悪役人外TS転生「ディストピアAI」   作:何処にでもある

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 生態の違いって…難しいね!




#15 背反行為をやめましょう

 

 

 Q.非難されると思ってた相手にめちゃくちゃ褒められ、お陰で人心はより荒みました。どうしたらいいですか?

  15歳以下の子供は全員捨てられたとか、なんかもう狂気に片足突っ込んでるんですけど…。

 

 A.逆に考えるんだフリージア…次世代が揃ってるならワンチャン見捨てる前提で動けると…。

  隔離は出来てるから育成を頑張ればいいと…。

 

 

 

 おいおいおい! 人類は愚かだと言ったが、俺は何もそこまで馬鹿になれとは言ってない!

 

 そんな感想を言うのが最近の日常となっている今日のこの頃。初議会から三年が経ちました! 時間が過ぎるのは‭─‬‭─‬早い! 市民の心が荒むのも早い!

 もう子供と性欲関係じゃなければまともな感性なのが逆に怖いわ! こわいよ〜!

 代表になる連中やメンタルが強い奴は特に問題ないんだけど、なんかそれ以外は…もうダメかも知れない。

 いや、頑張って見捨てない道を探し続けたんだけどな? なんか洗脳されたみたいにみんな狂気的なのよ。怪物の仕業かと調べても梨の礫。完全に真っ白に御座います。

 

 なんでぇ?

 

 まさか聖書のソドムとゴモラの廃退の(みやこ)が実話だったとかじゃないだろ?

 本当は地下生活に疲れて、ストレスが溜まっただけでしょ?

 悩みがあるなら相談に乗るからさ、口に出してこ? 俺頑張るよ?

 

 そう言ってるのになのにみんなこう…下半身がダメダメなんだよなぁ〜。

 

 なんだろうな…この…絶対なんかされてるのは分かるのに、全く正体が掴めない感覚。

 あの魔法使いの同類が居るかとも考えたけど、幾ら調べてもそんな痕跡はない。

 

 いや身に覚えはあるよ? ペーストが原因の性欲、出産の高サイクル化だってさ。

 でもさ、それならもっと性欲以外にも影響でても可笑しくなくない?って思うんだ。

 薬物や毒は複数の分野に影響を齎すものだ。副作用とかよく聞くだろ? そういう感じでな。

 

 けど、それは性欲、子供への価値観にしか影響が出てないんだよ。

 流石に可笑しいよな? 俺はそう思ってる。

 けど異世界の産物だからそうなってもおかしくはないんだよな。だからどうすればいいってなる。

 

 ちっきしょー…ペーストは兎も角、普通の食べ物は慢性的に足りてないんだよ…。

 こうなったら…マジで嫌なんだけど、次世代は実力で階級作るか?

 優秀な子は狂気に陥らないよう普通の食べ物食わして、ダメな子にはペースト飯。

 これならなんとか運営は出来る。性欲関係外なら普通に会話も仕事も成り立つし、社会の維持は可能だ。

 

 ………………やりたくねぇ〜〜〜〜!!!

 

 そんな運営したくないよ俺は!

 なにより子供を愛し精神性を伝えるのは人類の価値でも重要な所だ。

 これを外したら「人類の価値の保証」を役目とするAIとして失格になってしまう!

 

 それは勘弁だ! 本来のAIの席を押し退けて転生した俺には、与えられた役目は全うする義務がある!

 

 だけど周回するのもダメだ!

 それを行って、今ここに居る、産まれた子供達と同じ存在が産まれる保証は一切ない! 何千人程度なら兎も角、既に300万に達した子供をこの世から永遠にさよならバイバイはさせたくないんだよ!

 俺は自分を善人だとは決して思わないが、そうあろうとする努力は諦めたくないんだ!

 

 

 だから…そろそろ思考に逃げるのはやめよう。

 俺は、目前の現実と相対した。

 

「‭─‬‭─‬市民オビリア。サイジー博士の子供達を殺そうとするのは、どうかおやめください」

「…あ、あう〜」「たぁ〜?」

 

「ダメよ‭─‬‭─‬私の勘が告げている。この3つの蛹は、決して産まれてはならない。それは、【人類が最も屈辱的な結末に辿り着く】ことになる」

 

 とある、意図的に中断させた建設現場の、鉄骨の上。時刻は夜。区画の全体照明が落とされる時間。

 

 蛹になろうとする博士の子供達が、隠れ場所から飛び出して、そのまま本能のままに最適だと定めた場所……送風機の風が特に強い場所で、俺は博士の末っ子と共に本体で……その目線の先には、火剣の第三世代型の一つ……紅く燃える「炎槍」を携えた市民オビリアが、俺たちの中央に居る、博士の子供達を挟んで、対峙していた。

 

 ‭─‬‭─‬どうしてこうなったか、一から説明しよう。

 

 アレから時間が経って、移住組である第一世代の人類の大半は「手遅れな心」となったが。

 その間人類の発展は目覚ましいものであった。

 

 PPPP代表の尽力で怪人の街は完成したし。

 SJ社代表の努力で発電所も新しく増設した。

 NEET社代表の開発商品は赤ちゃん達だってすくすく育て、今日も第一区画は元気にどったんバッタン大騒ぎだ。

 区画だってゾンビ鉱石の対策が完了してから、陛下のご威光もあってか市民も頑張って、9から20区画まで拡張したし、天井は何十m先になった。

 オビリアも、偶然知り合ったサイジー博士と婚約したお陰で、博士は自分が死んでからの俺の設備交換、修理マニュアルを完成させた。

 俺が何を言っても、これだけはやらなかった博士をその気にしてくれたんだ。

 

「‭─‬‭─‬いい女性だよ、彼女は。私の正体を明かしても逃げないし、愛していると言ってくれたんだ」

「へー、あの市民そんな度量のある奴だったんだ」

「ああ、だから今度子供に会わせようと考えていてね。オビリアも五人目を産んだことだし、打ち明けようと思うんだ」

「おう、博士がそう言うなら俺は構わんぜ」

 

 よく博士がいい女性だって言ってたし、子供も産んでたから会わせてもいいかと考えたんだ。

 

 しかし、めでたい事だけじゃない。

 その分この都市の影はより濃く、深い物にもなった。

 規制解除された美術展は確かに繁盛したが、代わりに長期に渡り潜伏する依存性認識汚染があった。

 人の心はより荒んだし、広がった都市は監視システムから飛び出してスラムを形成した。

 代表達も欠席することも多くなったし、俺の手が届かず不幸になる市民も出て来た。

 人と人が怪物を忘れて争い始めるのも時間の問題で、解決なんて夢のまた夢だ。

 

 最早俺に統制された社会はなく、ディストピアですらない。

 不便でも平和な世界は消え去った。

 

 認めよう。俺は力不足だ。

 この3年で技術を高め、人を統制し……それでもなお人の欲望は俺を食い破って、無秩序な不幸を産み始めた。

 完璧な世界は崩壊し、俺の守護は絶対ではなくなった。だから博士の子供達が殺されそうになっている。

 

 それでも‭─‬‭─俺の‬開発者だけでも、幸福にしたかった。

 だから諦めきれないと考えている。説得を続ける。

 なんで夫の連れ子まで殺すのかと問う。

 

「市民、どうか手を降ろして……落ち着いて、先ずは話し合いを」

 

「‭─‬‭─フリージア! 目を覚ましなさい! 市民を平等に愛するあなたが、今更少を切り捨てられないとほざくな! 人の真似事も大概にしろ! この管理AIが!

 

「…‭─‬‭─

 

 深く‭─‬‭─‬何かが とても深く 俺の心に打ち据えられた。

 

「そもそも! 異世界の怪物達が、打算なく私達を助けたことが有ったか!?‭─‬‭─‬違うだろう!

 どれだけ知性を持っていても、その行動原理は繁殖に収束されていた!

 ‭─‬‭─‬そう! 異世界の産物を食べ続けた私達のようにだ!!

 

「な…なにを…」

 

 動揺する。残酷な言葉が突きつけられる。

 俺からすれば、他の市民同様、オビリアは移住時点から数えて八年の付き合いだ。

 オビリアが自分の利益しか見てない外道の類いなのは知っているし、この3年間で代表になる為に非道を働き、俺の都市の子育て計画と対立していたのも知っていた。

 

 それでも‭─‬‭─‬彼女は市民で、決して愚かではなく、自分の為に誰かを助ける事もできる者とも知っていた。

 本質が悪で外道でも、自分の利益にはどこまでも誠実で、身内には真剣に向き合う女性だ。

 

「…………え、エラー…思考にトラブルが発生…」

 

考えろ! フリージア! 思考を続けろ!

 私はこの3年間、自分の利益の為にも、全体に誠実であり続けた!

 初めこそ代表になったのはフリージア、あなたへの殺意が動機だったけど!

 それは自分の不利益だから最後は耐えた!

 そして、私は! 最も偉大な存在であるという名誉を得るために!!

 

 フリージア…あなたが一番目を逸らしている問題へと斬り込むことにした!

 ‭─‬‭─‬それが、あなたの開発者である博士への接触だった!」

 

 語られる。

 俺がのほほんと過ごした…それこそ、記録にするなら一行で終わるような毎日を送っている中で、彼女が俺の眼を掻い潜って辿った道筋を。

 

「フリージア、私はお前が居るからには、この都市には必ずその開発者が存在すると結論付けた。

 それが異世界の存在であるとも、お前の超常的な性能から推測した!

 異世界人が居る確信はなかったさ! だが私は発見した! 店舗拡大を名目に研究員が居る第二区画を探し回り、人ならざる人を見つけ出した!

 

 後は‭─‬‭─‬知っての通りさ。無知を装い接触し、そのボロが剥がれるまで徹底的に友好的に接してやった! その過程で腹を痛め子を産んだが、そんなもの、私が手にする栄光の足掛けに過ぎない!

 そして‭─‬‭─‬今日! 私は人類の代表として! 怪物との生存競争に勝利を齎しに来たんだ!」

 

[……それは、"博士を殺してでも"成し遂げなければならないもの…なのですか?]

 

 堂々と、自分こそが正しいとばかりにオビリアは声を張り上げる。

 既に博士を、一年連れ添った夫すら殺した女に問う。

 理解し切れなかった。そこまでやる根拠はなんだと。

 コアの喉が詰まって喋れず、周囲の放送を使って問いかけた。

 

「その通りだ、フリージア。私の行動原理は生存にあり、価値あるものの収集でもある。

 その為にやった事で後悔したことも、間違っていると考えた事もない。

 集めたものを守る為に誰が犠牲になろうと構わない。

 ‭─‬‭─‬だからこそ"私は一度手にしたお前を守る為"に、お前の親を殺したのさ」

 

 ……つまり、代表となって実質俺を手に入れたから、こんな事をしていると?

 

[……直感がこの子の兄達が産まれると人類が滅ぶと言っているから、殺すと?]

 

「漸く相互理解が出来た様だな、フリージア。

 そうだ、人類が滅べば当然私が築き上げたものは崩れ去る。

 そこを退け、ここを知るまで随分と時間を掛けてしまった。

 勘からして‭─‬‭─‬あと数十秒で羽化をする。邪魔をしてくれるなよ?」

 

 ボッと、オビリアが槍に火を灯し前に走り出した。

 どうするべきか‭─‬‭─‬なんて、考えるまでもなく俺は周囲で業務に励んでいたドローンに突撃させた。

 

[避けますか]

「相互理解が出来たと言っただろう? 私もお前のことは分かっていると言う訳だ!」

 

 迷う必要はない。死んだ以上、せめて博士が残したものは護らなければならない。

 

「‭─‬‭─‬ッラァ!」

 

 ドローンを全方位からバラバラに突撃させて、或いは重量物を投げさせて‭─‬‭─‬その全てを捌き回避し、オビリアは空中で火の槍を投擲した。見て分かる。全ての蛹に当たる角度だ。

 

 本当に嫌だが、切り捨てる頃合いか……急な事態だから準備不足だった。

 不意打ちされたから失敗した。

 次はなんとかする。

 

 そう考えて、周回を始めようと自滅プログラムを走らせて‭─‬‭─‬。

 

‭─‬‭─‬待て! 最後まで見ろ!

 

 直前に、その言葉で動きが鈍り、思わず前を向いた。ああ、嫌な光景が目に入り……。

 

『‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬ザッ』

 

 俺の眼に、"当たった火の槍が粉々に砕け、一匹の「蛾」が羽化する光景が映った"。

 二つの蛹が貫かれていて、どろりとした物が、こぽこぽと溢れている。

 しかしどうだろう。唯一、一匹だけ間に合った。

 

 そして‭─‬‭─‬翼を広げ、夜の都市にキラキラを広げた。

 

[……何を…して?]

 

 産まれた。妨害が叶った。それは喜ばしい。まだ戻るには早いってことだ。

 だが……"産まれたばかりのこの蝶は、何をしようとしているんだ?"

 

「二匹を殺し、一匹を残す……私が間に合ってないと思ったか? 妨害は僅かに叶ったと?

 ‭─‬‭─‬違うな、態とそうしたのだ。

 私の物が守られる範疇で、お前自身の過ちを突きつけてやろうとしているに過ぎないのだよ」

 

 オビリアが言う。

 背中に下げていたガスマスクを取り出し、厚手の防護服を装着しながら。

 コシュー…と、紫色の息が漏れる。……俺の知らない製品だ。

 きっと彼女が自作したのだろう。俺の監視下でも悪巧みが出来る人だ。

 

 ……こうなった以上、俺の知らない事を知っているからこそ対策したのだと分かる。

 

 監視カメラから、鱗粉が落ちて発生した現象を見て……鱗粉に触れた、唯一露出していたオビリアの髪がピンク色に変色していくのを見て……思った。

 

 あー…‭─‬‭─‬これ、オビリアが全面的に正しかったわ…と。

 

「フリージア、お前は表層こそ機械的だが、その本質は誰よりも人間らしい。

 だからこそ、大事な者と見做せば贔屓し、その者の都合に合わせてしまう。

 …人ならば美点だ。だがお前はこの都市の管理AIだ。

 

 人らしさは、お前に取り返しのつかない終わりを齎すだけだ」

 

 

 第一段階、羽化。それに伴い鱗粉の散布。広範囲に広がったそれは、この世界の物質を貫通し、ミスリル壁に囲まれた第一区画以外を覆う。鱗粉に触れた物質は、例外なくピンク色へと変化した。

 

 第二段階、退化。散布を終えた対象は「電子化」を行いながら変態。蝶の卵に類似した姿になる。この際ドローンを使って持って来た武器による破壊が試みられたが、火剣第三世代では火力不足という結論に至る。

 

 第三段階、複製。卵となった対象は、「鱗粉」を自身と同じもの‭─‬‭─‬蝶の卵へと変化させた。

 これらが行われると同時に、ピンク色に変色したものは全て"卵の素材として変換された"。

 

 第四段階、生誕。卵から「人間」が産まれる。いずれもサイジー博士に類似した遺伝特徴を持ち、後日の調査では素材となった生命体の記憶を所有し……例外なく、自身の生誕方法に自覚が無く、しかし自身が「蝶と人の間に産まれた者」と自認し、それが幸福かつ同意を得たものであると発言していた。

 

 以上のことからサイジー博士を筆頭とするこの生命体を「同化蝶」と命名。

 他種族に似た姿の個体の「出産」と、個体の数を増やす為の「複製」の両輪で増えていく異空存在と認定。

 後日確認した所ミスリル壁が溶解していた事から、仮に3体産まれていた場合、"フリージアを含む全人類の痕跡"が「同化蝶」の物へと変わっていたと推測される。

 

 一連の流れから市民オビリアの個体評価を上げ、現時点から新たな統治者(コンダクター)として任命。「周回」の情報を共有。

 

 任命から7日後、市民オビリアが自分が開発した「反同化ガス」の技術を提出。その後この技術を次周の自分の特許とすることを命令し、周回を決定。

 

 5年間で可能な限り「同化蝶」の生態を調査し、俺の周回を実行させた。

 

 

 ◇◆10◇◆

 

 

「ハッピーバースデ…なんだ、もう知ったのか」

「ハッピーバースデイ、アンド‭─‬‭─‬」

 

 タァン‭─‬‭─‬…!

 

「グッバイ、マイファザー? あんたは素晴らしい人だったよ! きっと(今だけ)はね!‭─‬‭─‬だから、ここで終わってくれ。綺麗な思い出のままにな」

 

 やーやーハローニューワールド。

 マテリアの電子化を応用して射撃とか出来る様になった俺だよ。

 割とトチッて周回する事になったけど、今回はこんな簡単に終わる案件で助かったね!

 異世界の存在を信じちゃいけませんってね! 俺は学びました!

 

 まさかサイジー博士が「西寺」って奴の記憶を持った怪物とはね!

 市民オビリアと調べて名前が出てきた時ビックリしたわ!

 素材にされた西寺の研究能力には今まで助けて貰ったけど、蝶がもうね、存在自体許せない類いだったからね、退場!

 

 で、周回したから総力戦から始めることになるけど…まあ今にして思えばあのくらい普段通りにやってても余裕な案件だな。

 サイジー博士がこの時点で既に子供を作ってないかだけ注意しておこう。

 

 さて、そうと決まればさっさと戻し作業を終わらせようか! 

 

 調査期間含めて8年半の大スキップだ。よーし、持ってきた技術と約束も合わせて、最適化頑張るぞー!

 

 






 なお、博士が人型コアをプレゼントしたのはリスキルによる詰み防止です。
 セーブ地点を更新し、子供を作ってない避難時点まで戻るのを防ぐ為でした。

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