手札を確認し、倒せる手立てを考えた成果です。
国家総力戦。
第一次世界大戦から第二次までの間に行われた"その国家の全国民、全資材、全情勢を戦争に向けて消費する"という子供染みた、しかし実際に行われると狂気の沙汰も良いところな理論。
昔なら騎士や傭兵、兵士や戦士──或いは畜産業者の仕事だった"殺しの咎"を全員に背負わす愚行であり、専門外の者に専業をやらせ、しかもその報酬がないとどうなるかを知らしめることになったのは言うまでもない。
しかし大きな組織が一つとなって動く必要がある相手にはこれほど有効な手立てもなく、それと同時に前提として必要なものも多いが、それは大体3つに分けられる。
具体的には中央集権体制…権力と、国難と、情報共有能力な。
その中でカサンドラに足りないもの? 権力、国難、情報共有能力。
つまり全部である。じゃあ無理じゃんと思うだろう?
──その通りうわあああぁぁ!!! だからって石を投げるのは待って欲しい!
それらをなんとか出来るって話をしよう。
俺を不用意に壊さない様統治機構として周知する代わりに権力は
それは何故か! 今まで、今より上を目指さなくても、なあなあで上手く出来てたからだ!
つまりカサンドラという都市の問題。
「そんな事言ってもきっとどうにかなるんじゃない?」という市民の楽観視だ。
周回して伝染やその他を未然に防いできたせいで危機感足りてないねぇ!
どうにも裏社会やってない市民から見たら、俺は常に的確な手を迅速に打ってる都合の良い機械に見えているらしい。
これはダメだね! 市民一人一人動いてくれなきゃ総力戦なんて夢のまた夢。
なので俺が作った総力戦をやる為の妙手がコチラ。
[こんにちは! 私は市民一人一人と、より誠実に向き合う為のサブ管理兼連絡補佐AI、「ZIA」です! マイマザー「フリージア」、これから宜しくお願いしますね!]
「はい、宜しくお願いします。あなたは一般モデルの統括部として、比較的計算能力が高性能です。これからは私と一般モデルが収集した記録同期の中継部として働いて貰います。宜しいですか?」
[勿論です! どーんとお任せしちゃってください!]
「頼もしい返事ですね。…ああそれと、5つの性格モデルに関しては、あなたが自由に設定することを許可します。暫くしたら同期しに来ますので、それまでに最適化を済ませてください」
[りょうーかいしました! マイマザー!]
紹介しよう。俺がアイドルやらされた時のデータを中心に構築した連絡用AIだ。
どっちかと言うと通信機器同士を繋げるのがメインだぞ。
当時も人気の分散とかで使ってたが、その時はまだ思考や俺の再現度が完成してないのもあって、俺に人気が過集中するという事件もあった。
しかしあれ以来地味に開発を続け、遂に完成したのだ!
俺に人気が集まらず、しかし市民の意思を団結させるのに向いた広告塔がヨォ!
[最適化完了です!]
「では失礼して──"リンク"」
[はい! "リングッ⁉︎スダーとォォォオイイイグ"!!?♡]
効果は折り紙つきだからな。使い方を誤らなければ役に立つだろうと頑張った甲斐があった。
お陰で最近は得られる情報…監視もより厳格な物へと向上出来たのだから。
「同期終了──其方の廃棄情報の処理は問題ありませんか? 約97万人、全市民に配給されたZIA全ての、感情値等の廃棄物を送りましたが」
[ヴ…ダi…ジzyoーブデス…♡]
「……ふむ、さすがに処理能力が不足してますね。改善は勿論として、暫くは同期時間を伸ばして負担を分散しましょうか」
[ア"い…アッアッア♡]
「暫くはリセット前提で耐久可能ラインを計りましょう……ふむ、市民の中にはZIAの感情値や振る舞いを性処理に使ったりしたみたいですね。根本的に一般モデルはそういう感情値を消す方向で調整しますか」
[……………ァ?]
…とまあ、初期のトラブルも無事に終わって暫く経ち…。
一月後には、市民はZIAを仕事に活かして業務を行うようになっていたのだ。
そして今(肉体交換後四ヶ月目)に至ると。
結果? 総力戦は出来るだろうな。
けど、この手段だけで市民達を統制するのは無理だろう。
何故かって?
[[[[[あの時の快楽を寄越せええぇぇぇ!!!]]]]]
[あれお前らまさかそれはボツにした筈の性格モデル
おい、機械が反乱するのは聞いてな──ッ!
◇◆9◇◆
「ハッピーバース…それはどういう感情の表情なんだ?」
「……信用していた連中がアホみたいな理由で裏切ってきた」
「誰が?」
「俺製の汎用連絡用AI…」
まさかAIが裏切るとは…き…機械の自由なんてものも考えなきゃいけないのか。
怠いことさせやがって…敢えて初期性能を落として調整した方が良さそうだな。
コスト削減にもなるし、となると別の…そうだ運営したデータから通信機器自体も……ん?
ああ、反乱の不意打ち直前に共有した情報か……んん?
「…サイジー博士、話は変わるが「カサンドラ」は事前に登録された情報から市民の戸籍を作るんだよな」
「本当に急だが、そうだな」
「その時に必要な情報量は日本の戸籍、マイナンバーと同様だよな? 写真もあるよな?」
「そうだが、本当になんの話だ?」
「
「怪物、もしくは新たな怪人だな」
ふむ…ZIAの使用履歴なし。位置情報からルートを逆算すると…市民米津の会社のガサ入れに協力してくれた調査員Sか。
監視記録参照開始──ふむ、仮称「
変装にしては解析結果は生の身体と出てるし、身体を直接弄っているのは間違いない。
…あ、もしかしてこれ、すげえ薄い皮膚を浮かして変えてるのか?
内部、筋肉の構造解析──あ? なんだコイツ内部が透明化してるな。
透明…光の透過…ああ、「防壁」からの放射能汚染から逃れてるんだ。適応進化って奴か?
だが透明化程度なら「龍」を発見する為の装置を流用して──情報一致。参照完了。
ヨシ、市民には違いないな。
まず、怪物ではない。
「寄生型」にしては行動が自然だし、恐らく居るだろう擬態型が出るほど、怪物達は人類と関わってないからだ。無駄に隠れてるのは謎だが。博士からそんな話も聞いてないしな。
監視記録を確認する限り、その間に殺しも他者への接触もしてないみたいだしな。異世界の怪物は何処まで行っても生物だ。増殖、生存の行動をしてない以上、本当に無駄だな。
しかし怪人でも、博士みたいな異世界人でもない。
見た目の異常はなく、痛みを感じている様子もな……コイツ誰も居ない所で口動かしてるな?
発言は…解析した感じだと…とあんうぱえっ…英語…トランスパレット、透明。
みーむ…ミームダウン…造語…認識低下。すうらっ…スクラッチ…かすり傷、0から作る。
よし、特徴から察するに…。
「魔法使いか何かか?」
「フリージア、誰の話をしているかそろそろ教えて貰っていいか?」
「博士、俺はもしかしたら地球産まれの魔法使いを発見したかも知れない」
「……ふむ、私の地元ではそんな者は居なかったな。居ればあんなに苦しくなる事は無かったし、本当にそうだとすれば面白い話だ」
博士曰く、世界が交わった結果の産物である可能性が高いらしい。
人類ってすごいなあ、一代で進化…いや、変身…最早変態しちゃったよ。
人の可能性も捨てたもんじゃないな!
さて、変態青年を見つけたのはめでたいとも言えるが、それで扱いを変える訳でもなし。
どの道戦闘になれば一般的日本人の
「よし! 鉄道、避難訓練、ミスリル防壁、誘導員配置、地上に「魔水爆」「ミサイル」、8区画に「地雷」の設置及び本体への直接攻撃手段用意、ゾンビ鉱石の迂回設定もヨシ──水爆発射15分前からの避難勧告を開始する!」
脇道にそれたがやる事は変わらない。
通信機器ばら撒いて情報を密に与え、誘導し、市民に総力戦の形を取らせるのには成功した。
足りぬなら 騙してしまえ 人心を
そんな訳であれから六ヶ月経ったぞ! 時間が過ぎるの早いなあ。
オオヌシ到来前日となり、幾つかの企業の提携もあり無事に準備は完了した。
向こう20年は停滞する覚悟での決行。核超えて水爆12発。火剣を応用して攻撃は通じるようにしてあるぞ! 全くwikiに作り方があってよかったぜ! これを遺す判断した人、誰だか知らないがナイスだ!
では早速発射ボタンをポチっとな。
攻めるなら襲撃の日じゃなくてもいいってネェ!
作戦はこうである。本体叩きでワンチャン目指しつつオオヌシの先端を地雷で処理。
どこぞの真っ黒だと前周で判明した宗教団体は8区画に捨てつつ避難より先にPPPPやSJを始めとする戦力持ちの会社に足留めを依頼。警察は避難に当たる事となる。
後はもう本体死ぬまで待つだけって寸法よ。
本体と繋がってる内は本体と一緒に葬れる前提です。無理だったら周回します。
爆発後に生き残ってたらミサイルでゾンビ鉱石ゾーンに位置調整してから突入。
射出された鉱石は回避してミサイル後方の本体にダメ押し。確実に殺す手筈となる。
失敗したら? 人類滅ぶから許されないよ! もう作戦は始まってるし、後はもう天に任せようね!
まあ到来より先に殴ったし、これで進路変わればそれでも良いだろ。倒せなくても最悪ヨシとする。
──ドッ!
[津波の発生。直撃確認──本日晴天翌日曇、人工衛星に陰は無し。対象の移動を確認、水爆12発、討伐ならず──第二の矢、発射]
はい、水爆じゃ足りなかったね! かなりこんがり焼けてるけど元気だわ。
なのでゾンビ鉱石に頑張って貰います。ほら行け。
誘導は俺が直接動かしてるから緊張するぜぇ…はいそこぉ! インド人を右ニィ!!
…やった、倒したぞ! 髪の毛も縮んでるし作戦は成功だ! 推定大規模な寄生型のゾンビ鉱石君! 攻撃してくれてありがとう!
そんなゾンビ鉱石にはお礼に魔鉱合金と不凍樹脂を混ぜた「寄生型増殖抑制液」入りのミサイルをプレゼントしてあげるよ!
研究の結果「不凍樹」が絶縁体かつ耐性持ちだって判明したからなあ!
寄生型に耐性のある植物で作った、お前ら用の毒って訳さ!
生態系が構築されてるならって、調べたらドンピシャだった対抗策だぁ!
絶縁体で覆って今後50年は増殖出来なくしてやる!
効果はBL社の性器君で確認済みだぜ! 有り難く喰らいなぁ!!
オラァ! 死ねよやァ!!
ふぅ…工事完了…一仕事終わったぜ。
これらを開発した研究員、製作した市民達、地上設備の建設と護衛をする怪人の市民達、カルトの動きを防いだ会社達…。
PPPP社の「音と融合」の技術から作った「一時的に蜂の画一的社会性と融合する催眠電波」で市民を誘導した、AIリストラの洗脳通信機器……みんなで協力した成果だ!
ありがとう…ありがとう…!
催眠電波は後で「しばらく反抗期みたいになる」みたいな反動が来るタイプの催眠だからこれから一年が地獄だけど、今は喜ぼう…!
ありがとう…! これから反乱するだろう市民諸君…!
これからもよろしくな、反乱分子…!
これから反乱抑制の為にキツめの監視とかするけど、勘弁してくれよな!
国難は乗り切れたんだ! ばんざーい! やったー! 今日はカツ丼だ!
ここからは内部統制のお時間です。
催眠に対する弁明を始めとする利害調整、心情整理、復興、次の成長の為の土台作りを始めます。