日本の新地球事情調査室では、世界地図の作成が途中で休止したが、それは赤道近くの街が新たに発見され国名や地名が不明のためであった。でも、世界の地形図はほぼ完成していた。
新地球の海岸線は当初、旧地球の標高80mぐらいの所と推定されていたが、正確な測定によって75mの所と修正されていた。日本列島が転移してから、新地球の平均気温がかなり低下したが、溶けた氷河がもとにもどることもなく、海が後退することはなかった。多少、山の高い所が、雪が溶けることなく白くなってはいたが。
暦の問題は難題であった。旧地球においても、共に太陽暦である年号と西暦の併用は可能でも、太陰太陽暦である旧暦との併用は難しかった。旧暦が使用されていたのは歳時記と神事ぐらいであった。
難題ゆえに、すべての国が日本の年号を使うようにすれば、何の問題もないと、問題発言をする委員までいた。
結局、新たに発見された赤道近くの国が使っている暦が不明なので、それが明らかになるまで保留ということになった。
DNA鑑定による人種の問題はある程度解決に近づいていた。
元々DNA鑑定は、個人の特定のために研究されたものである。DNAの塩基配列のうち、同じ塩基配列が繰り返して存在する特殊な部分を検査し、その繰り返しの回数が人によって異なることを利用して個人識別を行う手法が一般的であり、犯罪捜査に利用されることが多かった。
この手法は、同じ型の別人が現れる確率が4兆7000億人に1人とされており、指紋による確定と同様に利用されていた。その後、新たな手法が開発され、同じDNA型の出現頻度が565京人に1人となり、より精密な個人識別が可能になった。
そして、個人の特定から血縁関係、人種の区別などに応用され、遺骨が日本人であるかどうかまで判定できるようになっていた。
トメリア人とバーキー人は同じ人種で日本にいるイギリス人と同じ、サンパル人とナガア人とスリム人が同じ人種で日本にいるブラジル人と同じ、リベルテ人とスパン人とプロリ人とロマスク人が同じ人種で
日本にいるフランス人と同じ、そして、日本人はそれらと異なる。そしてそれらは人々が使う言語、英語、ポルトガル語、フランス語と一致していた。
住んでいる地域から、トメリア人とバーキー人は英国系アメリカ人の生き残り、サンパル人とナガア人とスリム人はその地に逃れたブラジル人の生き残り、リベルテ人とスパン人とプロリ人とロマスク人はフランス人の生き残り、そう推定した。
亜人については、猫耳熊耳の人が日本人に似ているのは、人工的なヒトをつくるのに日本人の遺伝子が利用されたからであろうと推定した。しかし、小さき人、耳の尖った人が共にどことも似ていない全く違う人種であることが謎のままであった。日本在住の外国人の遺伝子と比較しているが。
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リベルテでは三木が特殊部隊の隊員たちにスパン南基地で騙し盗った消音銃を配っていた。これから実戦訓練という名の任務に就くためである。
リベルテの特殊部隊は実働隊員8名で、異邦人で何の官位もない三木が指揮官という変わった部隊であった。補佐として国家の意思などの連絡調整役をメイキ大尉がしていた。
その三木とメイキは、ブチル外務大臣のシェラリベ共和国との国交の交渉について行くことになっていた。この国交交渉は三木が計画提案したものである。その意図をバーダン国家主席に話すと、すぐに実行に移すことになった。
この世界は砲艦外交、戦艦3隻、航空母艦1隻、外交特殊船1隻の艦隊でシェラリベ共和国に向かう。外交特殊船というのはリベルテ特有の外交船で、攻撃能力はないが、攻撃に対する防衛能力の高い船である。ブチル外務大臣と三木とメイキはこの船に乗船している。シェラリベの言語はカメリルと同じくリベルテ語であることは、訪問のやり取りで確認されている。通信には日本の通信衛星が利用された。
リベルテの艦隊がシェラリベの首都ハイツの沖に停泊する。国交のため訪問することを知らせてはいるが、それを知っているのは1部の人たちで、多くの人には敵が攻めてきたと勘違いされた。ハイツの港は大きい。漁船や客船は逃げて行き、軍艦は砲をリベルテの艦隊に向ける。ただ、戦っているカメリルの戦艦と違うので、砲撃を躊躇していた。港湾の海軍本部から、各軍艦に警戒を解くように指示がでて、緊張が緩む。
リベルテの艦隊から外交特殊船が港に向かって航行していく。桟橋には海軍本部からの出迎えの将校たちが待っている。バスも止まっている。
桟橋に下船するのはブチルと三木とメイキ、そして警護の兵が8人。通常、警護の兵は武装しているのだが、異様な迷彩の服を着た兵たちで武器を持っていなかった。もちろん、表面上だけであるが。
リベルテの使節団は用意されたバスに乗り込む。バスは、港から真っ直ぐ東にのびる舗装道路を走り、4階建てのビルの前で停車した。
三木はバスの窓から外を眺め、街の様子から、リベルテよりも技術の進んだ国と推定していた。
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コンガのカメリル陸軍陣地では、スマル少尉は櫓に上り、部下に尋ねていた。
「地下への入り口は分かったかね?」
「はい、2か所あります。」そう言ってスマルにその位置を説明した。
北の方向から避難民を運んだトラックが戻ってくるのが見える。それを眺めて、スマルが言った。
「分かった、森の中の入り口から侵入。先鋭を5人選んでおけ。」
説明をしていた部下は、「はっ」と敬礼して櫓から降りていった。
スマルは双眼鏡でやってくるトラックを眺めながら、監視されている敵に分からないように侵入する方法を考えていた。
(森の中から敵兵が出てきたと言うことは、森の中、しかもそれほど遠くないところに出入り口があるはず。森の中なら、監視の目を遮れる。)
トラックが物資を運んできて、兵たちがテントに移している。トロル中尉は必要な物資のメモ書きをトラック隊の軍曹に渡し、アカサ少将に陣地の設営ができたことを伝えるよう指示していた。
櫓から降りてきたスマルは、最後尾を走るトラックの運転手に自分たちを乗せて欲しいと頼んでいた。
そして、森のそばを通って、森に近づくと飛び降りるから少し速度を下げて欲しいと。
スマルは引き返すトラック隊に乗り、森に侵入すれば、監視の目から逃れられると考えたのだ。
物資を運んできたトラックが北方へ帰って行く。森の側を通過するとき最後尾のトラックのスピードがやや遅くなり、人が飛び降りて森の中へ入って行く。スマルたちである。
森の中の出入り口は簡単に見つけることができたが、開けることができない。もう、敵に悟られることも覚悟して、弾薬を仕掛けて爆破する以外にない。
ドカン。扉を爆破する。地下へ降りる階段がある。スマルたちが降りていく。地下はライトが点いてて明るい。幅3mほどの通路になっている。南の方向と東の方向の2方向に通路が続いている。
南が前方、東の方向の通路はもう1つの出口への通路と判断して、スマルたちは南へ進んで行った。攻撃されれば隠れるところもない真っ直ぐな通路、敵と出会えば倒すしかない。
スマルは、持ってきた写真機で通路を写しながら、部下に言った。
「敵が現れたら、手榴弾を一斉に投げて全力で退却、いいな。」
幸い敵も現れず、階段を見つけた。上がってみると、出口が瓦礫で塞がっていた。スマルは破壊した白い建物だろうと位置から想像した。常に逃げ道は必要、スマルは瓦礫を除けて出口を確保するように部下に命じた。真っ直ぐな通路、侵入した入り口は遠すぎる。
出口を確保したスマルたちは、さらに通路を進んで行く。すぐに通路が左右に分かれる。用心深く、左右を見ると、左に化け物の兵がいる。右には通路が続いているが、兵はいない。
スマルは兵を2人その場に残し、右から敵が来たら射殺するように指示した。そして、3人の兵を連れて左の通路を突進していった。
ダダダダダ。敵兵を倒していく。
ダダダダダ。カキン、カキン。金属音が響く。銃が効かない人型ロボットであった。何体あるか分からない。倒した化け物の敵兵の向こうは人型ロボットだらけ。スマルは写真機でそれを写す。
「退却!」スマルはそう叫んで、素早く2人の部下が待機しているところまで下がった。
不思議なことに敵は追ってこない。
(地上で戦闘でも始まっているのかも。)スマルはそう想像した。
そして、人型ロボットには砲弾かロケット弾でないと太刀打ちできないと判断して、今のうちに撤退すべきだと思った。
人型ロボットと遭遇、どうする?逃げるが勝ちか