綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
「─────なるほどな」
姫野との昼食を終え、オレはラウンジで寛いでいた。
周りに人はいるものの、後ろは壁であり落ち着ける場所だ。
そして、優待者の法則を発見した。
一之瀬から送られてきた優待者の情報と、松下から送られてきたものを合わせて考えれば、そう難しいものじゃない。
ただ、優待者の所属するグループの干支の順番とその者が所属するグループ内での五十音順の一致と言う子供じみたものだ。
しかし、各クラスに三人しかいないとなると、発見は困難を極めるだろう。
そして最悪なニュースが一個。
それは──────申グループの試験がすでに終了したということだ。
平田からの連絡によれば、Dクラスの高円寺というヤツの仕業らしい。
誰を告発したのか知らないが、あそこのグループの優待者はCクラスの生徒、正直当てられても問題はない。
当然、平田に言うことはないが。
そして、すぐにスマホが振動する。
相手は神崎、どうやら櫛田との密会は終わったらしい。
『どうだった?』
『収穫はあった。全員ではないが、二人の優待者を引き出した。一人目は丑グループの菊池。二人目は酉グループの前園だ』
オレは松下の言っていた者と一致することを脳内で確認してから口を開ける。
『了解。法則とやら、頑張れよ』
『ああ。綾小路に頼らずとも、自分だけで見つけてみせる』
自信に満ちた神崎の声を聞いてから、オレは電話を切る。
どうやら、自信があるらしい。
まぁ正直、そこまで難しいものでもないし神崎なら見つけられるだろう。
「──────という作戦はどうだろうか。非常に不本意だが、今Aクラスに上がるのは正直言ってまずい」
二回目のディスカッションまであと一時間となった午後四時。
オレはテーブルを挟んで一之瀬、神崎と向かい合っている。
話があると呼ばれてきてみれば、クラスの方針の相談と来た。
「いいんじゃないか。お前たちにクラスの未来を託した時点で、もうオレの知るところではない。その結果どう転ぼうが、責めることもなければ恨むこともない」
神崎が提案してきたのは、さっき見つけた優待者の法則性を切り札に、A・B・Dで一時的に同盟を組み、Cクラスだけを叩き落とさないかというものだ。
確かに姫野にも話した通り、今Aクラスに上がれば他クラスに狙い撃ちにされる可能性もあるし、尚且つ一部の生徒以外はAクラスには全くもって通用しない。
「────綾小路くん。確かに君は前線を降りたかもしれないけど、でもクラスの仲間だよ。だから、一クラスメイトとしてでもいいから、意見をくれないかな」
一之瀬の瞳がオレを捉える。
でも、‘‘そういうこと’’ならいいだろう。
「なら、ただのBクラス生徒として意見するとしよう。まずだが、作戦自体はかなりいい、先も己の実力も見えていて盤石だ」
そう。
神崎と一之瀬が閃いたのは、どのクラスにも優待者が三人ずつと言う仕組みを使った小癪なトリックだ。
A・B・Dそれぞれが他クラスの優待者を三人ずつ指名することで、得しない代わりに損をするリスクを0にする作戦。
それに加えてCクラスの優待者三人を当てることで、50ポイントずつ得しようというものだ。
「そうか」
「ありがとね。綾小路くん」
「気にするな」
微笑みながら礼を言う一之瀬に、オレは首を横に振る。
別に、礼を言われたくてやったわけじゃないしな。
「ただ、友人として役に立ちたかっただけだ」
友人、最早言い慣れたその言葉を思い返す。
やはり、彼らには感謝しかないな。
こんなことじゃ返せない恩が、まだ残ってる。
俺──────神崎隆二は今、Aクラスのリーダー格である葛城康平、Dクラスを仕切っている平田洋介と会談している。
一之瀬は、ディスカッションに遅れないために先に向かわしている。
「それで、もうすぐ二回目のディスカッションだというのに呼びつけるとは、どういう風の吹き回しだ?」
「そうだよ。三人で話したいなら、せめて終わってからにすればいいのに」
二人の言うことは事実だ。
だが、Cクラスがいつ動くか読めない状況で二の足を踏んでいる暇はない。
「時間の無駄をなくすため単刀直入に言うが、ここにいる三人で組んで共にCクラスを叩き落とさないか?」
「何?」
「え?」
俺の言葉に、二人は動揺を隠さない。
まぁ、予想していなかったことだろうからな。仕方ない。
「手短に説明すると、今回の試験でやりたいことは二つだ。まずA・B・Dの優待者を共有し、どのクラスも三人優待者を当て、三人当てられるように仕組む」
「リスクを無くして、プラスマイナスゼロにするためか」
「流石だ葛城、話が早い。その上で言うが、俺たちは既に優待者に対する法則性を発見している。それを使ってCクラスの優待者を当てることで、三クラスが五十ポイントずつ得をするってわけだ」
まずは優待者に法則性があるという情報の開示。
これをすることで、心理的に俺たちに協力しやすくなっている筈だ。
「…………なるほどな。確かに、俺としてもAクラスとしても、この試験で勝ちを拾えるなら願ってもない話だ」
まずは葛城の賛成意見。
正直、これはありがたい。
「僕もだよ。Dクラスは慢性的なポイント不足だし、無人島試験でも得られたものは少ない。五十ポイントでも、嬉しい。是非、その作戦に乗らせて欲しい」
平田も賛成か。
即決で言質をとれたのはデカいな。
「ただ神崎、あとから嘘の法則性を教えたりはするなよ?」
「するわけない。そもそも、九人分の優待者情報を握れば、自ずと見えてくる。間違えることはない。そして、その上で言っておかないといけないことがある」
ここで、俺たちが退くことを示す。
そうすれば、義理堅い葛城は乗ってくるだろうし、平田も同じ筈だ。
「なんだ?」
「申グループの試験が終わったのは知っているな。あのグループの優待者は、Cクラスだ。そして終わらせたのは高円寺。つまり平田、お前には高円寺を信じるという責任が圧し掛かることになる」
高円寺が、本当に優待者を当てたのか。
聞いた限りでは、自信があることを明言しても、優待者の名前を割るようなタイプじゃない。
つまり、噂に聞く自由奔放な人間を、どこまで信じられるかと言う話になる。
綾小路から、コイツは良い奴だと聞いているが、それがどこまで通用するのか。
「─────勿論、僕は高円寺くんを信じるよ。だから、残りのCクラスの優待者は、葛城くんと、神崎くんで当ててくれて構わない。そもそも、僕は参加させてもらってる側だしね」
これで、問題は全て解決した。
綾小路の狙い通りCクラスを潰せるし、平田・葛城に恩も売れた。
俺たちが優待者の法則を独占していれば、彼らは泣き寝入りするしかなかったわけだしな。
「オーケー。なら、ここにいる三人で、契約成立で構わないな?」
「ああ」
「うん」
「…………よし。なら、早速優待者の共有といこう」
オレ──────綾小路清隆の元に神崎から作戦成功のメッセージが届いたのは、ディスカッションが始まる十分前だった。
そのメッセージと同時に、オレ以外のこの場にいる全生徒のスマホが振動する。
マナーモードにしていた者のものも鳴っているということは、これは学校側からのメールということになる。
オレは画面を切り替えつつ、結果は分かっているが確認を急いだ。
すると、画面に大量のメールが届いている。
『子グループ試験終了』
『丑グループ試験終了』
『寅グループ試験終了』
『卯グループ試験終了』
『辰グループ試験終了』
『巳グループ試験終了』
『午グループ試験終了』
『未グループ試験終了』
『酉グループ試験終了』
『戌グループ試験終了』
『亥グループ試験終了』
同時に十一グループのの試験が終了した。
これで、神崎の言っていた作戦は成功に終わったわけだ。
「ふぅ、良かったぁ…………」
隣に座る一之瀬はほっと息をついている。
初めて自分たちだけで行う作戦だからか、緊張していたんだろう。
「計画通り、だな」
「だね。流石神崎くんだよ~」
「それも、一之瀬の統率力なしでは無理だったからな。結論、二人の成果だ」
「嬉しいこと言ってくれるね、綾小路くん」
「事実だからな」
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干支試験の結果詳細
クラスポイントの変動
Aクラス:1174+50=1224
Bクラス:1083+50=1141
Cクラス:510-150=360
Dクラス:160+50=210
Aクラス +50(Dの優待者当て)
+50(Bの優待者当て)
+50(Bの優待者当て)
+50(Cの優待者当て)
-50(Bに優待者当てられ)
-50(Dに優待者当てられ)
-50(Dに優待者当てられ)
総合:+50
Bクラス +50(Dの優待者当て)
+50(Dの優待者当て)
+50(Aの優待者当て)
+50(Cの優待者当て)
-50(Aに優待者当てられ)
-50(Aに優待者当てられ)
-50(Dに優待者当てられ)
総合:+50
Cクラス -50(Aに優待者当てられ)
-50(Bに優待者当てられ)
-50(Dに優待者当てられ)
総合:-150
Dクラス +50(Aの優待者当て)
+50(Aの優待者当て)
+50(Bの優待者当て)
+50(Cの優待者当て)
-50(Aに優待者当てられ)
-50(Bに優待者当てられ)
-50(Bに優待者当てられ)
総合:+50
グループの結果:全グループ結果3
プライベートポイントの変動
Aクラス:+150万ポイント
Bクラス:+150万ポイント
Cクラス:+0ポイント
Dクラス:+150万ポイント
少し早いですが、干支試験終了でございます
Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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軽井沢恵
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長谷部波瑠加
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三宅明人
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松下千秋
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Dクラスに救う価値無し