続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 日本の艦に敗れたことを悟ったユカル大佐は?


第3章 12話

 ユカル大佐はカメリルのカーレンに戻り、軍務省のイカサス軍務大臣の部屋にいた。

 「大臣、二ホンと戦うのはもう止めましょう。負けるのは見えてます。」とユカル。

 「そんなことを言っても、我が国が負けを認めたことは1度もない。」とイカサス。

 「スパン王国もスリム王国もバーキー王国も、攻撃したのはみんな二ホンの艦隊なんですよ。至る所に二ホンの艦隊がいる、それだけで国力が、軍事力が想像できるでしょう。そんな国と戦ったら、この国が滅びます。二ホンが攻撃してきたわけではないのです。今なら間にあいます。止めましょう。」

 「そうかも知れないが、わしにそんな権限はない。」とイカサス。

 「・・・・・二ホンへの攻撃命令を出すのはあなたです。出しても私は動きません。失礼しました。」そう言ってユカルは大臣室を出た。

 

 ユカルが海軍本部に帰ると、ササド大尉が待っていた。

 「二度も遠征を失敗する奴の顔が見たいと言って、トロル少佐が来てますよ。」とササド。

 「俺は奴の顔なんか見たくない。骨のある男が多い陸軍では相手にされないから、海軍に出張ってきやがって。海軍は目先の効く奴が多いからな。」ユカルはそう言って、イカサスを思い浮かべた。

 「私も嫌です。だから、追い出して下さい。」

 「分かった、奴より位が上の人は・・・・中佐、大佐、少将・・みんな奴の顔色を伺っている。この基地にいない・・・・」ユカルは頭をかかえた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 コンガのカメリル陸軍陣地のスマルは、ロボットの充電器を破壊した後の脱出のポイントは、地上への出口が近くにあるということだと思って、出口のチェックをした。そのための出口として分かっているのは、3カ所しかない。地下通路から地下都市への入口に1つ、破壊したミサイル発射装置の近く、螺旋階段の出口が1つ、これも破壊したミサイル発射装置の近く、そして、調査した建物のエレベータで1つ、それとつながっている地下都市の建物はつかんでいる。

 スマルは充電器破壊作戦を実行することにした。1か所の爆破に3人、1人が爆薬を仕掛ける役、あと2人は自動小銃とロケット砲で警護の役だ。通路にある出入口の階段の所に3人ずつ、2カ所に監視をつけ、爆破の場所は5カ所、都市への入口にある外部への脱出組を2組、螺旋階段の出口からの脱出組を2組にした。一番困難と予想されるのは、エレベータでの脱出だ。建物に入らなければ出れない。しかも、エレベータが動かなければ出れない。ダメな場合は、入り口まで戻らなければならない。入口までの距離は長く、その時は戦闘を覚悟する必要がある。スマルは部下を2人つけてこの場所を選んだ。

 

 

【挿絵表示】

地下都市概要

 

 深夜にスマルたちは破壊した建物の入口から地下に降りて、通路を通り、地下都市の入口までやってきた。充電器を破壊する各組には、何度も潜入して、監視カメラの位置を熟知している部下を配置している。目的の爆破地点までは悟られずに行けるはずである。各自時計の時刻を合わせ、爆破時刻を確認する。スマルが目で合図をすると、各組は敬礼をして地下都市に潜入していった。そして、最後にスマルたちが入っていった。

 

 地下都市に潜入したスマルたちは、監視カメラを避けながら、最初の交差点を西へ向かう。地上へ出れるエレベータがある建物は23番目の交差点の近くだ。かなり遠い。そこで出れなくなると苦戦する。他の組のことなど心配している余裕はない。 

 23番目の交差点に辿り着く。地上に出ることができるエレベータのある建物がそばにある。入口は開いている。建物へは簡単に入れそうである。

 爆破予定の充電器に爆薬をセットする。爆破まで少し時間がある。

 「エレベータの電源がONか、見て来ましょうか。」と部下が言う。見るのは簡単。どこかの階のランプが点いていればONだ。

 「止めておけ。ロボットがいて見つかれば、全てがパーだ。爆破が優先、それからだ。」とスマルは時計を見る。まだ、爆破の時刻ではない。全てを同時に爆破、それが全員の脱出を可能にする条件だ。長い沈黙の時間が過ぎる。

 

 

 

 地下に潜入したスマルたちは、時計を見ながら爆破の時刻を待つ。

 時はきた。ドカーン、一斉に爆破。スマルたちはエレベータのある建物に駆け込む。いた!ロボットだ。ドン。すばやくロケット弾、足を爆破。

 ババババ。動けなくても、攻撃してくる。エレベータに辿り着くのは無理、そう判断したスマルたちは、建物を出て道路を走る。暗かった道が明るくなる。爆破で目覚めた亜人たちの家の電気が灯ったのだ。もう、監視カメラに映ることなど気にしていられない。全力で駆ける。

 亜人たちが家から出てくるが武器をもっていない。なんとか脱出できそうだと思った時、ババババ、と銃を撃ちながら、前方から亜人の兵たちがやってくる。後方からはロボット、遠くて遅いが、確実に近づいてくる。

 挟み撃ちを避けるには、路地を変える以外にないとスマルが思った時、ダダダダダ、前方の亜人の兵たちが倒れていく。部下たちが銃撃音で察知して、脱出しないで援護に来たのだ。スマルたちはそのまま出口に向かってひたすら走っていった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ユカル大佐は軍法会議で有罪になった者を収容する軍務監獄に来ていた。カイルと面談するためである。ユカルがガーゴの海軍基地の責任者であった時、カイルは陸軍基地の責任者であった。その時2人は酒の席で会う機会も多く、愚痴を部下に言うわけにはいかないので、互いに運営の難しさを愚痴りあう仲であった。カイルが上官殺しで無期懲役になったことを知っていたが、立場上会うのを躊躇していた。

 面談は誰でも許可されるが、監視と記録が条件であった。ユカルは監視と記録をする看守たちに席を外させ、カイルと会っていた。

 

 「どういう風の吹きまわしかな、今頃やって来るとは?」とカイル。

 「今まではちょっと気が引けて、どうだい、投獄生活は?」とユカル。

 「快適とは言えないが、問題ない。囚人も看守も知人ばかりで。ところで、看守たちを追っ払って、そんなことを聞きに来たのではなかろう?」

 「さすが、鋭いな。今、我が国がどうなっているか知ってるか?」

 「大変みたいだな、特に軍部は。情報は入ってくる。」

 「俺はこの国をすてる決心をしたんだ。」

 「すてる?」

 「そう、郷里に帰り、独立をする。」

 「独立?内乱だろう。そうか、お前はトーベの名家出身だったな。そんなことを俺に話して、どうしろと言うんだ?」とカイルが尋ねた。

 「この監獄を襲撃する。囚人を解放して、郷里に連れ帰るつもりだ。自由になれるんだ、協力して欲しい。」とユカル。

 「断る。お前が内乱を起こすのは勝手だが、俺はここでまだ見届けたいことがあるんだ。自由なんかとっくに捨てている。それに、ここの囚人は俺の仲間だ。巻き込むな。」

 

 「・・・・分かった。襲撃はやめよう。」

 「で、勝算はあるのか、負ければ元も子もないぞ。」

 「海軍は戦艦3隻と輸送船1隻と乗組員、陸軍は戦車10台に自走砲5台、トラック5台、兵は200人、トーベに向かっている。カメリルを攻撃して倒すことはできなくても、守ることはできる。」

 「そうか、戦火はナーイ地方までだろうな。」

 「もちろん、内乱ではない、独立だ。もう会うことはないだろう、さらばだ。」そう言って、ユカルは立ち去ろうとした。

 「待て!」と言ってカイルは、「成功を祈る、友よ。」と手を差し出した。2人は力強く握手をした。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 日本では新秩序を唱える保守党が、国民の大和魂を刺激し勢力を拡大。政府は戦いに消極的であったが、マスコミはそんな政府を批判していた。

 宣戦布告を受けているが、日本にとっては何の影響もない。遠い異国の戦乱は転移前にもあった。その頃は大いに日本経済に影響があったが、今回は全くない。食料も資源も友好国との交易で十分なのである。戦いのメリットが全くないのに戦うほど日本政府は愚かではない。

 

 コンガではスマルたちが地下都市から無事脱出しカメリル陸軍陣地に戻り、次の潜入計画を練っている時、長い航海の遠征を終えたイマト中尉の部隊が戻ってきた。

 

 ユカルの母ハルルは正義院議員の辞表をトスカ執政官に叩きつけて、トーベ地方の自宅に戻り、地方の有力者を集め、独立の準備を進めていた。

 カイルに会うため軍務監獄を訪問していたユカルは、腹心の部下を連れて、郷里トーベ地方の港に戻っていた。

 惑星歴503年、カメリル動乱の戦火は免れようがなかった。

 

                 第3章 (完)




惑星歴511年、カメリル動乱、第4章で、衝撃の事実が明らかになる
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