ガーゴ都市国家のテーゴ市長に挨拶を済ませた三木とメイキ大尉は、特殊部隊と共に、カメリル国に潜入しようとしている。
国境と言っても草原か森かジャングルかであり、柵があるわけでも塀があるわけでもない。舗装された2車線の道路がガーゴの街からカメリル国のトーベ地方まで続いているが、道路標識もなく、国境も分からない。車も通らないし、人もいない。特殊部隊の隊員たちはメイキ大尉の運転するトラックに乗り込んで、助手席の三木の指示を待っている。
三木は集落が見えた時点でトラックを降りるべきか、そのまま乗っていくべきか迷っていた。ずっと遠くに集落が見える。三木はトラックを止めるように言って、メイキに尋ねた。
「コッソリ侵入するなら、ここから歩いてだろうが、どう思います。」
「1人1人バラバラで行動するなら可能でしょうが、これだけの人数です。コッソリなんて無理です。それに、まだ目的地ではなく通過点です。目的地が遠いことを考えると、このまま進行するのでいいかとおもいます。」トラックを止めて、メイキが答えた。
「そうですね。戦いたくないですから、言い訳を考えておきましょう。行って下さい。」
三木たち特殊部隊を乗せたトラックは、真っ直ぐな道路を集落に向かって進む。やがて道路沿いに家々が並び、すれ違う車や行き交う人に出会うが、何事もなく通り過ぎる。三木の心配したように、不審な車として停められるとは限らないのだ。三木は運転しているメイキに言った。
「検問されたらカメリル国に雇われた傭兵ということにしましょう。それなら、武器が見つかってもいい、演技の必要もない。地でいける。」
「そうですね。それがいい。元山賊、三木さんがボス。」とメイキ。
傭兵とは金銭などの報酬を目的とした集団で、自国の利害に関わりなく、自国以外の場所で軍事活動をする兵のことである。
道路沿いの集落を通り過ぎると、草原は農地に変わり、景色が一変する。やがて交差点になり、左右にまた集落が見える。見渡すと多くの集落があるが、集落に用はない。トラックは直進する。
今度は街だ。街への入り口に警備車両が何台か停まっている。当然不審車は停められる。地方軍の兵であろう。銃を構えて降りろと運転席のメイキに指示する。他の兵が荷台を覗き込む。何も聞かされていない特殊部隊の隊員は身構える。
「ご苦労様です。我々はカメリル国に雇われてカーレンに行く途中です。」そう言って、メイキは1掴みの砂金を渡す。
「雇われ兵か、よし、通っていい。」
道路の両側に店舗が並ぶ大きな街を通過すると、今度はジャングルに入る。ジャングルの中も一直線の真っ直ぐな2車線道路が続いている。出会うのは動物だけで車も人もいない。
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コンガのカメリル陸軍陣地にいるスマルは、地下都市への出入口が点在する建物の中にあることを確かめようと思った。偵察機が撮った写真で、建物の位置はだいたい分かる。
(とりあえず陣地から近い建物に潜入してみよう。幸い今夜は闇夜だから好都合、亜人の眠る深夜に決行しよう。)スマルはそう思った。
偵察は少人数で、スマルは万が一の為携帯用ロケット砲を持たせた部下2人と、自らは自動小銃を持って、闇夜を進んで行った。壊れた建物の所を越えても、ロボットは出てこない。
4階建てのビルが見えてくる。地下への出入口だ、2階以上を調査する必要はない。スマルはビルの入り口に達すると、扉をそっと開けた。鍵はかかっていない。中には誰もいないようだ。3人は中に入り、ヘルメットに取り付けたライトを灯して床を調べる。このフロアにはないようだ。各部屋を調べる。どの部屋にもない。
(地下への出入口は無いのか、それとも見落としているのか。)スマルはそう考えて、ふと気付いた。
(4階建てなのに階段がない。エレベーターだ。)
最初のフロアに戻って、壁を調べる。スマルたちはエレベーターの扉を見つけ、S1234のSにランプが灯ったまま。Sはカメリル語の地下、地下室の頭文字だ。スマルは地下に降りることができることを確認した。
(ここまでだ。エレベーターを動かすと必ず潜入がバレる。)スマルがそう思った時、エレベーターが動き出した。地下から上がってくる。速い。扉が開く。
ドカーン。ババババババ。
ロボットをエレベーターの箱の中で動けなくしたが、攻撃してくる。
エレベーターの扉が自動で閉まる。
「退却!」スマルが叫んだ。
軍服の下に防弾チョッキを身に着けていなければ、ハチの巣になるところだった。ロボットが正確に胸を狙ってきたから助かったのだ。
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三木たちの乗ったトラックはジャングルを抜けた。道は真っ直ぐ続いている。道路わきにサービスエリアのようなものはないが、トラックを何台か駐車できる空き地のようなものがある。舗装はされていないが、しっかりした駐車場である。メイキ大尉はそこにトラックを寄せて、停車した。朝から走り続けている。昼も近い、昼食をとることにした。軽トラのような車も停まっている。
カメリル周辺
あたりの景色は田園風景で、広大な農地や果樹園が広がり、農道が2車線の舗装道路と交差している。農道を幌馬車が走っている。農地や果樹園のあちこちに民家が点在し、のどかな光景だ。
昼食と休憩を終えると、三木がメイキに言った。
「ただ、真っ直ぐな道だ。トラックの運転は初めてだが、運転できる。代ろうか?」
「いえ、大丈夫です。横に乗っている方が疲れる。」とメイキが笑った。
「ところで、気になっているのですが、我が国はカメリルと戦っているのに、二ホンはなぜ戦わないのですか?」とメイキ。
「リベルテもカメリルと戦ってはいないよ。これは訓練だ。」と今度は三木が笑った。
「でも、二ホンは宣戦布告を受けてるのでしょう。カメリルを攻撃する力があるのに、なぜしないのですか?」
「政府が政権を譲りたくないからでしょう。」
「えっ、どういうことです?」
「憲法改正で、宣戦布告を受けているからカメリルを攻撃しても問題ありません。しかし、カメリルと戦って戦争が終結すると、内閣総辞職が待っています。攻撃できるけどできない事情があるのです。」
「変な国ですね、二ホンは。」
再び、トラックは動き出した。
また、街に入ると検問を受けた。メイキ大尉は心得たもので、ここでも袖の下を渡し、無事通過した。検問の兵の服装が以前の検問の兵と違う事から、メイキはトーベ地方からナーイ地方に入っていると推定した。
大きな街を出るとまた田園風景、そして草原とジャングルの景色が続く。すれ違う車も無くなったところにトラックを横付けに停めて、停止を求める人たちがいる。よく見ると武装している。10人ほどだ。
メイキはトラックを止める。武装した男は銃を向け、「降りろ。」と言う。
メイキが運転席から降りると、その男が言った。
「車と荷物を置いていけ。命だけは助けてやる。」
それを聞いた三木が助手席から降りてきて、メイキに言った。
「追い剥ぎか?どうする?」
「強盗です。どうしましょう?」とメイキ。
「何をゴチャゴチャ言っている。サッサと消えろ!」
「断ったら?」と三木。
運転席から降りてきた男よりはるかに貧弱な男が挑戦的なのに驚いた男は、「戦えると思うのか?」と尋ねた。
三木はその問いに好きなアニメの1シーンを思い出し、「戦えないと思うのか?」と返して笑った。
怪訝な顔をしたその男は、手で仲間たちに合図を送る。仲間たちはトラックの荷台のホロを開ける。
プシュ、プシュ、プシュ。
荷台の中にいたのは特殊部隊、あっという間に仲間たちが倒れていく。
「命だけは助けてやる。塞いでいるトラックを除けて、死体をかたずけろ。」と三木。
状況を理解した男は震えながら頷き、横付けしているトラックへ走って行った。
三木たちはカメリルに潜入、でも首都カーレンは遠い、待っているのは?