綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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皆気になってたDクラス、案の定だった模様


8話:覚悟

 

 

 

結局、具体的な対策は勉強会しか行えないまま、オレたちは中間試験を迎えた。

 

一之瀬や神崎も、どこか緊張した面持ちだったのを覚えている。

 

 

 

 

そして今日は──────中間試験の結果発表の日だ。

 

 

「大丈夫、だよね」

 

 

隣の先の一之瀬は、何処か不安そうに呟く。

 

まぁ、当然の反応だろう。

 

いくら比較的学力の高い生徒が多いと言っても、中には勉学が苦手な奴もいる。

 

そんな十人十色の彼らを率いると宣言した以上、責任は重く彼女に圧し掛かるだろう。

 

 

「気楽に行け、とは言えないか。だが、あまり気張らないようにな」

 

 

どうせ、今祈ったところで結果は変わらない。

 

もし今日この教室から誰かが消えることになっても、それを受け入れるしかないんだろうな。

 

だがオレは何処かで、そんな現状を──────

 

 

 

 

 

 

「──────は~~い、みんなおはよ~~」

 

 

自分の内面に疑問を持ち掛けたとき、タイミングよく星之宮が登場した。

 

その顔はどこかいつも以上に愉快そうだ。

 

 

彼女の顔を見て、隣の一之瀬も少しだけ安心している。

 

まぁ、自クラスから退学者が出ているのにあの顔って言うのは考えずらいからな。

 

 

「みんな気になってるだろうから、HRの前に結果発表と行きましょうか。はい、じゃ~~ん!」

 

 

そう言いながら、星之宮は黒板にポスターを貼る。

 

以前と同じ大きさのため、あそこに結果が書かれているものと推測できた。

 

 

 

 

「おっしゃ~~!!」

「やった~~!!」

「良かった……」

 

 

そんな声が、教室内に響く。

 

結果は──────全員、無事赤点回避だった。

 

 

試験科目として出た五科目のうち、三教科は平均点が七十を越え、二教科は六十点代だった。

 

が、最低点はいずれの科目も四十点代、焦る程ではなかったな。

 

 

「ホントに良かった…………」

 

 

一之瀬は、ようやく肩の荷が下りたのか安心しきった顔をしている。

 

 

「これも、一之瀬の勉強会のお蔭だな」

 

「そんなことないよっ! これは、皆が頑張ったからで…………」

 

「そうでもないさ。周りを見てみろ」

 

 

オレがそう言うと、一之瀬は周囲を見渡す。

 

そこには──────彼女の仲間が溢れていた。

 

 

「ありがとな一之瀬!」

「ありがとう一之瀬さん!」

「我らがリーダー!」

 

 

そんな声に溢れ、彼女を満たす。

 

 

「わ、私は何もしてないよ。だから、皆の勝利ってことでいいかなっ!」

 

 

その声に多くの者が賛同の意を示し、オレたちの平和な日常が戻ってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────かに思われたのは、その後数分だけだった。

 

 

 

一限目が始まろうというタイミングで、Bクラスの教室のドアが大きく開かれた。

 

神崎や渡辺とワイワイやっていたオレも、少しだけ驚き音のした方向へと視線を向ける。

 

 

その先には──────オレが先日遭遇した腹黒女・櫛田と他数名の生徒がいた。

 

恐らく、全員Dクラスの生徒だろう。

 

しかし、一体オレたちに何の用が…………

 

 

 

「──────突然でごめんっ! ちょっと話を聞いてもらえないかな!」

 

 

その中の一人、金髪のイケメンが焦った様子で口を開いた。

 

その姿すら様になるのを見るに、やはりオレはイケメンが嫌いだ。

 

オレだって必死に生きてるのに…………うぅ…………

 

 

 

「えーと、桔梗ちゃんだよね。何かあったのかな?!」

 

 

多くの者が突然の事態に困惑している中、我らがリーダーが率先して口を開く。

 

彼女らは友達だと以前言ったが、どうやらオレの想像は間違ってなかったらしい。

 

 

「………名乗り忘れていたね、僕は平田洋介。一年Dクラスに所属してます」

 

 

やはり、こちらの予想も当たっていたか。

 

 

「で、実は僕たちDクラスの生徒が、今回の中間試験で八人も赤点を獲っちゃったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「─────だから、プライベートポイントを貸して欲しいんです!」

 

 

 

 

平田の言葉に付け加えるようにして言われた櫛田の言葉に、オレは困惑した。

 

この学校において、他クラスにプライベートポイントを貸すなどあり得ないからだ。

 

 

ポイントは、この学校という舞台において非常に大きな役割を持つ。

 

だからこそ、彼らも「プライベートポイント」を要求してくるのだろう。

 

つまり──────有用性についてある程度察している、というわけだ。

 

 

 

「えーと、なんでプライベートポイントなのか聞いてもいい?」

 

「今朝、発表と同時に茶柱先生が言っていたんだ。『もし退学者を救いたいのなら、2000万ポイントが必要だ。が、‘‘試験の得点’’を一点につき五万で売ってやらんこともない』って」

 

 

社会の日本史担当の教師・茶柱佐枝。

 

普段の授業では極めて真面目。 が、オレたち生徒に一切興味を示さない。

 

綺麗な見た目と素晴らしいボディが相まって、男子生徒の一部からは人気のある教師だ。

 

ん? オレか?

 

──────勿論、大好きだ。

 

 

「一点を五万ポイントで…………えーと、今のところ退学になりそうなのは七人って言ってたけど、足りない点数は全員分合わせると何点になるのかな?」

 

 

まさかとは思うが、くれてやるつもりじゃないよな? 一之瀬。

 

いくらお前が優しいからと言っても、流石にないだろう。

 

だって、メリットが一つもないからな。

 

まぁ、作ろうと思えば別だが、彼女はそういうことをするタイプじゃない。

 

 

 

「七人合わせて…………246点になるよ…………言いずらいんだけどね…………」

 

 

平田は、バツが悪そうにそう言った。

 

 

「合わせて1230万ポイント…………ごめんだけど、私たちBクラスの全財産を足しても、足りないや」

 

 

一之瀬も、流石に断るらしい。

 

そもそも、赤点が七人ってなんだよ。 普通に勉強してたらそんな点数は獲らんだろう。

 

一体、何を腑抜けたことを言っているのやら。

 

 

 

「烏滸がましいことも重々承知だ。でも、僕は皆を助けたい。だから、どうか!」

 

 

平田に続き、その後ろにいる者も櫛田も含めて頭を下げた。

 

が、無理なものは無理だ。

 

 

 

 

 

「─────いきなり教室に入ってきて、ポイントを貸せだと? あまりに都合が良くぎるんじゃないか」

 

 

 

ずっと黙って聞いていた神崎の、堪忍袋の緒が切れた。

 

少しだけ苛立ちを見せ、席から立ち上がる。

 

 

「それも、分かっているつもりだよ」

 

「ならせめて、その点数が足りてない者たちが来るべきなんじゃないのか? 誰かも知らないお前が頭を下げたところで、正直心は動かされないぞ」

 

 

他のBクラスのメンバーでは決してできない言葉で、平田を責めたてる神崎。

 

その様子に、一之瀬も思うところがあるのかだんまりを決め込んでいる。

 

 

 

 

 

「わりぃ! 俺だ、その足りてねぇやつってのは!」

 

 

 

平田の後ろに紛れていた一人の男子生徒が口を開いた。

 

赤髪に高身長、ガタイもいいところを見るに運動部だろうか。

 

 

「オレもだ!」

 

「私も!」

 

「俺もだよ!」

 

 

そのまま、元から来ていたと判明した七名が名乗りを上げる。

 

流石の神崎も、少し驚いているようだ。

 

 

 

 

「…………まぁ、いい。が、先程も言った通り、俺たちのポイント全額をお前たちに渡しても、足りないんだ。だから、全員を助けることは出来ない」

 

 

少しだけ神崎の態度が軟化するが、現状は変わらない。

 

 

「知っていると思うから言うが、俺たちは一之瀬にプライベートを集めている。が、その合計は未だに約160万。つまり、全額をお前たちに投資したとしても買えるのはたった32点だ」

 

 

その言葉に、Dクラス全員の顔が沈んだ。

 

正直、もっとあると思っていたんだろうな。

 

先程までは多少明るかった櫛田や平田の顔も、見るに堪えないものに変わっている。

 

 

「もし、今この場で絶対に今後借りたポイントを返す、そして今後Bクラスに協力するという条件を飲めるのなら、多少は俺がクラスの者を説得してもいい」

 

 

神崎は、あくまで見返りを求める。

 

が、この状況は一之瀬の精神衛生上あまりよろしくないだろうな。

 

 

 

 

 

「──────待ってよ。神崎くん。桔梗ちゃんたちは困ってるんだよ?!」

 

 

 

今度はずっと座り込んで話を聞いていた一之瀬の堪忍袋の緒が切れる。

 

ここからは、彼女のターンだ。

 

 

「ああ。確かにそう見えるな」

 

 

一之瀬がいつにも増して熱くなっているのは分かるだろうに、彼は態度を変えない。

 

あくまで、自分の意見を曲げる気はないのだろう。

 

 

 

「─────だったら、手を貸してあげるのが当たりm「少し前の自分の発言を忘れたのか?」

 

 

 

一之瀬の言葉を遮るように、神崎が口を開く。

 

その言葉には、明確な圧が込められていた。

 

 

 

「えっ?」

 

「お前は、俺に言ったな。『私は皆とAクラスに上がるために、全力を尽くす』と。その言葉は、噓偽りだったというわけか?」

 

 

 

確かに、オレもその現場を横で見ていた。

 

プライベートポイントを一之瀬に集めようという流れの中、ただ一人意見した神崎。

 

覚悟を問う彼に対し、確かに一之瀬はあのように返してい筈だ。

 

 

 

「それは…………」

 

「今ここでDクラスにポイントを貸すという行為は、明らかにAクラスを目指す上で不要だ。いや、今後を見据えるなら敵を増やす売国行為に該当するだろうな」

 

 

Dクラスとはいえ、敵は敵。

 

確かに、何か一芸に特化している生徒が赤点組の中にいる場合、自らBクラスの危機を招きかねない事態となる。

 

そこまで見据えているのか、神崎は。

 

 

「でも、困っている人を見捨てるなんて私には…………!」

 

 

一之瀬も負けじと反論する。

 

が、彼女の意見には一切論理が伴っていない。

 

明確なメリットも提示できず、感情論でしかものを語れない。

 

今の一之瀬は、明らかに普段の冷静さを欠いている。

 

 

 

「そもそも俺は、見捨てるとは言ってない。今後Bクラスに敵対しないことと返済の完遂を契約で誓えるのなら、数名は救っても良いと言ったんだぞ」

 

 

そう、今回の論点はここにある。

 

話を簡単にするのなら「無償で助けるか、有償で助けるか」の話。

 

これだけ見れば、どれだけ一之瀬が甘っちょろいことを言っているのかが浮き彫りになるな。

 

 

 

「僕たちには、誰かを犠牲にすることなんて…………」

 

 

論争も佳境に入ってきたところで、平田が水を差す。

 

 

「なら、七人仲良く退学するしか道はないだろうな。最初の様子を見るに、他クラスは無理だったんだろ?」

 

「残念ながらだね…………」

 

 

神崎の容赦ない言葉に、平田の顔が曇る。

 

 

「…………綾小路は、どう思うんだ?」

 

 

 

突然、舞台の役者から傍観者へ話題が振られる。

 

オレは一瞬戸惑いながらも、周囲の視線に耐えれず口を開く。

 

 

 

 

仕方ない、か。

 

この生活を守るためにも、少しでもクラスをいい方向に軌道変更させるべきだ。

 

 

 

 

 

「オレは─────

 

 

 

 

「綾小路くん…………」

 

「綾小路」

 

 

 

二人の視線も、自ずとオレに向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────神崎の案に賛成する」

 

 

Bクラス綾小路くんのヒロイン候補

  • 一之瀬帆波
  • 網倉麻子
  • 小橋夢
  • 白波千尋
  • 姫野ユキ
  • 神崎隆二
  • 柴田颯
  • 渡辺紀仁
  • 堀北鈴音
  • 軽井沢恵
  • 櫛田桔梗
  • 龍園翔
  • 椎名ひより
  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 綾小路にヒロインなんていらねぇ!
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