悪役人外TS転生「ディストピアAI」   作:何処にでもある

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 人口が多いということは、野生の偉人、超人、英傑、怪物が出てくるということです。
 では、ちょっと先の光景を。具体的には9→10の周回して最適化した後の議会。




上手く踊ってください #14

 

 

 カチンと8時を知らせる時計に、ピクリと黒毛の犬耳が反応した。

 

「─‬‭─‬これより、第一回目の議会を始めます。進行は僭越ながら私、「ペットショップ」モデルが務めさせて頂きます。よろしくお願いします」

 

 礼儀正しく会釈をして、黒白のチェック柄…カサンドラの‬管理AIのトレードマークをイメージとしたチョーカーに取り付けられた、チェスのポーンをイメージとした鈴が鳴る。

 神経質な印象を受けるキッチリとしたスーツに合わないそれは、彼女が管理AIの物‭─‬‭─‬公共の施設であると証明するものだった。

 

「…………」

[皆様、よろしくお願いします]

「業、だな」

「ふうむ…」

「ほうほう、この子が噂の…」

「こんにちは。よろしくお願いします」

「どうも。では早速始めて頂戴、此処にいる全員の時間が貴重なのだから」

 

 各自が返事をし、最後に女性の代表が先を促す。

 ……一名ダンマリな者も居るが、それを咎める者はいない。

 それもそうだろう。彼は今までこの都市、カサンドラを支配し続けた者。それに楯突く程、他の者は愚かでも無かった。

 

「そうですが、何事も初めは説明を聞くべきです。進行の流れ、本日話す内容は事前の通りでは有りますが、改めて説明、再確認させていただきます」

 

「あのねぇ……いえ、初回だもの、念の為にやりましょうか」

 

「ご理解感謝します。では簡潔ながら‭─‬‭─‬」

 

 女性が周囲をチラリと見て、不用意に注目され過ぎるのを回避する。

 彼女が言っているのは尤もだ。この場に居るのは全員、この都市では重要な人物として扱われる者ばかり。

 

 カサンドラ管理AI「フリージア」

 去年全市民に対する洗脳を行い、嘘か本当か分からない外敵との戦闘の為に8区画を潰した、悪性の機械だ。

 

 6年間統治者(コンダクター)としてカサンドラを手中に収めた「楠木冬馬」

 そんな機械を相手に好き勝手…それこそ、世間ではペットショップは彼の趣味で生まれたとはもっぱらの噂である。

 

 その一人と一機に加え、新たに統治の席に着いたのはこれまで自力で身を高めた者ばかり。

 誰もがこの混沌とした都市で市民の一票を勝ち取り、代表に選ばれた者だ。

 先ほどペットショップに反応した順に紹介しよう。

 

 SJ社代表「マイ・アンクション」

 46歳男性。日本とイギリスの傑作。血筋を辿れば日本財閥とイギリス貴族が婚約し、その他多数のアスリート達を先祖に持った、生まれながらの勝者。

 持ち前のカリスマで外への進出を目標に、票を勝ち取ってみせた。

 

 NEET社代表「李白(りはく)

 50歳男性。華僑の流れを汲む者であり、統治者(コンダクター)に追いやられた裏社会の者達を一つにまとめた者。名前に負けず芸歌に精通し、既に美術展を始めに都市の文芸の流通を支配した。

 芸術の更なる開花と同人即売会、かつての名作の再生を目標に、土地代の代わりに票を脅し取った。

 

 PPPP社代表「エミリア・ホフマン」

 29歳女性。ドイツの農家兼養蜂家(ようほうか)兼元森番の産まれの一般女性でありながら都市の治安の悪さを憂い、その一心で治安維持を経営化した女傑。最近は孤児院の経営を画策中。

 より秩序のある社会を目指し、今までの積み重ね、信用により票を得る。

 

 日本代表「陛下」

 81歳男性。日本人其の人であり、宮内庁の尽力によりカサンドラに家族と共に避難し、今日に至るまで一市民として労働に勤しんでいた老人。年齢や時勢もあって代表になるつもりは無かったが、周囲の説得により立ち上がる事となった。

 今よりも良い明日の為を公言し、主に日本人から票を得る。

 

 市民代表「オビリア・カンリフ」

 37歳女性。この一年で頭角を表した女性であり、風俗を始めとする性関係の仕事を統括し、()()()()()()()()()()価値観を明けすけに語る女性。その正直な語り口と公約は非難を受け易いものだが、本当は欲しいという者達の……全市民の63%から票を集め、堂々代表に選出となる。

 要求は管理AIの権限を全て人類に譲渡。避妊政策の撤廃。「ペットショップ」の生産停止及び性的道具としての再生産。第一区画の()()()()()の排除、及びリソースの再分配。配給食を天然物のみに変更。特別待遇権の作成……その他、無数。

 

 以上の7名を待ってして、これからは人類の方舟の舵取りを行う事となる。

 その記念すべき第一回は‭─‬‭─‬ペットショップの確認から始まった。

 

「この議会の役目は大きく分けて3つ、人類社会の継続の予算決定…「公共としての必要分の決定」とその上で余った余裕…「人類社会への投資」、最後に「法の追加と改訂」があります」

 

「要は行政と立法ですね。司法に関してはフリージア‭─‬‭─‬の、更に独立したプログラムが執り行ってますので、議会でそちらは弄れないとお考えください。そこはフリージアでも干渉は出来ない造りとなっております」

 

「なので、議会の決定権は基本的に資金の流れを決める事にあります。リソースは依然少ない為、赤字経営は人類滅亡とお考えください。

 なので最初に公共の決定、余りの利用先の決定、そして法案の決定。一度決定したものを再審議したい場合、代表一人につき1つ1度まで。

 議題は1つに付き最大30分の時間が設けられますが、定刻となっても全ての審議が終わってない場合、フリージア様が残りを決定します。異空存在は我々を待ってくれません。迅速な判断、投票をお願いします」

 

 その言葉に一人の手が上がった。SJ社代表、マイによるものだ。

 

「質問、よろしいかね?」

「どうぞ」

「議題の数、及び順序はどうなっている? 説明を確認する限り幾らでもそちらの作為を作れそうなものだが」

 

 行われた質問は彼が予め決めたもの。

 先んじて渡された資料を見て感じた疑問だった。

 進行役から恙無く回答が行われる。

 

「全て重要順ですが、どんな議題があるかはこれから、リアルタイムでいつでも確認可能となっております。お手元のパネルからご確認ください。お持ち帰り可能です。無くしたらご報告を。ソートも複数あり、しおりも挟めます。ぜひご活用してください」

「ありがとう……2,870,432件…?……この数は?」

 

 その言葉に他の代表も確認すると…そこには、1ページに50件の内容が載ってなお膨大なページ数だった。バイタリティのある彼らでも見るのが億劫になる数だった。

 

「見ての通り、この都市で「フリージア」が管理している一日の業務、案件、計画、政策、予定……タスクです。この議会はフリージアが普段行っている判断を人類に委託したものですから、代表権限として全て閲覧可能となっております」

「だからって…これが1日?」

 

 PPPP社代表のエミリアが呟く。そうなるのも無理はないだろう。

 一人では到底…一日中使っても把握し切れない情報量だ。

 それをたった一機で? 幾らAIだとしても無理があるだろう。

 どれだけ話し合えばいいんだと。そう、言外にエミリアは訴える。これは本当にやっていることなのかと。

 子守り役が頭上に顔を向ける。この場に姿はないが確かに居る‭─‬‭─‬フリージアへ直接答えを求めた。

 

「フリージア、是非については?」

 

[これはあくまでも、こちらのまとめ方の問題でもありますが‭─‬‭─‬各種計算、書類処理に関しては私と人類の性能の相違点からして比べるのが間違っていますが─‬‭─‬概算としては全市民の補助+各種生産設備運営+ドローンや清掃車などの運用で‭─‬‭─‬人力換算で500万人相当かと]

 

「‭─‬‭─‬とのことです。つまり250万は市民一名一名に対する議題。

 なのでそれらを省けば37万件、

 その内様々な施設の通常業務、ドローンなどの運航などで約30万、

 研究や予備計算能力として6万強、

 ですので皆様が想像するような全体に関与する議題、問題のみソース機能で抽出すれば‭─‬‭─‬42件。

 公共が35、余裕があれば行いたいものが5、法関係が2。それが本日フリージアから提出した、裁決すべき議題となります。

 勿論皆様にも議題の提出は行えますので、議会はそれをお待ちしております」

 

 ペットショップがソース機能で次々とフリージアのタスクを省き、彼らが考えるべき問題を提示する。

 最初からそうすれば円滑に進んだと思うが‭─‬‭─‬フリージアにとって、この議題の主目的は自身の重要性の再確認を行う場だ。

 排除されない為のパフォーマンス。たったそれだけの為に……市民に対して「自分を壊したらこれだけの業務が降りかかるぞ」と、告げる為の行いだった。

 

「‭─‬‭─‬では最初の議題は「第三区画エリア10の上水道の破裂懸念及び改修費の裁定」から行いましょう。総合リソース量はパネルの右上にある7,130,466,100。そして、あくまでもこれらは本日に提出された案件で、予算は一年を通してのものだとご理解ください」

 

 ここに来て漸く、この場にいる代表の過半数が……楠木と陛下を除き、自分が代表になったことの意味を理解した。

 

「その次は「第六区画の野生のたぬきの駆除の可否」

 「第一区画への性犯罪者の不法侵入対策費」

 「第二区画の医療品不足に対する他区画からの提出量の設定」

 「本日のミスリルの加工先の設定」

 「美術館の規制緩和の決定」…と続きます。仮に優先したい議題がありましたら挙手を。順番を早めますので」

 

 きっと…何処か浮き足立って居たのだろう。

 代表になった時点でこの都市の全てを把握して、自分の好き勝手に出来ると。

 

「他に質問は?…。無いようでしたら、このまま議題へと移らせて頂きますね」

 

 どこぞの楠木のように、統治者として獣人アンドロイドの作成とか出来ると考えていた考えが何処かにあったのだ。

 或いは、悪である管理AIと対立することになると。

 

 しかしどうだ。

 

「……ッチ。いつも通りフリージアの好きにしろ。今日も市民に不満はない。俺が行って解決する問題が有れば教えろよ」

「すみません、この怪人の街への交易品とはなんなのでしょうか? この…怪人について教えてください」

 

[怪人はペーストを食べたことにより身体の一部が異界存在になった人の総称ですね。長期間外に出ても問題ないので、鎮痛剤などを配給する代わりに外部探索を行わせています。街はここ最近外で作られた彼らの街です]

 

「……あ、去年からやってる外部探索の契約先!? 嘘でしょ、私、病人を無理やり働かせて…」

 

[市民エミリア、これは障害者雇用制度です。罪悪感を感じる必要はありませんよ。何もしなければ苦しんで死ぬ者に、役目と生きる道を与えた。立派な社会貢献です]

 

「……けど」

 

「それより、ペーストを食べた影響とおっしゃったことについて、詳しくお願い出来ますか?」

 

[日本市民代表、言った通りの現象です。

 ペーストの原材料は光と沈静化した異空物質ですが、

 これはその中に混ざった異空存在の要素による、肉体の変質です。

 かつての配給ペーストには高純度の異物除去フィルターが存在しなかった。

 僅かに入り込んだ異空存在の欠片…塵ほどの異物が人体を侵食し、積み重なり、半端に怪物へと変異させた。

 初期の研究、対策不足による不幸な事故です。現在は解決済みですよ]

 

「もっと安全なものを食べさせるのは…いえ、これは当時の食糧不足問題が発端……これから、彼らとしっかり向き合わなければ、なりませんか……なぜ、黙っていたのですか?」

 

[怪物になりたく無いからと餓死する者と、無駄にストレスを溜めさせない為です。‭

 そして、彼らだけの街を、彼らに作らせているのは福祉の一環。こちらも余裕の無い中で最大限寄り添った行いです。理解したのなら、引き続き会議を進めましょう]

 

 蓋を開けてみれば、実につまらない…些細な議題と、拍子抜けの会議。

 想像していたような管理AIとの争いはなく、全市民を洗脳した時のような悪性も感じられない。

 何処までも泥臭く現実的な…夢のない議題ばかりが積まれている。

 過去の政策、その流れを見ても、当時の環境で最大限効率化された善行が積まれていた。

 それが分かる程度には、この場に居る全員は賢い者達だった。

 

「……切り替えました。探索班には後ほど契約を再更新します。自らの内にあるこの議会の定義も変えました。物語の舞台ではなく、何処までも現実的な政治の場。つまり、私の理念の通り動けばいいんですね」

 

[市民エミリア、その通りです。統治者(コンダクター)と違い、順調に洗脳の反動による反乱意識も薄まっているようで喜ばしいですね。私はその理性を歓迎します]

 

「あぁ!?」

「うわっ!?……フリージア、反乱意識とは?」

 

[市民達が問題にしている人類の洗脳ですよ。あれは市民エミリア、あなたの会社の技術を応用して製作した使い捨て洗脳ですからね]

 

「えっあれ蜂から開発したものなんですか!?」

 

[はい。なのであなたの所で開発したら逮捕しますので、悪しからず]

 

「やりませんよそんなの!」

 

 エミリアはすぐに気を取り直して復活したが、他の3人は未だギャップを飲み込めないでいた。

 というより、既に議会がフリージアに対する質問会になってしまっている。

 運営に携わる以上事前に情報を共有するのは大事だが、話す度に新たな事実が判明するのは…いや本当に話してないことばかりでは?

 普段から様々な情報をラジオで発信してなおまだ隠してることがあるのかと、オビリアは驚くこととなった。

 

 NEET社代表、李白が手を挙げる。

 

「はぁぁ……」

 

 ため息を吐いて姿勢を変える。白髪混じりの結び髪が揺らいで、鋭い眼光が辺りを見渡す。

 裏社会のボスの覇気が辺りを包み、全員を黙らせた。

 

「あー…ストップだ。なんだこれは? 早速議会の程を成してないじゃないか。これじゃ話にならん。小苍兰(フリージア)、手前が今まで俺らに黙ってた情報全部渡せ。代表だから知れるもん全部だ

 ─‬‭─‬皆も良いだろう!? 先ずは、お勉強会と行こうじゃないか!」

 

「─‬‭─‬市民李白の議題提出を確認。優先順位を繰り越して多数決を行います。「本日の議会を中止し、フリージアとの情報共有を行う」‭─‬‭─‬手元のパネルから投票してください。[YES]か[NO]どちらかの長押しで行えます」

 

 果たしてその最初の議題は‭─‬‭─‬賛成5、反対2で可決された。

 

「…誰がNOに入れた?」

「はい、もう知ってる俺」

[その前に一つ、皆様に話すべきことがある私ですね]

「楠木は兎も角……フリージア、何を話すつもりだ?」

 

 李白が名乗り出るよう発言し、楠木とフリージアが手を挙げる。

 これは匿名投票なのでそんなことをしなくてもいいのだが……どうやらフリージアは何か、先に私達に話したい事があったようだ。

 

[‭─‬‭─ 放送チャンネルセット。よーし、非難されるぞー

 

 SJ社代表のマイの問いに答える前に、何かを作動させてからフリージアは話そうとする。

 なにも不自然なところはない、人間ならば自然な言葉の溜め、区切り。先ほども有ったフリージアの会話の()と同様の間。

 

「……!」

 

 ただ一人、 扇動の天才(オビリア)だけ、その空白だけは市民へのラジオ放送を開始する為の空白だと、開花した"才能"から来る直感で気付いたのだ。

 

 ‭─‬‭─‬それは本人も無自覚なもので有ったが…或る転生者が語る言葉によれば、《魔奏》の芽生え。

 催眠電波を発する蜂の脳、その命令組織と偶然にも脳の一部が似通ってたが故の……フリージアの早期開発を起因とする、余りにも早い「人類種の進化」。

 それは今まで食べたペーストの毒性が、そこに混ざった怪物達の物質が、生来の"才能"を司る脳細胞の構造が……その全てが噛み合わさったが故の、積み重ねるべき進化の段階を飛ばした「貴種の目覚め(サラブレッド)

 

 その目覚めた魔奏の名前を《働かざる女王蜂(ビー・ストライキ)

 

 或る転生者が見れば主人公勢に残り5歩までなら迫れる性能と評すだろう。

 感情の伝播を行い、無意識下で最適解を引き出し‭─‬‭─‬自覚さえすれば人間は勿論、蟲の異空存在ならば全て支配出来る‭─‬‭─‬「洗脳支配の超能力」であった。

 

 






或る転生者S「んでも自覚しなきゃ超直感があって、感情を誰かに伝え易いってだけだな。うん、アーティストにでもなったら? もしくはインフルエンサーとか」

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