コンガのカメリル陸軍陣地に戻ったスマル少尉は、偵察した地下都市の様子をイマト中尉に報告していた。
「想像を絶するほど広い地下都市です。住人は亜人、1000や2000ではない、何万、何10万の亜人がいると思われます。人は奴隷、人数は不明。ロボットの数も分かりません。攻撃など不可能としか思えませんでした。」とスマル。
「地上との出入口の位置は?」とイマト。
「1カ所しか見つけれませんでした。方向と距離から、破壊したミサイル発射装置のところだと思います。螺旋階段が天井までありました。確認はできませんでしたが、ミサイル発射装置の所には全て地下に通じる出入口があると思われます。」
「そうですか。地上での攻撃でも気になったことがあります。人型ロボットは建物から出てきていたのです。つまり、その建物には地下への出入口があるのではないかと。」とイマト。
「そうですね。今度は建物を破壊しないで、攻撃、確認する必要がありますね。」と、スマルは言ってみたが、(じゃあ、どうやって、ロボット相手に攻撃するんだ。)と思ってしまった。
足を狙って移動を止めることしかできない。ロボットは動けなくなっても、正確に銃撃してくるのだ。
・・・・・・・・・・
ガーゴ都市国家にメイキ大尉が到着して、三木は特殊部隊をカメリルの首都カーレンに潜入させようと考えていたが、メイキがストップをかけた。
「ちょっと、待ってください。実はテーゴ市長に頼まれまして、戦車の運転や砲撃の指導をしてくれと。それにロケット砲やロケット弾の取り扱いも。」とメイキ。
ガーゴ都市国家は戦車8台やロケット砲などをリベルテから購入していたのだ。
「分かった。特殊部隊の連中は戦車の訓練は?」と三木。
「本国の訓練で十分やっています。彼らに操縦のできないものは航空機と船だけです。ロケット砲も使えます。」
「じゃあ、特殊部隊に指導させよう。割り当ては大尉にまかす。」
ガーゴの陸軍基地は、とても広い。敷地内で戦車8台が走行訓練や砲撃訓練ができるほどだ。ただ、砲撃の騒音だけは防ぎようがなかったが。リベルテの特殊部隊も最初は教えるのに躊躇していたが、メイキの教わったように教えたらいいというアドバイスで、指導教官ぶりもさまになっていた。ガーゴの購入した戦車は特殊部隊が本国で訓練に使ったものと同じタイプであった。
何日か訓練をして、もう戦車は大丈夫、次はロケット砲の取り扱いへと変更しようとした時、基地にカメリル軍の侵攻が伝えられた。
かつてカメリルの植民地状態だったので、道路は整備されている。何の障害もなく、カメリル軍は侵攻してきた。と言っても、あたりは農地と草原と森だけ、農地で働いていた人たちは、ガーゴの街に逃げ帰っている。都市国家と言っても、都市の周りの領地が広いのである。農地、果樹園、鉱山などが点在している。
カメリル軍と言っても国軍は戦車5台と自走砲5台だけ。トラック20台に乗っている歩兵200人はトーベの地方兵、治安維持と災害救助が主な仕事で、銃などは訓練でしか使ったことがない。銃撃よりも放水が得意で、戦意などまるでない。
ガーゴの街が目視できる位置の草原に、カメリル軍は戦車と自走砲を前に並べ、トラック20台で壁をつくり陣地をつくった。食料などの物資を運んでくるトラックを待たねばならない。戦っていないから武器や弾薬はあるが、燃料や水や食料は移動するだけで消費する。規模が大きいほどその消費量も多い。
街を攻撃すれば弾薬などを消費する。使ってしまえば攻撃できない。補充するために戻るしかない。そのために、守りを固めた陣地が必要なのだ。
ガーゴ都市国家は、自分の街での戦闘は絶対避けたい。だから、軍隊を街の外に移動させ、敵を追っ払うため草原でカメリル軍と対峙させた。農地が多少荒らされるのはしかたがない。作物はまた植えればいいのだ。
リベルテの特殊部隊が指導した戦車が8台並ぶ。戦車には、自走砲から砲撃するように指示している。ロケット砲3基の扱い方は、特殊部隊が説明しながらこの実戦で使って、指導する予定。ロケット砲にガーゴの隊員が2人ずつ配置されている。
このロケット砲は日本から輸入した最新の設計図と部品から作られていて、ロケット弾が誘導弾になっており、扱い方さえ間違えなければ、確実に命中するようになっている。小さなミサイルなのである。ガーゴもリベルテもミサイルや誘導弾がないから、誘導弾発射装置ではなくロケット砲と呼んでいるだけである。リベルテで生産されたものであるが、それらの部品は日本から輸入する必要があるので、日本も儲かるようになっている。
ガーゴ軍とカメリル軍はしばらくにらみ合っていたが、ついにカメリル軍が動いた。戦車が5台、その後を自走砲5台が草原を走り出し、突撃とばかり200人の兵が銃を手に駆けてくる。
ガーゴ軍のロケット砲のモニターに敵の車両が映る。リベルテの特殊部隊の隊員は、ガーゴの兵にロケット弾の装着の仕方を教えて、モニターを指さし説明する。
「これが戦車、だからこれにマークを合わせて、ON」ロケット弾が発射される。
「分かったか?やってみろ。」
残り2基のロケット砲でも同じような指導がなされる。
驚いたのはカメリル軍、戦車や自走砲が走り出してしばらくすると1台の戦車が爆発。ロケット弾の攻撃と分かり進路を変えて逃げるが、ロケット弾が追っかけてくる。次々と爆発。あっという間に、戦車5台、自走砲1台が爆発。
と同時に、ガーゴ軍の戦車が進んでくる。
ドン、ドン、ドン。ドカーン。戦車の砲撃で自走砲が爆発する。
歩兵の銃で戦車に敵うわけがない。戦意も最初からない。自走砲が全て破壊され、トラックまで狙われだすと、無事なトラックに乗り込んで逃げ始めた。
ガーゴ軍、無傷の圧勝である。戦場になった草原のいくつかの農地は荒らされたが。
・・・・・・・・・・
ガーゴ基地奪還が失敗に終わったことが、正義院議会に伝わると、トーベ地方出身のハルル議員への風当たりは強かった。
「国軍は全滅するまで戦ったのに、トーベ地方軍は1発の銃弾もあびせずに逃げ出したそうだ。」とトマス執政官の報告に、弱虫、臆病、挙句の果てに卑怯とまで言い出す議員もいた。
何も言わず耐えていたハルル議員は、地元の軍の不甲斐なさを嘆くよりも、治安維持と災害救助しか経験のない軍を戦争に出動させたトマス執政官に恨みを抱いた。
海軍基地にいるユカル大佐の耳に、議会での母ハルル議員の屈辱の内容が入ると、イカサス軍務大臣に命じたトスカ執政官に対し、怒りを募らせていた。陸軍のトロル少佐が海軍にまで出張って来て、あれやこれや注文を付けるのも、トスカ執政官の後ろ盾があるからだと、敵意を抱いていた。
ユカルはスリム王国の沖で輸送艦に救助されカメリルに帰還するまで、政権がトスカ執政官に移っていたことを知らなかった。だから、帰還して政変を知り、自分の周りの歯車が狂って来たのもトスカ執政官のせいだと思っていた。歯車が狂ったのは、シェラリベ共和国の独立、ガーゴの基地の撤退など、政変と同様にカメリル国の衰退が原因なのだが、逆恨みはよくある事だ。
ガーゴ基地奪還の失敗、さてカメリル国は?