“人生の試練”と戦い抜いて、勝利を収めた男達の物語。 作:アロンの杖
“武井 亮太”は中々の“オタク気質”で体型は太っちょ、眼鏡を掛けている(当時)29歳になる青年だった(ちなみに身長は172cm位はあった)、と言っても別に彼はブクブクと太っていた訳では無い、中学高校は“柔道部”と“相撲部”を掛け持ちしていた上に、勉強にも励んでいたから理知的で逞しく、全身が屈強な筋骨の塊だったのだ(これは実際に“相撲部”にいた人ならば解ってもらえるだろうが一見、肥えてはいてもその実、力士の体は頑丈な骨格と分厚い筋肉で構成されており、力比べ等をしても私なんか彼の足元にも及ばなかったのである)。
ちょっと内向的で融通が利かないと言うか、頑固なところがある武井はしかしかなりの努力家で優しく、また言うべき事はキチンと言える性格をしていた為に学生時代から頼れる兄貴分だった(武井と初めて出会ったのは大学時代なのですが、彼はその頃から“公務員”を志していたのです)。
で、大学の成績はほぼ全て“優”で占められており、その後の頑張りもあって大学入学から数えて足掛け7年で見事に“地方公務員”の資格を取り、晴れて隣町の市役所に勤務をする事になったのだが。
そこの“徴税課”に配属された辺りから武井は試練の連続に見舞われる事となった(彼は真面目で暖かい性根の持ち主であり、本当は“福祉関係”の課に配属されたかったそうでして、そう言う事もあって次第に仕事に対するストレスを溜めて行きました)。
切っ掛けは些細な事だった、その当時の武井は実家を出て職場から少し離れた町にアパートを借りて一人暮らしをしていたのだがある休日の午後、アルコールを嗜んでいた彼の耳元に外から“おい、止めようぜ?”、“大丈夫だって、バレはしねーから!!!”と言った声が聞こえて来たらしい。
彼曰く“声の主は中高生位の男子だった”との事で、後ほど声がした付近を見回りに行くと道路側に面しているアパートの塀の上に小さなゴミが置かれていたそうである(彼の部屋は道路側に面しており、またアパートは壁が薄くてちょっと大きな声を出すと隣近所に筒抜けだったらしいのです)。
会社での鬱憤が溜まっていた武井はそれを見て“ガキ共が”、“小癪なんだよ!!!”と思ってそれを払い除け、道端にはたき落として部屋に帰宅したところ、またさっきの男子学生二人の声が近付いて来てとうとう家の前までやって来た、そこで。
恐らくは自分達が置いたゴミが落とされているのを見て驚いたのだろう、その日は黙ってスゴスゴと帰って行ったらしいのだがその翌日から夜半(特に武井が帰宅して暫く経った位の時刻)になると毎日のようにその道を通るようになり、しかもその度にわざわざ彼の部屋の前で立ち止まって話をするようになったのである(要するに“おちょくり”に来ていたのだ)。
そんな事が続いたある日、彼は外に出て行って男子学生らを注意し、併せて男子学生らが通っていた中学校にも電話を入れて注意をしてくれるように促したのだ。
その結果、男子学生らは以降はその道を通らなくなったらしいが今度は彼等の先輩連中や“OB”に目を付けられ、それから武井に対する執拗かつ凄まじい嫌がらせの日々が始まった、彼等はどうやってか毎日のように武井の仕事先や買い物に行くスーパーマーケット、果ては休日に出掛ける気晴らし先に先回りして“デーブ”、“死ねよ”、“バカじゃねーの?”等と悪口を言ったり嘲笑ったりしては去って行く、と言う事を繰り返すようになっていった(しかも武井曰く、“絶対に自分達の姿を見せないようにしてこっちに悪口だけ言っていなくなる”と言う事を繰り返していたそうです)。
最初は“気のせいだろう”と考え、特に気にしていなかった武井であったが流石に1ヶ月もの間、同じ事が続いた為におかしい事に気が付いた、しかしこの時点で彼には相手の正体に心当たりは無く、かつまた証拠が無かった。
だけど悪口だけは毎日のように言われ続ける、そんな毎日を送る内に武井は徐々に悶々とした日々を送るようになっていった、そんな時だ。
“誰に手を出したか解ってんだろーな?”
“テメーが自殺するまでやってやるよ!!!”
ある晩、電気を消してウトウトしていた武井の耳元に外からそんな声が響いて来た、それは紛れもなくあの男子学生らのモノでありそしてその瞬間に武井は気が付いたのだ、“敵はあの男子学生の仲間や先輩連中に違いない”と。
彼等は下は中学高校生~大学OB、果ては社会人で構成されており武井と同じように自動車を乗り回している者達もいた、しかし。
彼等がどうやって自分の行く先々にピンポイントで現れるのか、どうやって四六時中正確に付き纏い、悪口を言って来られるのかが解らなかったのである。