そろそろ周囲の敵を把握したい頃ですね。
人工衛星。
それは未だ通信網を構築してくれている宇宙に漂う忘れ形見であり、地下に住む人類からはとっくの昔に忘れ去られた、いずれ消える過去の遺産。
外で自分たちの街を作っている開拓者と俺くらいしか現状使ってない悲しみを帯びた存在である。今後の打ち上げ予定なんて無いしな。
だが今回、コイツには非常に頑張って貰う予定だ。
おいおい怪獣が来るのにどうした? とか、お前ら以外誰も居ないだろ頭大丈夫か? とか言われそうな発言なのは自覚している。
しかし考えてみてくれ──俺はそもそもAIで、データ通信と容量さえ確保出来ればどんな電子機器にでも移動出来る存在だ。
これでも車のカーナビから外の光景をある程度見て回るくらいは出来る身だ。空からならより情報が集まっても良いし、そこから更に各地の生き残ってる電子機器から情報を集められる。
ならさ、それを利用しない手は無くないかと思った訳だ。
やらないけどな!
人類が敗北して既に5年。生き残ってる機械なんぞ塵ほどにしか無いだろう。
俺も最初に考えて、どうせ意味は薄いとやらなかったことだしな。労力に対して成果の期待できない方法である。
じゃあなにをやるかって? そんなの衛星をハッキングして、落下させながら地上を撮影させて、航空写真を撮らせる為に決まってるだろ?
飛行機が無いなら、更に上にある衛星を落としながら撮影させれば良いじゃない。
マリーアントワネットもそう言っている。
現状宇宙に奴らの手は届いてないからな。
カメラ付きの人工衛星もちゃーんと残ってるし平和なもんだ。
あのヌシがどこから来たのか分からない以上、偵察はマストな行動。やらなきゃ損なのよ。
という訳で…連写しながらはい、どーん! 写真の方は…ふんふん…うん…うん……。
絵面が面白い情報と悪い情報が3つずつ、そしてすげえ悪い情報が一つある。
先ずは面白い情報からまとめて言おう。
アメリカ大陸がデブになってて、
海にクソデケェ人型のタコが居て、
太陽の方に緑色の流れ星が射出されてた。
悪い方もまとめて言おう。
ミミズタイジャオオヌシが実はクソデケェ人型のタコの一本髪で、
各大陸が方向性の違う怪物の巣窟と化してて、
つい先ほど太陽フレアで俺以外の電子機器が壊れたってことだ。
すげぇ悪い情報、カサンドラ終わる(六回目 異世界怖すぎ)
前周では太陽フレアは起きなかった点、
写真の一つに緑の光が人工衛星横切ってる写真がある点、
以上から光の軌道などを計算して、落下する人工衛星を感知し、地表から15分程度で太陽に到達する射撃を行える存在が半径50km圏内に居ると判明しました。
ぺっ勝てる訳無いだろばーかばーか。マジでばかじゃねーの?
なんだって身近にこんな化け物が居るんだよアホらしい。
そんなの居るならさ、なんで正体が波平の髪の毛だった奴を攻撃しないんだよ。
…いや襲った時には千切れてたのか? 実際に見れてないから分からんね。
[送風機が機能していま[浄水が機能して[発電所が動作していま[通信障害が発[人口が90万減少]
おーおー管理を楽にする為に作ったサブ管理AIどもが好き勝手報告してやがる。
言われなくても分かってんだよこっちは。
へっ一瞬の通信復帰を「人類絶滅」を遠回しに言う為に使いやがって。
さて予備電源…銅線が断裂して機能してないな。ただの太陽フレアじゃ起きない現象だ。仕方ない……思考と観察以外の全機能オフ。
目ん玉かっ開いてよーく見ろよ。それが後に繋がるんだからな。
止まった送風機から緑の粒が落ちて…原因はあの発射された緑の光だな。
フレアで混ざって弾けて散らばったと見たね。
市民は…ひゃあこりゃまた…こんな身になって色々見て来たと自負してるが、鉱石に変わっていくゾンビは初めてだ。
…いや鉱石か? それっぽいだけの生き物って線は全然あるな。
まあどの道あんなの撃たれたらひとたまりもない。気にするだけ今は無駄だな。
他は…ふむ、殆ど鉱石になったゾンビが爆発した。ほう、余裕の感染能力だ、馬力が違う。
けどある程度大きくなると爆発しなくなって…いや、内部で爆発してるけど外まで届いてないだけだ。そして内部から少しずつ肥大化してるという。
けど、この増え方は非常に効率が悪いな。ほぼ誤差レベルの増殖だ。
内部の爆発の勢いも段々大きくなって…そのままだな。
もしかして威力を保持するように、内部で爆発を維持してるのか?
エンジン掛けっぱの車って印象だ。ふむ…集まると知性を持ち始めるって考えておこう。
この状態になると内部の爆発を段々強くさせながらじっとしていると。
まとめよう。
爆発して周囲を侵食する状態、爆発しないが考えられる状態…活性、非活性って名付けるか。
この能力で太陽に15分で届くとなると…計算によると、大体富士山10個分の大きさになる。写真にそれらしいのは映ってないから、地下に殆ど埋まってる訳だ。
お前の名前「ゾンビ鉱石」な。
計算したら今から約50年後には「カサンドラ」と接触すると出た。
なんだ、案外猶予はあったんだな。
猶予はあったが──今回はこれにてタイムオーバーだ。
◇◆7◇◆
「ハッピーバー」
「半年後に波平。50年後にゾンビ。サイジー博士、異空鉱石の「反転」現象の効率化を。今から緊急体制に入る。俺はこれから企業へ「開拓使との契約」を推奨するから、そんな感じで」
「分かった。相当な災害が来るんだな。やるだけやろう」
と言う訳で平和な時間は終わりだ。元から無いってのはご愛嬌な。
やれやれ、次から次へと忙しないったら! もっと期間を置いて来てくれ!
いや、もういっそ誰も来るな! 迷惑だから!
[
「……一体何をするつもりですか?」
[半年後に到来する「大地震対策」ですね。大体関東とか淡路島の2倍くらいです。計算した結果、こうでもしないとこの都市が保たないと出ました]
「大地震…分かりました。それは仕方ないですね。なんとか言い聞かせてみます」
けど来るんだよな…そんな現実には相応のもてなしが必要だろう。
市民に苦しい思いをさせると思うが、なんとかやりくりしてくれ。
俺もお前らの為に何とかするからさ?
[通告。5年の研究の結果、我々は外部への探索を行えるようになりました。その有効活用を検討した結果、企業の皆様には特別配給として、外部探索班の委託、及び戦利品から得た技術に対する特許の所有権を──]
[厳密な情報審査と検討の結果、企業を所有する市民に、とある情報を開示しました。それ以外の市民におかれましては、気になるならば個人でお調べしますようお願い致します]
まず第一区画を「ミスリル」製の防壁に。ちゃんとした防御力を確認する。
次に鉄道網を第一区画に迅速に避難出来るように増築、列車も増築しよう。
次に各区画に相手が突撃した際に、効果的に撃退出来るように爆弾版の「火剣」を開発、設置していく。勿論ワイヤーも破片も全部盛りの爆弾だ。地雷ともいう。
ははっ! 何気に人類史初の対怪物用
この際他8区画は
基本の作戦はコレで以上。今ある手札で解決する冴えたやり方だ。
これがパッと出てくる辺り、俺も管理AIとして堂に入って来たな!
後のあれこれは全部賭けだな。この世界の人類のパワフルさは十分味わってる。
より良い選択が出てくるかも知れない以上、試しに自由に外部探索をさせる事にした。
[開拓者達へ連絡──地下の企業達からの依頼、及び契約の要請があります。内容を聞きますか?]
駒は勿論オラが村を頑張って作ってる半怪人の連中である。
言い換えれば高報酬高難易度の依頼だ。奮って参加してくれよな!
契約は市民同士の物だから俺からは口出ししないぞ。是非とも一発狙って行ってくれ。
これでやれる事はやるだけやった。
後はいつも通りの仕事をしながら待つとしよう。
「ふう……手にしてみせろ、市民共。怪獣を殺す兵器、地上の戦利品、一攫千金の情報、俺の予想すら超える結果を」
全員に平等にチャンスは与えてやった。スタートは違えど、ゴールは数多とあるレースだ。
既に共に産む道は貨幣と共に潰えたと、今日の都市は昨日と違うと知れよ?
じゃなきゃ置いてかれるのは自分自身。
最後には俺が命を助けてやるが、それも限度がある。
走れ走れ、俺すら食らえるくらい真っ当に強くなれ。
いいか、真っ当にだぞ?
絶対アイドル化した俺に夢中になるとか、そっち方面はやめろよ。
堕落や負の側面で俺の管理を超えられたら困るんだよ。頼むから王道を走ってくれ。
頼むぞー…ほんっとうに頼むぞー…お前らは何かやらかすって確信してるけど、どういう方向かはこっちは全然分からないんだからなー…。
そもそも俺がやりたい周回って、お前らが得た成果を過去に戻って先に手に入れる感じなんだよ。
決してさ、
「俺が──王だぁ!」とか、
「フリージア様素敵! アイドル奴隷にする!」とか、
「退職しまぁぁぁぁす!!」とか!
そういうのは全く求めてないんだ! 2度とやるなよわかったか!
………あぁぁ…不安だ…出来る事なら全て管理下に置いておきてぇなぁ…。
一方、本物の管理AIはゾンビ鉱石と契約した神?を争わせて漁夫の利を得て、契約も踏み倒しました。代わりに人口は7万人ですが。