続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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セイルがシェラリベにやってくる?


第2章 11話

 シェラリベ共和国首都ハイツの東方陸軍陣地に、ササレ外交官が来ていた。三木がこの陣地の指揮官カマレ少佐に、カメリルの使節が来るだろうから外交官を呼んでおくように提案したのだった。カマレは国防庁のヨミレ長官に連絡をとり、ササレが来ることになったわけである。シェラリベ共和国政府はササレに、独立承認の文書と互いに攻撃しない確約書をもたせていた。シェラリベにとってはカメリルとの戦いは独立戦争であったのだ。

 

 初老のササレは、「来るか来ないか分からないのに呼びつけて。」と、非常に機嫌が悪い。カマレが機嫌を取っている。三木は触らぬ神に祟りなしと知らぬ顔をしている。

 

 

 先日、正式にシェラリベとリベルテとの防衛同盟が成立した。ハイツの港や沖にリベルテの軍艦などが停泊していた。

 

 東方陸軍陣地にカメリルの武装警護車がやってきた。三木の読み通りであった。陣地なので、交渉は大きなテントの中で行われる。

 三木は武装警護車から降りる少女を確認すると、大きなテントの隣の小さなテントにメイキ大尉を引っ張り込んで言った。

 「同盟国として交渉に参加、いいですね。」メイキが頷く。

 「これを、腕につけてください。後で取り外します。」高性能盗聴器であった。

 消音銃は騙し盗ったものだが、これはコッソリ拝借したものである。スパン南基地でカメリルとの交渉で使用した時、そのあとの置き場所をしっかり押さえていた。

 隣のテントで交渉を聴くことができるが、スパン南基地の指令室でも、日本でも聴くことができる。

 (どうせ、日野三佐には感づかれているのだから仕方がない。日本政府はこれを聴いても、意味不明だろう。)三木はそう思った。

 

 武装警護車を降りたセイルをシェラリベの兵が交渉の場所へ案内して来た。後ろから護衛の者が2人、軍服を着ている。大きなテントの前で案内の兵が、「どうぞ、こちらです。」と言った。

 何の躊躇もなく、セイルは中に入った。中には、ササレ外交官とカマレ少佐、そしてリベルテのメイキ大尉が待っていた。セイルが中に入ると、カマレとメイキはすぐに立ったが、ササレは座ったままであった。

 (この外交官は立たないのか、癖なのか。)メイキはそう思った。

 カマレが「どうぞ」と言って、カメリルの使節団に席をうながす。セイルが真ん中で両側に軍服の男が座った。

 

 「ササレ殿、なぜ、ガーゴを攻撃した?」開口1番、強い口調でセイルが問う。セイルは以前の占領の交渉でササレを知っていたのだ。

 ササレは何も言わない、いや圧倒されて何も言えなかった。

 「以前の交渉から、1か月も経たないうちに反逆とは、どういう事なんですか?」さらに追い打ちをかける。ササレは黙っていた。

 (何かおかしい。交渉はこちらが有利なのに、まるで逆のようだ。)メイキはそう思った。

 「それは、あんたの国が、あまりにも理不尽な占領をしたからではないですか。」とメイキの反論。

 「あなたは?」とセイル。

 「リベルテ国のメイキ大尉殿です。同盟国です。」とカマレ。

 「リベルテ、そのような国知りません。私は、シェラリベと話をしているのです。控えなさい。」

 「シェラリベのこの陣地を預かっているカマレと申します。あなたの国の兵は、占領後も、略奪などまるで野盗のごとく暴れ回る。それを我慢するほど、我々はお人好しでも腰抜けでもない。」

 セイルは北方遠征でガロ集落を略奪する兵たちを思い出していた。

 

 「ガーゴを攻撃したのは?」気を取り直したセイルが再び尋ねる。

 「我が国が攻撃されたのだ。そちらが攻撃されたと批判するのはおかしいではないか。」とカマレ。

 さすが、東方陣地でカメリル陸軍と戦っていたカマレ、逆に問いかけた。

 「ところで、今日は何の御用で?和睦交渉ではないのかね。」

 

 「そうだが、今後、ガーゴを攻撃しないで欲しい。」とセイル。

 「ガーゴなんか攻撃してねえ。カメリルの基地を攻撃したんだ。」控えろと言われたメイキ、控えてなんかいない。控えているのはササレであった。

 セイルがメイキを睨んで、強い口調で言った。

 「どうしてあなたがシャシャリ出てくるの?シェラリベと話してると言ったでしょう。」

 「攻撃したのは同盟国リベルテだよ。」と悪びれずメイキ。

 

 「まあ、まあ、攻撃を止めます。その見返りは?」とカマレ。

 「見返り?我が国も攻撃を止めます。」とセイル。

 「そうしたら、内政干渉も止めるということですね。」とカマレ。

 「そういうことになります。」

 「ササレ殿、ササレ殿、例のものを。」とカマレがササレを促す。

 ササレが申し訳なさそうに独立承認の文書と互いに攻撃しない確約書をセイルに渡す。

 それを一読したセイルは、しばらく考えて言った。

 「いいでしょう。承知しました。そのことを伝えておきます。」

 そう言って、セイルは席を立った。

 「ちょい待ち!伝えておくじゃあ困るんだよ。それぞれ、2枚ずつ用意しているだろう。それぞれ著名して互いにもつものなんだ。国同士の約束、口約束と言うわけにはいかねえ。」とメイキ。

 セイルは立ったまま、メイキに言った。

 「独立も認める、攻撃もしない。我がカメリア人は約束を違えることを最も恥としております。その必要はありません。」

 そして、護衛の兵を促して出ていく。メイキも唖然として見送る。

 

 セイルがテントを出ると、三木が立っていた。

 「あっ、あなたはミッキー、ミキ。」

 「お嬢様、口約束はいけませんよ。もう一度、中へお入りください。」 

 セイルの前に護衛の2人が立ち塞がる。

 「命まで取ろうと言うのではない。もう一度考え直してと言っているのだ。」と言って、三木は警護の者を睨む。三木の背後には銃を構えた迷彩色の8人がいた。

 「さあ、中に入って。」と三木。迷彩色の8人はテントの外で待機している。

 

 セイルたちが再び戻って来て、唖然としていたメイキが言った。

 「どうしたのですか。」

 三木は黙ってメイキの所へ行って高性能盗聴器を外し、スイッチを切る。

 (自分の声を入れるわけにはいかぬ。)三木はそう思った。そして言った。

 

 「お嬢様が約束を守っても、他の人が守るとは限りません。だから、国と国との約束は文書に著名するのです。お嬢様もササレ外交官殿も仕事をしてください。そのための外交官でしょう。文書だって形だけで、最高権力者が破棄といえば終わり。守られたことなど、1度もないことは歴史が証明しています。でも、せめて2人とも仕事をして帰ってください。そのために来てるのでしょう。」

 

 セイルは自分をお嬢様と呼ぶ奴は大嫌いだと思いながら、サインをした。そして、こんなところに二ホン人がいる不思議さを問わずにはおれなかった。

 「あなたはどうしてここに?」

 それに答えたのはメイキだった。

 「我がリベルテ軍のアドバイザー様です。」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ボントの街にいたカメリルの陸軍はトロル中尉を指揮官にして、コンガの前線陣地に出発していた。アカサ少尉とカイル大佐は参謀の将校たちと一緒に、前線とカメリルとの連絡調整のため、ボントの街の領事館に留まっていた。

 

 コンガの前線陣地では、スマル少尉の部隊とイマト少尉の部隊が交代で警戒に当たり、コンガ攻めの軍の方針と食料などの物資を待っていた。スマルもイマトも戦うだけ無駄、撤退が正解だと感じていた。ただ、スマルは人型ロボットが増産することを学ぶ前に叩かなければ、大変なことになると、壊滅させる方法を見出そうとしていた。

 

 カメリル国の首都カーレンの港には、コンガの西の海から砲撃し、森の鳥と獣を追い払っただけの艦隊が戻っていた。軍務省に報告に来ていたユカル大佐はイカサス軍務大臣から難しい任務を与えられた。位置も分からないのに二ホンを攻撃せよというのだ。

 

 カメリルはスパン王国の捕虜を捕えていた。その捕虜から、二ホンの位置を聞き出そうとしたのであるが、二ホンへ行ったことのある者は誰1人いない。だから、誰1人知らない。しかし、日本の船や航空機は西の方向からやってくると話した。西の方向は大海で、カメリルにはそれを渡った者は誰もいないが、その海の彼方に二ホンがあると推定できる。

 だから、西に進めば二ホンにたどり着く。そして攻撃せよというのだ。何と曖昧な話だが、宣戦布告した二ホンを攻撃しないのはカメリルの、いやイカサスのプライドが許さなかったのだ。

 

 スパン南基地の指令室では、突如鳴り始めたスピーカーからリベリテとかいう国名が出てきて、「さては三木さんか。」と思いながら、日野三佐が高性能盗聴器にはいる音声を聞いていた。

 消音銃については盗難の事実を報告したのだが、高性能盗聴器の盗難は報告していない。武器の盗難は始末書ぐらいでは済まなかった。降格の上減俸、日野は散々な目にあっていた。ただ、スパン南基地の司令の後任が決まらないので、それまでは現職のままということになり、司令は佐官以上という不文律があるため、降格も保留になっていた。

 

 日本ではカメリルの宣戦布告があったものの、攻撃があるわけでもなく、平和な日常は変わらなかった。旧地球では北に向けていた迎撃ミサイルは、すでに移動させて東に向けている。それに、偵察衛星で監視していて、何かあれば対応すればよいだけだった。

 西方大陸東岸地区では、気温低下のおかげで稲作に成功し、コメの生産が可能になった。高騰していたコメの価格も下がってきている。

 

 カメリルの首都カーレンの港から2隻の戦艦が出航した。2隻とも、食料と水、そして砲弾と弾薬は多め、人員は最小限で出発している。旗艦の艦長はササド大尉、司令にユカル大佐が乗艦していた。

 日本を発見すると、旗艦でない1隻が攻撃して、連絡、援軍要請に帰航する。旗艦は砲弾と弾薬を消費しないで残し、援軍が来るまで滞在する。そのような計画であった。遠距離通信ができないので、引き返す以外連絡の方法がなかったのである。

 2隻の戦艦が西へ西へと航行する。たどり着くかどうかも分からない大航海が始まった。

 惑星歴は503年になっていた。惑星歴503年、カメリル動乱の年が始まる。

 

                第2章(完)




第3章は惑星歴511年、カメリル動乱の章
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