そういえば、「かぎかっこ」で『異世界側』や〈*物音*〉を分けたりしてるのは気付いてましたか? 【確定情報】とかもありますよ。
転生者。
近年では前世の記憶を持ち越す者が多いが、実は武器や特別な証など、何かしら受け継いでいれば名乗れる安い称号である。
俺は転生者のパターンに合わせると記憶を引き継ぐ典型的な転生者な訳なのだが、ここ最近見つけた他の転生者を見ると、案外記憶だけというのは珍しいみたいだ。
まあそりゃそうか。ダイス振って出た目の数だけくじ引きするんだ。特別な力だけ持って来たとか全然あり得る。
転生者疑惑グレーの
「ふむ……まさかのまさか…ね」
さて、こんな話をしている時点でお察しだとは思うが、転生者に関連する厄介な事が起きた。
「SJ社に属するヘイロー施術関連、社員も少数の10名。そんな子会社に"4人"も転生者が集まるとは……運命か何か?」
とある人間ペットショップを社長に据えてる会社。
後で転生者と判明した者も含めて、新入社員4名全員が転生者という珍事が、眼の前で発生していたのだ!
「前回との最大の相違点なのも…奇怪」
本当、なんでこんなに集まったんだ?
ラキスケ女、平凡女、根暗女、予言女、そして俺。
多いにも程があるぞ! 全員女なのもなんなんだお前は!
しかし詳しく知らない事には何も始まらない。
先ずは誰がどうなのかまとめよう。新入社員の紹介だ。
先ずはトップバッター。俺。
社長で人間の遺伝子から製作したペットショップを操作している。
見た目は青眼に長めの茶髪を軽くまとめた一般人。
遺伝元の市民アンクションに似た西洋よりの容姿だな。
配属理由はヘイローの流行操作。そして実際に改造する技師の立場で、ヘイローのメンタルモデルをアップデートする端役の一つ。
会社はサクっと正式な手順で立ち上げて軌道に乗せたぞ。こんなの都市運営と比べたら余裕だぜ!
1人目。ラキスケもとい、市民アンクションの娘。
本来ならSJ社社長になれる所を蹴ったボンクラ市民。
名前をシン・アンクション。
金髪赤目のバチって決まったクールな見た目の癖に、なんか常に周りに怯えてるぞ!
転生者って分かったのは独り言を拾ったからだ! ラキスケに見舞われる特典とか羨ましいなあおい!
性格は図々しくて自分に厳しい奴を好く変わり者だ。
人に対する判断にラキスケ展開が起きるか否かで距離取ったりする癖、先生良く無いと思う!
2人目。平凡もとい市民
赤にも橙色にも見える髪と眼を持った転生者。バレた理由は市民シンと同様。
ペットショップに対する執着がすごく、模範的かつ優秀な市民として卒業した。
お前の目的ペットショップを買う為のお金だったと思うんだけど、なんでここに来たの?
確かに今1番金が集まる場所を希望してたから第5区画にトばしたけど……それで目を向けるのが本社じゃなくてこことは…どんな眼の付け所だ?
3人目。根暗もとい市民
着膨れしてるし服は袖余りしてるし前髪長いし調子乗ると誰かれ構わず煽り散らかすが、少し褒めただけですぐ大人しくなる子だ。
触れたり顔を見るのは本人の許可を貰ってからした方がいいぞ!
見た目は本人にとってはコンプレックスだから触れない方がいいぞ!
この市民を育てた俺との約束だ!
普段からフード付きパーカーを手放さないが……二次元から飛び出したみたいな容姿と性格なのはちょっと心配だ。今時ステレオタイプのオタク仕草なんて転生者と言ってるようなもの。
コイツも独り言で転生者バレした。転生者って独り言多いなあ!
4人目。予言もとい市民メアリー・ポッター。
額に稲妻が走る……方ではなく、先祖の
そのおかげか知らんが手先は器用で、第一区画ではよくフルスクラッチでプラスチック人形を作る奴だった。
この子も独り言……というか、普段から独り言ばっか呟いてた。赤ちゃんの頃から。
悪魔の子として親に殺されそうな所を助けたぞ! 変な特典持ってるなあお前!
本人的には不本意なようで、専用の拘束マスクとペンとスケッチブックをしている。
食べてる時も舌が勝手に喋ろうとするからな。
だから舌周りも全部拘束してて、いつも飲みづらそう食べづらそうにしてる。
魔奏のもっと良い物を与える事も出来たが、それは本人の将来の目標として手に入れて貰う事にした。やる気は多少不便な方が出る!
黒色のくねくねした癖のある髪質と、蛇みたいな眼が特徴だぞ!
うーん、どいつもこいつも一癖も二癖もあるな。
まあだからどうしたって話ではあるが。
よっぽど戦闘に向いてなきゃ地上には出さないし、この都市も未だ平和だ。
これからヘイロー関係で騒動を起こすとはいえ、それは市民全体への教育だ。転生者じゃない。
コイツらに手出しされて解決されては困る。転生者がまだ潜んでるかもだが、コイツらほど迂闊じゃ無い時点で表舞台に出る気はないだろ。捨て置いていい。
「……まあ、期待の新社員か。シンがあの啖呵を切った上で姉を名乗る不審者の会社に入った心境は知らないけど……革命する訳でも無し。一市民として付き合いましょうか」
結局の所、俺が全て上手くやれば問題ない話だ。
異世界の生物を全滅して亀裂を閉じて仕舞えば。
魔力と異世界人を解決すれば。
任意の別世界に行く方法を見つけ、機械でも長期的な活動が出来るようになれば。
「──おはよう、新人社員諸君。今日からバシバシ教えるから、覚悟するように」
「は、はい!……社長が教えてくれるんですか!」
「社長! 会社紹介にあったペットショップの働いてる所見せてください!」
「……ッス」
〈【原作とは異世界側の使徒となった少女達がディストピアを解放する話とあるが実は──】「…おはようございます。社長」〉
「ここは社長も現場に出る中小企業、当然私が教えます。該当社員はヘイローの施術中です。客が居るからダメ。神崎、挨拶はしっかりと! はい、おはようポッター」
ヘイローを教材にしなくていいし、市民も争いに巻き込まれないし、俺も自由になれる。
「社長、これカタログにあるパターン全部覚えないといけない感じですか?」
「そうですよ相良。ここは技術の街、日々最先端を覚え続けないとあっという間にロートルと化す場所です。学習意欲は絶やさないように」
「うげぇ…」
「楽したらその分苦労するのはあなた……いや、それはそれだけって顔か。なら、足りないと思う前に実際に手を動かしてみなさい。手を伸ばすのは土台をしっかりしてからです」
「はぁい…」
その後の市民はどうでも良いのだ。俺の役目は異世界の侵略に対し人類の価値を保証し続ける事。
「…………」
「神崎、分からない所がある時は声を出すように。私は親ではないんですよ? 不規則に人見知りを発動してても良い事なんて無いので……はい、勇気を出す!」
「はい! お客の魔奏の精神機構のシャットダウンで、マニュアルに当て嵌まらない物が…!」
「よく出来ました。そこは…ああ、これは3種の基本構造の他に──…」
「…ざっ……ありがとうございます」
「はい、どういたしまして。目上に略さず感謝しただけ妥協点とします。次はもっと心を込めて……ハキハキ言いなさい」
「…はい」
その後どうなっても俺の責任にはならない。
〈【なのでその後の主人公達は──】…社長、プライベートですけど、これって電子と情報体どっちが良いですか?〉
「制御部は良し悪し、目的に合わせて選ぶから……その口の奴なら、電子一本で通すべきね。情報体を用いる程の高性能は燃費も手入れの値段も嵩張るし、化け物を相手にする訳じゃ無いんだから電子でいい」
〈ありがとうございます。【…──な事から、碌な結末に至ってないのは──…】〉
「……あの子、口で言えない分が手の方にちょっと漏れてるのがな…400年後の話なんて書かされて、前提も違うから役に立つ訳もない。けど、書き終わった時、喋り終わった時にどうなるか分からないから、加速や手伝いは出来ない……ままならないな」
勿論可能な限り平和で長続きする方法は選ぶ。
だがそれまでだ。
「あ、あのー……」
「なに?」
「い、一緒に食事に行きませんか?」
「やだ。それじゃ」
「ま、待って…! 聞きたいことがあるんです!」
「それは、仕事に関わること?」
「は…い…は、はい!」
「……分かった。でも少しだけ。私は、何も注文はしないから」
それだけなんだが……。
「どうぞ、デミソースグラタンのきのこ和えです」
「わ、美味しそう…!」
「3ヶ月」
「は、はい?」
「あなたが親と私から譲られた席を蹴って、私の下で無為に過ごした時間」
「…………」
かつかつと、テーブルを爪先で鳴らす。
苛立ちの演技もあるが、半分は本心だな。
俺からすれば時間は気が付けば過ぎ去ってるものだが、それは膨大な仕事をこなし、同じ内容の次の行動までに長い業務が挟まるからこそでもある。
俺の仕事スタイルは並列のマルチじゃなくて直列のシングルだからな。
それを誰よりも速くやってるだけに過ぎないから、こうして待ち時間があると無駄に確認の手間が増えてしまうのだ。
だから話すなら早くして欲しいなって。
今地上でオーストラリアの大規模強襲作戦の先頭指示と各区画の業務もやってるんだ。
支障は無くても思考の隅を占領してて邪魔だなぁってなってるんだよ。
はよ!…仕方ない私から話を振るぞ!
「勝者の席は有限」
「……?」
「この世界と、異世界の絶対的な法則よ。私達は社会の勝者。異世界は存在出来る情報体の数。それは、どんな方法を取っても無限には決してならないの」
「…なんとなく、分かります」
「そう。ならなんで蹴った。誰かと争う必要すら無かった筈のお前が、どうして私の下に来た」
あ、因みに最近判明した事なんだけど、異世界にも「エネルギー保存の法則」或いは「マルサスの法則」に該当するものがあると判明したぞ!
「親の頼みでお前が来るまで会社を動かし、譲った。それを蹴って何がしたい。私に関わる理由はなんだ。成功が約束されていて、どうしてそれを捨てる」
「…………」
「血の繋がりか? それとも永遠に怠惰に過ごす為に、代わりに働いて貰う馬車馬か? まさか惚れた腫れたとは言わせないぞ。女同士で関係も薄い。魅力なんて感情的な基準で惚れるタマではないのは三ヶ月の間で知った──何故だ? 何故、私に付き纏う」
「魔食限界の法則」って言うんだけどな?
異世界に繋がる亀裂に何回か使い捨ての観測機を寄越して判明したんだけど、異世界って魔鉱石に囲まれた空洞みたいな空間なのね? 半径が10光年くらいで、そこに魔力が溜まってるの。
で、外側に行くほど魔力が濃くなってさ、ほら魔力って圧縮すると魔鉱石になるだろ? だから外側は濃くなり過ぎて天然の魔鉱脈になって空間を閉じ込めてるんだよねー!
「……こ、ここに居るのが、すごく穏やかで、居心地が良かったんです」
「…………」
「わ、私は…昔から、他人に…その…え、えっちな眼で見られると言いますか…直ぐに…その…む、胸とか、股とか触られて……みんなを狂わしちゃうといいますか……兎に角! ここではそういうのが無くて、それがすごく…いいなって、思ったんです」
そして異世界って魔力を食べる生き物しか居ないんだけどさ……亀裂があるのってこの外側の方なんだよね。だから映像は撮れてなんだけど、この空洞の中心付近って魔力が全然ないのよ。
何故なら魔鉱石の表面に張り付いて食べる生物が総取りしてて、魔力は光があれば魔力のある方に集まるから。
視覚イメージ的には球体の内側に立つって感じの……「地球空洞説」みたいな感じ?
魔鉱石が大地で、その上に異世界の生物が地面食いながら、他に獲られないように土地を常に争ってる。
「時系列。それは入った後の感想。質問、入る前の心境。誤魔化さないで」
「………」
「言わないなら帰」
「いいなって思ったから……」
「……なに?」
「だ、だから! エッチにならないお姉ちゃんと一緒なら、ずっと安心出来るって、お、思ったからです!」
「………なにそれ」
だからかなー?
10光年まで広がってる辺り食べられる量は……それこそ宇宙並だとしたら、俺達からすれば果てしないんだろうけど……【表面積は有限】だ。
特に異世界の生物って増殖! 略奪! 占領!……って感じじゃん?
感染系の増殖。同化蝶みたいな略奪。鉱石ゾンビやクソデカタコみたいなゴリ押し占領。
そう考えると情報体で静かにしてるのは「空白地帯」が出来た瞬間を狙ってるっぽいね!
わはは、なんだか異世界の生態系が分かって来たぞ!
「"敵が居なくて楽な環境に逃げる負け組の思考"じゃない」
つまり魔力とか全然の俺らの世界に来てる連中は揃って「魔力が薄くても生きていけるように進化した負け組」って訳だ!
「──そんなふざけた考えで、
「(びくっ!)」
参ったなあ、この結論。
マジで異世界側は片鱗しか見せてないし知性とか期待出来ない世界の構造じゃないか。
いや、或いはガチで上位者染みた知性と力を兼ね備えた奴が居るかもだけど、そんなのがこっちに手出しした場合どうなるかって一目瞭然なんだよね。
おもちゃになるか、プチって潰されるか。
無視してくれてるなら良い。その間に亀裂を塞げばいい。見つからない内にすたこらサッサで終わりだ。
けれど、既に目をつけられてて、手を出されてる最中なら──。
転生者が、それってことにならないか?
「…ごめん、八つ当たり。最近、外との関係でマズい事が分かって……少し陰謀論者みたいな考えになってる。あなたは悪くない。悪くないけど……あなたのせいでって…せいかもって、そう考えてる私もいる」
「……ご、ごめんなさい」
「いやいい。私にも非がある話よ、これは。私がもっともっと優秀で、完璧で理想の私だったなら、こんな風にあなたに当たる事も、悩む必要だって無かった。だから、これは私の責任になる」
「そ、そんな事ありません!!」
あー…やだな、転生者が異世界側のやべー連中の遊び駒だったら。
でも原作知識とか垂れ流されてるのを確認する限り、もしそうだったら、【既に相手にとって基準になる世界が存在する】って事だろ?
世界の複製だって……半径10光年の内球世界でちょーしこける存在だ。
そのくらいなら基準の世界さえ確保すれば難しい話でもない。
俺らでも最近、鉄や銅の情報体からちょいと工夫した上で魔力を注いで、情報体に使った分の倍に増やす実験には成功した。
それも、情報体と紐付いてない、完全にこの世界の物質として…だ。
あり得るんだよなあ…理論上可能だと分かるから、尚更否定出来ない。
【転生前の最後にチラッと聞こえた神様が異世界側の一般生物】である事が。
そんなの…勝てる訳がなくね? もう、俺は最善の未来に辿り着けはしないのだ。
「お姉ちゃんは、今出来る最大限の理想を実現してます!」
……ふと、1秒だけ、あらゆる動きを鈍らせた。
偶然、自由な思考として確保していた部分に合うような言葉を聞いて。
"俺"に対して言ってるんじゃないかと錯覚したから。
「確かに、お姉ちゃんは完璧ではないかも知れません。けれど、それは理想では無い…とは違うと思うんです」
「なにそれ、屁理屈?」
「はい、屁理屈です。ですけど、完璧って、人間には土台無理な話じゃないですか。けれどお姉ちゃんは、その時その時出来る最善を、いつかに繋がる選択を選べてると思うんです。だから、理想にはなれてます。みんなの理想です」
……なんだ、その理屈。子供っぽいったらありゃしない。
「……それは、随分と……お高く買ってる」
「はい! だって私の
「こんなのに憧れるな。私は敬われるような潔白さを持っていない」
「陰陽カラーでカッコいいと思います!」
「……チェス盤と言いなさい。私は丸より四角派だ」
「キッチリしてていいと思います!」
「あー言えばこうか……はぁ、なんだか、張り合うのがアホらしくなる」
はぁ……でも、そうだな。
俺が誰かの理想になれてるってのは、マジかもな。
誰かの理想が俺で、俺の理想が誰かってな。
隣の芝生は青いってね。よく言われる言葉だが、今回は俺が折れようか。
市民にこんな事言わせたし、俺もまだまだ人の心はあるみたいだ。
反省と、譲渡をしなければな。
「……だが、やっぱりお前はSJ社に行くべきだ。いつまでも勝者の席を空白にしていれば、いつか何処ぞの馬の骨に取られてしまう。そうなったら今度こそ父と私の意思は無駄になるだろう。それこそ、私の見たく無い光景だ」
「あ…意見は変えないんですね」
「三ヶ月部下にしても意見を変えてないんだぞ? 納得も理解も昔に済ませた。それだけだ」
「むぅ……なら、お姉ちゃんも私も信頼出来る相手ならどうですか?」
「む…それなら確かに問題ないだろうが……居るのか?」
「はい! 親の世代の縁で、楽園で偶然知り合った人が!」
その後、オビリアの息子もとい第三期生のとある男子に、とんでもない立場と金が追加されることとなった。
大丈夫かな……あの子、調子乗ると直ぐ酷い目に遭うタイプなんだけど……。
一方本物は100年の研究の末に異世界の神の存在を認知し、自分の世界が複製された物だと解明し──神によって記憶を忘却させられるのを2回やっていた。