続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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トロル中尉の思惑通りに? 


第2章 6話

 イマト少将が陣地に戻ってくると、トロル中尉は目視できる敵の白い建物を攻撃するから準備せよと指示した。それを知ったスマル少尉はこちらの防備が不十分だと反対した。

 (何でも反対するスマルめ。)そう思ったトロルは、スマルに言った。

 「戦うのが怖いなら、お前たちはここで防備に専念せよ。」

 そして、イマトに攻撃のため侵攻を命じた。

 (地下都市もロボットも、何を言っても無駄。)そう思ったスマルは、トロルに願い出た。

 「防衛のため、戦車5台は残しておいて下さい。」

 トロルは、この臆病者がと鼻で笑いながら、「イマト、5台でいけるか?」と尋ねた。

 「大丈夫です。」とイマトが答えた。

 

 

 陣地の近くはまだ地雷のある可能性が高く、地雷探知機で調査していた。安全確認をした箇所を通過して、戦車5台が縦列で進んで行く。最後尾の戦車にイマトが乗っていた。

 「1台でも攻撃されたら退却を命じるのですよ。」とスマルが忠告、イマトも敵にロケット弾がないとは思っていなかった。

 

 白い建物が戦車の射程距離内に入ると、砲撃を開始した。

 ドン、ドカーン。建物が崩れる。中から兵が出てくるが、それほど多くはない。次々と戦車の砲撃が続く。建物は完全に崩れ去り、出てきた兵も砲撃の餌食になった。

 

 その様子を、スマルの指示で建てた櫓から、トロルは双眼鏡で戦況を覗いていた。その隣には双眼鏡を覗くスマルの部下もいた。

 「見たか、完勝だ・・・・ん?お前、どっちを見てるんだ。」

 この櫓は、敵兵が後方から攻めてきたのは地下からの出口が後方にあると考えて、その出口を見つけるために建てられたのだ。兵はトロルの言葉に応えず、黙ってスマルの指示に従っている。

 (スマルの部隊は変な奴ばかりだ。)そう思いながら、トロルは双眼鏡を覗く。

 

 戦車隊は崩れた建物に向かって前進していく。先頭の戦車が崩れた建物に達した時、戦闘の戦車が爆発する。ドカーン。ロケット弾の攻撃だ。すぐにイマトは退却命令を出す。

 前方から亜人の兵が銃を放ちながら出てくる。どこにこんなに多くの兵がいたのかと思うほど、次から次に増えていく。

 

 「後方から敵です!」櫓で警戒していた兵が叫ぶ。トロルは双眼鏡で覗くのをやめ、青くなっている。スマルは戦車2台を残し、3台を後方にまわす。そして、部隊を塹壕に配置する。

 

 退却してきたイマトの部隊は、戦車の残骸でバリケードを築いている位置まで戻ると向きを変えて突進してくる敵兵を砲撃する。同時に待機していた2台の戦車も砲撃を開始ずる。

 ドン、ドン。固まって突進してくる敵兵が飛び散る。

 

 塹壕で敵を待ってた部隊が一斉射撃。

 ダダダダダ。敵兵が倒れていく。

 ドン、ドン。戦車の砲撃。亜人の敵兵が草原の草や土と共に飛び散る。

 

 やがて、砲撃と銃撃の音が止み、静寂が訪れる。大地を埋め尽くさんばかりの敵兵がいなくなっていた。

 青くなってたトロルは、多くの敵兵を蹴散らし御満悦であった。イマトもホッとしている。

 スマルだけがこの静寂に不気味さを覚えていた。

 (敵は地下に潜った。あの亜人の敵兵が、戦況不利とみるとあっという間に退却、誰かが指示している。我々は敵から監視されている。丸見えなのだ。)

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ボントの街まで戻ったセイル外交官は、帰りの車の中で聞いたコンガの白髪の老人の話を、思い出していた。

 (人型AIロボットが支配するところか。学習能力のあるロボットの存在さえ信じられないのに、それらが人を支配するなんて。でも、ラーテルもどきの化け物が存在することは事実、亜人とか言ってたが、それをつくる技術があれば・・・、この戦い、苦戦するかも。しかし、老人の言う通り、今のうちに何とかしないと。ロボットが自分たちをつくることを覚えたら大変なことになる。)

 

 セイルはそんなことを考えながら、街を散策していた。すると、突然、「セイル・ド・ツール様ですね?」と老婆に声をかけられた。

 セイルの後をついて来ていたマーヤが素早くセイルと老婆の間に入り、銃を手にして「無礼者!」と老婆を睨む。

 大嫌いなガボリ人であったが、自分の名をフルネームで呼ばれたセイルは、「マーヤ、邪魔です、下がりなさい。」と言って、「どうして私の名を?」と尋ねた。

 

 老婆は、それには答えず、「ゴメス様のお子様ですよね?」とさらに尋ねる。

 (父の名を知ってるとは・・・何者?)そう思ったセイルは警戒しながら、尋ねた。

 「そうだが、あなたは?」

 「その角で、レストランをやっているものです。大事なお話が、ここではまずいので私の店で。」

 マーヤは首を横に振っている。セイルはそれを見て答えた。

 「分かりました、連れて行ってください。」

 

 セイルは、自分の父の名まで知っている老婆に興味を抱いたのである。マーヤは占領の民について行くことがいかに危険なことかを知っていて反対している。でも、言い出したら聞かないセイルであることも知っていた。

 

 

 老婆は街角のレストランに入った。セイルが続いて入ると、食事をしていたガラの悪そうな男たちが珍しそうにセイルを見る。マーヤは銃を握りしめる。

 「どうぞ、こちらへ。」と言って老婆は階段を上がっていく。2階の小さな部屋に案内されたセイルたちがすすめられた椅子に腰かけると、「しばらくお待ちください。」と言って、老婆は部屋から出て行った。警戒しているマーヤは辺りを見回す。

 (どうも、この部屋は家族連れなどが食事をする個室のようだ。仕掛けなどはないみたい。)

 

 マーヤがそう思っていると、出て行った老婆が初老の男を連れて戻ってきた。セイルが立とうとするとそれを制して、「どうぞ、そのまま、こちらは弟のボブです。厨房を任せています。」と言って、自分も椅子に腰かけた。続いてボブと呼ばれた初老の男も腰かけた。

 セイルが尋ねた。

 「どうして、父の名を?」

 「ゴメス様はこの店を贔屓にして下さって、よく部下を連れて食事に来て下さってました。セイル様の名もその時に教えていただいたのです。とてもかわいい子だと自慢していました。」

 「で、重要な話とは?」

 「実はゴメス様が殺害された時、この弟が偶然現場にいて、見ていたと言うのです。」

 そう言って、2人が話し始めた内容は、セイルにとってあまりにも衝撃的であった。

 

 老婆の店は今でこそ大きなレストランになっているが、当時は小さな店で出前を取っていた。夜食にサンドイッチを注文されたので、ゴメスの宿泊している家にボブがそれを届けに行ったときに、ゴメスが殺害されるのを見たというのだ。犯人はガポリの人ではなく、カメリルの兵であったと言う。ゴメスが何か書類を持って不正を追及しているようだったが、ゴメスがその書類を戻そうとした時、背後から銃を撃った。ボブはそれを見て怖くなり、逃げるように、サンドイッチも持ち帰ったと言うのだ。

 

 セイルは暫く言葉がでなかった。

 

 「あなたは、どうしてそのことを訴えなかったのですか。」と強い口調で言ったのはマーヤであった。

 「怖くて、だって、言えば見ていたことがバレて、その人に殺される。だから、ずっと黙ってた。」

 「誰か分かる?顔は見たの?」とマーヤ。

 「顔は見たが、誰かは分からない、名前を知らないから。」

 「会えばわかる?」

 「今は出前もしてないし、ずっと厨房で、ほとんど外に出ていない。でも、多分分かると思う。」

 「あなた、悪いけど、私と一緒に来て、みんなの顔をチェックして。今いる兵だけでも。」とマーヤ。

 

 それを止めたのはセイルであった。

(そんなことをしたら、彼の命が狙われる。)そう思ったのだ。

 「ありがとう。もし誰が犯人か分かったら教えて下さいね。」




真実を知ったセイル、どうする?
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