続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 セイルの父を殺したのは?


第3章 4話

 セイルは自宅に帰っていた。住み込みで働いてくれている家政婦と看護士に母の様子を尋ねる。母の容態は良くもなく悪くもないと言ったところだった。

 セイルが帰ってきていることを聞きつけたカイル大佐がやってきた。カイルがいたガボリ共和国のボントの街はセイルの自宅と近いのだ。

 「あっ、おじちゃん、今日は何事?」とカイルに気付いたセイルが声をかける。セイルがプライベイトでバジルを呼ぶときはおじ様で、カイルを呼ぶときはおじちゃんなのである。

 「帰ってると聞いたもので、セイルちゃんの顔を拝みに来たのさ。」とカイルは笑った。

 そして、「おかあさんに挨拶をしてくる。」と言って、母の寝ている部屋に歩いて行った。

 

 セイルは自分の部屋で考えていた。隣は母の寝ている部屋、母の笑い声や看護師の笑い声がする。カイルが面白いことを言って笑わせているのだ。

 そんなカイルを父を殺した犯人だと疑っている自分が疎ましかった。犯人が父の部下であったことは確かだ。だが、セイルは父の部下をカイルしか知らない。他人なのに異常なほどの親切、必ず秘密がある。犯人にたどり着くのはいつもカイルだった。

 

 部屋のドアをノックする音がした。

 「何ですか。」とセイルがドアを開ける。

 「ボントから来たと言うおばあさんが、犯人が分かったと訳の分からないことを言ってます。」と家政婦。

 「すぐに、ここに通して。」

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 ゴンガのカメリル陸軍陣地にイマト中尉が戻っていた。今度は陸軍基地の指揮官として。以前のトロル中尉、今は少佐だが、とは違っていた。トロルは基地内から1歩も出ず、指示をするだけだったのだか、イマトは少尉の時と同様に戦車で基地から出て行って攻撃、退却の指示をする。さすがに自分で運転することはなくなったが。

 スマル少尉から人型ロボットの特徴を聞いたイマトは、人型ロボットとの戦いに絶望感を抱いたが、調べ上げたスマルの手腕に感心すると同時になお戦おうとする意欲に尊敬の念さえ覚えた。

 

 スマル少尉は少尉のままであったが、戦略については納得がいかなければ動かなかったし、トロルの時と態度は変わらなかった。むしろ、少尉のままであるスマルにイマトの方が気を使っていた。イマトは、スマルの部隊がスマルの指示でしか動かないことを知っていて、自分の部隊にしか指示を出さなかった。

 

 とにかく、何とかしてミサイル発射装置を破壊しなければ、戦いに勝ち目がないことはイマトとスマルの共通認識であった。戦車を出動させてロケット弾の有無を確認、あれば使わせる、そんな作戦をスマルの部隊はやっていた。ロケット弾さえなければ、人型ロボットの銃撃は戦車で防げる。ミサイル発射装置の位置も分かっているのだ。一気に攻撃して破壊することが可能だ。

 

 砲撃で破壊した建物までは攻撃されずに戦車で進行できるようになっていた。それより侵攻すると人型ロボットやロケット弾の攻撃がある。人型ロボットの銃撃は平気だが、戦車への体当たりは脅威である。戦車がひっくり返ったのだ。

 スマルは10人の部下を連れて地下に侵入する決心をした。森からだと隠れる場所もない長い通路が続くが、崩壊した建物からであれば、隠れる場所も確保できる。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 セイルの自宅にやって来たボントの街のレストランの老婆は、セイルの父を殺した犯人の名前を言った。

 「それ、間違いないの」とセイル。

 「はい、弟が間違いないと。当時よりかなり年を取っているが、特徴のある顔ではっきり覚えていたと。ずっとボントの街にいたようで、弟は外に出るのが怖いと言ってます。」

 

 隣の母の部屋から誰かが飛び出していく音がした。出て行ったのは、母と話していたカイル大佐だとセイルは思った。

 「ありがとうございます。このこと、誰にも言わないで下さいね。」

 そう言って、交通費にと謝礼を渡し、老婆を玄関で見送った。誰かの自動車に乗せてもらって、やって来たようだった。

 その自動車が見えなくなると、セイルは部屋に戻り、ため息をついた。奇妙な感じのため息交じりの安堵感であった。

 

 (考えてみれば、おじちゃんが犯人であるはずがない。当時おじちゃんは少尉だったんだ。前線の部隊の指揮が役目で、不正など働ける立場ではなかったのだ。もっと高位の部下だったということだ。)

 カイルの異常なほどの親切は、貧民の出の彼を引き上げた父ゴメスへの恩義故とセイルは思い直したが、カイルはセイルの想像さえできない秘密を持っていた。

 

 セイルは父の仇をとる方法をあれこれ考えめぐらした。すぐにでも殺したい心境だったが、そうすれば母にもおじ様にも迷惑がかかる。すぐに行動するほど、セイルは愚かではなかった。

 (訴えれば、証拠はということになり、他国民の証言しかない。他国民の証言が信用されるとも思えないし、自白するはずもない。白を切られればそれまでだ。)考えても名案は浮かばなかった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 スマル少尉たちは壊れた建物から地下への階段を下りて行った。左右に通路がある。左は森の出入り口に通じる路、右に進む。すぐに左右の分かれ路。左は以前に進んだ路、ここに3人残し、右に進む。残った3人は左から敵が来ると携帯用ロケット砲や自動小銃で対応、1人が右に進んだ隊への連絡要員。右に進んだスマルたちは誰もいない通路を進む。通路は至る所にライトがあり明るいが、監視カメラはないようだ。やがて突き当り左に曲がる。方位で言えば東の方向だ。曲がってはいるが1本の通路で監視を残す必要はない。

 さらに進んで行くと、今度も突き当り左に曲がっている。そして、この曲がり角には上への階段がある。スマルは隊を止めて、1人で階段を上がっていく。出口は簡単に開く。そっと外を覗き見ると、目の前にミサイル発射装置がある。周りに人もロボットもいない。注意深くあたりを見渡すと、2つ目のミサイル発射装置が北の方向にある。そして、かなり遠いが東の方に工場のような建物が見える。あとは草原と点在する森だけである。

 

 スマルは出口を閉めて、階段を下りて行き、この位置に3人残した。役割は最初の3人と同じだ。スマルは4人の部下を連れて、左に曲がっている通路を進んだ。通路の正面に扉があり閉まっている。上にあがる階段もある。

 扉の所まで来て扉を開けてみる。開く。中は広大な地下都市だ。スマルはそっと扉を閉めて、部下をそこに残し、階段を上がっていく。出口も開けることができる。慎重に出口を開け、外を見る。先ほど北の方向に見えたミサイル発射装置が目の前にある。さらに北の方向に別のミサイル発射装置が見える。

 スマルは出口を閉めて元の位置に戻り、部下と共に退却をする。地下都市への侵入は何が出るか分からない。地下の集落の經驗が、彼を危険だと判断させたのだ。ここは、集落の比ではないと。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ガボリ共和国のボントの街では大変な騒ぎになっていた。アカサ少尉が部下のカイル大佐に射殺されたのだ。アカサ少尉の取り巻きの将校たちは、カイルよりも下位の将校、カイルを捕えることもできず、右往左往。

 「上官殺しは銃殺刑。捕えて軍法会議にかけよ。」そう言って指示したのは、カイルであった。

 

 カイルの指示で将校たちが、カメリル国の首都カーレンまでカイルを連行する。縄も手錠もないのだから、連行というよりも一緒に帰国すると言った方が当てはまる。カイルは射殺の訳も喋らなかったし、誰も聞こうとしなかった。気まずい空気だけが車内に漂っていた。

 

 次に大騒ぎになったのは、報告を受けた陸軍本部と軍務省。前代未聞の上官殺し、軍法会議の準備とかマスコミ対応とか、てんやわんや。頭が痛いのはイカサス軍務大臣、軍の昇級に対する不満に付け加えて、この不祥事、辞表の提出が頭に浮かんだ。

 

 イカサスがカイルに射殺の理由を尋ねても、軍法会議で話すとの一点張りで何も答えない。軍法会議とは軍隊の法律違反の疑いのある軍関係者を裁く法廷のことである。もちろん、自衛隊は軍隊ではないから日本にはない。

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