続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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スマル少尉たちは?


第2章 4話

 カメリルの陣地にゴンガの兵が襲撃する数時間前、スマル少尉たちはゴンガの兵と戦っていた。

 倒しても、倒しても、敵の数は減らない。

 

 (部下は全員無事、だけど、弾や弾薬が無限にあるわけではない。降伏に命をかけるか)

 スマルがそう思った時、地面が動いた。そして、地面から人の顔が出てきて、手招きをしている。

 

 スマルは近づいて覗く。地下への階段がある。怪しいが、スマルはこちらにかけた。部下に声をかけ、地下に逃げるように指示した。後は運命にまかす、そんな心境だった。

 全員が地下に潜ると階段の扉が閉まった。薄暗くなったが、真っ暗ではない。階段の下ほど明るい。顔を出した男に導かれて、スマルたちは階段を下りて行った。

 

 そして、スマルたちは驚くべき光景を目にした。地下に集落があるのだ。空はない、巨大な岩盤で覆われている。その岩盤にはライトが灯っており、集落全体が明るい。空間は、それほど広くはない。民家が10数軒ほどで畑などもあるが、周りの岩盤の壁が目視できる。

 

 スマルたちは、集会場のような建物に案内された。途中、何人かの人とすれ違った。人である、戦っていた化け物ではない。

 案内人が「この集会場で待っておれ」と言って去っていく。

 スマルたちはまた驚いて顔を見合せる。カメリル語を喋ったのだ。

 

 しばらくすると白髪の老人がやってきて、口を開いた。

 「驚いたかね。かつてこの地はコンガ共和国と言ったが、今はその国もない。我々はあなたたちを助けた、今度はあなたたちに我々を助けて欲しいのだ。」と言って話し始めた内容は、衝撃的だった。

 

 コンガ共和国は600年程前、人々は、降り注ぐ紫外線を避けて地下や建物の中に避難した。紫外線の強い外部での活動も必要なので、人型AIロボットや亜人をつくり、屋外の仕事をさせた。それができたのは首都ルマナとその近郊だけで、他の地域は地下に逃れても、食料などの確保ができず、次第に滅亡していった。

 コンガ共和国の人口は激減したが、ルマナとその近郊の人々で国体を維持し、平和を保っていた。ところが、10年前、異変が起きた。人型AIロボットが人間のコントロールを拒否し始めたのである。

 それからの国体の崩壊はあっという間であった。人型AIロボットはどこでも活動でき、武器ももってる。それに、死なない。人間とロボットの戦いで多くのロボットを壊したが、人型AIロボットは修理のすべも知っており、部品の交換も自分でできる。そもそも部品工場を人型AIロボットに任せていたのだから、簡単なことであった。

 人は死ねば生き返らないが、人型AIロボットは何度でもよみがえる。人間がロボットを攻撃する武器や砲弾は、それをつくる工場が人型AIロボットの管理下にあるのだから、勝敗の行方は時間の問題でしかなかった。

 ルマナは人型AIロボットの支配するところとなり、知能の低い亜人がその手下となり、人は亜人の奴隷となった。それがこの地の現状だと言った。

 そして、ここに住んでいる人たちは、人型AIロボットのいるルマナから離れているため、人型AIロボットに察知されていないだけだと言う。

 

 最後に、「食物や物品のすべての生産を、ロボットと亜人にやらせたつけが回ってきたのです。」と老人は自嘲気味に言って説明を締めくくった。

 

 「質問をいくつか、いいですか?」とスマルは言って、返事を聞く間もなく、「あなたたちはカメリル語を話すのですか?」と尋ねた。

 「カメリル語?こちらではコンガ語と言っている。この地方の言語は少なくとも5つ以上、いくつあるか知らないが、異なる言語がある。コンガ語はかつての共和国の公用語です。」と老人。

 「人型ロボットと言うのは分かりますがAIって何ですか?」とスマルが質問をする。

 「人工知能です。学習をする能力のあるロボットと言った方が分かりやすいでしょうか。」と答えた。

 

 スマルはその老人に言った。

 「その人型AIロボットを我々に倒して欲しいと言うのですか。」

 「できればいいが無理だろう。怯えながら生きている我々をここから救ってほしい。あなたたちの国に連れて行って欲しいのです。」

 「でも、ここは安全なのでしょう。」

 「今のところは、でも、住めなくなります。」

 「どうして?」

 「天井のライト、見たでしょう。生活のリズムが狂わないように時間で点いたり消えたりします。」

 スマルはそんなことが可能なのかと驚いた。

 

 そして、その電気はどこから来ているのか気になった。

 「電気はどこから?」

 「ルマナの発電所からです。地下に電線があります。人型AIロボットが支配しても、送電線は手を付けなかったようです。電気がロボットの生命線ですから。

 でも、もうすぐライトの寿命で、真っ暗になります。各家のライトも同じです。多少、予備のライトがありますが。畑の作物も人工的な光で育てています。それもやがて、できなくなります。私たちは、ここから出なければ生きていけません。ライトの寿命は10年と言われてましたが、よくもっているなと思っています。」

 

 「えっ、10年、長いですね。」

 「ダイオード電子ライトです。長くはありません。もう限界です。」

 ダイオード電子ライト?スマルには理解できなかった。

 

 「何人いるのですか?」とスマルが尋ねる。

 「赤ん坊も含めて50人ほど」と老人が答える。

 「外への出口はあの階段だけですか?」

 「いえ、あと2か所あります。」

 「もう一つ、ミサイル発射装置の位置、分かりますか?」

 「私は知らないが、知っている者がいるかも知れません。聞いてみます。」

 

 スマルはカメリルの軍がもう一度やってくると予想していた。敵を倒すことは無理でも、軍がやってくれば、老人の希望を叶えることは簡単だと思っていた。そして、この地下集落を見ていない兵に、老人の話したことを伝えても、信じてもらえないだろうと思った。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 コンガの草原にあるカメリルの陣地に武装警護車がやって来た。運転手と警護の武装兵だけで誰も乗っていない。カイル大佐がセイル外交官のために手配した車である。

 

 敵兵を追い払った戦車が10台ある。侵攻しない手はない。先日、戦って戦車が全滅した地点まで進み、そこに再び陣を構え、敵襲に備える計画である。陣地が完成すると、アカサ少将とセイル外交官呼ぶ手はずであった。

 スマル少尉の部隊だった兵は、トロル中尉には目障りだったので、少将と外交官の警護に残るように指示すると、兵たちが猛然と反対した。兵たちは、スマル少尉たち仲間の遺体を探し埋葬するつもりであった。理由も言わずただ逆らうだけの兵たちに業を煮やしたトロルは叫んだ。

 「残れ!命令だ!」

 

 「連れていけ、警護は私の参謀と部下だけで十分。」とアカサ少将。

 少将の言葉に逆らうわけにはいかない。トロルはスマル少尉の部隊だった兵たちを連れていく以外にない。渋々承諾すると、今度はとんでもない人が連れていけと言い出した。セイル外交官である。とんでもないと猛反対のマーヤ曹長。しかし、トロルは満面の笑みで承諾した。

 

 トロルはセイルがついてくると、やってきた武装警護車に乗れると思っていたのだ。かつての北方遠征で乗り心地の良さは体験済み、トラックなど比ではない。走行速度も断然速い、退却も安全。セイル様様であった。

 

 草原をカメリルの戦車が、先日の地雷での二の舞は踏まぬと、縦列で進む。後方を兵や食料、砲弾、弾薬などを載せたトラックが続く。最後尾を武装警護車、中にはセイル、マーヤ、トロル、イマトがいた。マーヤは嫌な顔をしているがセイルは平然、トロルとイマトは乗り心地の良さに満足。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 (すごいシステムだ。集落全体に夜と昼がくる。)

 スマルはそう思った。地下の集落の1日を体験したのである。

 昨日、白髪の老人がミサイル発射装置の位置を知っていると言う男を連れてきた。

 それは、4か所もあるという。老人がこの地域の地図を出し、スマルに手渡した。その地図にはミサイルの位置4か所がマークされていた。

 

 スマルたちが寝泊まりしている集会場に白髪の老人がやって来た。

 「あなたたちが来た方向から、軍隊がやって来てます。」と老人が言った。

 「どうしてわかるんだ。」思わず誰かが言った。

 老人はそれには答えず、スマルに「ついて来てください。」と言って、集会場を出る。

 

 天井のライトが昨日より暗い。スマルが歩きながら、老人にそれを指摘すると、「はい、寿命がきているのです。ライトはパッと切れたりはしません。だんだん暗くなっていくのです。」そう説明した。

 

 老人の後から小さな家、と言うよりも小屋と言った方がいい、そこに入ったスマルは驚愕した。2台のテレビに戦車の列やトラックが映し出されているのだ。

 「森の樹木に設置した2台のカメラの映像です。」と老人が説明した。

 

 (我々が助けられたのも、これで見ていたからなのだ。)スマルはそう思った。そして、我が国よりも科学技術の進んだこの人たちを我が国に迎え入れれば、必ず我が国の利益になると思った。

 「皆さんの脱出、可能かもしれません。準備をするように伝えてください。」

 スマルはそう言って、集会場へ引き返した。そして、部下たちに、

 「お前たちは助けてもらったここの人たちを守れ。我が国の敵の民、仲間が殺された恨みで攻撃する兵もいるかも知れぬ。出るときは連絡する。出口は3か所、別れて配置せよ。」と言った。

 部下たちは、ここへ逃げなければ全滅していたことを理解していた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 戦車の列は、白い建物が見える位置で停車した。白い建物から誰も出てこないし、攻撃もない。破壊されたり動かなくなったりした戦車の残骸がある。その残骸を壁にするように陣地をつくる。

 スマルの部隊だった兵たちはあたりの死体を見て回る。まだ、腐敗していない。10人ほどで顔も知ってる。兵たちは、顔を合わすと互いに首を振っている。あるのは化け物の死体ばかり。ないのだ。仲間の死体がない。

 

 1人の兵が地面の草が揺れ動き、人が出てくるのに気付く。

 「スマル少尉!」その兵は驚きと喜びの混ざった声をあげた。それを聞いた兵たちが振り向き、スマルの所へ駆け寄ってくる。

 「よくぞ、ご無事で」との言葉にスマルが返した。

 「みんな生きている、それより、指揮官の所へ案内しろ、話は後だ。」

 「武装警護車の中にいます。」と言って1人の兵が案内する。兵たちがその後をついて行く。




どうする、スマル少尉?
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