならその優しさは嬉しいんだけど、今は少し過剰な気もしてくる。

 

まぁ、それだけ私が彼女たちにとって良き友人ってことなんだろうけど。

 

 

「…………分かった。ありがとね」

 

 

私は少し微笑んで見せる。

 

これも全部、綾小路くんたちBクラスを勝たせて、Cクラスを潰すため。

 

Cクラスは私たちにとっても目の上の瘤だし、クラスに余裕が生まれるなら願ったり叶ったりだ。

 

 

 

 

「─────待ちなさい。何勝手にリタイアしようとしているの」

 

 

私がテントを出ようとしたとき、端で大人しくしていた堀北さんが口出ししてきた。

 

彼女は自分を神だと思っていて、その他大勢は自分には遠く及ばない雑魚だと思ってる。

 

だからこそ、少し私と似ているけど、全然違う。

 

嫌いだし。

 

 

「堀北さん…………」

 

 

私は軽く軽井沢さんに視線を投げる。

 

『キモい奴に絡まれてる。助けてくれない?』の意図だ。

 

それを上手く読み取ってくれたのか、軽井沢さんが負けじと口を開いた。

 

 

「ちょっと堀北さん。松下さんは頭痛いんだよ? なんでそんなこと言うわけ」

 

 

少しいつもよりも甲高い声を出す。

 

本気で堀北さんにキレているのが、ひしひしと伝わってきた。

 

 

「そんなこと関係ないわ。仮にもAクラスを目指すのなら、余計な出費を抑えるべきよ。多少の頭痛くらい、我慢すればいい話だわ」

 

 

対する堀北さんの意見は、額面通りの意味しか持たない。

 

自分はクラスに何も貢献してないのに、よくあんな偉そうなこと言えるよね。

 

自身がクラスの輪を乱してるって言う自覚、なんだろうな。

 

 

「はぁ………まっじで我慢の限界だわ。あのさ堀北さん、私あんたのこと嫌いなんだよね。綾小路くんが来た時にもわざとらしくお礼言ったりしてさ。なんなわけ?」

 

 

軽井沢さんの堪忍袋の緒が切れたらしい。

 

いつもは出さない裏の顔、って程じゃないけど、いつも浮かべてる笑みとはかけ離れた顔で堀北さんを睨んでいる。

 

 

「感謝して当たり前でしょう。クラスから煩い猿が消えたんだもの。それとも、あなたに私の言動を制限する資格があるのかしら」

 

「猿、猿ってさ、自分の言ってることも『煩いヤツ消えた。嬉しい』で小学生並みの意見の一辺倒でしかないって気付いてない? それこそ、猿と同レベルの主張だと思うけど」

 

 

怖…………えぇ、軽井沢さんってあそこまで言うんだ。

 

普段から、仲良くない子とか陰気な子にはキツイとは思ってたけど、ここまで強烈なディスを相手にぶつけるとは思ってなかった。

 

 

「軽井沢さん…………」

 

「ごめん、少し熱くなりすぎた。松下さんは早くリタイアしな? この分からず屋には私が言っておくからさ」

 

 

小さく声を掛けると、軽井沢さんは笑ってそう言った。

 

だから、私も彼女の小さな優しさに甘えることにしよう。

 

 

「…………ありがと」

 

「気にしないで」

 

 

 

 

 

その後、私は平田くんや櫛田さんにも確認を取ってから、リタイアをした。

 

茶柱には柄にもなく心配されちゃって少し緊張したけど、普通に頭痛って言う体で乗り切れたのは大きい。

 

 

停泊している豪華客船に運ばれながら、綾小路くんとの会話を思い出す。

 

 

『教師には話を通してある。リタイアした後に船員から自分のとオレの端末を受け取れ』

 

 

まず第一のミッションはこれだ。

 

綾小路くんの話では、船に着いたらすぐにスマホが返却されるらしい。

 

その際に、彼の分も受け取れとのこと。

 

多分その中に、今回の作戦で重要なものが入っているんだろう。

 

 

 

 

「────松下さん、か。はい、これとこれね」

 

 

従業員、少し優しそうな顔をした女性が二台の端末を渡してくる。

 

 

「予定より少し早かったけど、ちゃんと渡したからね」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 

予定より少し早かったって言うのは、どういう意味だろう。

 

っていうか、どうやってこんな無理な話を通したんだろうか。

 

一学生の身分じゃ、かなり厳しいと思うけど…………

 

そこまで考えてから、思考を放棄する。

 

今は無駄なことは考えないでいい、とにかく言われたことを実行しないと。

 

 

「確か、パスワードは…………っと」

 

 

綾小路くんから聞いていたパスワードを入力すると、ロックが解除される。

 

さて、ここまでは順調。

 

次は──────

 

 

『スマホを開いたら、録音アプリの下から二番目・‘‘生徒会裁判’’って名前の音声ファイルを開け。それを聞けば言わずとも分かる』

 

 

言わずとも分かる、かぁ。

 

それは、言わなくてもお前なら分かるだろって言う期待なのか。

 

それとも、その程度理解できないならお前は切り捨てるって言う警告なのか。

 

判断することは私には出来ないけど、やれることをやるだけだ。

 

 

「これね…………よし、っと」

 

 

自身の割り当てられた、本来なら軽井沢さんと佐藤さん、そして佐倉さんと共有していた部屋で、音声を流す。

 

部屋の鍵は閉めてあるし、盗聴されることはない。

 

 

 

 

『──────ではこれより、1-Bと1-Cの問題の審議を執り行う。橘、説明を』

 

 

流れ始めたのは、どこかで聞いたことのある男子生徒の声だった。

 

タイトルから考えれば、生徒会長である堀北学の声であると察せれる。

 

 

その後聞き続けていると、いかにCクラスが杜撰な策で冤罪を吹っかけたかがよく分かった。

 

ただ、BクラスがここまでCクラスを追い詰められたのは佐倉さんと言う証人の存在が大きいだろう。

 

うちに綾小路くんが来たのも、運命だったりして。

 

 

 

『では、これにて審議を終──────「待ってください』

 

 

もうすぐ裁判が終了と言うタイミングで、綾小路くんがそれを遮った。

 

内心で、流れが変わったな、と勘づく。

 

そしてその後の綾小路くんの言葉を聞いて、私は息を呑んだ。

 

 

『─────なら、いい提案をしてやる。もしお前たちの口から今回の事件を裏で操っていた首謀者の名前を出すのなら、停学だけで勘弁してやる』

 

 

彼は、ここですでにCクラスを潰すために布石を打っていた。

 

その事実に、視界が眩む。

 

少なくとも彼は、七月の初め時点で今後に起こる特別試験を予見していたのだ。

 

私でも、内容までは掴めなかったし、存在自体も確信は持てなかったのに。

 

 

「このときから…………」

 

 

彼は、クラスメイトには真摯だ。

 

だから、柴田くんを傷付けたCクラスをこの時点で潰す気でいたんだろう。

 

そして、目先の重いペナルティを獲らず、あえて先にも利用できるCクラス生徒の弱点の取得に動いた。

 

 

『─────龍園、翔だ』

 

 

その言葉を聞いてから、私は動き出す。

 

綾小路くんから貰った、無線機を握りしめて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレ──────綾小路清隆に松下千秋から連絡が来たのは、彼女がリタイアしてから約一時間後のことだった。

 

どうやら、生徒会裁判の音声を一から聞いていたら時間が過ぎていたらしい。

 

が、しっかりとその意図を理解し、船上で寛いでいた小宮に接触、リーダーを吐かせることに成功。

 

やはり、龍園だったようだ。

 

ここまででようやく、作戦の第二フェーズが完了した。

 

 

「よくやった」

 

「でも、ホントに出来るの?」

 

「何がだ?」

 

「──────いくらCクラスを潰したいからって、DクラスにもCクラスの(・・・・・・・・・・・)リーダーを当てさせる(・・・・・・・・・・)なんてこと」

 

 

どうやら松下はまだ、オレの計画を疑っているらしい。

 

まぁ、仕方ないな。

 

まだオレもアイツを信用してないから、計画の途中までしか教えてないわけだし。

 

 

「ああ。出来るさ、お前は船の上で残りの数日を過ごせばいい」

 

「うん。まぁ、分かった。頑張ってね」

 

「言われるまでもない」

 

 

オレは無線機の交信を切断し、ポケットにしまう。

 

さて、計画もそろそろ終盤だな。

 

残るは──────

 

 

 

 

「──────櫛田桔梗との接触、か」

 

 




因みに、無人島試験での動きはこんな感じです

1日目:試験開始。ベースキャンプ地決定。ユキと接触
2日目:平田・松下と再会。スポットを計12カ所把握する(B+D)
3日目:作戦を思いつき、神崎に共有。‘‘金田来訪’’
4日目:作戦を松下・一之瀬・網倉に共有。平田・佐倉・櫛田来訪。第一フェーズ実行
5日目:金田失踪。網倉リタイア。神崎が新たなリーダーとなる
6日目:第二フェーズ実行。松下リタイアwith無線機。小宮にリーダーを吐かせる

Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)

  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 軽井沢恵
  • 長谷部波瑠加
  • 三宅明人
  • 松下千秋
  • Dクラスに救う価値無し
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