綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
無人島試験開始から六日目。
俺─────神崎隆二は、森の中を彷徨っていた。
目的は単純、クラスメイトである綾小路清隆からある依頼をされたからだ。
依頼、といっても、事前にアイツから聞かされていた作戦の最終段階を任されただけだが。
目的地であるDクラスのベースキャンプ付近のスポットへと向かう。
今から会う接触する予定なのは──────Dクラスの櫛田桔梗だ。
綾小路は、彼女を使ってCクラスのリーダーをDクラスに当てさせる気らしい。
上手く行くかは分からないが、やれるだけやってやるか。
…………友人の、頼みだしな。
「…………神崎くんだったんだっ」
スポットに到着すると、先に着いていた櫛田が微笑みかけてくる。
だが綾小路の話を先に聞いているからか、その笑みは酷く無機質なものに感じた。
そういえば、綾小路はテントの外に纏めておかれていた櫛田の荷物の中に、手紙を忍ばせたといっていたな。
恐らくそれに、脅し文句でも書いたんだろう。
「ああ。櫛田には、頼みがあって呼び出した」
「その前にいい? 書いてあった‘‘腹黒女’’って、何? 酷くな~い? 私そんなんじゃないよ?」
クラスメイトに話しかけるときのように、軽快な笑み。
それを顔に張り付け、櫛田は俺に一歩近づいた。
こうなったときの対応は、全て綾小路から聞いているから問題はないがな。
「五月二日、夜七時。この日、覚えているか?」
「…………」
「お前がクラスメイトである堀北の悪口を吐き散らした日だ。あの文句の数々、船内に戻れば録音もある。ここで断れば、夏季休暇明けには学園中の晒し者だな」
これも、Cクラスを潰しAクラスに上がるためだ。
そのためなら、俺だって非道な策にでも乗るさ。
──────綾小路の策だしな。
「…………最低だね。神崎くんは」
櫛田から、先程までの笑みが消える。
そして代わりに出てきたのは、今までに拝んだことのない憎悪に満ちた顔だった。
「────そうだよ、確かに私はクラスメイトの堀北さんが大っ嫌い。でもさ、それってそんなに悪いこと? 誰だって嫌いでしょ、あんな奴」
「バレてると分かれば、躊躇しないんだな。それがお前の本性か?」
あまりの変わりように、少しだけ驚く。
あの美少女の面から、ここまで無残な言葉が吐かれていたとはな。
学年中の櫛田のファンが知ったら、絶望することだろう。
「うん。それで、私に何をして欲しいのかな?」
「別に、クラス自体に害のあることじゃないから安心しろ。お前には、Cクラスのリーダーとして龍園翔を選択して欲しい」
「え? 当てろってこと?」
櫛田は予想もしていなかったのか、少しの動揺を見せる。
事実、Dクラスは50ポイント余分に貰えるわけだからな。
「そう言っている」
「…………何が目的?」
「お前に言う義理は無い。ただ黙って、言われたことをこなせば保身は約束するさ。こなしているうちはな」
俺は言葉の外で釘を刺しておく。
『もし従わない場合、お前の黒歴史が学校中にばら撒かれることになる』と。
それを感じ取ったのか、櫛田も言葉を飲み込んだ。
「………話は以上だ。できるな?」
「─────うん。やれるだけやってみるね!」
「ああ、それと」
「ん? 何?」
俺は言い忘れていたことを、櫛田に告げる。
これを言えば、Cクラスを更に落とせるからな。
「─────『伊吹澪が消えたら、リーダーは変更するのを勧める』、以上だ」
「リーダーを変更…………? できないじゃん」
「そのくらい、自分たちの頭で考えろ。それだけだ」
「…………分かった。じゃあねっ!」
いつものような笑みを浮かべた櫛田は、俺に颯爽と背を向ける。
そして、無言で去っていった。
アイツの心情がどうであれ、俺は与えられた役割を全うできただろう。
ここまですべて上手く行っている以上、今回の試験は勝ち確だな。
「今日で無人島とお別れだな」
無人島試験最終日。
神崎がベースキャンプを見回しながら呟いた。
時刻は午前九時半。
残り二時間半で試験も終了となるタイミングだ。
「長いようで短かったな」
「ああ」
一週間無人島でサバイバル、聞いた時はどうなるかと思ったのも、今ではいい思い出だ。
やはりテントで極貧生活を送るのは御免被りたかったが、お陰で新たな友人も出来たしな。
思い返せば、悪くない一週間だった。
出来ればもっと夏らしい遊びをしてみたかったが、それは帰りの船旅でも出来るだろうし。
「櫛田との接触、任せて悪かったな」
「別にいい。まだ櫛田とは接点を持ちたくなかった、だろ?」
「ああ。もし仮に神崎が封じられても、オレが出張れるようにな」
万一にもあり得ないだろうが、念のためな。
だがこれも、神崎を言い包めるための言い訳に過ぎない。
「──────友人には嘘を吐きたくないから言うが、オレはもう今後クラスを表立って指揮することはない」
「なに?」
だが気づけばオレは、本音を神崎に話していた。
やはり、この学校でオレの精神も変わりつつある。
前までは、親しいと感じることも、嘘を吐きたくないと思うこともなかったのに。
これが、感情の証明なんだろうか。
「冤罪事件や今回の特別試験通り、オレがクラスを指揮すれば正直言って他クラスに負けることはない」
「だったら──────」
「だが、それではお前たちが成長しないだろ。いつまでもオレの作戦頼りでは、いつか自分たちで戦う時が来ても、何もできずに負けてしまう。オレは、それを危惧している」
Bクラスとしての実力には、当然総合力としてオレも含まれている。
だが、今後すべての試験でオレを頼るようになっては意味がない。
一之瀬は以前、みんなと話し合って決める、それでもクラスを率いると宣言しているから今回だけだと分かっているだろうが、他の者は別だ。
リーダーは一之瀬で、作戦はオレに任せればいい。
そんな盲信他責思考者の集まりになってしまっては折角持ちえたスペックが無駄になる。
「────確かに、そうだな。俺も、今後ずっとお前に頼るつもりはなかった。だが、アドバイスくらいは期待しても良いだろ?」
「ああ。当然だろ。オレたちは、
その後、真嶋から試験終了が宣告された。
それと同時に、各クラスの最終保持ポイントも発表される。
結果は以下の通りだ。
Aクラス:170ポイント
Bクラス:419ポイント
Cクラス:0ポイント
Dクラス:160ポイント
結果、オレの狙い通りの結末になった。
Dクラスのポイントは想定より多いが、元々がクラスポイントの低いクラスだ、少し増えた程度では意味がない。
それに、今回の結果は彼らの実力ではなくあくまでのオレの計画の一部に過ぎないからな。
思い上がったところで、痛い目を見るだけだ。
「──────今回はありがとね。綾小路くん」
最上階のデッキで夜空を眺めていると、後ろから声を掛けられる。
振り向かずとも分かる。 一之瀬だ。
「気にするな。オレ個人の感情の消化を優先したに過ぎない」
「それでも、だよ。ホント、君には感謝してもし切れないね」
一之瀬はオレの隣に移動する。
そして、金属製の手すりに身を委ねた。
「大したことはしてない。ただ、頭を捻っただけだ」
「それができないから苦労するんだよ」
一之瀬は話題を切る。
だが、チラッと見たその横顔は、まだ話したいことがあるように見えた。
「────これからも、私たちを支えてくれる?」
「ああ。そうだな。支えるさ、友人として」
「友人、かぁ…………ねぇ、綾小路くん」
一之瀬が、オレの方を見る。
その顔には、断固たる決意が宿っているような気がした。
「────君って、何者なの?」
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Aクラスのポイント
初期配布ポイント:270(坂柳不参加のため、-30)
物資購入 :-0(Cとの契約)
点呼失敗 :-0
リタイア :0
スポット占有 :+0
リーダー当て :-100
総合 :170
※伊吹が寝ている櫛田のバッグからキーカードを奪い撮影に成功するも、松下が事前に綾小路から貰っていた助言を再投下(リタイア前)し、神崎の言葉を櫛田がクラスにこそっと共有したことで櫛田はリタイアし、平田が新たなリーダーとなったため、-50
橋本(言わずと知れた裏切り者)が龍園と接触し、Aクラスのリーダー(戸塚)の情報をバラしたことで、更に-50
Bクラスのポイント
初期配布ポイント:300
物資購入 :-110
点呼失敗 :-0
リタイア :-30(網倉)
スポット占有 :+209
リーダー当て :+50(Cクラスを当てた)
総合 :419
Cクラスのポイント
初期配布ポイント:300
物資購入 :-300(Aとの契約)
点呼失敗 :-0(踏み倒し)
リタイア :-0(踏み倒し)
スポット占有 :+0
リーダー当て :-150
総合 :0
※Dクラスに当てられたことで-50
Bクラスに当てられたことで-50
Dクラスのリーダーを間違えたことで-50
Bクラスのリーダーを間違えたことで-50
Aクラスのリーダーを当てたことで+50
Dクラスのポイント
初期配布ポイント:300
物資購入 :-120
点呼失敗 :-0
リタイア :-90(高円寺・松下・櫛田)
スポット占有 :+20
リーダー当て :+50(Cクラスを当てた)
総合 :160
Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)
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堀北鈴音
-
櫛田桔梗
-
軽井沢恵
-
長谷部波瑠加
-
三宅明人
-
松下千秋
-
Dクラスに救う価値無し