物資を運んできたトラックを見送ったトロル中尉は、再び、攻撃命令を出した。というのは、アカサ少将への報告に、白い建物を攻撃して崩壊させたが、戦車を2台使えなくしたことの代償には少なすぎると思ったからだ。ロケット弾も前の様に発射装置を攻撃すれば制圧できると、すべての戦車8台を総動員させた。しかし、スマル少尉の部隊の兵たちはこの陣地を守れと言われていると、攻撃に参加しようとはしなかった。
(扱いにくい奴らだ。)トロルはそう思いながら、櫓に上り、戦況を見守ることにした。
戦車8台が縦列で進行して行く。イマト少尉は最後尾の戦車に乗っていた。トロルはロケット弾発射装置を全て破壊せよと言ったが、どれだけあるのか分からないからできるはずもないと、イマトは思っていた。ただ、最後尾にいるが、すぐに退却は難しい。というのは、今度は後ろに歩兵がついてきているからだった。
破壊した建物を先頭の戦車が越えると、ロケット弾が飛んできた。
ドカーン。先頭の戦車が破壊される。
ドン、ドン。戦車の砲撃で、敵のロケット弾発射装置も破壊。
ダダダダダ。自動小銃を放ちながら化け物の敵兵がやってくる。
ドン、ドン。戦車の砲撃で、敵兵を蹴散らす。
ドカーン。また戦車が破壊。
砲撃と銃撃の音が草原を包み込む。
敵のロケット弾発射装置を全て破壊したのか、ロケット弾がなくなったのか、イマトには分からなかったが、ロケット弾が飛んでこなくなった。
(戦車があと4台しかなくても、こちらが有利。)そう思ったイマトは総攻撃を指示する。戦車も歩兵も我先にと前進。
ドン、ドン。ダダダダダ。敵兵を蹴散らしていく。
ダダダダダ。カキン、カキン。現れたのは数体の人型ロボット。
カキン、カキン。銃弾が弾き飛ばされる。
ババババババ。人型ロボットから銃弾の嵐、カメリルの歩兵が倒れていく。
イマトは凍り付いた。撤退の指示も出せぬまま呆然としている。
ドカーン。戦車の放った砲弾が人型ロボットに命中。剛体から真っ二つに割れる。
それを見たカメリルの兵から歓声が上がる。1体だが、人型ロボット制圧。
倒れた人型ロボットの方にカメリルの兵が駆け寄る。
そのとき、思わねことが起きた。
ババババババ。倒れたまま、人型ロボットが攻撃したのだ。
駆け寄った兵たちがバタバタと倒れていく。
(とても敵わない。)我に返ったイマトは退却の指示をした。
櫓で戦況を見ていたトロル中尉はまた青くなっていた。
イマトたちが退却してくる。後方からアカサ少将の車がやってくる。
そして、森からスマル少尉たちが出てくる。
それを見たトロルは櫓から降りた。
・・・・・・・・・・
シェラリベ共和国では、4階建てのビル、外務省の建物の前でバスが止まった。警護の8人はバスの中で待つことになり、ブチル外務大臣は「それでは警護にならない。」と文句を言ったが受け入れてもらえず、3人で建物の中に入った。通された部屋では、髭を生やした初老の男が武装兵を左右に従えて座っていた。普通は立って向かい入れるものだが、座ったままで、案内してきた兵に顎をしゃくる。兵が席に着くように促す。
初老の男から向かって右から、三木、ブチル、メイキ大尉の順に座った。
自己紹介をしたのは、ブチル外務大臣と初老の男ササレ外交官だけであったが、三木とメイキは護衛の者と勘違いされていた。勘違いが甚だしいのは、外務大臣が出向いてくるのは余程の国難を抱えているのだろうと思われていることだった。
「どのようなことで来たのか分からないが、我が国はカメリルと戦っており、援軍を派遣することは無理だ。」と、何も言っていないのにササレが言った。
「援軍などいらない、失礼ではないか。」とブチル。
ブチルはブチルで外交官風情との交渉が気に入らなかった。
(せめて副大臣クラスの者を出せ。)そう思っていた。
「まあ、まあ、大臣殿。喧嘩をしに来たのではないですよ。」と三木が言った。
バーダン国家主席が軍務大臣とは違ってよくやっていると評しただけあって、ブチルはすぐに機転が利き、対応がはやい。
「ササレ外交官殿は、この交渉の全権をもっておられるのですね。」とブチル。
「もちろんだ。」とササレ。
「我が国の希望は援軍ではなく、対等の交易です。こちらに国交のための我が国の大使館を置きたい。
我が国にもあなたの国の大使館を置く用意があります。」とブチル。
全く、予想していなかったことに困惑したササレは何も言えなかった。
すかさず三木が言った。
「そんなこと、急に言われても返答できませんよね。こちらの意向はそういうことで、検討していただいて、後日返事で結構ですよ。ところで、軍の責任者とお会いしたいのですが。」
「軍の責任者?こちらにはいませんが。」
「どこへでも行きます。紹介さえいただければ。」
「しばらく、ここでお待ちください。」
後日の返事と決着がついた交渉を切り上げて、部屋を出たササレは、あちこちに連絡をとっていた。
しばらくすると、軍の責任者がいる場所を確認したササレが戻って来て言った。
「国防庁の長官は、今、海軍本部にいます。本部はあなた方が来た港湾にあります。会うそうですから、やって来たバスで戻ってください。運転手には海軍本部へお連れするよう言っておきます。」
海軍本部へ使節団を運ぶように連絡を受けたバスの運転手は、警護の兵を眺めながら使節を待っていた。迷彩色の服で統一されているが、他はてんでバラバラ、服が違っていたらならず者の集団と変わりない。せんべいをかじっている者、煙草をふかしている者、トランプをやってる者、足を放り上げて寝ている者、通路で腕立て伏せをやってる者。運転手はこんな兵のいる国は大したことはないと嘲った。
使節が戻って来て、バスは海軍本部へと向かう。三木が運転手に言った。
「最初に乗った桟橋に寄ってから、海軍本部へ行ってくれ。」
海軍本部へ向かう三木、そこで何を?