綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
次回くらいでペーパーシャッフル入ると思います
「はっ。お前らが堀北先輩が遺した最後の置き土産ってとこか?」
体育祭を終え、季節は秋を迎えた。
少し冷えた風が生徒の髪を揺らす十月二週目。
オレは──────
「────言い方が少々気になりますね。オレたちは、それぞれ能力を認められここにいます」
隣には、一之瀬帆波。
そう、来週には生徒会総選挙が行われ堀北学は生徒会長の座を降りる。
だからその前に、オレとの一つ目の盟約であるオレと一之瀬帆波の生徒会入りを実行したのだ。
「時期が時期だけにな。悪気はない、気にするな」
「ええ、そうですよね。次期生徒会長ともあろう方が、新規に入られて困るようなこと、する筈ないですもんね」
オレはあくまで無表情のまま南雲を捉える。
その瞳に映るのは、恐らく「不気味」という感情。
「あ、綾小路くん?」
「気にするな。それよりも、今日は堀北生徒会長はお休みですかね?」
オレは一之瀬の不安そうな言葉に素で返し、話題を戻す。
今日は、生徒会での仕事の説明などを彼と書記である橘から教えてもらう予定だったんだが。
「いや、そうじゃない。多分、そのうち来るだろう。それまでは、座って待っておけ」
「分かりました」
オレは生徒会室を見回す。
今いるメンバーは、南雲とその側近らしき人物が二人、加えて黒髪爽やかイケメンが一人。
だが、アイツだけは雰囲気が違う。
恐らく、他二人とは違う感情を南雲に抱いているんだろう。
オレと一之瀬は、二人とも書記という役職を与えられている。
だからなのか、席は端の方である。
「ねぇ、綾小路くん。やっぱり、私が生徒会に入れたのって君のお蔭だよね?」
「…………まぁ、推薦はした。だが、最終的に決断をしたのは堀北だ」
彼には目的がある以上、こっちの条件を飲まざるを得なかったが、と心の中で追加しておく。
事実、彼もオレも目的を達成できるのでWin-Winの関係だ。
「綾小路くん。一応先輩なんだから、敬語使わないと駄目だよ?」
「…………そうか。言われてみれば、そうだな」
話すときは普通に敬語を使っていたんだから、別にいいだろう。
まぁ、一之瀬にそんなこと言える筈もないが。
「──────というわけだ。だから、お前たちには南雲の動向を見張ってもらいたい。アイツの思想は危険だ。多くの者を、危険に晒すことになる」
誰もが去った後の生徒会室。
盗聴器や録音機器などが設置されていないことを確認してから、堀北は語り出す。
隣には、説明するために残ってもらった一之瀬がいる。
「…………そういうことだったんですね。でも、人を監視するなんて私には…………」
「心配はいらない。大体のことはお前の横にいる綾小路に任せてある。一之瀬は、自分が叶えたかった生徒会での活躍をすればいい」
「…………」
堀北のその言葉に、オレは特に反論はしない。
何故なら、それでも足りない程の依頼をオレもアイツに押し付けているからな。
まぁ、暗に脅したのもあるが、別にオレにとってはどうでもいいからだ。
生徒会の仕事も、オレなら一瞬で片付く。時間が無駄になることもないしな。
「そうなの? 綾小路くん」
「ああ。そういう契約だ」
「でも、私も出来る限り付き合うよ。南雲先輩がもし本当に堀北先輩の言うような人だとしたら、私は許せないから」
「そうしてくれ。じゃあ、俺が去った後の生徒会は任せたぞ」
「ええ」
「はい。頑張ります!」
…………南雲雅。
現二年Aクラスに所属し、過去に誰も為し得なかった「学年の統一」を唯一果たした男。
しかし、その実態はかなり杜撰なものだ。
もし、本当に彼が言った、いや、
後日・夜。
「──────で、あなたが綾小路ね?」
深夜、オレは気まぐれに散歩をしていた。
そしたら突然、声を掛けられたのだ。
相手は見たことのない生徒、恐らくAクラスかCクラスかDクラスの人間だろう。
「…………誰だ?」
暗がりではなく街灯の近くの為、顔は辛うじて見える。
黒っぽい色の髪に、よく育った身体を持っているな。
「─────Aクラスの神室真澄。あんたに話がある」
Aクラスか。
となると、坂柳からの刺客である可能性も出てきたな。
「…………言っとくけど、私と坂柳は無関係じゃない。でも、あんたの想像してるような関係でもないわ」
まるでオレの心を見透かしたような発言に、オレは疑問を持つ。
なら、何故オレに接触してきた?
一体、何の目的がある。
「…………なら、お前は何だ?」
「あんたに──────
──────坂柳有栖を倒して欲しい」
一瞬、時が止まる。
神室と名乗るその女子生徒が発した言葉が、オレを思考の渦に巻き込んだ。
「…………何故だ」
「理由はシンプル。私はアイツに、弱みを握られてる。で、色々雑用を押し付けられてるわけ。話を聞けばアンタが勝てば坂柳は自主退学してくれるらしいじゃない」
坂柳は、そこまで話しているのか…………
──────いや、待て。
ここで安易に事実を決めるのは性急だ。
これもすべて、坂柳がオレを嵌めるために仕組んだ何らかの罠の可能性もある。
「で、オレにどうしろと。アイツの得手であるチェス勝負を安易に受けろと?」
「いや、違うわ。私が言いたいのは、あんなヤツさっさと負かして欲しいってこと。だから、その為の協力は惜しまない」
「つまり?」
「私はアイツの側近、嫌だけど気に入られてるから聞けばある程度の作戦は話してくると思う。それを、私があんたに横流しにする。当然、証拠の録音はつけるわ」
──────素直に、いい案だと思った。
一応坂柳がどんな作戦を打ってきてもいいように手は回してあるが、それを事前にオレが直接知れるなら話が早い。
それに、証拠も付けると言っているしな。
「…………つまり、神室は坂柳を消せさえすればそれでいいわけだな?」
「うん。最近は、何か良からぬことを考えてそうだし、それを掴めればあんたが戦わなくても、潰せるかも知れないわね」
良からぬこと、か。
想像はつかないが、オレを潰す気で来てるのは間違いないだろう。
闘いさえすればそれでいいと思っていたが、状況が変わってきたな。
「──────なぁ、神室。オレがもし坂柳との勝負なんてする予定はなく、全て坂柳とオレが作り上げた物語だとしたら。この会話もすべて録音済みで坂柳に流すと言ったらお前はどうする?」
オレの問に、神室は冷静に答える。
「…………私とここで出会ったのは反応からして完全に想定外だった筈。加えて、私があんたを視界に入れてから、不審な動きは見せてない。両手見えてるし。だから、録音は不可能。試してるわけ?」
「─────ああ、お前の言う通りだ。お前を試した、だが合格だ。契約をしよう。お前はオレに坂柳から拾える情報すべてを流せ。些細なことでもいい。そしたらオレは、お前の裏切りを誰にも伝えない。二人だけの秘密にする。どうだ?」
「──────乗った」
?????
「──────することは可能ですか?」
「…………ああ。ポイントで何でも買える。可能だ」
「ふふ、それは良かった。でしたら、当然他クラスの──────」
「ああ。その認識で構わない」
「…………これで、全てのピースは揃いました」
「何を考えているんだ? お前は」
「そうですね。…………邪魔者の排除、ですよ」
「学校のルールに反するようなことはくれぐれもするなよ」
「分かっていますよ。…………
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体育祭の結果発表~~!
結果:赤組の勝利
学年内での順位
1位:Cクラス
2位:Bクラス
3位:Aクラス
4位:Dクラス
クラスポイントの変動
Aクラス:+50(赤組所属で+100、3位で-50)
Bクラス:-100(白組所属で-100、2位で+0)
Cクラス:-50(白組所属で-100、1位で+50)
Dクラス:+0(赤組所属で+100、4位で-100)
↓↓↓↓↓↓↓
Aクラス:1224+50 →1274
Bクラス:1141-100→1041
Cクラス:360-50 →310
Dクラス:210+0 →210
とうとう動き出したのは…………まさかの神室?!
そして綾小路×神室のタッグが坂柳に迫る──────