スパン南基地の指令室では、三木と日野三佐が話していた。
「近くまで来ていますよ。交渉の外交官は?」と三木。
「いません。上はお前がやれと。困ってます。」と日野
「攻撃されても大丈夫ですね。まやもいるし、戦闘機もひかえているし。」
「その方がありがたい。交渉は辛い、初めてだし。」
「私も同席させて下さい。」
「それはダメだ。民間人の部外者を参加させるわけには。」
「黙ってれば分かりませんよ。」
「そういう問題ではない。それに多くの部下の眼もあるし。」
「そこをなんとか。カメリルの狙いや意図の情報をリベルテに知らせる必要があるんです。お願いします。」
日野は「困りましたね。」といって、机の引き出しからワイヤレスイヤホンを取り出し、それを三木に渡して言った。
「御存じですね、盗聴装置。交渉の時、身に着けるように命令されています。日本でその様子が分かるように。そのイヤホン、聞けるように設定しています。」
「ありがとうごさいます。」
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ヘリの眼下に護衛艦まやが見える。セイルはササド船長の言った言葉を思い出していた。
(貧弱な装備で巡視艦のようだった。)その通りだと思った。そしてその艦が我が国の戦艦を沈めたことが信じられなかった。
基地のヘリポートに誘導されて、ヘリが着陸する。
ヘリから護衛の陸軍兵士2人、マーヤ曹長、最後にセイル外交官が降りてきた。日野はヘリポートで敬礼をして出迎える。周りにいる自衛官も敬礼をしている。
日野が使節団を近くの建物の会議室へと案内する。会議室に入るまで、出会う人が全て立ち止まって敬礼をするのにセイルは驚いていた。
会議室にはカメリル側に座席が4つ、テーブルを挟んで日本側に座席が1つ置かれていて、日野が席に着くように促した。カメリル側が席に着くと、日本側に日野が座った。
それを見たマーヤが挨拶もないまま叫んだ。
「失礼ではないか!代表者はいないのか!」
マーヤは案内をするような者が高位の者ではないと思っていた。カメリルでは外交官や代表者は部屋のの中で待っているものなのだ。
「失礼なのはあなたですよ。失礼しました。外交官のセイルです。よろしく。」
セイルは気付いていた。出会う人が敬礼するのは自分たちに対してではなく、案内をしている人に対してであることを。
「日野と申します。この基地の責任者です。」
少し間をおいてマーヤの方を見て、「代表者です。」と言って笑った。
「ところで、どのようなご用件で」と日野。
それには答えず、セイルは尋ねた。
「二ホンは我が国と同じ言語ですか?」
「いいえ、全く違います。」
「それにしては、カメリル語がお上手ですね。」
(カメリル語?そういえば同じ言語なのにスパン語と言ってたな。)
「この地方に長くいたせいでしょうか、多少は話せます。で、何の御用でしょう?」
「我が国の兵が捕えられていることは知っていますね。」とセイル外交官。
「はい、存じています。」と日野三佐。
「その兵を返してもらおうと思いまして。」
「無理です。それはロマスクで交渉してください。我が国には関係ありません。」
「関係ないですと、おかしいですね。二ホン人がいましたよ。」
日野は三木のことだと気付いた。
「いたかもしれませんが、ロマスク国籍の二ホン人なのでしょう。二ホンとは関係ありません。」
「では、我が国の戦艦を沈めたことは?二ホンと関係ありますね。」
「・・・・・」
「沈めておいて、残念だ、謝れって、どういうことです?」
「それは・・・警戒しているだけの護衛艦を攻撃したから。」
「おかしいでしょう?被害はこちら、謝るのはそちらでは?」
「じゃあ、あなたの国はスパン王国に謝るのかね?」
「??、どういうことです?」
「あなたの国は、スパンの戦艦の攻撃を反撃せずに沈められるのを待つというのかね。違うよね。3隻も沈めた。」
(どうして知っているのか、日本は神の眼でももっているのか。そういえば、町の住民の避難も侵攻を知っていたふしがあった。この地方は不思議なことばかりだ。)セイルは言葉に詰まった。
「攻撃してきたから、沈められる前に沈めた。我が国も、だから沈めたのです。」と日野が追い打ちをかける。
「捕虜も返さない、謝罪もしない。平行線ですね。当然、降伏する気もないですね。」とセイル。
「降伏?どうして?」
セイルはそれには答えず、宣戦布告文を日野に渡した。日野は状況を日本に伝えるために、大きな声で言った。
「宣戦布告!」
セイルは予期せぬことに日野が驚いたと思った。
「降伏すれば、戦いは避けられます。民のため、降伏することをお勧めします。」
「ここは単なる日本の基地で、私はその責任者にすぎぬ。だから、回答することはできない。要求は伝えておく。お引きとりを。」
そう言って日野は立ち上がった。
・・・・・・・・・・
カメリル国のヘリを見送った日野は、三木のいる部屋に入った。
「お疲れ、少女の外交官、すごいでしょう。」と三木。
「はい、14・5の少女とは思えません。」と日野。
「宣戦布告ですか、どうします?」
「どうするもこうするも、私が決めることではありません。攻撃してきたら守るだけです。」
「日本は逃げれませんね、宣戦布告ですよ。リベルテは喜ぶでしょう。やる気満々ですから。」
「ところで、三木さんの立ち上げた特殊部隊ってどんな部隊ですか?」
「それは言えませんね。私はリベルテに雇われているのですから。」
「でも、日本人でしょう。」
「日本人?最近思うのですが、日本人って何だろうって。リベルテ人もスパン人もロマスク人もプロリ人もみんな浅黒い肌の人が多くて、白人、黒人、黄色人種が混ざってる。どこも同じ。リベルテ人とは、リベルテに住んでいるからリベルテ人という根拠しかない。言語も同じ。なのに、リベルテ語、スパン語、ロマスク語、プロリ語、多少方言はあるが。私をロマスク国籍の二ホン人とか言いましたね。国籍をとればロマスク人になる。見たでしょう、カメリルの外交官。カメリル人ですよ。でも、日本に来て、舌足らずの日本語で歌でも歌えば、間違いなく日本のトップアイドルになる、そんな日本人そっくりの少女ですよ。」
「そうかもしれませんが、あなたは日本国籍の日本人です。」
「ですね。知らず知らず、日本のために動いてる。職務でもないのに、なぜなんだろう。まあ、ちょこっと部隊のこと、教えましょう。どこにも負けない、何でもできる戦闘部隊を目指しています。で、カメリル、外交官が帰れば攻撃してきますよ。」
「分かってます、攻撃を待ってます。」と言って日野は笑った。
「相手もバカではないんだから、もう、まやにミサイル攻撃はしないはずです。ミサイルはこちらに来ますよ。基地にミサイル攻撃して逃げるのでは?」と三木。
「そうかも知れません。でも、大丈夫。以前、リベルテとの戦いのとき、戦闘機を携帯 対空誘導弾で撃墜させた操作隊、実は高射特科団で、まだ何人かこちらに残っています。短距離地対空誘導弾の装置もいくつかあります。戦闘機が来ても大丈夫。空中戦はこちらの戦闘機の方が断然強い。まあ、三木さん、ゆっくり楽しんでください。」
そう言って日野はまた笑った。
(度胸がついたというか、貫禄がついたというか、以前の国交使節の警護隊長であった時とは雲泥の差だ。時は人を変える。いや、経験が人を変えるのだろう。)三木はそう思った。
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日本政府は、カメリル国の宣戦布告と偵察衛星が送ってきた赤道直下の新たな映像に困惑していた。困惑するだけで手の打ちようがない。カメリルも新たな映像の場所も、日本からはあまりにも遠い。日本はカメリルの位置を知っているが、カメリルは日本の位置を知らない。当面、カメリルが日本本土を脅かすこともない。スパン南基地は攻撃を受けるかもしれないが、対応は基地に任せて、日本政府は何もしないで様子を見るという選択をした。国内へは、新ユーラシア大陸西部の4か国への旅行などを控えるよう通達をして。
新地球事情調査室は難題の暦の検討の作業が進まないまま、亜人、人種の検討をするように課題を与えられた。というのは、DNA鑑定で個人の特定、親族の特定、人種の特定ができるので、亜人と呼ばれる人たちのDNA鑑定をしたのだった。驚くべきことに、猫耳熊耳の人たちが日本人と鑑定されたのだ。亜人ではないトメリア人、サンパル人などは日本人と異なる人種と鑑定されるのに。生物学的には亜人と呼ばれる猫耳熊耳の人たちの方がトメリア人やサンパル人よりも日本人に近いという結果であった。その謎を解くべく調査せよということである。
新地球事情調査室は、また難題の課題に取り組むことになった。
惑星歴502年、新地球の動乱の日々は終わったわけではなかった。赤道直下の新たな映像とは?
第1章 (完)
赤道直下新たな映像とは?第2章で明らかに