続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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日本の遺憾声明、その影響は?


第1章 10話

 スパン南基地の指令室にネント中尉がお別れの挨拶に来ていた。スパン王国のパイロットたちの訓練が終了し帰国の挨拶に来ていたのだ。

 

 「いろいろとご配慮いただきありがとうございました。」とネント。

 「いえいえ、これからが大変ですよ。」と日野三佐。

 スパン王国には空軍はなく、陸軍の航空部隊として急遽造られた飛行場に配置されるのだ。

 

 「はい、分かってます。自国でしっかり訓練をつむつもりです。」

 「そうそう、例のまやの攻撃、政府の声明がでました。イカン声明でしたよ。」と日野。

 「攻撃、誠に遺憾に存じます、でしたね。」そういってネントは笑った。

 

 日本は国内には日本語で、諸外国には衛星を通じて、英語、ポルトガル語、フランス語で声明を放送していた。諸外国にはそれぞれの国の受信領域の電波を使って発信していた。

 「誠に遺憾」は、訳すと「非常に残念だ」なのだが、フランス語では「滅茶苦茶、残念で悔しい、謝れ」だった。

 

 バジル執政官は北方への侵攻は無理だと考えていたが、イカサス軍務大臣は、コンガの侵攻やシェラリベの制圧を休止してでも北方へ侵攻すべきだと思っていた。コンガの侵攻が難攻であることも、シェラリベ共和国が反逆したことも軍部の恥ではないが、戦艦2隻の撃沈は海軍の恥であった。海軍出身のイカサスには我慢のならぬことだったのだ。でも、バジルに止められていた。

 

 そんなイカサスが二ホンの声明を聴いて立腹したのは当然であった。二ホンの発した声明は、カメリル国の放送局がキャッチし、国内に放送されていたのだ。

  (被害があったのは我が国、残念で悔しいのはこちら。なのに謝れだと。)

 それまで、戦艦を沈めたのがスパン王国だと思っていたイカサスは、二ホンという国を初めて耳にして、その国を調べるように諜報部に指示をした。

 

 怒りを抱いたのはイカサスだけではない。戦艦が撃沈したことを知らないほとんどのカメリル人が、意味不明なことを言ってカメリルに難癖をつける二ホンとやらを成敗せよと言い出した。

 

 正義院議会でも二ホン征伐・宣戦布告の決議がなされたが、二ホンがどこにあるか分からず、その調査をすることになった。正義院議員であるセイルが議会で、二ホンの情報がバハナミ神殿の古文書倉庫にあるという発言をした。それを受けて調査員が詳しく調べたが、セイルが調べた事柄しか出てこなかった。

 

 カメリル国は軍が、部隊が、突如襲撃することがあっても、国家として予告もなく、国を襲撃することはなかった。どの国も降伏を勧告して、その拒否を確認してから戦いを挑んでいた。

 結局、二ホンの位置は不明のままだったので、唯一分かっている二ホンの基地で、降伏の勧告をすることになった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カメリル国の真っ白い船バハナミ号は、外交のために使用される海軍の船で、大きくはないがバハナミ神殿の名を冠した豪華な船であった。攻撃の装備のない船であるが、外交官を守る陸軍の武装兵が多く乗り込んでおり、周りを戦艦や航空母艦でかためている。

 戦艦を沈められたササドは、交渉すべき基地の位置を知っているという理由で、バハナミ号の船長を命じられていた。

 「セイル外交官殿、この度は大役、ご苦労様です。」

 ササド船長は貴賓室のセイルに挨拶に来ていた。

 「よろしくお願いしますね。ササド殿は敵基地を知っているのですね。どんな基地でした?」とセイル。

 「基地の様子は分かりません。基地を見る前に沈められましたから。敵の船がいたら、攻撃は控えた方が無難かと思います。」

 「攻撃に行くのではないことを、戦艦の艦長たちに言っています。交渉に行くのですから。」

 

 セイルを乗せたバハナミ号は両側に戦艦、後ろに航空母艦を引き連れて北進していた。航空母艦にはヘリコプターと戦闘機が搭載されていた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木はスパン南基地の指令室に来ていた。

 「日野さん、消音装置の付いた銃を10丁ほどいただきたいのですが。」と三木。

 「ダメですよ。無茶言っては。」

 「そこを何とか。」

 「何に使うんですか、10丁も。」

 「リベルテで特殊部隊を立ち上げましてね。結構優秀ですよ。大概の武器はリベルテで手に入れることができますが、消音銃だけは。あることはあるのですが消音とは名ばかりで。」

 「そうですか、特殊部隊ですか。でも、ダメです。ドローンのようなわけにはいきません。すべて、自衛隊の備品です。」

 「そうですが、以前は何でもいただいていましたよ。」

 「それは上から渡しなさいと通達があったからです。今は渡せば問題になる。ダメです。」

 「・・・・・」

 

 「それはそうと面白いものをお見せしましょう。」と言って、日野はモニターのスイッチを入れた。

 モニターには北上しているトメリアの船が映し出されていた。

 「カメリルですね。おっ、進路を北東にかえましたよ。GPSもないのに大したものですよ。」と三木。

 「あはは、簡単なことです。右手に陸地を見ながら航行すれば、こちらに来ますよ。」と日野。

 「そうですか。2隻は戦艦ですね。もう1隻は航空母艦、あの小さい白い船は?」

 

 「多分、使節団の船、交渉に来てるのでしょう。2隻の戦艦が沈められたんだから、侵攻ならもっと多くの艦隊で来るはずです。ところで、日本のイカン声明、見ました?」

 「えっ、イカン声明?」

 「誠に遺憾に存じますという声明。」

 「ああ、観ました、リベルテのテレビで。フランス語で、めちゃ悔しいねん、いてまうぞって。」

 「あは、何て訳し方ですか、こちらに長くいた人とは思えない。」

 「あなたの方が長いでしょう。」

 

 そんな会話をしていると、モニターに別の戦艦が映し出された。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 航路を北東に変えていたカメリルの船団は、北方に陸地が目視できるところまでくると、その港から戦艦が3隻、こちらに向かってくるのが見えた。

 カメリルのササド船長は、バハナミ号を停泊させた。2隻の戦艦と航空母艦は、やってくる戦艦に向かって航行する。

 

 「我が国の戦艦を沈めたのは、あの艦ですか?」とバハナミ号の甲板で双眼鏡を覗いているセイル外交官が尋ねた。

 「違います、沈めたのはもっと貧弱な装備の艦です。」とササド。

 「すると、攻撃されるとマズいですね。」とセイルの警護に張り付いているマーヤ曹長。

 「いいえ、大丈夫です。目的の基地の船とは違います。それに、目的の基地はもっと東です。」

 

 北方からくる戦艦3隻はスパン王国の海軍の艦である。

 ドン、バシャーン。警告もなく、スパンの戦艦が砲撃する。売られた喧嘩は買うのがカメリル。ミサイルが発射され、スパンの戦艦が爆発する。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 スパン南基地の指令室では、モニターを観ていた三木が尋ねた。

 「 あれはリベルテの戦艦ではないですね。スパン王国?スパンはロマスクの要請に応じているのですか?」

 「いえ、様子見のはずです。海軍が突っ走ったのだと思います。陸軍は動いてないですから。」

 「そうですか、あれ、あれ、ヘリで救助してますよ。カメリルは敵兵も助ける国ですか?」

 「取り調べで何人か捕虜にするつもりでしょう。皆は助けない。」

 日野の言う通りであった。ヘリは何人か救助すると空母へ帰っていった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 バハナミ号の貴賓室にササド船長が報告にやってきた。

 「攻撃してきた戦艦はどこの国のものでした?」とセイル外交官。

 「空母の捕虜は、スパン王国と言ってたそうです。」とササド船長。

 「何の警告もなく砲撃するなんて、野蛮な国ですね、」とマーヤ曹長。

 

 (王国、王政・・・ ロマスクは帝政だし、この地方は1000年前から歴史が止まっているのだろうか?砲撃した戦艦を簡単に沈めた我が国の艦が、敵わない艦とは?装備は貧弱で巡視艦のようだったとササド船長は言うけど。)

 セイルがそんなことを考えているとバハナミ号にボートが近づいてきた。

 

 貴賓室にやって来た船員が言った。

 「失礼します。セイル外交官殿、 敵基地へは空母からヘリでいきます、ボートにお乗りください。」

 交渉の連絡と了解は航空母艦でのやりとりで終えていた。

 




セイルが日本の基地にやってくる、どう対応する?
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