意外な関係ってありますよね。
「……社長」
「どうしましたか、神崎」
「最近メッキリ客足途絶えてますけど…なんかした方がいいんじゃないんすか? ヘイロー、街で全然見かけなくなりましたし…」
「アメリカ大陸。上への伝手から聞いた話に寄れば、アメリカ大陸の占領を目指しているそうです。その為にヘイローを集中投入するとか」
「へー、今って何処まで取り戻してましたっけ?」
「7割。今回の件が上手く行けば、全ての地域の制圧が完了しますよ」
「上手く行くといいんスけど…この仕事の需要が消えそうなのがイヤですね」
「大丈夫ですよ、全てが上手くいく程世界は優しくないので」
「……それ、なんかイヤんなる言い草っスね」
お、今通信で亀裂を閉じて、作戦が成功で終わったって連絡が入った。
これで地上にある亀裂は研究用に残した日本、中国、ドイツの奴だけか…つまり後は殺し続ければ勝ちだな。俺らの勝ちだな。
オッケーそのまま殺しまくれー…と。
ふう、倒せないまま横を通り過ぎた奴が4〜5体居るけど、他と比べれば生殖能力は低いし、結局魔力が消えればそのまま餓死する連中だ。
地上の方は後…二ヶ月もすれば掃討が終わるだろうな。やっぱり進化を上回る速さで制圧したのがデカかったか。
ふぅ……その間に異世界人の処遇決めるかあ。
どうしよう…魔力が無いと身体を維持出来ないのに、間違いなく異世界行ったら即死する戦力だよな……ヘイローをまとめて放り込んだとしても死出の旅路になるよあ……。
「社長、社長はもしこのまま地上に出られるようになったらどうしたいんスか?」
「…急ですね、神崎」
「だって店番って暇なんスもん。どうせ誰も来ないのに、ここに居る意味あります?」
「有給を取っていいと言ったのにしなかった人がよく言いますね。ありますよ、こういう備えの積み重ねが信用に繋がりますから」
「ふーん、で、質問の答えは?」
えーそうだなあ…異世界側に観測機器飛ばした感じ、他の世界に繋がってそうな亀裂は結構有ったんだよなあ…最悪それに入る為に、異世界人について行く必要があるかも知れん。
ブレスってその為の試作モデルだからな…異世界側に放り込む為の新たなコアって言うか。
でも、質問の答えはそういうことじゃないよな。俺のするべきことじゃなくて、したいことだもんな。
「……友人を探しに行きたいですね」
「え、社長友達居たんですか?」
「失礼ですね…居ましたよ。今では何処で何をしているのかわかりませんが、大切な人です」
「どんな人なんです? 男? 女?」
お、聞いちゃうか? 聴いちまうのか〜? 俺のダチの話!
10日はぶっ通しで語れちゃうぜ? ついて来れるか〜?
でも仕方ないなあ、そこまで言うなら! 数々の武勇伝を教えてやろう!
「女の子みたいな男の子でしたよ。運動神経が良くて、華奢な見た目なのに誰よりも強い人で──誰よりも底抜けの善性を持った、怖がりな人でした」
「そんな所で寝てると、風邪を引いちゃいますよ?」
「……んだよ、テメェ」
じんじんと肌を焼け付くような日差しと、それを遮る気のない雲の群れが漂う、からっとした青空。
口の中に滲む鉄の味に、擦り傷の痛み。頭が絶えず揺さぶられたような衝撃が走っていて、とてもじゃないけど立てないような時に、俺はアイツと出会った。
「はい、トラックに轢かれそうになったあなたの代わりに轢かれた人、ですよ!」
「……なんでそれで俺よりピンピンしてんだよ、マジで」
「えへへ、頑丈で器用なのが取り柄です! ぶい!」
やべー奴だなってのが、最初にアイツを見た時の感想だった。
赤信号なのに突っ込んできたトラックに轢かれそうになって、それを庇われた俺が言うことじゃ無いけど……それでも、代わりに轢かれたのに、後ろに放り出されて倒れた俺よりも元気な姿を見せていたのは、正直人間離れしていたと今でも思う。
「はー…悪い、一人じゃ立てねえ。俺を助けたオマケとして、手もついでに貸してくれ」
「ん、どーぞ!」
「すまんな……あんた、名前は? 俺は───だ」
「僕は───です! これからよろしくお願いしますね?」
それから、夏休みが終わるまでの1週間。
時間にすればそれだけの……たったそれだけの、関わり。
けど、楽しかった。人生で1番、楽しい時間だったんだ。
「やっほ、一応助けにきました!」
「マジ助かる! まさかアイツがここまでやべー女だと思わなくてな!」
「んー…彼氏思いのいい子じゃないですか? トラックに轢かれそうになったから外に出さないというのは、少し心配症な気もしますが…」
「んな事後で良いんだ! お茶持ってないで鍵開けてくれ!……なに呑気にもてなし受けてんだお前!」
「へへ、助けたお礼だと言われまして。お礼のもてなしは受けないと」
「毒入りの警戒をしろって言ってるんだよ!」
俺が彼女に不当に監禁されたその日の夜に助けに来てくれたり。
「今日は友達と一緒に踊りたいと思いまーす!」
「神社に男二人で来てやるのがそんなAVの序盤みたいな配信導入でいいのか?」
「ん! 仕方ないじゃないですか! 掃除のお手伝いだけじゃ味気ないんですから! 神社をバックにダンス配信くらいしないと損です!」
「いい子と罰当たりの反復横跳びじゃん」
「バク転空中三回転いきまーす!」
「うわすげぇ!」
ダチの神社掃除を手伝って、そのオマケでびっくり人間ショーを見て、ダチの家で夕飯を食べたり。
「なー、お前ってなんで男なん?」
「突然の性別批判!?」
「いやさー…お前が女だったら俺絶対惚れてたのに、惜しいなーって思ってさ。なんなら最初、お前のこと女だと思ってたんだけど。髪細長いし。それになんだよその清楚は白ワンピースと麦わら帽子は」
「唐突ですねぇ……別になんでもいいじゃ無いですか。パパとママは女の子が欲しかったから、合わせてあげてるだけです」
「へー……毒親?」
「なんだとぉ? 否定出来なくても言っちゃ悪いことがあると思い知らせてやります!」
「わぁやめろ! お前の腕力だとシャレにならんから!」
人気のない畦道でアイスを食ったり、外をアテも無くぶらりと散歩して、夜に花火を見たり。
「ん、おはよう!」
「おは…その怪我どうした!?」
「えへへ…またトラックに轢かれまして……2回ほど」
「2回!? え、どう見ても足大丈夫じゃないよな!?」
「大丈夫で…ちょっと、病院に電話する気ですか!?」
「幾らお前でも流石に行けって! シャレになってないから!」
「でも、そんな事したらパパとママに怒られて…!」
「なら黙ってやるよ! 金も、俺が払ったっていい! 兎に角、絶対行かせるからな!」
「う…えっと…は、はい。分かりました……」
何故かは聞いてない。兎に角アイツがまた怪我して、無理やり病院にぶち込んだ。
そしてその日の夕方には松葉杖を付いて退院出来るくらい回復して、慄いたことも有った。
放って置いたら片足を切断するしか無かったらしいが、それでも頑丈にも程があると思う。
「…あ! おはよう!」
「よ、おはようさん。急に呼び出してどうした?」
「あ…えっと…んん…会いたくなった…ってだけでは、ダメですか?」
「ば…!? 別に構わねーよ。お前にも事情があるだろうしな」
「…えっへへ! ありがとう、───。…少し歩きますけど、いいですか?」
「大丈夫だ。何処にだって、お前が呼べば来てやるよ」
「ん…それは、とっても心強いですね!」
1日を間に空けて、最後の日は二人で廃校に侵入したな。
俺らは別々の学校に通ってたから、夏休みが終わればこの関係は疎くなる。
だからせめて、もしも二人で同じ学校に通ってたらって、山を削る工事をするからって廃校になったトコに侵入して、一緒に雑談に花を咲かせて、下校して……。
楽しかったよ、本当。
最も会うべき人に会えたって感じでさ。
ずっと、何をしても楽しくて、ドキドキして、嬉しかったんだ。
だからこそ……。
「…でもさあ、トラック3連轢き逃げとかホント、運悪いよなーお前さ」
「そうですね。間違いなくここ最近が人生で一番不運な…ん。何だかイヤな揺れ方をしてませんか?」
「あ? マジか地震…なんだ縦に揺れ──走れ!」
「…ダメですね──…"桃井"。どうか今後、僕の心配はしないで──
「やべそうだアイツ今足怪我して──」
振り返れば、アイツは坂と一緒に沈没して消えて……俺は、海のように崩れる山と一緒に下に流されて……死にかけてる中運良く地表側に浮かんで、最後に目にしたのは……丁度俺の真上から倒れて来たビル。
棒倒しみたいに倒れて、近付いて、近付いて、近付いて……最後は、何処が痛いのかもわからないかくらい、ぐちゃぐちゃになりながら、暗闇の中で。
アイツを挙句に置いて行ってしまったことを悔やんで。
死んだ。
「……それからずっと、あの時の事を謝りたいなと思っている友人。それが、私の1番の友人です」
「…転生者だったんスね」
「はい、後悔の積もる転生者です。あなたが転生者である独り言を聞いたので、話しました」
「マジか……マジかー…地上に行ったら探したいって、それ元の世界に戻りたいってことっスよね?」
「はい。異世界からこの世界に繋がる亀裂もありますし、転生している以上、ここと元の世界は繋がった空間に存在する……可能性が高いので、目指してみようかと」
別に隠すことでもないからな、転生者なのは。
このペットショップがフリージアと繋がってる事を隠すのは変わらないし、言ってもいいだろ。
いやー…懐かしい話を話したもんだ。
我ながら女々しい話だが、これをモチベに頑張ってるからな。
そんな話を誤魔化したくはないし、久々に話せたからスッキリしたぜ!
「……というか質問なんスけど、その友人ってこう…天に洞って書く名前っスか?」
!!!!?!?!?!!?。
「あ、その反応マジか……へー、アイツ今年の夏休み楽しめてたんだなあ」
「え…あ…もしかして、同級生の方?」
「あ、まあはい。アイツは俺みたいな陰キャにも仲良くするタイプの奴だったんで。うち男子校ですし、普段から女装してるから有名でしたよ」
「あ…あー…あーマジですか…今世1番の衝撃かも知れない…」
「こっちも社長が前世はタメだったのがビックリですけどね」
うっわ衝撃的なこと判明したわ。
マジかよアイツの知り合いだったのかよお前。マジかー…よし。
「……少しお話ししましょう。学校での様子、知ってる限りで」
「友達に対する執着か…? これが…」
「まあまあまあまあ、ボーナスに上乗せしますから、話して下さい」
「えぇ……」
その後、俺達は仕事の終わりまで話続けた。
いやー、ひっさびさに楽しいって思える日だったぜ!
一方本物はこれまでの記録から上位者の仮説を保留したまま、より効率的な情報体の構造を発見し、そこから異世界と繋がる亀裂を創れるようになっていた。
理論上異世界生物の実行犯が存在可能であることの立証である。