カメリル国の陸上部隊は草原を3日3晩北上し続けていた。セイル外交官の野営テント内に一緒にいるのはマーヤ曹長だけで、外を武装兵が警護していた。
マーヤは「こんなところに警護なんて、敵もいないのに。外にいる奴の方が危険だわ。入ってくると射殺すると言っておいたけど。」と言って笑ったが、セイルは草原を走る水牛やシマウマの群れを見て、ライオンなどの猛獣がいることを想定していた。
幸いそんな猛獣に会わずに進行してきたが、眼前にそびえる山々で、、このまま北上することを断念せざる得なくなった。
マーヤは、このまま引き返せば自分の任務が果たせると思って、「もう無理だから。」と引き返すことを提言している。アビルもそれに同意している。
困り果てて決断できないのが、トロルであった。このまま引き返せば、何の成果もあげていないことになる。それが我慢できなかった。
セイルは、カーゴの街のずっと西のシェラリベ共和国に交渉に行った時のことを思い出していた。
シェラリベ共和国は一度武力で占領しカメリル国の属国になっていたが、今は反旗を翻している。
(確か、シェラリベの西には何もなくて海が広がっていたはず。ここを西に進めば海、低い土地を北に進むことができる。)
「西に進めば海のはずです。山脈はどこまでも続いていません。まだ、日にちも食料も充分ありますから、西に進んでみましょう。10日過ぎれば引き返せばいい。」とセイル。
それにすぐに同意したのはトロルであった。
「外交官殿もそうおっしゃるのだから、西へ進行します。」
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三木はリベルテ国際空港に向かう機内にいた。愛用の黒くて長方形のリュックを持って。中身は下着などの衣服だけだが。
コリーに別れを告げて、ハリーにお礼を述べに行ったとき、ハリーの部屋に連れていかれて、古に日本へ旅立ったという青年の写真を見せられ、説明を受けた。そのとき、三木はハリーの過度な待遇のわけを悟った。そして、最初に出合った時の執拗な日本の質問に違和感を覚えたのを思い出した。ハリーは最初から日本を知っていたのだ。
「好きにすればいいが、必ず戻ってくるのだぞ。家も畑もそのまま管理しておく。日本人の嫁を連れて来てもいいからな。」そう言って、ハリーは三木を送り出したのだった。
リベルテ国際空港はトイヤ港のすぐ側にあり、空軍基地と隣接している。三木は通信衛星を使った国際電話で、リベルテ国に入国することと搭乗する航空便を知らせている。
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空港に降り立った三木は驚いた。隣の空軍基地に並んでいるジェット戦闘機の数の多さにである。10機以上はある。
迎えにレアル海軍少将が来ていた。彼も大佐から少将に昇進していた。
「只者でない男よ、リベルテにようこそ。カンナへは戦闘艇でいきますか、それとも車で?」
握手をしながら「車でお願いします。」と答えた。
レアルは携帯電話を取り出し連絡して、
「しばらくお待ちください。すぐきます。」と言った。
(ここは空港内だ。滑走路もすぐ側、車は入れないはず。)と思ったが、黙って待っていた。
やって来たのは、装甲警護車であったので、三木は思わず笑ってしまった。
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トスリン宮殿の一室、三木には見覚えのある部屋であった。かつて、この国の実業家たちの見世物になった部屋である。
感慨に耽っていると、バーダンがやってきた。ニコニコ笑いながら手を差し出して、国家主席というが威厳も何もない。
三木は握手をしながら、「久しぶりですね。」と言うと、
「うまいではないか、我が国の言葉」と言った。
「長い間、この国で苦労しましたからね。」と三木は返した。
「とにかく、ここでは殺風景だから、こちらへ」といって別室に案内する。
案内された部屋の方がもっと殺風景だった。狭い部屋に丸いテーブルが1つ、そして四角い机と椅子が1つ。
バーダンは机の引き出しから何枚かの写真をとりだすと、
「これがブチル外務大臣が日本大使から預かった写真だ。」と言って、丸いテーブルに広げた。
海岸に高層ビルが立ち並ぶ写真と草原を進行する陸上部隊の写真であった。
三木はその写真をチラッとみると、興味がなさそうに話題を変えた。
「ブチル?前の政権の外務大臣では?」と三木。
「そうだ、マイトに捕まった間抜けな奴だ。そのまま、外務大臣にしている。とにかく、人材不足で、国との交渉を指揮できるものがいない。彼には、以前のように高圧的になるな、対等のつきあいに徹せよと言い含めている。」
「そうですか。 で、私に何か?」
「軍務大臣をやってもらおうと思っている。」
「大臣ですか、魅力的ですね。冗談ですよ。お断り。」
「ゴザンは一度罷免したのだが、これも軍の人材を掌握できる奴がいなくて、軍務大臣に戻したのだが、ブチルほどうまく任務をこなしてなくて、困っている。とにかく、人材不足、人がいない。頼む。軍務大臣をやってくれ。」
「無理です。はっきり言います。あなたは間違っている。」
「間違っている?」
「そうです。根本的に間違っています。何ですか、人材不足、人材不足と。人材はそこにあるのではなく、育てるものです。2年以上もの間、何をやってたんですか。」
「・・・・」
「すみません、キツイことを言って。ところで、この写真は?」と三木。
(やはりこの男が欲しい)と思いながら、バーダンは写真の説明をした。
しばらく黙って説明を聞いていた三木が口を開いた。
「で、どうするのですか?」
「ロマスクの要請に応える返答をしている。我が国は二ホンとは違う。敵は隣の大陸だから、マイト大尉率いる艦隊を派遣する予定だ。空軍にも準備をするよう伝えている。」
バーダンは日本が参戦しないことをロマスクから聞いていた。
「そうですか。軍の武器庫から武器と弾薬を適当にいただいてもいいですか?それと、マイトですか、艦隊の指揮は誰かに任せて、彼と一緒に日本のスパン南基地へすぐに飛びたいのですが、よろしいですか?」
輝いている三木の瞳を見たバーダンは大きく頷いた。
「では、航空機など手配をお願いします。それと私から連絡があるまで、艦隊や空軍を動かさないでください。さっそく武器庫への案内人をよろしく。」
動き出した三木は何を企てている?