綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
Aクラス:1174
Bクラス:1091
Cクラス:510
Dクラス:160
その後も特に進展がないまま、一回目のディスカッションは終わりを迎えた。
強いて言うなら、平田と一之瀬は話をし、龍園が茶々を入れるような展開は都度見られたが、それ以外には何もなしだ。
このままダラダラと時間が浪費されていくのなら、時間の無駄だな。
だが、横の二人が未だこの特別試験の結末を描けてないから、オレも動くことはしない。
「いや~、葛城くんは手強いね。あのままだと何もヒント得られそうにないよ…………」
一之瀬が呟く。
確かに、彼率いるAクラスの面々は結局一度も口を開かなかった。
それだけ、意志は固いということだろう。
「あれをただのこちらへの不利な要素とだけ取られないことも重要だ」
「どういう意味?」
オレの言葉に、一之瀬が返してくる。
この試験において本当に重要なのは、誰が優待者であるかや優待者の法則性ではない。
注目すべきは──────
「──────
「…………そういうことか」
神崎は、早くも理解した。
そう、この試験において重要なのは報酬として配られるプライベートポイントの配布量が、今までに類を見ない程ということだ。
この試験で全てのグループを結果1で終了させることが出来れば、全クラス共に退学者の救済額である2000万を貯められる。
「一之瀬。お前の本当の目的を思い出せ。第一目標は、敵を倒すことか? それとも、試験で勝つことか? お前がオレの前で語った理想論は、もっとお前らしかった筈だ」
「退学者を、出さないこと…………」
一之瀬も、ここで気付いた。
この試験、やりようによっては今後に最も大きく響くものであると。
同時に悟る。
この試験では、自分も非情さを持たないといけないと。
「全グループを結果1で終わらすことが可能なら、俺たちだけでなく全クラスが2000万ポイントを得ることになる。他は知らないが、少なくともCクラスがそんな使い方をするとは────」
昼前のデッキ。
周囲には人がまばらにいるが、誰もオレたちのことなど見ていない。
言いかけた神崎が、途中で口を噤んだ。
「────いや、待てよ。綾小路、無人島試験でAとCが結んだと思しき契約について、お前は予想が付いているのか?」
神崎はオレの方を見ながら訊いてくる。
それに倣うように、一之瀬の視線もオレに向いた。
「ああ。大体の予想なら、ついている。そして、それは多分お前の予想と合致すると思うぞ」
「そうか。なら、Cクラスはポイントを第一に動いている可能性が高い、この試験、早々に動き出してもおかしくないな」
「え? AとCの契約って、どんなヤツなの?」
状況に追いつけていない一之瀬がオレに尋ねる。
だがオレは明確な回答を避け、神崎に視線を投げた。
「────無人島試験、結果のポイント差からAクラスとCクラスがBクラスとDクラスのリーダー情報を共有していたのは知っているな?」
「う、うん。明らかに、Aクラスは少なかったしね。Cクラスの巻き添えを食らったんじゃ」
「そうだ。そして、俺が貯めていたポイントを少し消費して星之宮先生から聞き出した限りでは、Cクラスは無人島試験でクラスのほとんどを早期リタイアさせていた。そして、初日と二日目の豪遊の際に使用した物資はそのままAクラスに流れたって話だ」
一之瀬に預けない代わりに、自身で貯めていた神崎の貯金。
それを切り崩してまで、アイツらの動向を聞いておきたかったのか。
「つまり、AとCの間に結ばれた契約は、Cが俺たちとDクラスのリーダー情報、そして使用していた物資を横流しにして初めて成立するものである可能性が高い。そしてそれに見合う対価でAがCに渡せるものは一つしかない」
「プライベートポイント、だね」
ここまで、自力で辿り着いたのか。
感心だな。
まさか、神崎がここまでだとは思わなかった。
「つまり、Cクラスは無人島試験で最初から試験のポイントではなくプライベートポイントを得ることを目的として動いていた。そんなポイントが、今回の試験では山のように用意されてる。動かない理由はない」
「私たちも、早めに対処しないとだね。なんせCクラスは龍園くんのワンマンチーム、クラス内の優待者ももう把握してると思って動くべきだよね」
「だろうな。綾小路、俺は櫛田桔梗と接触したい。アイツにDクラスの優待者を探らせ、二クラス分の優待者情報で法則性を確定させる」
「桔梗ちゃん…………無人島試験では勝つためだったけど、やっぱり友達を利用するのは…………」
一之瀬はまだ渋っているのか。
使えるものは何でも使わないと、今後勝てる可能性がないかもしれないのにな。
まぁ、それが一之瀬帆波という人間の良さでもあるんだが。
「腹を括れ一之瀬。何も、真っ向から敵対するわけじゃない。ただ、AとCを倒すためにDを利用するだけ。アイツらの優待者を避ければいいし、俺からお前の名前も出さない。すべて俺の作戦であるとすればいいだろ」
「そんな、流石に悪いよ。折角クラスの為に動いてくれてるのに」
「気にするな。じゃあ、早速動こう。手回しの早さでは、向こうに分がありそうだしな」
そんな神崎の言葉で、一旦の解散が決定した。
だがオレは、二人が去った後もデッキを離れない。
暫く、潮風を浴びていたい気分だしな。
『────もしもし? 綾小路くん?』
いきなりスマホが振動し手に取ると、松下からの電話だった。
オレは周囲に人がいない場所に移動してから、耳に当てる。
『なんだ?』
『平田くんに協力したいって言ったら優待者の情報を教えてくれた。今から言うね』
『そうか。頼む』
『まず丑グループの菊池くん。未グループの西村さん。酉グループの前園さん』
『分かった。協力感謝する』
『自分のためだから気にしないで』
それだけ聞き、オレは電話を切る。
一先ずこれで、Dクラスの優待者情報は全て把握した。
松下がここで嘘を吐くメリットは、オレより好条件でスパイを雇うクラスがあった場合だが、かつて彼女自身の口から他クラスへの感情が聞けた時点でこれは薄い。
それに、オレが松下がスパイをやっていたという証拠をばら撒くより先にクラス移動をさせるのは不可能──────
いや、待てよ。
今回の試験で得られるプライベートポイントで、松下を移動させるという契約を結んでいたとしたらどうだ?
そしたら、オレに嘘を吐いてもクラスにバラされる前、夏季休暇明けすぐにクラス移動を行える。
だが、どこがアイツを引き取ると言うんだ?
Aクラスは元々比較的優秀な者が多い、態々入れずとも十分戦えるし、内戦で外部の人間に構っている暇はない筈。
ならCクラスは?
龍園なら、優秀な駒として抜くことはあり得る。
だが、あそこまで狡猾な男だ。
いくらルックスが秀でているからと言って、今回の試験での活躍だけで引き抜くとは思えない。
よって、松下が嘘を吐いている可能性はない。
オレは思考を数秒で済ませ、端末に視線を落とす。
神崎なら、情報の提供だけでなくCクラスへの情報の流出も防いでくれるだろう。
これで、全て上手く行っている。
任せても、大丈夫そうだな。
「─────って感じ。やっぱAクラスは一言も喋んなかったし、まじ時間の無駄」
「そうか」
昼食は、誰かと共に食べるに限るな。
オレは今、姫野と共にレストランに来ている。
周りにも生徒はちらほらと見えるが、あまり目立った場所にないためか他のとこに比べたら客は少ない。
「で、そっちはどうだったわけ?」
「同じだな。今、神崎と一之瀬が作戦を練ってる」
「あんたは?」
「ご飯食べてる」
「レベルの差が知れるわね」
「良く言うだろ、腹が減っては戦は出来ぬって」
姫野はそんなオレの言葉を鼻で笑う。
そして、手に持ったフォークでカルボナーラを巻き取り口に運んだ。
「優待者の法則、ってのは見つかりそうなわけ?」
「今、神崎がDクラスのスパイと交信してる筈だ。そこからヒントを得られれば、勝利に一歩近づいたと言えるだろう」
「へぇ………因みに、あんたが思い描く今回の試験の理想の終了の形はどんなのなわけ?」
理想の形、か。
そうだな…………
「Cクラス以外の全クラスが均等に四グループずつ裏切り者を出して正解、だな」
「なんでそこまでするわけ? 柴田、だっけ。アイツがそんなに大事?」
「それもあるが、それだけじゃない。前回の無人島試験でオレたちBクラスは一気に大躍進を遂げ、Aまであと一歩に迫った。だが、逆に言えばそれだけ玉座に近づいたわけだ」
「何の問題が?」
「つまるところ、Aクラスにも明確に敵視されることを意味する。Cクラスには少なくとも宣戦布告を受けたばかりだし、尚且つ上にもとなると、相手がダルい」
「まぁ、今のうちじゃ勝てるものも勝てないってわけね。だから、勝利と褒賞を分散させて、Cクラスだけを落とすと」
「まぁ、あくまでオレの理想だがな。Aは仲間割れしてるから一年生のうちに落としておけるし、Dについては安定志向だから問題はない」
オレは珈琲を飲みながら、龍園の言葉を反芻する。
『Aの前にBを引き摺り下ろす』、か。
早めにクラスメイトの思考に関与しておかないと、うちの布陣も崩されるかもな。
だがまぁ、それはない。
もし本当にクラス存続の危機に陥ったならば、もう一度オレが手を引き、立ち上がらせればいい。
自分で歩き方を考えられる程度には、成長して欲しい限りだ。
「─────ボーっとしてるけど、何考えてるわけ?」
「…………世界平和について、だな」
「あほらし」
Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)
-
堀北鈴音
-
櫛田桔梗
-
軽井沢恵
-
長谷部波瑠加
-
三宅明人
-
松下千秋
-
Dクラスに救う価値無し