綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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32話:聖者と悪者

 

 

 

さて、ここからすでに一之瀬と神崎に一任しているわけだが、どう動く気だろうか。

 

まずはクラス全員のメールの確認、若しくは優待者把握に努めるのが定石だが。

 

 

そんなことを考えていると、メッセージが届く。

 

それも、クラス全体のグループでか。

 

 

『優待者に選ばれた者は個人チャットで一之瀬に教えてくれ』

 

 

送り主は神崎。

 

これは良い判断だ。

 

もしクラス全体のチャットで優待者の情報を書いた場合、他クラスからの標的はクラス全員となる。

 

だが、一之瀬だけに送るとなれば知っているのは優待者と一之瀬だけとなり、その他の者には一切情報が漏れない。

 

これはクラスを信頼しているしていないの話ではなく、リスク管理の話だ。

 

一之瀬には神崎などがついていればいいし、彼女が信頼できる面子を周りに置いても良い。

 

さて、ここからどう動くのか、見ものだな。

 

 

 

 

 

 

「綾小路。聞こえてるか?」

 

「ああ。問題ない。何かあったのか?」

 

 

午前九時半、そろそろ一之瀬たちと合流しようかと思っていた矢先、神崎から電話がかかってきた。

 

だが、声に特に緊張はなく、緊急事態ではないだろうと予想できる。

 

 

「優待者の情報が全員分集まった。やはり三人いたぞ」

 

「そうか。上出来だな」

 

「それでだが、俺はこの優待者という存在の選び方に、何か法則性があるのではないかと思っている。そうじゃなければ、結果3・4の起こる確率はほぼ0だからだ」

 

 

電話越しに聞こえてくる神崎の声は、どこか自信を帯びている。

 

確かに、わざわざ確証を得ることも難しい優待者の密告を起こすヤツがいるとは中々思えない。

 

 

「………いい発想だとは言っておく」

 

「それでだが、この学校は公平性を重視する。各クラスで違う優待者の法則が使われているなんてことはないと思うんだが…………」

 

「それについては何も言えないな。学校側が同じ難易度だと定義すれば済む話だ。それに、Dクラスの優待者についても未知数だ。断定は禁物だと思うぞ」

 

「分かってる。とりあえず、そろそろ合流しないか?」

 

 

オレが思っていたことを、向こうから提案してくれた。

 

しかし、神崎はやはり優秀だな。

 

優待者の人数の割り振りや法則性の可能性に気付くとは。

 

 

「ああ。すぐに向かう。自室にいてくれ」

 

「分かった」

 

 

そこで電話を切り、オレは手すりに委ねていた身体を起こす。

 

眩い日光と心地よい海風が、オレの足を止めそうになるのを我慢しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「直接会うのは初めてだな。Bクラス」

 

 

指定された部屋の前に到着すると、早速と言わんばかりに絡まれた。

 

相手はガタイのいいハゲの男。

 

 

「えっと、Aクラスの葛城くんだよね。噂は聞いてるよ」

 

 

前に立つ一之瀬が会話を引き受けてくれた。

 

代わりに、その半歩後ろに立つ神崎は敵意の含まれた視線で葛城を突き刺している。

 

あまりの温度の違いに、オレは肌の感覚が狂いそうになるのを感じた。

 

 

「………単刀直入に言うが、お前たちの無人島試験での成績には目を見張るものがあった。俺たちの動きを読み切った上で、片方を騙して両方を釣り上げるとは大したものだ」

 

 

あえて核心には触れない言葉選び、これはカマをかけてきているのだろう。

 

舐めているわけではなく、警戒から来る敵意。

 

 

「にゃはは、そこまで大したことじゃないよ~。たまたま、じゃないかなっ?」

 

「Bクラスリーダーの一之瀬は冗談が上手いのだな。だが、二位と倍以上の差をつけたポイントを叩き出しておいてそれは、煽りと捉えることもできるが」

 

 

確かに、あれは少しやりすぎたのかもな。

 

二日目からDクラスの見つけたスポットも全部横取りして数分の空きも含まずに更新を続けたせいで、スポット占有のポイントだけで約半分を占めてるし。

 

だがあれは、小遣いを増やしたいのかもなっていう仲間の意思を尊重しただけで…………(他責思考)

 

 

「凄いものは凄いと認めることも大切じゃないかな? 葛城くん」

 

 

一之瀬と葛城の間に火花が散りそうになったときに割り込んできたのは平田の声だった。

 

隣には、櫛田と王もいる。

 

とにもかくにも、これで揃ってないのはCクラスだけになってしまった。

 

まだ一回目のディスカッションも始まってないのに、ここで戦争が起きそうだ。

 

 

「Dクラスか。六月に七人も退学させたのに、健気に特別試験には参加するんだな」

 

「その言い方は好きじゃないな。確かに僕たちは間違いを犯したけど、それを乗り越えて進むって決めたんだ」

 

 

平田も、着実に成長しているな。

 

一時期は本当に病んで不登校になるかとも思ったが、あそこで本心を伝えて正解だった。

 

いつかオレも、アイツのような男になりたいものだ。

 

そして…………アイツみたいなイケメンになりたい。

 

 

「─────そうか。まぁいい、もうすぐ話し合いだ。そろそろ入室と行こう」

 

「だね。遅れたらペナルティあるかもだし」

 

「そうしようか」

 

 

とりあえずクラスのリーダーたちの決定により、ディスカッション開始十分前に入室することになった。

 

廊下で揉め事が起きなくて良かった。

 

 

 

 

 

「ククク、待たせたなぁ」

 

 

ある程度広い部屋の中で開始を待っていると、時間ぎりぎりに龍園たちがやってきた。

 

連れているのは、恐らく同じグループの者だろう。

 

一々Cクラスのメンバーの顔など覚えてないから適当だが。

 

 

「時間的にはセーフだし。座りなよ」

 

 

一之瀬は軽く微笑んでいるが、目が笑っていない。

 

口の端が少し上がっているだけで、他は真顔だ。

 

やはり、Cクラスは明確な敵として映っているんだろう。

 

 

「言われるまでもねぇよ」

 

 

対して龍園は減らず口を叩きながらも、指定された席に腰掛ける。

 

それを囲むように、付いてきた金魚の糞も椅子に座った。

 

 

 

そして、第一回目のディスカッションが始まった。

 

空気は依然として重いが、この雰囲気を変えれる者はいない。

 

息苦しいから、換気したいくらいだ。

 

 

 

 

「まずはみんな、自己紹介からどうかな? 知らないって子も、いると思うし」

 

「いいんじゃないかな。僕は賛成するよ」

 

 

一之瀬の案に賛成意見を示したのは平田だ。

 

だが、これは恐らく恩云々ではなく純粋な意見だろうな。平田良い奴だし。

 

 

「一之瀬。少しいいか?」

 

 

場の流れを作ろうとした一之瀬に対し、葛城が閉ざしていた口を開いた。

 

その厳格な口調からは、ある種の威圧のようなものを感じる。

 

 

「何かな? 葛城くん」

 

「今回の特別試験、結果は四つある。そのすべてを覚えているか?」

 

 

何を当たり前のことを言っているんだ。

 

うちのリーダー様が覚えてないわけないだろタコスケ。

 

 

「勿論だよ。一つ目は『優待者をグループ全員が当てる』。二つ目は『優待者が逃げ切る』。三つ目は『裏切り者が優待者を当てる』。四つ目が『裏切り者が優待者を外す』。だよね」

 

 

まるでカンニングペーパーでも見ているのかと疑いたくなるほどスラスラと結果を挙げる一之瀬。

 

しかし、その様子を葛城は「当たり前だ」と言わんばかりの目で視ている。

 

 

「なら、その中で最も避けなければならない結果はどれだ?」

 

「結果3、かな? 裏切り者だけが得するわけだし」

 

「そう、避けるべきは結果3。そして話し合うからこそ疑念が生まれ、裏切り者が現れる。だから俺たちAクラスは、話し合いに参加しないという戦術を選ぶことにした」

 

 

一之瀬が驚いたような顔をする。

 

そして神崎も、まさかそんなことをするとは思っていなかったのだろう、目を見開く。

 

 

葛城のとった策は、Aクラスしか使えない策だ。

 

話し合いを避け、自クラスの優待者を当てられるリスクを減らす。

 

そして、全グループで話し合いを拒否させることでグループの特定も防ぐ。

 

だが、勿論弱点もある。

 

それは──────

 

 

 

 

「ククク。笑わせんなよ葛城、窒息するとこだったろうが」

 

 

いきなり、龍園がそんなことを言った。

 

葛城を捉えるその瞳には、今から言うであろうことが代弁されている。

 

 

「どういう意味だ。龍園」

 

「お前がやってんのは‘‘戦術’’じゃねぇ。ただの試験からの‘‘逃げ’’だろって言ってんだ」

 

 

そう。

 

葛城は話し合いに参加しないことで防御を鉄壁としたが、代わりに勝利を捨てたのだ。

 

自分たちが話し合いに加わらない時点で、他クラスの優待者を当てれるわけないんだから。

 

 

「構わない。今回のような変動が大きい試験では安定をとることも重要だ」

 

「クハハ。んなこと言ってるようなら、抜かす日も近いな」

 

「戯言を。もう話す気はない」

 

 

葛城はそれだけ言うと、他のメンバーと共に口を閉じてしまった。

 

途中から話し合いに入れなかった一之瀬も、口を閉ざしている。

 

未だに余裕そうな態度をとっているのは、龍園だけだ。

 

 

オレはそんな彼らとは裏腹に、座っている太ももの上で開いたスマホの画面に視線を落とす。

 

先程一之瀬から送られてきたBクラスの優待者と、その者が所属しているグループのメンバーリストに目を通すためだ。

 

そして、その中の一人の名前に気を取られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────神崎、お前優待者だったのかよ。

 

 

Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)

  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 軽井沢恵
  • 長谷部波瑠加
  • 三宅明人
  • 松下千秋
  • Dクラスに救う価値無し
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