スマルたちはさらに東へ進む。12番目、13番目、交差点を数えて18番目に、ロボットがたくさんいるのを見つけた。全く動かないのだから、いるというよりも置いてあると言った方が適切か。でも、油断はできない。動けなくても攻撃してくるのがロボットだ。
スマルたちは、家陰に隠れて様子を見る。すると、18番目の交差点の右側、南から1体のロボットが出てきて、左側へ歩いて行く。すると、やはり動かなかった1体が動いた。それは交差点の右側に移動して隠れた。同じことが繰り返される。
スマルたちはロボットに見つからないように、18番目の交差点の右側が見える場所へ移動して、何をしているか悟った。充電をしているのだ。最初に潜入した時も道路の端に同じような充電器が設置されていた。それは電気自動車の充電器だと思っていた。電気自動車のあった家の充電装置と端子が同じであったからだ。
スマルは1体の充電にかかる時間を測り、自国の技術基準で、活動時間は約1日と推定していた。当然、この国は自国より技術が進んでいるから、もっと長いだろうと思っていた。
(ロボットのいる18番目の交差点は、とても越えられそうにない。東の壁が見えるところまで行くつもりであったが、無理のようだ。それに、ロボットの観察に時間を費やし、引き返す時間になっている。待機している部下たちも待っているだろう。)そう思ったスマルは、隣の部下に呟いた。
「退却するぞ。」
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ユカル大佐は旗艦の司令室の窓から双眼鏡を覗いていた。カメリル国のカーレンを出発してから、何日も朝日が海から昇るのを見てきた。以前の航海の経験からまもなく前方に陸地がみえるはずだと思っていると、案の定、視野に陸地が入ってきた。
ユカルを司令官とする戦艦5隻、航空母艦1隻、輸送船1隻の艦隊は、二ホンを目指して西進している。輸送船に乗船しているイマト中尉とその部隊は、2度目の航海で船酔いする者は少なかったが、長い船旅にうんざりしていた。
司令室にササド艦長が入って来て、「港が見えますが、どうします?」と尋ねた。
破壊した港はすでに復興していて、しかも、以前痛い目にあった巡視艦のような船が3隻も停泊している。それを確認したユカルは、「触らぬ神に祟りなし、進路を変えて、北上だ。」と答えた。
日本は、カーレンを出発してからずっと艦隊を追跡していた。せっかく復興したスリム港湾基地の港がまた破壊されては堪らぬと海上自衛隊を派遣していたのだ。日本は、カメリル国の艦隊がスリム港湾基地に向かって行かないで、北上しているのを確認すと、その旨、ジュラス東基地に派遣している護衛艦に連絡した。ジュラス東基地には、3隻の護衛艦「まや」と「はぐろ」と「たかなみ」が停泊していた。
南方大陸4国
カメリル国の艦隊がそのまま北上すれば、ジュラス東基地に来ることはないが、陸地を見ながら移動すればやってくる。どう動くにせよ、艦隊をそのままにしておくわけにはいかない。日本はその艦隊が無防備なバーキー王国のアルミ港を攻撃することを恐れていた。
北上していたカメリル国の艦隊の乗組員は、陸地が見えなくなると、いかに羅針盤だよりとはいえ不安になる。司令室にいるユカルにササドが尋ねた。
「あの大陸の北の方向に二ホンがあるそうです。陸地が目視できる位置で北上していいでしょうか?」
「そうだな、それがいい。」そう答えたユカルも、海だけの景色にうんざりしていたのだ。
艦隊は進路を西に向けた。航行すれば、西に陸があるはずなのに見えない。不思議だと思っていると北の方向に島が見える。島も陸地だ。航路を北に向ける。島が次第に大きくなる。
「無人島のようです。」と司令室でササド。
「そうですか、上陸してもしょうがないですね。」とユカル。
無人島は1つではなかった。幾つかの無人島を通り過ぎていく。
ジュラス東基地にいた日本の護衛艦3隻「まや」と「はぐろ」と「たかなみ」が出航していた。カメリルの艦隊は、ジュラス都市国家の沖を通過することなく、バーキー王国のアルミ港に向かっている。アルミ港防衛の出航である。
サンパル皇国がアルミ港を攻撃した時、ジュラス沖経由でバーキー王国に向かったのは、この地域の地形を知っていたからだ。カメリルの艦隊が航行している航路は島が多く座礁の確率が高いところである。
座礁の可能性がある危険な海域を、何も知らないカメリルの艦隊は幸運にも何事もなく航行していた。そして、大きな島影が前方右側に現れたとき、カメリルの戦艦のレーダーが日本の護衛艦3隻を捕えていた。
「右手に、敵艦がいます。3隻。どうします?」とササド。
「あの大きな島が二ホンだな。ミサイルの射程距離に入れば攻撃だ。」とユカル。
「撃ち落とされたら、どうします?逃げます?」ササドは痛い目にあったことを覚えていたのだ。
「逃げることもできまい。降伏だ。」ユカルも分かっていた。敵との武器の差がどうしようもないほどひらいていても、何もしないわけにはいかなかった。敵わぬと分かっていても戦わなければならない軍人の不幸を噛みしめていた。
「他の艦にも伝えよ、攻撃されたら、すぐに白旗をあげよと。」
ユカルは思い出していた。遠征前、イカサス軍務大臣に「しょうもない執政官ですね。この国はどうなることやら。」と言ったことを。
先頭をゆく戦艦からミサイルが発射された。そのミサイルが撃ち落とされると同時に航空母艦が爆発する。白旗をあげる間もなく、ユカルが乗艦している旗艦に「たかなみ」から放たれた魚雷が襲ってくる。
「進路を変えて避けよ、面舵一杯!」ササドが叫ぶ。無駄であった。
バシャーン。水柱をあげて爆発する。幸運は座礁しなかったことだけであった。
白旗を掲げて残ったのは、戦艦2隻と輸送船。ユカルもササドも海の中、浮遊物にすがりついている。
「たかなみ」からヘリが飛んできて、カメリル語(フランス語)の大音量。
「ここはバーキー王国の領海である。海中にいる乗組員を救助して立ち去れ。繰り返す・・・」
輸送船のボートに救助されたユカルは悟っていた。我が戦艦を攻撃したのはバーキー王国ではなく二ホンなのだと。スパン王国での戦艦の撃沈の報告にあった敵艦の白地に朝日の旗が、この攻撃をした艦にも翻っていたからだ。そして、スリム王国だと思っていた攻撃も二ホンなのだと思った。
(とんでもない国と戦っている。すぐにやめるべきだ。)ユカルはそう思った。
輸送船には(また上陸もしないで引き返すのか。)とうんざりしているイマト中尉がいた。来るのも長い航海だったが、敗れて帰るのはもっと長い。しかも、イマトは戦わずに敗れているのだ。部下の部隊も同じ、陸の兵士、海ではどうにもならなかった。
カメリルの戦艦と輸送船は南下して陸地が目視できるようになると航路を東にとり、また帰路の長い船旅になった。
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コンガのカメリル陸軍陣地では、闇夜に限らず毎夜のように地下都市の偵察を繰り返し、道路わきにある充電器の位置を調べていた。スマルはロボットに勝つ方法はエネルギー源を断つことだと考えていたのだ。人や亜人の兵ならば兵糧攻め、ロボットに対しては充電器の破壊、全て壊せば絶対勝てる。
地下都市の地図をつくり、碁盤の目の道路に充電器のある位置をマークしていく。都市は広い、全ての位置を調べるのには気の遠くなるほど時間を要するし、危険も伴う。それに、爆破する数も限りがある。
スマルは15カ所の設置場所をマークした時点で、充電器の破壊作戦を考えた。
今までの調査から、都市の監視カメラの眼さえ避ければ、爆薬を設置して破壊するところまでは簡単である。監視カメラの位置も分かっているし、それらを避けれるルートもつかんでいる。それに、ロボットが充電をする時間帯も調査から判明している。それを避ければいい。
問題なのは、爆破後の脱出なのである。部下に任務を決行してその場で死ねというわけにはいかない。 爆破時刻を設定できる爆弾、いわゆる時限爆弾でもあればいいが、そんなものはない。あるものは爆薬と多少爆破時間を延ばせる導火線だけだ。爆破時刻を決め、時計を見て同時に爆破する以外にない。
スマルは安全に脱出する方法を見出すまでは充電器の破壊作戦を実行することはない。それが、トロル少佐と決定的に違うところであった。何度も地下都市に潜入して、15カ所もの充電器の位置を確認しているのに1人も戦死者を出していないことが、スマルの戦い方の姿勢を物語っている。
スマルの充電器爆破は成功するのか?