続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 本作品はフィクションであり、実在する人名、国名、団体名、組織名などが登場するが、それらとは全く関係なく、中傷も賞讃も意図しません。

 挿絵は、海面上昇シミュレータ、ペイント、ChatGPT を使用して描いています。


惑星歴503年、カメリル動乱の年が始まる


第3章 1話

 カメリルの2隻の戦艦が西の大海を西へ西へと航海に旅立った日、セイルはシェラリベとの交渉を終え、首都カーレンに戻っていた。惑星歴503年、セイル16歳の春だった。

 

 コンガ征服もままならず、シェラリベには独立を許し、ふがいない政府を批判する筆頭は、占領によって多大な利益を得る交通系と商社系の企業であった。それでも、バジルが執政官であり得たのは、正義院議会が批判しなかったからだ。

 しかし、今がバジルを追い落とすチャンスとばかり、トロル中尉の父であるトスカ議員が正義院議会でバジルの失政を追求し、不信任案を突きつけたのだった。不信任が成立したのは、表向きはコンガ征服の失敗とシェラリベの独立であったが、本当は、長引く戦争で経済を圧迫し文化が停滞することによる国民の疲弊感であった。バジル失脚はきっかけをトスカが提案したが民意に他ならなかった。

 新執政官候補にトスカ議員の対抗馬はなく、無投票でトスカ執政官が誕生した。それをセイルは苦々しく思っていた。

 

 セイルは外務省の外務大臣室にいた。

 「おかしいと思わないのかね。あなたはバジルのために働いていたのかね?」とゴンタ外務大臣。

 「いいえ、カメリル、国のためです。」とセイル。

 「だったら、やめる必要があるのかね。辞職するのは私で、あなたではない。」

 そういって、ゴンタはセイルの辞表を破り捨てた。

 

 カメリルでは執政官が失脚すると大臣、長官のすべてが辞職する習わしになっている。ゴンタもイカサス軍務大臣も辞職して、再任という形で外務大臣、軍務大臣になっていた。執政官が変わっても、紛争は継続しており、外交と軍のトップを変えるわけにはいかなかったのである。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 コンガにあるカメリル陸軍の前線陣地では、トロル中尉の部隊が到着し、コンガ攻略の作戦を練っていた。スマル少尉とイマト少尉は撤退を期待していたが、攻撃命令ならば従わざるを得なかった。

 スマルは、砲弾で真っ二つになった人型ロボットが攻撃してきたという話から、ロケット弾であれば、破壊はできなくても動かないようにすることは可能だと考えていた。幸い、携帯用ロケット砲がある。

 亜人の兵など問題ではない。いかに人型ロボットの攻撃を避け、ミサイル発射装置にたどり着くかが問題であった。ミサイル発射装置の破壊は最初からの任務である。

 この陣地までカメリルの政変の情報は届いていない。トロルは父が執政官に就任したことを知らずにいた。スマルが、地図を広げてミサイル発射装置の位置を説明していた時であった。ボントから使いの兵がやってきて、「トロル中尉殿、すぐに帰国せよとのことです。」と伝えた。

 「何事だ。」とトロル。

 「存じません、国からの伝令です。」

 

 トロルはボントからの使いの兵と一緒にカメリル陸軍の前線陣地からいなくなった。スマルはトロルの帰国にあわせて撤退にでもしてくれればいいと思ったが、任務を変更してはくれなかった。指揮する者がいなくなっても、軍の方針が変わったわけではない。陣地の防御とミサイル発射装置破壊の任務は続けなければならないのだ。

 

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 セイルはバジルの自宅に来ていた。バジルの自宅はカーレンの郊外にあった。執政官を退いたら、高層ビルの官邸には住めない。

 「おじ様、失脚なんて悔しく思います。」と応接室で紅茶を飲みながら、セイルが言った。

 「失脚ではない、交代しただけだ。それに、引退ではない。議会にでるのだからな。」とバジル。

 「でも、代わりがトスカなんて。ゴンタ様はどうして立候補しなかったのでしょう?」

 「ゴンタにはゴンタの事情があるのだろう。そうそう、ゴンタが言ってたぞ。辞表を出した気が強い娘だとね。」

 「まあ、気が強いだなんて。」

 「とにかく、今は退いてホッとしているところだ。お前も休暇を取って帰れ。ユリネも首を長くして待っていることだろうからな。」

 ユリネはバジルの妹で、セイルの母親の名前である。セイルの父親ゴメス・ド・ツールの先祖はガボリ共和国の国境近くのツール地方の領主であった。セイルは父の死後、広大な土地を相続している。

 

 セイルは父を殺害したのはガボリ人ではなくカメリルの兵であることを、バジルに言い出せなかった。そして、父の部下であったカイル大佐への疑惑も晴れないまま、帰郷することになった。

 

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 カメリル国のカーレンから戦艦2隻が西へ航行しているのを、日本の偵察衛星が捕えていた。しかし、その先に日本があるわけでもないし、日本へ攻撃の意図が分かるわけでもないので、何も手を打たないで追跡だけをしていた。ただ、戦艦2隻の航行方向からたどり着くであろう南方4か国、スリム王国、ナガア共和国、サンパル皇国、ジュラス都市国家にはその旨連絡していた。

 

 スリム王国には日本のスリム港湾基地があるが、新オーストラリア大陸からのレアメタルなどの貨物船の中継港になっていて、民間人しかいない。日本の貨物船や港湾事務所などには戦艦が向かっていることを伝え、念のため避難しておくように指示していた。

 自衛隊も人手不足、必要のないところに派遣はできない。当初基地にいた自衛隊員はすべて帰国していたのである。

 

 ジュラス東基地も同様であった。基地の管理をジュラス都市国家に任せ、自衛隊員は1人もいなかった。日本の防衛もかつてのような北の脅威もなくなっていたのだが、集中豪雨などすぐに都道府県知事の災害派遣要請があるので隊員の待機の必要があった。しかも、カメリル国が攻撃してくるスパン南基地に多くの隊員を派遣していたのだ。

 

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 日本を目指すカメリルの戦艦の甲板で、ユカル大佐は海原を眺めていた。見えるのは海ばかりで島影1つない。ユカルは海軍大佐であるが、沿岸での船旅だけで、大洋を航海したことはなかった。ほとんど軍港基地の勤務であり、戦闘経験もない。コンガの西の海への遠征から歯車が狂って来たような気がして不安であった。

 

 ユカルにとっては、朝日は地平線から昇り、夕日が水平線に沈むものだった。何日、海から朝日が昇るのを見ただろうか。

 

 「陸地が見える!」誰かが叫んだ。

 (ついに日本を発見した。)ユカルはそう思い、双眼鏡を覗き込む。

 入り江に港湾のような街が見える。船はいない。不気味なくらい静かだ。近づくと港湾に人だかりができてこちらを指さしている。

 砲弾の届く位置で停泊し、計画通り砲撃を開始する。ドン、ドン、ドン。

 反撃はない。港湾の建物が崩れ去り、人だかりも消えて、砲撃が止むと静寂が辺りを包む。砲撃を終えた戦艦は、連絡援軍要請のため離れて行った。

 

 (不思議だ。何の反撃もなく、静まり返っている。)ユカルがそう思っていると、ササド艦長が声をかけた。

 「上陸しますか?」

 「いや、計画通り、このまま様子を見よう。罠かもしれない。」ユカルはそう答えた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 スリム王国の日本大使館から襲撃の連絡を受けた日本政府は、読みの甘さを後悔していた。戦艦での外交はよくあることである。いわゆる砲艦外交、国交の交渉だと思っていた。それが、何も知らない国に有無を言わさず砲撃するとは想像もしていなかった。

 ユカル大佐とて、ここが二ホンでないことを知っていたら攻撃しなかったであろう。宣戦布告をした二ホンだと思っていたのだ。

 

 スリム王国は鳴りを潜める以外方法はなかった。防衛は二ホンの基地頼みであり、二ホンが撤退しても問題のないほど平和であった。軍備などに予算を回すより他になすべきことがたくさんあった。武力は警察力だけである。上陸されれば占領されることは目に見えていた。

 隣のナガア共和国も同様である。スリムに援軍を送りたくても送る軍隊がない。スリムが占領されれば次はナガアの番である。

 

 サンパル皇国は陸軍も海軍も健在であり、いずれ日本に1矢報いんと軍備を整えていた。しかし、日本の圧力でナガアにもスリムにも手が出せず、自国の街であったジュラス都市国家の発展を指をくわえて眺めていた。スリム王国の危機はチャンス到来とばかり、ガントの港から軍艦が3隻出航していた。

 

 ジュラス都市国家は軍備の近代化をなし得たと言っても、それは陸軍だけであり、日本の艦は売ってもらえず、海軍はサンパル皇国から軍艦2隻を購入しているだけだった。海運国にしては海軍はお粗末であった。スリムの危機の連絡を受けた海軍は、日本のジュラス東基地に停泊していた軍艦2隻をスリムに向けて出航させていた。




サンパル皇国とジュラス都市国家、カメリルと、どう戦う?
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