続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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三木は日本人に会えるのか?


第4章 6話

 ボントの街のレストランで見かけた小さな女の子と女性の後を、三木がついて行く。目的の花屋はレストランの近くにあった。女性が花屋の店員に声をかける。知り合いなんだろう、女性と店員が親しそうに話をしている。

 そして、店員を三木の前に連れてきて、

 「この前いただいたこの飾り、どこで手に入れたか、この人が知りたいそうですよ。」と三木を店員に紹介して、「では、ここで」と去って行った。

 

 花屋の店員の話では、城のキーホルダーは花の仕入れ先の農園の女主人からいただいたものだそうだ。その農園は花屋の前の道路を北に真っ直ぐ進んだ街外れにあり、花を栽培しているのはその農園だけだからすぐ分かると言う。

 三木は店員に礼を言って、その道を北に進んだ。進むにつれて、道路沿いに密集していた家々がだんだん疎らになり、農地が目立つようになってきた。やがて、舗装道路が砂利道に変わるところで、前方はジャングル、東の方向に広大な花畑が見えた。

 

 三木は東に延びる小道を歩いて行く。花畑に近づくと、農園で働いている初老の婦人を見かけ、誰かれ構わず声をかける。三木は、日本人を探すことしか頭になかった。

 「この近くに日本人は住んでいませんか?」

 

 その初老の婦人は驚いたように、三木をしみじみと眺め、「あなた、日本人ですね。どうしてこんなところに?」と日本語で言った。三木も驚いた。日本語である。三木は、ついに、ボントで日本人を見つけたのである。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カーレンのアパートの狭い部屋で眠れぬ1夜を過ごしたセイルは、武骨な男が部屋に運んできたパンと牛乳で朝食をとると、携帯電話で車を呼び、メイキ大尉の部屋をノックした。

 「出かけますわよ、監視なしで行ってもいいの?」とセイル。

 「ちょっと待て。」 大慌てのメイキ。通路で隊員たちが笑っている。セイルはコッソリとは出かけられないことを知っていた。絶えず誰かの眼があるのだ。

 

 セイルはタクシーと言ったが、黒塗りの高級車、料金メーターもない。とてもタクシーとは思えなかった。セイルとメイキ、そして、ツイクの街からセイルを運んだ2人の隊員が乗り込んだ。

 

 「どちらまで?」とタクシーの運転手。

 「軍務監獄までお願い。」とセイル。タクシーの運転手も驚いたようだが、もっと驚いたのはメイキと隊員たちだった。

 「監獄?」とメイキが聞きなおす。

 「そう、そこにカイルはいるの。」とセイルが平然と答える。

 

 タクシーが動き出し、カーレンの街を走る。メイキと隊員たちはキョロキョロと外の街並みを見ていたが、セイルは目を瞑ったままであった。

 やがて、軍務監獄の門の前でタクシーが停車する。運転手がセイルに請求書を差し出す。セイルはサインをしてレシートを受け取る。

 その様子を驚きの目で見ていたのはメイキであった。隊員たちを見ると、メイキが驚いているのを喜んでる風であった。

 

 タクシーを降りると、門衛が走って来てセイルに敬礼して、「どのようなご用件で。」と尋ねた。

 「カイルに面会、許可は申請していないけど。」とセイル。

 「しばらくお待ちください。連絡してみます。」と言って門衛は走って行った。

 メイキは唖然としている。それを見て隊員は面白がっている。

 

 奥から看守が走って来る。セイルに敬礼して、メイキたちを睨む。看守はメイキたちが自分と同じ種類の人間であることを感じ取っていた。

 「セイル様、どうぞこちらへ。」と言って、ついて行こうとするメイキたちを遮る。

 「規則で、面会は2人まで。ここでお待ちください。」言い方は丁寧だが、命令口調である。

 「2人と言ったな。では、私が行くことは問題ない。」メイキの口調も絶対ついて行くという強い意志があった。

 結局、セイルとメイキが看守に案内されて奥へ入って行った。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 コンガのカメリル陸軍陣地に戻ったスマル少尉はイマト中尉に報告していた。

 「奴隷収容所のようなもの、やはりありました。農園や果樹園の建物の側に。ところで、困ったことに、壊したはずの充電器が修理されていたのです。修理を確認したのは1カ所ですが、1か所直せるということは全て直せるということです。これは、大変なことです。今まで充電器を破壊してきたことが未意味になります。作戦の変更が必要です。」

 

 「となると、ロボットに打つ手はないということですね。退却しかない。」とイマト。

 「そういうことになりますが、でも、何とかしないと。自らの故障は修理できる、今度は充電器を修理するようになった、次は。自らを創るようになったら大変なことです。今は、ロボットの数が限られているのでしょう。この陣地に攻めてこないし、壊れたロボットを持ち帰って修理している。でも、その必要がないほど創れるようになったら、この陣地だけでなく隣のガポリも我が国カメリルも世界中を攻めることができるようになる。ロボットのエネルギー源、電気はどこにでもありますから。こんな陣地でさえ、発電機が備えられ、電気を使っているのですよ。我々が何とかしないと、世界が奴らに支配される。」 

 

 「私たちだけでは無理でしょう。退却して、国を挙げて対策を練らないと。」

 「そうでしょうが、そんな時間的な余裕はないと思います。創り出したら終わりです。」とスマル。

 「私は報告に国に帰ります。敵前逃亡と非難されてもいい。国はこの重要なことが分かっていない。分からせないと本当に国が滅ぶ。」とイマト。

 「そうですね。私は残ります。最初に攻撃してくるのはここですから、それから退却しても遅くない。それまでに、対策を考えましょう。」とスマル。

 

 その夜、スマルもイマトも同じ夢を見た。地下都市の様に世界中の人が奴隷になっている夢を。 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木がボントの街で見つけた日本人の初老の婦人は、日本人に会えた喜びのあまり、していた農作業も放り出して、三木を自宅に招いていた。 

 そこには同じような年齢の女性が別に3人住んでいて、4人で農園と花畑の世話をしているという。三木がいろいろ尋ねるはずだったのに、どうしてここに来たのか、ここはどこなのか、そして、日本はあるのかと、反対に質問攻めにあっていた。答えに困ることもあったが、三木は、久しぶりの日本語の会話で心地よいおしゃべりの時間であった。

 

 三木は独身だが、かなりの年配である。しかし、婦人たちから見たら若い日本の男性である。昼食を食べていけとしきりに勧める。断る理由もなかったので、ご馳走になることにした。セイルのことは分からなかったが、彼女たちがどうしてここにいるのかを話してくれた。

 

 15年か16年前に航空機で日本を発ちドバイに向かっていたところ、原因不明の航空機の微振動が起こり、異世界に飛ばされたという。ドバイ国際空港に着陸の予定であったが、ドバイの街そのものがなくなっていて、航空機は着陸することもできずそのまま飛び続け、燃料切れで不時着したのだという。

 

 珍しいものが不時着したのか、現地の人たちが集まって来て、いろいろ喋っているが、何を言っているか分からなかったそうだ。しかし、乗務員は言葉が通じて、現地の人と話して、ここがガポリ共和国で話している言葉はフランス語だと乗務員に教えてもらったという。

 

 とにかく全く知らない国で、ジャングルの中、異世界にやって来たとしか思えなかったそうだ。ガポリの人たちは親切で、不時着した日本人に住むところと食べ物を提供してくれて、半年か1年、この地で生活していたら、カメリルとの戦争になったという。今までの恩義もあり、男たちは老いも若きも戦場に向かい、女たちも武器をもって戦いに参加し、150人ほどいた日本人は皆戦死したそうだ。

 

 「残っているのは、年寄りの女か、病弱の女かで、私たち4人と、あと5人の女だけだ。」と自嘲気味に語った。

 「9人だけですか。皆さんの名前と年齢、この用紙に書いてください。あと5人の人も、連絡して、書いてください。日本はあります。たった15・6年です、親族の方もいます。帰れるかもしれません。」

 4人の女性の顔が輝き、1人が「連絡してくるわ」と言って出て行った。

 「あなたに見せたいものがある。」と言って、最初に出会った老婦人が外に出て、手招きをした。




老婦人は三木に何を見せるのか?
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