夜間、シェラリベ陸軍のトラックがライトも灯さず草原を走っている。運転しているのはメイキ大尉、助手席に三木が乗っている。月明かりはあるが、道はあるようでない。戦闘車両の往来で獣道ならぬ車両道ができているが、道幅はいろいろ、消えているところもある。この車両によってできた跡は、カメリルの陸軍が進んできた跡である。この跡の先にガーゴの陸軍基地があることは明らか。
前方に明かりが見えてくると、トラックが止まった。荷台から、迷彩服の男たちが降りて、草原を走る。特殊部隊の実践訓練、敵の殲滅ではなく、爆破工作とシェラリベの白地に赤星の国旗を立てて戻ってくる訓練である。2人ずつ4班に分かれている。
ハイツの沖からリベルテの戦艦3隻がガーゴの軍港の沖までやっていていた。航空母艦は夜間の戦闘機の離着陸が危険だということで、ハイツの沖に留まっていた。夜間とは言え月明かりもあり、障害物もない海上である。ガーゴの軍港にいるカメリルの兵たちが目視して、シェラリベの軍艦が攻めてきたと騒ぎになっている。カメリルの兵たちはリベルテという国を知らない。
旗艦に乗艦しているマイト大尉は双眼鏡を覗きながら、砲撃の合図を待っていた。戦艦には2連発の砲が3基ずつ、3隻で18発の砲弾を放つことができる。それらを一斉に軍港の海軍基地に浴びせて、逃げ帰る計画である。
砲撃の合図は、ガーゴの街にある陸軍基地の最初の爆発の炎である。マイト大尉は双眼鏡で、軍港ではなく街の奥の方を眺めていた。
特殊部隊を送り出した三木は、双眼鏡でガーゴの街の陸軍基地を眺めながら、言った。
「彼らの訓練を初めて見るわけで、ちょっと心配です。」
「三木さんらしくない。彼らは凄いですよ。心配ない。」と双眼鏡を覗いているメイキ。
陸軍基地に爆発の閃光が1度に4が所であがった。爆発音が間の抜けたように遅れてやってくる。
建物の燃える炎が見える。港の方でも爆発の閃光がいくつもあり、燃える炎で明るくなっている。
「凄い、凄いですね、三木さん。大成功ですよ。」興奮しているのはメイキであった。
三木は黙って頷いて、双眼鏡で周りを見ている。
難しいのは、爆破することではなくて無事に戻ってくることだと、三木は知っていたのだ。
そして、このあとカメリルがどうでてくるか考えていた。
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カイル大佐率いるカメリル陸軍は首都カーレンでアカサ少将、トロル中尉と合流し、ガボリ共和国のボントの街に来ていた。兵たちは街の郊外の草原に野営テントを張りそこで休息、アカサとカイルは領事館で宿泊、長旅の休憩であった。
カメリルの海軍は、カーレンの港には立ち寄らず、命令に従い砲撃をするため、ゴンガの西の海に向かっていた。戦艦5隻で一斉に砲撃する予定である。航空母艦の戦闘機は、対空ミサイルで撃墜される可能性が高く、攻撃には参加しないで待機ということになった。
艦隊がゴンガの焼き払われたジャングルが見える沖に停泊する。旗艦の航空母艦のユカル艦長は、双眼鏡で陸地を眺める。奥の方に軍の陣地が見える。スカイブルーの生地にカメリル火山の国旗、カメリルの陸軍である。崩れた建物の跡が1か所、他に見えるのは、焼き払われた黒い大地と、その奥の草原と点在する森だけである。
戦艦のササド艦長は蛮人はあの森の中にいるのかもしれないと思い、森に向かって砲撃する。ユカル艦長は砲撃を眺めるだけだった。飛び出してくるのは鳥と獣だけ。
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カメリルの政府は大騒ぎ。ガーゴの陸軍基地と軍港がシェラリベの攻撃を受けて壊滅状態、予想もしないことが起きてしまったのだ。攻撃しないはずのシェラリベが攻撃してきた。占領こそはされなかったが、このままでは占領されることは目に見えている。しかし、軍隊は東方で戦っている。
(今まで侵攻するだけで、占領される危機などなかったのに。どこでどう間違えたのだろう。イカサスの計画を鵜吞みにしたのがいけなかった?軍が頼れないとなると、外交しかないのか。せめて、ガーゴは死守せねば。シェラリベの独立は認めても。)
バジル執政官は、そう思った。そして、セシル外交官を呼んだ。
「ガーゴがシェラリベに攻撃されたことを知っておるな。」とバジル。
「はい、省内大変な騒ぎになっています。軍の留守を狙うなんて、卑怯な奴らです。」とセイル。
「そこでだ、外務大臣にと思ったのだが、直接お前に頼む方がよかろうと思って、シェラリベに出向いて、進撃をやめるよう交渉して欲しい。ガーゴは死守せねばならぬ。シェラリベの独立を認めてもいいから、ガーゴを守るように交渉して欲しいのだ。危険だが、これは、お前にしかできぬ。」
「はい、分かりました。執政官殿。」
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コンガのカメリル軍陣地の櫓の上から、警戒をしていたスマル少尉は、焼却したジャングルの彼方の海に艦隊が停泊しているのを、双眼鏡で覗いていた。
何発か砲弾を森の中に打ち込むのを見て、呟いた。
「海軍は、敵が地下にいることを知らないのだな。まして、人型ロボットなど想像もつかないのだろう。」
それを隣で聞いていたイマト少尉が答えた。
「そうですね、誰に言っても信じてもらえない。」
独り言の返答に戸惑ったスマルは、双眼鏡を外して尋ねた。
「イマト少尉殿なら、あの人型ロボットとどう戦います?」
「戦う?無理です。人や亜人なら死ぬがロボットは死なない。見たでしょう。真っ二つに割れたロボットがまだ攻撃してくるのを。しかも、それを回収したのですよ。修理すれば元通りに。やってられません。」
「地下にいて、見ていませんでしたが、そうでしたか。」
(無理でも倒さなくては。老人が言ってた、今は修理だけで創ることはできない。しかし、部品はすべて製造しているのだ。そのうち、創るようになるだろう。そうなると、人型ロボットで溢れ、コンガだけでなく世界中がコンガの様になるだろう。その前に、叩かなくては。)
スマルは、そう思っていた。
「イマト少尉殿、我々と敵のロボットと、死ぬ死なないは別にして、どこが違うと思います?」とスマルは尋ねた。
「敵は死なないから死に対する恐怖心がない、味方が倒れても平気、悲しみもない。そう、喜び、悲しみ、好き、嫌い、あらゆる感情がない。だから、目的に突き進むだけ。兵としてはとても強力。」
「感情がない、それだけですかね。」とスマル。
「他には・・・考えることはできるのかな。学習する能力があると聞いたのだが・・・。考えると学ぶは次元が違うように思うのだが。例えば、新しいことの発見や発明などができるのだろうか。」
「考えることはよく分かりませんが、学習能力と記憶力があるなら、発見や発明は可能だと思いますよ。理論の構築で新しいものが見つかるかも知れませんし、何よりも人間も偶然に発見、発明したものもたくさんありますし、偶然はロボットにだってあるはずですから。」
そう言って、スマルは震えた。偶然、ロボットが自分自身を創ることを覚えたら。
スマルは、弱点を見つけようと、違いを思考していたのだが、イマトの言う通り、敵わないという結論しか出なかった。
人型ロボットと戦えるのか?