“人生の試練”と戦い抜いて、勝利を収めた男達の物語。 作:アロンの杖
武井が地元のギャング団に嫌がらせを受け始めてから半年が経とうとしていた、この間彼は本当に苦しそうにしており会った時にはゲッソリとしていた事を覚えている←“ずっと粘着されて心が休まる暇が無い”との事だった。
“アイツらが憎い、忌々しい!!!”
“悔しさと怒りで頭がおかしくなりそうだよ!!!”
武井は私にだけはそう言って本心を打ち明けてくれていた、武井曰く“親や親友達に相談しても誰も信じてくれなかった”と言うモノの、かく言う私も最初は半信半疑だった。
だけど。
武井のただならぬ様子から“嘘を言っているようには思えない”、“なんだかこのままではヤバい気がする”と感じてとにかく出来る限り電話で話を聞いたり、またあるいは度々会うようにして様子を見ていた(ちなみに私が見た限りではそう言った“ギャング団紛いな連中”が彼に纏わり付いている様子は見えなかったが当時、私が懇意にしていた霊能力者の人に相談して見たところ“十数人位の変なヤツらが見える”、“かなりしつこく絡み付いているな”との事で、それが決め手になって武井の言葉を全面的に信じる事にしたのだ)。
だけど武井はある日を境にドンドン憔悴して行っているのが解った、特に粘着されて1年を超えた辺りから“気力の衰え”と言うモノがハッキリと現れ始め、流石に心配になった。
後から話を聞いたところではその間、彼は何度か“自殺未遂”を起こしていたらしく、明らかに途方にくれたようになっていた。
それでも。
「俺は絶対に自殺はしない!!!」
1年半が経過した頃、少しだけ正気を取り戻した様子で武井は興奮気味に、私にそう告げて来た。
「自殺未遂をしてみて解ったよ、自殺って言うのはな?自分で自分や神さんに“さよなら”をするのと同じ事なんだ。自分を一番愛してくれる存在の、その暖かな思いを裏切るのと同じ事なんだ。こんな悲しい事は絶対にやっちゃいけないんだ!!!」
“俺だけは自分の事を最後の最後まで守ってやるんだ”、“仮に親や友人を敵に回そうともな!!!”
そう言って武井は再び奮起した、そしてその日を契機に状況は逆転していった、彼は遂にギャング団がどうやって自分を追い回しているのか、と言う事に気が付いたのである。
それは“スマートフォン”への不正アクセスを利用した“位置情報の勝手な取得”及び“画面や音声の盗視盗聴”であった、ちなみに武井がどうやってこれに気が付いたのか、と言うと武井は以前からネットで携帯小説を投稿していたのだが、彼の話が更新される度に“デブが”、“死ねよ”と言った言葉が聞こえるようになって来た(らしい)。
で、“これは幻聴なのか?”、“遂に俺も頭がおかしくなってしまったのでは”とか思いつつ私に相談して来たのだが、それに対して私が霊能力者から答えてもらった事をそのまま武井に伝えたのである。
「君はね?ある程度の“霊感”があるらしくてね。それで相手の声が“霊的なモノ”として聞こえているんだそうだよ?」
「・・・・・」
それを聞いた武井は一気に事の真相に気付いたと言う(つまりはスマートフォンが盗視盗聴されており、それで自分が携帯小説を投稿している事を知ったヤツらが冷やかしに来ていたのだ、と言う事を看破したらしい)。
「このままではアイツらに良いように
「どうせ死ぬならビクビクして終わるんじゃなくて、最後の最後まで人間らしく戦って死んでやる!!!」
追い詰められた事で逆に腹を括った彼はまず、スマートフォンのメール機能を使ってギャング団に対して“タイマンしてやるから出て来いよ”、“1対1の武器有りでやり合おうぜ?”等と通達した挙げ句“勝てば警察行きで負ければ即死だ、それでいいだろ?”と締め括ったのだそうだ。
「アイツらが見ている時は、感覚で解るんだよ」
以下は武井が言った言葉である(解りやすく要約して伝える)。
「アイツらが見ている時はな?何となく“誰かに見られているような感覚”がするし。それに何かすればすぐに“デブ”とか“死ね”とか聞こえて来るから、それで解るんだ!!!」
それを利用してスマートフォンの盗視盗聴を逆手に取り、“間違いなく見られている”と感じたタイミングで何度となくギャング団を挑発したり、挑戦状を叩き付けたりしたそうなのだが、結果は無しの
それどころか挑発を繰り返す度にギャング団の“おちょくり”は目に見えて減って行き、今は事実上“沈静化”してしまったそうである。
「アイツらはさ?要するに弱虫の卑怯者なんだよ、ただの腰抜けのヘタレ野郎共なんだ」
久方振りに再会して飲みに行った際に、武井が教えてくれた。
「アイツらが食って掛かれるのは自分達より立場が弱くて大人しい人間に対してだけだ、しかも1人に対して集団でな。だけど俺のように腹を決めて猛然と反撃して来る人間には手も足も出せずに退散しちまいやがった、“薄汚い計画”を“上手くやる”事は出来てもいざという時に命を懸けて戦う覚悟は持てないヤツららしいぜ?現に俺は無傷でピンピンしているだろ、それが何よりの証拠だよ!!!」
以前のように生気が蘇った顔で、ちょっと得意満面そうに語る武井の面構えは、更に逞しいモノになったように見えた。
今の武井は結局はアパートを引き払って実家に帰り、昔のように落ち着いた生活を取り戻す事に成功した、彼はギャング団に勝った上に“人生の試練”を一つ、乗り越える事に成功したのだ。
注)実はスマートフォンの違法ジャックや盗視盗聴は(技術と知識さえあれば)その気になればその辺の中学生でも出来る程にまで簡単な事らしいです←恐らくはギャング団の中には“工業高校”とか“ITデザイン校”の出身者がおり、“ソイツの入れ知恵だろう”と推測されます。
更に武井の話を聞いているとその手口も解って来ました←ギャング団は恐らくは最初は“Wi-Fi”を使ってインターネット回線から武井のスマートフォンに侵入し、その後は電脳空間上に“バックドア”を形成させてそこから自由に出入りしつつも違法ジャックを繰り返していたのだろう、との事です(武井は最初はスマートフォンを“Wi-Fi”に繋げっ放しにしていたそうでして“多分、そこから侵入されたのだろう”と思われます←“Wi-Fi”は電波の周波数帯が7つか8つに限定されている為に“比較的容易にそうした事が出来るのだろう”との事でした)。