カメリル国の高層ビルの15階、執務室にイカサス軍務大臣が呼ばれていた。
「ガーゴの基地の返還はどうなった。」とトスカ執政官。
「身の程知らずが返さないとのことです。」
「すぐに攻撃して奪還せよ。宣戦布告はしたのだろうな?」
「はい、ですが、兵はゴンガ侵攻の方にほとんど派遣してまして、残りを派遣すると首都の守りが。」
「地方兵がいるであろうが、ガーゴに近い所と言えば、ト-べ地方、そこの兵を使え。」
「地方兵はその地方の守り、治安維持や災害救助の為、それ以外に活動した前例はありません。」
「前例はなくとも、奪還することが大事。イカサスは前執政官がなぜ失脚したか、知っているか?」
「いえ、存じません。」
「戦いに敗れ、退却を繰り返したからだ。今度も二ホン攻撃が失敗し退却、ガーゴの奪還も失敗してみろ、俺もお前も身が危ない。交通系、商社系の企業だけでなく、金融系の企業までもが催促している。兵がいないでは済まされないのだ。」
「わかりました。」
それを軍務省に持ち帰ったイカサスは職員の猛反対を受けたが、執政官の命令ということで、軍務官に軍部へ説明に行かせた。軍部でも反対意見ばかりだったが、こちらも執政官の命令で押し通した。
我慢がならないのは、トーベ地方出身のユカル大佐である。軍務官では埒があかぬと軍務省のイカサスのところへ談判に行った。海軍大佐ごときで軍務大臣に直談判とは変な話だが、実はユカルは、イカサスの海軍時代に可愛がった部下だったのである。
「分かっているんですか。地方兵は歩兵だけですよ。戦車もない、大砲もない。機動力はこの時代に騎兵隊ですよ。飾り物でしかない。水上兵力は巡視艇、こんなもので攻めて行ったら、軍艦の的でしかない。命令を取り下げてください。」と怒りのユカル。
「・・・・・でもな、わしは執政官の命令を実行するのが務め、ユカル、お前は軍人だ。国の命令に従うのが務めではないのか。」
「国の命令ですか・・・・・。」
「お前の言いたいことも分かる。船は無理だが、戦車と自走砲は国軍から運ばせ、その操作の人員も出そう。それで、何とかする以外にないのだ。」
・・・・・・・・・・
コンガのカメリル陸軍基地では、イマト中尉とスマル少尉が地下都市侵入の作戦を練っていた。
「人型ロボットの両手が爆発したのはなぜだろうと考えていて、面白いことに気付いたのですが、両手には確かにセンサーや学習機能などの重要な部分があって、その部分の秘密を守るために自爆したのではないかと。」とスマル。
「自爆?故障ではないのかね?」とイマト。
「故障なら完全に破壊されません。それに、他のロボットは回収されたのに、両手が破壊されたロボットは放置です。放置で問題ないから、放置されたのです。」
「じゃあ、なぜ、自爆したのかね?」
「それは、重要な秘密を守るため。」
「そうではなくて、そのロボットが自爆するキッカケになったものは何かと。」とイマトが突っ込む。
「・・・・・・分かった!」思わずスマルが叫んだ。少し間をおいてスマルが説明する。
「人や亜人は食べ物を食べないと生きていけない。生きて動く為にはエネルギーが必要。ロボットが動く為にもエネルギーが必要。ロボットのエネルギー源は食べ物ではなく電気なんだ。それが切れると死んだも同然。だから、切れかかると重要部分の自爆装置が作動するように設計されているんだ。重要なプログラムが外部に漏れないようにするために。」
スマルはそう言ってため息をついた。
(だからと言って、どうロボットと戦えばいいんだろう。)と思ったのだ。
ゴンガのカメリル陸軍陣地にいるイマト中尉とスマル少尉たちは、困難でも人型ロボットと戦う以外になかった。その為にはまず地下都市に潜り込んで偵察する必要があった。まだ、都市の様子も出入口も、よく分かっていないのである。
亜人たちが眠っている夜中にスマルが偵察することになり、地上に戦車を繰り出して人型ロボットを引き付ける役をイマトが担当した。
真夜中にイマトたちの戦車がライトを灯して進む。ロボットを引き付けるためだから、隠れる必要もない。ただ、大きな音がする砲撃は避けたい。亜人たちを起こしたくないからだ。
ロボットたちが出てくる。
ババババババ。カキン、カキン。銃撃してくるが、戦車はビクともしない。ロボットに捕まればひっくり返されるが、捕まえられないように草原を走ればいい。
その間、スマルは部下10人を連れて地下に侵入、左右の分かれ路で監視を3人、最初の出入口に3人、都市への扉の前の出入口に3人残して、部下と2人で地下都市に潜入した。
広大な空間である。地下集落では頭上が岩盤であったが、ここではコンクリートのようである。頭上にライトが散りばめられているが、夜間制御されているのだろう、灯されていない。
とにかく広い。扉側の壁は見えるが、扉側を背にすると、右も左も前方も果てが見えない。スマルたちは、扉から真っ直ぐ北に伸びている通りを進み、逃げ帰ることを考えて、この通りから離れないようにした。通りはアスファルト舗装で中央線のある2車線の道路だ。
通りに人影はない。静まり返っている。監視カメラのようなものが至る所に設置されている。記録されていても仕方がない。リアルタイムの監視でも、ロボットが出てくれば、逃げるだけである。ロボットは、力があるが動きは速くない。
突如、目の前の家の電気が灯った。スマルたちは隣の家陰に隠れる。家から出てきて、あたりを見渡したのは、亜人の化け物である。スマルたちに気が付かなかったのか、その亜人は家の中に戻り、しばらくして、その家の電気が消えた。
スマルたちは顔を見合せた。これらの家の住人は亜人なのだ。そして、明かりが灯って、その家に自家用車があること、自家用車が電気自動車であることが分かった。
慎重に通りを北に進む。最初の交差点、直角に東西に伸びている。道幅は進んでいる通りと同じ。道は真っ直ぐ、坂もない。夜間設定の為か、先は見えない。スマルは道路が碁盤の目の様になっていると想像した。
さらに進む。2つ目の交差点、やはり直角に東西に伸びている。3つめの交差点、交差点の数を数えながら進んで行く。そして、8つ目の交差点で、近くに天井に向かって伸びる螺旋階段を見つけた。スマルは、距離と方向から、破壊したミサイル発射装置のあった場所への階段だと判断した。上って確認と思ったが、それよりも街の偵察と思い直して、さらに北へ進んだ。
9つ目、10,11,12と交差点を数えて、15番目の交差点の近くで、鉄格子のある異様な建物を見つけた。カメリルの刑務所と似たような造りで周りを高い塀で囲っている。
内に入れる場所を探していた時、急にあたりが明るくなってサイレンが鳴り響いた。スマルたちは見つかったと思って、隠れて武器を構えた。扉が開いて、中から人が何人も走ってくる。人なのだ。亜人ではない。ダダダダダ。銃撃されてその人たちが倒れていく。後から出てきた亜人が、人を銃撃している。
隠れてその様子を見ていたスマルは、地下の集落で聞いた老人の言葉を思い出していた。
(人は亜人の奴隷となった。)ここは奴隷の収容所なのだ。
通りの北側から多くの人型ロボットがやって来る。監視カメラで潜入がバレたのかも知れないと思ったスマルたちは、その通りを避け東に走った。銃撃の音で目覚めたのか、家々の電気が灯っていく。1つ目の交差点に達すると、今度は南に向かって走って行った。引き上げるつもりなのだ。道は真っ直ぐ、坂もない。(碁盤の目の道路という推測に間違いがなければ。)そう思いながら、1つ目、2つ目、3つ目と交差点を数えてひたすら南に向かって走る。
15番目の交差点で、進路を西に変えて進み、最初の交差点で北の方向を見る、人型ロボットがやって来ている。距離は遠い。スマルたちは南へ走る。都市と通路の扉に辿り着いて開けようとするが、開かない。ロックされているのだ。近づいてくるロボットと戦って勝てるはずもない。
ドカーン。ドカーン。2人のロケット弾で扉を破壊する。通路には3人の部下が待機していた。
「退却!逃げるぞ!」スマルが叫ぶ。
地下都市から脱出、その後は?