綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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40話:体育祭前編

 

 

「─────へぇ、あんたも大変ね」

 

「ああ。だから、あまりこうして頻繁に来ないで貰えると助かるんだが…………」

 

 

オレは今、姫野と夕食を共にしている。

 

場所はオレの発言から分かると思うが、当然自室である。

 

 

「仕方ないじゃん。あんたの作る料理美味しいし、それとも金払えばいい?」

 

「友達に金を要求する程オレは落ちぶれてないさ。ただ、あまり来すぎると噂が立つかもしれないぞ?」

 

「ふーん。どんな?」

 

「オレとお前が、男女の関係であるといった噂だ。目立ちたがらないお前の性格からすれば、困るのはお互い様だろ?」

 

「まぁ、確かにねぇ。じゃあ、週一くらいにしよっかな」

 

「…………まぁ、妥当か………?」

 

 

 

 

 

 

 

十月一日。

 

今日は、誰もが待ちに待った体育祭当日である。

 

 

オレたちBクラスの面々も、白組のスペースにて各々気持ちを昂らせている。

 

特に柴田や神崎の熱意は凄まじく、組では勝てなくとも学年内で勝とうという意思を感じる。

 

 

「楽しみだな。綾小路」

 

「ああ。そうだな」

 

「しっかり、推薦種目でも勝つ気でやってくれ」

 

「任せろ。このクラスのマイナスになるようなことはしない」

 

 

隣でウォーミングアップを行う神崎の言葉に、オレは真摯に対応する。

 

事実だ。

 

星之宮との契約で一種目では本気を出す予定だし、加えて全て僅差で勝つように調節する。

 

借り物競争では普通に動くがな、あれは運と聞かされているから、いくらでも言い訳は出来るだろう。

 

無論、どれも勝つつもりでやるのは前提だが。

 

 

 

 

そして──────全生徒の熱意が入り乱れる中、体育祭の第一種目である「100m走」が始まった。

 

第一走者である神崎が歩いていくのを確認し、オレは目を凝らす。

 

神崎の運動神経はかなりいい方だが、何より身体の使い方が上手い。

 

どこかでスポーツや格闘技を習っていたと思いたくなるレベルだ。

 

 

結果、神崎は一位を獲り、その後もオレたちが組んだ布陣は機能し、優勢を保てているように見えた。

 

しかし──────オレは、微かな違和感を覚えていた。

 

 

 

その後も、ハードル競走や男女別綱引き、棒倒しや玉入れなどの種目でも、オレたちは上位をとることが出来た。

 

しかし、オレの疑念は確信へと変わる。

 

 

 

 

「──────仕組まれてるな」

 

 

二人三脚が終わり、騎馬戦が始まる前。

 

オレは、誰にも聞かれないように呟いた。

 

 

これまでの種目、必ずと言っていいほどCクラスが上位を獲っている。

 

それも、オレたちよりも圧倒的に多く。

 

しかし、Cクラスは元々身体能力の高い者が多い。

 

それを言い訳にされればそれまでだが、明らかに‘‘AクラスとDクラス’’の参加表を把握しているとしか思えない配置をしているのだ。

 

Dクラスは論外だとしても、Aクラスの貴重な人材である鬼頭や橋本が出る際には、必ずCクラス内の弱い生徒が当てられている。

 

それに加えて目に見えて明らかなのは「Dクラスの女子生徒へのヘイト」。

 

名前は知らないが、先程から執拗にCクラスの生徒に邪魔をされている生徒が存在してる。

 

だが、それは正直どうでもいい。

 

問題なのは、何故DクラスとAクラスの参加表がCクラスに流出しているのか。という問題だ。

 

そんなことをしてもメリットは…………

 

 

 

 

 

──────なるほど、そういうことか。

 

メリットはない、そう思ったがそれは間違いだと今気づいた。

 

何故なら一人だけ、「Aクラスを堕とす」という発言をした人物をオレは知っているからな。

 

そいつは今日、不参加らしいが。

 

あとで電話をかけることを決意し、オレは騎馬戦へ臨む。

 

 

 

まずは男子からということで、オレは神崎と共に席を立つ。

 

気合は十分、しかし、神崎の瞳には迷いが見える。

 

 

「…………どうした」

 

「お前なら分かってるだろ。綾小路」

 

 

話しかけると、神崎はすぐに返してくる。

 

だが、あまり気分は良くなさそうだ。

 

 

「…………Cクラスに、Aと恐らくDの参加表が流れてるな」

 

「やはり気付いてたか。だが、俺には理由が分からない。あり得るとしたら、お前から動画を見せてもらった櫛田桔梗だが、それでもAの方は謎だ」

 

 

櫛田桔梗、か。

 

船上試験の口封じで「もし他クラスと協力するような行動をとった場合、晒す」と暗に告げた筈なんだがな。

 

だが、それは今じゃなくていい。

 

 

「そう、だな。オレにもAの方は分からない。もしかすると、オレたちの知らない所で、誰かの策略が動いているのかもな」

 

「想像したくはないな。ただ、その話は後だ。今は目の前の騎馬戦で勝つことに集中するぞ」

 

「ああ、そうだな。ここで勝利を捥ぎ取り、学年一位を奪い返すか」

 

「その意気だ」

 

 

二人で決意を固めて歩き出そうとすると、後ろから肩をトントンと叩かれた。

 

振り返れば、そこには網倉と一之瀬。

 

 

「ん、何かあったのか?」

 

「そうじゃないよ。ただ、ここが踏ん張り所だから応援がいるかなって。ね?」

 

 

オレの問に答えた網倉の視線が、一瞬だけ一之瀬に向く。

 

その真意は、オレには読み取れなかった。

 

 

「二人とも、頑張ってねっ! 他の子たちもだけど、二人には頑張って欲しいから」

 

「…………ああ、任せろ。必ず勝つ」

 

「そうだな。ああ、勝つ。見ててくれ」

 

 

二人で返してから、トラックへと踏み入る。

 

そして、赤組対白組の騎馬戦が始まった。

 

 

騎馬戦は、各クラスから四組ずつ選出された騎馬の八対八で競う競技。

 

オレたちBクラスからただの騎手としてオレや柴田、そして大将騎は神崎だ。

 

 

向ってくるのは、Aクラスの鬼頭率いる騎馬。

 

正面で向かい合ってスタートしたので妥当と言えるが、オレが騎手なのが運の尽きだな。

 

少しだけ時間をかけつつ、オレは下の渡辺などに指示を飛ばしながら騎馬全体を動かし、鬼頭たちの突撃を回避する。

 

それと同時に素早く手を伸ばし、オレは鬼頭の鉢巻を奪い取った。

 

 

「おお!小路かっけぇ!」

 

「略すな渡辺」

 

 

渡辺から変なあだ名をつけられつつ、オレは周囲を見回す。

 

しかし、状況は圧倒的に白組優位に進んでいた。

 

視界の右では神崎が橋本の騎馬を圧倒し、左では龍園の騎馬がDクラスのなけなしのメンバーで作られた騎馬を蹂躙している。

 

そのまま、特に何もせず騎馬戦は終了した。

 

結果として白組としての勝利は出来たが、倒した騎馬の数はCクラスと同じに終わった。

 

 

 

そしてやってきた昼休憩。

 

今の段階では組としての勝負では赤組が勝っている。

 

そして学年内での順位は一位Cクラス、若干後ろにBクラス、三位にAクラス、圧倒的最下位にDクラスといった具合だ。

 

ここからの巻き返しを図らなければ、Cクラスに勝つことは難しいだろう。

 

まぁ、策はないが。

 

今回は他クラスの参加表を把握できたCクラスに軍配が上がったな。

 

が、同じような手は二度と使わせない。

 

 

 

さて、それじゃあ用事を済ませるとしようか。

 

 

「済まない。少し外す、すぐに戻る」

 

 

オレは女子たちに囲まれていた一之瀬に一言告げてから、陣地を離れる。

 

向かう先は、人のいない校舎方面。

 

 

 

 

『──────もしもし? あなたからかけてくれるとは思ってもいませんでしたよ』

 

 

電話をかけた相手は、心底嬉しそうにそう言う。

 

しかし、その甘ったるい声には毒が含まれていることはもう知っていた。

 

 

『クラス、いや葛城康平の信頼を堕とすためにここまでするのか。お前は』

 

『ふふ。これもすべて、あなたの為なんですよ?』

 

『あまり、調子に乗らないことだ。参加表のリークなんて、バレたら死ぬのはお前だぞ。…………坂柳(・・)

 

 

──────坂柳有栖。

 

オレ自身に宣戦布告をしてきた相手であり、同時にオレの過去を知る相手。

 

コイツは、オレを脅すために態々自身のクラスを危険に晒しているのだ。

 

その事実が、理解不能であると同時に、不快極まりなかった。

 

 

『その心配はいりませんよ』

 

『今更だから聞くが、夏季休暇の無人島試験でAクラスのリーダーを龍園に教えたのはお前の下僕か?』

 

『それはどうでしょうね』

 

 

過去に自らを下僕と名乗った橋本。

 

これはバラしたのがアイツなのかを確かめるために言ったが、この様子じゃ当たりだな。

 

 

『一つお前に言っておく。もしお前がオレだけではなく、周りのオレの友人に手を出そうとした場合、オレは容赦なくお前を潰す。どんなに泣き喚いても、手遅れになるからな』

 

『それは脅しですか? どうやら、臆病になってしまったらしいですね』

 

『──────お前には一生分からないだろうな。守るべき相手がいることで、人が強くなることもあると』

 

『そんな戯言をあなたの口から聞けただけでも、今日あなたの質問に答えた意味がありましたよ』

 

『忠告はしたからな』

 

 

オレは自分が柄にもなく熱くなっているのを感じながら、どこかそれを嬉しく思っている自分も感じていた。

 

きっと、これもオレの成長なんだろう。

 

 

「守るべき相手、か…………」

 

 

オレは脳内にクラスの仲間たちを思い描きながら、来た道を引き返し始めた。

 

 

 




そういえば言い忘れてましたが、恐らく自分が書く予定の坂柳の結末と、皆さんが望んでいる坂柳の結末は少々違っているかもしれません

しかし、自信をもって言えます
自分が、この傲慢な坂柳に相応しい結末を用意すると
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