綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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41話:体育祭後編

 

 

──────体育祭も終盤に差し掛かり、今まさに借り物競争が始まろうとしていた。

 

 

「まずは第一レース、頼むぞ綾小路」

 

「ああ、任せろ。必ずいいお題を引いてみせる」

 

 

神崎に背中を押されながら、オレはいざスタート位置へと足を進めた。

 

 

借り物競争では、各クラスから選出された選手一名ずつ計四名で一セット。

 

それを六回行うことになっている。

 

オレは一番大事な第一レースを任されているため、負けられない。

 

 

横に並ぶ面子に目を通す。

 

まずは葛城率いるAクラスから、鬼頭。

 

次に龍園率いるCクラスから、小宮。

 

そして平田たちDクラスからは──────佐倉。

 

 

「あ、綾小路くん」

 

「佐倉も参加していたのか。意外だな、こういうものは苦手だと思っていた」

 

「そうなんだけどね。ただうちのクラスは人が少ないから、多分負ける前提じゃないかな?」

 

「それが分かっていて尚参加したならもっと凄いさ。お互い、頑張ろう」

 

「う、うんっ!」

 

 

たまたま目が合ったため、軽く話す。

 

佐倉は、以前よりも雰囲気が明るくなったような気がするな。

 

話もスムーズだし、彼女なりに成長したということだろう。

 

 

他にも小宮と目が合ったが、すぐに逸らされてしまった。

 

オレに弱みを握られているからだろう、まったく悪いのはそっちだというのに酷い話だな。

 

余談だが、オレは無人島試験の際、松下にコイツと接触させた。

 

あれは、もしコイツらが龍園にゲロったとしても松下を切り捨てることが出来るためだ。

 

松下も、今回の体育祭での行動を求めてきたが、柔らかくあしらっておいた。

 

そろそろ、此方から切っても良い頃かもしれない。

 

 

 

「──────始めっ!」

 

 

司会の一声と銃発音で借り物競争の開始が告げられた。

 

真横に並んだオレたち四人はそれぞれ前方に置いてあるお題の書かれた紙を目指す。

 

二着で着きお題の中身を見ると、そこには「他クラスの友人」。

 

これはこの学校では難易度高いだろ、そう思いながらもオレは平田の元へ走ることにした。

 

 

 

 

「──────待って!くださいっ!」

 

 

走り出して数秒経った後に後方から声がした。

 

ペースを崩さずに振り返ると、そこには此方に駆けてくる佐倉の姿。

 

 

「どうした」

 

「あ、あの、私のお題綾小路くんだから………一緒に来てくれませんか?」

 

 

立ち止って話を聞けば、お題はオレだと言う。

 

偶然にも、オレのお題は佐倉にも合致する。

 

 

「…………オレもだ。一緒に行くか」

 

「は、はいっ!」

 

 

その後佐倉と共に走り切り、オレは一着でゴールすることが出来た。

 

スタートから十数秒の出来事だったため、他クラスとも大きな差をつけれたし、上出来だろう。

 

 

 

 

「──────ってことで、さっきのが本気です」

 

「冗談が上手いねぇ、綾小路くんは~」

 

 

陣地に戻り、休憩に来ていた星之宮と話す。

 

が、口は微笑んでいるのに目は笑っていない。

 

まるでいつかの一之瀬のようだ。

 

 

「…………オレの本気は、オレにしか分からないと思いますが」

 

「契約の内容的に、判断するのは私。いっそのこと皆に綾小路くんの凄さ知ってもらう?」

 

「──────遠慮しておきます」

 

「なら、最後の三学年混同1200mリレー期待してるからね♪」

 

「…………善処します」

 

「なら良し」

 

 

オレは半分諦めていたので落胆はせず、無心で陣地へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

「──────綾小路。お前とここで会うとはな」

 

「…………久しぶりですね。生徒会長」

 

 

四方綱引きや男女混合二人三脚が終わり、とうとう体育祭最後の種目がやってきた。

 

三学年混同1200mリレーにおいてオレは、何故かアンカーを任されている。

 

そして案内されたトラックの外側の定位置につくと堀北学がいた。

 

当然オレと彼の契約を他の者に知られるわけには行かないので、あくまでも裁判以降に会うのは初めてという体で行く。

 

周りにはCクラスのアンカーであろう龍園やDクラスのアンカーだと思われる平田などもいる。

 

かなり、強豪が揃っているな。

 

 

「丁度いい。ここで勝負しないか?」

 

 

彼の提案は、オレにとって都合がいい。

 

走りにおいて、自身よりも速い者と走ると自身も速くなると言われている。

 

つまり、オレが本気を出しても多少の言い訳は出来るというわけだ。

 

 

「…………いいですよ。ただ、お互いの走り出すタイミングが揃うとは思いませんけど」

 

「ふっ。俺の提案を受けるんだ。余程の自信があるんだろう?」

 

「ええ、まあ。それなりには」

 

「なら、問題ない。俺が遅れた場合は先に走り出してくれて構わない。もしお前の組が遅れるのなら、俺は待つぞ。後からでも勝てるからな」

 

「…………乗りました。オレも、待ちますよ。不義理は嫌いなので」

 

「やはり、お前は面白い男だ」

 

 

 

数分後。

 

リレー開始から二分ほどが経過した。

 

依然としてトップを駆けるのは三年Aクラス、その後を三年Bクラスが追う形だ。

 

一方でオレたち一年Bクラスは順位でいえば四位。

 

柴田や神崎の踏ん張りで大分上級生相手に粘っている方だろう。

 

 

 

「─────次だな」

 

「ええ。オレも、楽しみになってきました」

 

 

過去最高の生徒会長。

 

文武両道、完璧超人。

 

そうとまで言われる堀北学(この男)がどこまでオレを楽しませてくれるのか。

 

無論、全力を出すしやる以上勝つ気でいくが、それでも結果はまだ未知数。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────頼んだよっ!綾小路くん!」

 

「…………ああ」

 

 

安藤からのバトンを受け取ると同時に、オレは横目で隣を見る。

 

すると、隣でもオレたちとほぼ同時にバトンパスが行われていた。

 

先程三年Aクラスの生徒が転んでタイムロスが起きたのが大きい要因だろう。

 

 

「「………っ!」」

 

 

オレと堀北は、一瞬で足を地面に踏み込んだ。

 

トラックの砂利を掻き分け、足が埋まるような感覚だ。

 

 

このリレーは一人200mの持ち分がある。

 

今時点での走ったのは半分である100m程。

 

だが時間はまだ6秒程しか経過していない。

 

なのに、既に体が重く感じる。

 

それは、隣を走っている男の存在故か、それともオレの身体があそこにいたときよりも鈍っているのかは分からない。

 

一人、二人と前を走る者を抜いていく。

 

その爽快感が、オレを高揚させる。

 

 

もっとだ…………もっと速く。

 

出だしでついた一瞬の差を埋めるために、オレは足を踏み込む。

 

限界を超えるという言葉を再現するため、足の回転を速くする。

 

だが、それでもアイツにはまだ届かない。

 

──────残り、約50m。

 

内心でも少しばかりの疲労感が走りに影響を出しそうになったその時──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────綾小路くんっ! 頑張って!」

「負けるんじゃないわよ! 綾小路!」

 

 

 

ざわめく歓声の中、やけにハッキリと聞こえた二人の声。

 

ほぼ同時に宙に放たれたそれが、オレの足を更に奮い立たせる。

 

 

横目で、観衆を見る。

 

その中に、二人の顔が見えた気がした。

 

だから、心の中で応える。

 

 

──────任せろ(・・・)

 

 

 

 

 

 

「──────まさか、本当に俺を負かすとは思っていなかったぞ。綾小路」

 

 

レース中よりも更に騒がしい歓声に紛れながら、堀北の声がオレに届く。

 

負けたというのに、その顔はどこか涼しげだ。

 

 

「…………敗者には、もっとそれらしい顔をして欲しいですね。オレも大変だったので」

 

「はは。それは失礼したな。だが、俺は元来こういう顔だ」

 

「お堅いのは生まれつきらしい。ですが、楽しかったですよ。会長」

 

「俺もだ。これからの協力、頼むぞ」

 

「ええ。そっちも、例の件(・・・)、お願いしますね」

 

「ああ。任せろ」

 

 

 

 

──────固い握手をする堀北と綾小路を観衆の中から見つめる生徒が一人。

 

少し鋭い眼をした彼女は、彼を見ながらこう呟いた。

 

 

 

 

 

「ふ~~ん、あれが綾小路清隆。

 

 

 

 

──────期待はできるかも」

 

 

声は歓声に掻き消され、誰にも届かない。

 

だがそれでも、彼女はどこか近い人物を思い浮かべるような顔をし、決意を固めた。

 

 




伏線って程ではないけど、そろそろ坂柳方面での話が動き始めます
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