続いた。
何かしら始める前に説明書を読むタイプは居るだろうが、俺はある程度進めてから読んだ方が頭に入るタイプだ。
そんな俺が転生した世界について説明するのも、リトライを押した今が丁度いい頃合いだろう。
「カサンドラ」
俺「フリージア」が管理するシェルターだ。
経緯を言えば、異世界から来たドラゴンっぽいのや巨人っぽいのに敗北した人類は、地下に逃げた。
ここはそんな敗者共の最後の楽園であり、臥薪嘗胆の日々を過ごす仮の拠点。
いずれ蒼い空を見る為に耐えぬく箱物である。なお、俺が何もしなければ一年で滅ぶ。滅んだ。
人口100万人、人種は日本、イギリス、ドイツ、中国の4種に他がパラパラ。
中には異世界からこっちに来た変わり者(サイジー博士1名)も。
なんか本来なら幾つか小分けする計画だったが、日本にある奴以外滅んだらしい。怖いね。
なんで日本にあるのだけ無事かはさっぱりなので兎も角として、設備としては俺から見れば現代的で大規模なシェルターといった具合。
大きさもお世辞にも広いとは言えず、空気を強めに送らないと死人が出るレベルだ。けど強めに送ると騒音で怪物に気付かれるのよな…(1敗)
空気悪い、土地少ない。外は怪物ぐーるぐる。
山の中だから水の補給は困らんが、米だなんだで文句やべー。農作物無理だっちゅうの。土地がないんだわ。
おいおい詰んでるだろと思うだろう。俺もそう思う。備蓄も100万も住んでると3日しか持たないしな。
しかしそこは俺、1周目では市民達がお互いに殺し合って共食いしている間に人工栄養食をサイジー博士と一緒に創りました! いやー地獄ってのはアレのことを言うね、間違いない。
因みに材料は光と土に含まれる汚染物質だ。俺なら食べるより死を選ぶね。
[市民に通達します。人工食料の生産機が完成しました。以後はコチラの配給で補給を行なってください]
ん、汚染物質が何かって? そりゃあお前異世界と繋がる次元亀裂から出て来る謎物質よ。多分魔力か何かだと見たね。
空気成分の4%が既にこれだから外出ただけで人類死ぬぞ♡ こっわ、硫化水素かよ。呼吸送る奴壊れたら終わりじゃん。点検員小まめに送ろっと。
水には混ざらないしすぐに浮かぶ魔力(仮)…光を集中させて当てると物質化する魔力(仮)…この状態だとなぜか食べられる様になる魔力(仮)…そして無味無臭…謎過ぎるぞ君!
という訳で市民、これは食べても一年は問題無かったので、当面はこれで凌ぎます。
拒否してもいいけど迷惑かけずに死ねよ。もうそれしか食い物ないから。
「クソ、あの機械壊れてるんじゃないだろうな…」
「これ味しないけど…何が材料なんだ…?」
「ママーチョコ食べたーい!」
「だめよ…もうそんなものないもの」
市民達も喜んでますね。うんうん、そういうことにしような。
これで食料問題は解決。機械の身体だからか、設計図とか丸々持ってこれて楽なもんだぜ。
次世代の遺伝に問題が出るかもだが…それは俺の与り知らぬこと。適応進化ってことで。
「狭いし…臭いな…」
「おい、誰だ俺の足を踏んだのは!」
「テメェ夜五月蝿いんだよ! いびきかくのやめろや!」
「しらねぇよ!」
そして食べ物が解決すると今度は居住スペースで不満が出る訳だ。後は衛生とかな。
こちらとしても研究施設はサッサと建てたいし、市民と目的一致だな!
[市民に通達です。あなた達に業務を与えます。市民は拡張工事を行うこと。また、労働に参加した市民にはお湯の特別配給が与えられます]
という訳で労働の時間だ。働いたら公衆風呂に入ってもいいぞ! 男女分けてる余裕はないから混浴だけどな! 不満があるなら異世界に負けた己を恨め。
全く、ここが日本で良かったよ。お陰で風呂がご褒美として機能するし。
お湯沸かす電気? ここって石油を掘る施設付きだからその手の余裕はあるんだよね。
俺の計算では後50年持つ計算だけど、多分もっと早く消えるよ。
「フリージア、今の状況はどうなっている?」
[食料配給システム構築完了。増築進行45%進行中……後は軍事力ぅですかねぇ…]
「やはりそうなるか…機械の判断でもそう出るとなると、やはり作る必要があるんだな」
あー持続可能な社会って難しいなあ…なんでも有限で終わりが来る。
まあ? まだ魔力(仮)がある分エネルギー分野は希望があるけどね。
一年戦争の話も勇者ロボも謎物質が御用達になるし、これも例に漏れないだろ。
……うん。ロボな。戦闘ロボ。俺らに足りない奴な。どうしような。
現状怪物でたら一発で終わりなんだよな…うん、武器が必要です。それも急務で。
[サイジー博士は異空物質を利用した武器制作を行なってください]
「フリージア、お前なら開発もできないか?」
[不可能です。俺は管理用であって新しいものを創造する機能はありません]
「……いや、できない。私にそれは無理だ」
[ならば全員滅ぶしかありませんね]
「……………すまない」
なんでだよ(怒)……と言いたいところだが、前の周で聞いた話だとこの人異世界人なのに優し過ぎてこっち側に来た人なんだよな。俺を開発した人でもあるし、無理は言えない。
仕方ない。前回は拡張が遅かったせいで地下に住み着いた怪物にやられたが、今回は敵の侵攻位置からまだ広がってない初期の段階だ。
作業中に掘り当てることもないだろう。
今のうちに出来るだけ拡張して、その中でやりくりする形にする。
武器は地球側の頭の良い連中にやらせよう。今のうちに住民のデータから知識のある連中を抜擢して、研究し易い環境を整えて誘致しよう。俺が開発しなくても頭良い人にやらせればいいんだよ。
そうだなあ…ソイツとコイツとアイツと……後は武器を使う兵士も必要だよな!
◇◆1:半年後◇◆
「俺達が新しい王だ! 解放の王だ! 我々は自由になった!」
大きな広場を埋め尽くす群衆から、喝采が起きる。
意味不明な機械の命令から解放されたと喜び──自分達を一瞬で殺せてしまう武器を得た者に媚びる為、肯定する。
壊れた機械に立つ王はそれに気を良くして、手に持つ剣に光を迸らせて掲げた。
まるで聖剣でも持っているかのように……もうじき訪れる破綻を導いた魔剣に、魅入られるままに──。
[──武器は、俺から使用許可が降りないと使えないようにするか]
王が景気付けに魔剣をもう一度、俺に突き刺すまでに呟いたのはそんな事。
コイツらが俺に対する信用が全くないと、そう学習した証拠を零し…俺は2回目の眠りに付いた。
◇◆2◇◆
[いや説明不足も有ったかこれ?]
「お目覚め早々どうしたフリージア?」
はい、前回よりも爆速で終わったね。やだねー人類。
魔力(仮)で魔剣(仮)を作ったのは良かったんだけどなー。
まさか俺を壊して権力の象徴とする奴が握るとは思わなかったね。俺を壊したら空気も電気も止まるって分からないのかな。
分からないからやったんだろうな、可哀想なやつ!
「早速で悪いが」
[その問題は解決済みです。サイジー博士は異空物質の光源化の研究をするように。これは先任者からの引き継ぎデータです]
「…異世界の技術と私側の技術の産物とはいえ、どういう芸当だこれは…」
[未来から過去にデータが送られた結果です。では研究を再開してください]
という訳で軍事力はある程度解決した。
怪物の中では1番弱いミミズもどきを数人がかりで倒すような有様ではあるが、無力だったのと比べれば雲泥の差だろう。現代科学じゃ核でも傷付かない連中だからな。
でもまさか光+魔で作ったペーストをガソリンで無理やり燃やして武器にするとは。
恐ろしく効率は悪いが殺せはした所を見るに、魔力(仮)が含まれれば武器になるらしい。
だからペーストを圧縮しまくって剣にしたのは良い発想だと思ったんだがなあ…。
それだと近付いた生き物が魔力(仮)になり始めるんだよな。これが危ないったらもうね。
だから折衷案として刃の先端部分だけ圧縮甘めの物質、それを取手から噴き出るガスバーナーで刃を燃やして斬れるようにしたんだけど…。
それ作ったら俺を壊し始めやがった! テメェこのやろ!
だからもうあれだな、ミミズもどきが出ない内は兵器を作らせません。
被害が出てから解放しないと暴が俺に向くからね、仕方ないね。
そして設計図では俺の許可が降りないと着火が出来ないようにします。
燃えなければこの圧縮甘め物質は破壊力が0だからな。紙も切れないぞ。
訳分からん挙動だけどこの際有難い。流石異世界意味不明だ。
そんな訳で配給作ってーのシェルター広げてーの10ヶ月経って被害出てーので…。
[市民に通達。只今外敵の解析及び、武器の生産が完了しました。ドローンで各地に配置しますので、各自討伐を行ってください]
事前にチマチマ配給工場のラインの一部で夜鍋したガスバーナーソード1万本を投下!
結果的に1万の死者が出たが…まあ安い方だな。全滅よりマシだし、俺を信頼する声が出始めた。
反感もあるけど最初からあったからノーダメだね。あ、武器をパクろうとしてもGPSで分かるから意味ないよ。警察呼んで回収回収〜。
そして反乱分子は過酷な労働送り! あ、お前俺壊して王になった奴! お前は特に危険な場所に送る!
ふう…スッキリしたぜ。意図して人でなしの考えになってるけど、我ながら管理AIの才能あるんじゃないか? 3回目にしては様になってると思う。
後はそうだな…一回、一年の成果をまとめるか。
広げた際の資材で少数だが半導体や様々な生活用品も用立てた。
サイジー博士と研究員を働かせて地下の農作実験も現状円滑だ。この調子なら3年後には配給に混ぜられるだろう。
生憎牛、豚、鶏などの家畜やペットは居ないが、検体の研究次第ではミミズモドキの物を加工して配給しよう。
地下空間も大分広くなった。初期のような集合住宅レベル100から、一つの街と呼べる広さを確保出来た。1階高さ5mの余裕ある空間だ。裏の配線や保守させる為の空間を含めるともっと広くなるぞ!
場所によっては天井をペンキで空色にしたりしてるし、人の暮らしも多少余裕が出てきた。うん、悪くないな。
人口約95万(拡張工事事故3万、ミミズモドキ1万、伝染病5千、その他5千人死亡)
我ながらよくやったと言って良いでしょう! ネットも電気製品も使える環境は用意したし、文句を言われる筋合いはないぞ。ワクチン研究出来る施設だって作ったんだからな。
さあてと…良い物を見たし問題点上げるか。
1、貧富の格差。闇市出来て市民にバカみたいな格差が生まれてる。
2、スラム街。下壁側にあるんだけど半分怪物に変化してるんだよね。多分ペーストのせいだわ。
3、ジャンク武器。ドローン投下した時の武器の仕組みを再現したのが広まってる。やべーい!
4、グループ形成。なんか勝手にチーム作って島争いし始めました。なんで?
5、俺の権力ないない。都市管理システムとして受け入れられ壊されない代わりに、無視される事が多くなりんした。人間って…慣れる生き物なんだな?
以上、2年目に解決したい目標です。根本的に
要は俺の意見が人に伝わって実行してくれれば良いんだし、俺が統治者である必要はないよな。俺を象徴として使えるようにしてれば……。
よーし良いやり方思いついたもんね。となると接触するべき相手は──。
本物の管理AIはこれらを初見クリアしましたが、代わりに人口は10万まで減ってます。
事前知識というのは強いですね。次回他視点。