続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

41 / 71
ついに、セイルの出生の秘密が明らかに


第4章 7話

 セイルとメイキ大尉はカメリル軍務監獄の面会室にいた。ドアが開いて、カイルが入ってくる。

 「どうして来たの。ここはセイルちゃんの来るところではない。」と厳しい顔をしたカイル。

 「お母様から聞いたの。ニホン人だと。おじちゃんが詳しいことを知っていると。」とセイル。

 厳しい顔をしていたカイルの顔が曇った。しばらく、沈黙の時が過ぎる。

 

 「悪いが、出て行ってくれんか。2人で話をさせてくれ。」とカイル。記録と監視の看守が敬礼をして出ていく。メイキは動かない。

 「あなたもだ。」と強い口調でカイルはメイキを睨む。メイキはカイルの気迫に負けそうになり、セイルを見る。

 「おじちゃん、この人は大丈夫。私も大丈夫、話して。」

 セイルはメイキをかばう必要などなかったのだが、2人の睨み合いよりも早く話を聞きたかったのだ。カイルはメイキを無視して話し始めた。

 

 カメリル国とガボリ共和国との戦争で、ゴメス将軍と一緒にボントの街に侵攻したカイルたちは激しい戦いの末、街を制圧した。軍規では抵抗しない民間人を殺害することは厳禁であるが、誤ってカイルの部下が、赤ん坊を抱いて逃げている母親を銃撃してしまったと言った。

 カイルが駆け寄って、母親を助けようとしたが、出血も多く傷も深くて、無理だった。そのとき、その母親に赤ん坊と封筒を預けられ、赤ん坊の名がセイルでニホン人だと告げ、助けて欲しいと懇願されたそうだ。その赤ん坊と封筒を抱えて、ゴメスに相談すると、自分の子供にするから自宅に連れて行けと指示された。幸い自宅のあるツイクは近く、すぐに連れて行って、ゴメスの指示をユリネに伝えたと話した。

 

 そこまで話すと、カイルは天井を仰いでから、セイルを見つめ、「どうして、お母さんがセイルちゃんが日本人だと言ったの?」と尋ねた。

 「日本人がやって来て。」とセイルが言うと、カイルは無視していたメイキを、殺意に満ちた目で睨んだ。

 「この人は違うわ、ニホン人ではない。」

 そう言ったセイルは、ミキというニホン人が奇妙に気になった。

 (私が二ホン人、それならそれでいいし、ここで分かるのに、どうして、ボントの街まで行って調べなければならないのか、意味不明だわ。)

 

 目の前の男がニホン人でないというセイルの言葉を聞いて、メイキに対する敵意をといたカイルは、セイルにユリネの容態を尋ねた。それに「良くも悪くもないわ。いつもの通りですよ。」と答えたセイルは父ゴメスがどんな人であったかを尋ねた。セイルはゴメスの顔を写真でしか知らないのである。カイルにとっては仇をとるほどの恩人、「厳しいが優しい方でした。」とだけ伝えて、面会を終えた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木はボントの街外れで会った日本人の老婦人の後をついて行った。見せたいものがあるという。出会った農園まで戻って、さらに小道をジャングルに向かって歩いて行く。そして、ジャングルの中へ入って行った。道幅は狭いが手入れの行き届いた小道だ。

 

 しばらく歩くと小道に沿って大小色々な石が並ぶ、花などが供えられ、墓石のようだ。老婆は言った。

 「戦いで亡くなった日本人のお墓です。戦いの後、ゴメス将軍が日本人の遺体をトラックで運んできて、どこに埋葬したらいいか、私たちに尋ねたから、ここに埋葬するようにお願いしたのです。」

 「ゴメス将軍?初めて聞く名だが、カメリルの軍人ですか?」

 「そうです。戦後しばらくして殺されました。ガボリ人の復讐と噂されていましたが、部下に殺されたようです。」

 「そうですか。」三木はゴメスが セイルの父であったことを知らない。

 「今でこそ、花を出荷していますが、もともと花畑はここに花を供えるために始めたのです。100以上墓石がありますから。」

 三木はジャングルの小道が整備されているわけを理解した。彼女たちが手入れをしていたのだ。三木は小型デジタルカメラのシャッターを何回も押した。

 シャッターを押しながら、三木は首を傾げる。墓石にではない、周りの風景にである。見覚えがあるのだ。見たこともないのに見たように感じる既視感かなと思ったが、三木は記憶を辿り、移転前にこの地に来たことがある事を思い出した。地質調査の研究団と同行したことがあったのだ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カーレンの軍務監獄を出たセイルは、「もういいでしょう。私は自分の公舎に帰ります。」と言った。

 「それは、ダメだ。三木さんが帰るまで一緒にいてもらう。」とメイキ。

 セイルはメイキを睨む。睨んでも、監獄にいたカイルの殺意に満ちた凄味と比べたら可愛いものであった。まったく意に介せず、「アパートに帰るぜ。タクシーを呼べ。」と2人の隊員に命じる。

 呼べと言われても携帯もないしタクシー会社の番号も分からない。2人で顔を見合せていると、「馬鹿たれ!通りに出て拾ってくるんだ。」とメイキ。

 「待って、タクシーなど拾えませんわ。」と言ってセイルが携帯を取り出す。結局、セイルが呼んだタクシーでアパートに戻ることになった。

 

 セイルは自分が疑いなく二ホン人である事を知り、日本人であるミキを待ってみようと思った。サンマル教の神がそう望むのであれば運命に身を任せてみようと考えたのだ。

 セイルは、メイキたちを軍人だと見抜いていたが、自由気ままに振舞っていても、自国の兵のように略奪や暴行を働くような人たちではないと感じていた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カーレンに戻ったイマト中尉は、陸軍基地のトロル少佐にゴンガのロボットの説明をして、早急に対策をするように訴えていた。

 「そんなことを言っても無理だ。海軍のユカルの馬鹿が反逆しやがって、ト-べ共和国などと。とにかく軍は大混乱。」とトロル。

 「ユカル大佐が、そんな・・・・」イマトは2度の遠征で敗れても部下を叱咤しないユカルを見ていた。自分の上司の目の前のトロルとはえらい違いだと感じていた。

 

 「コンガのカメリル陸軍陣地は無事なんだろう。だったら、そちらに戦力を回さなくてもいいはずだ。コンガは、スマルだったか、あの変人に任せて、お前はこちらを手伝え。」

 イマトはトロルに何を言っても無駄だと思った。ことの重大さを理解してくれる人、そう思って浮かんだのはカイルであった。しかし、カイルは獄中の身、イマトはこの問題を話せる人を他に見出せなかった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木は、ボントの街外れから墓石の続くジャングルの小道を老婦人と歩いていた。

 墓石が途絶えてもジャングルの小道は続く。だんだん道に草が伸びてきて歩きにくくなるが、老婦人はさらに奥へ入って行く。

 老婦人が立ち止まった。三木も立ち止まった。前方に古くなっている航空機が横たわっている。三木には鮮やかに見えた、赤い鶴のマークが。

 

 三木の脳裏の思考回路が目まぐるしく回転する。

 

 (西暦20××年、日本列島に異変が起きたとき、国内線の航空機は日本列島と共に転移していた。海外を飛んでいた日本の航空機はそのまま地球に取り残されて、海外にいた日本人と同じ運命をたどった。

 しかし、海外に向かって出発していた航空機が日本列島と共に転移していて、そのまま飛んで行ったとしたら、西暦2×××年の地球だ。そこには何もない。

 あのとき、海外に向かって飛んでいた飛行機は1機や2機ではなかったはず。1機も日本に戻ってこれなかった。

 でも、不思議だ。転移した後に飛行したとしたら、太平洋、東シナ海ではないはず、大西洋、メキシコ湾でないとおかしい。この位置は、転移したところからではなく、もとの位置から飛び立って、そのまま飛行している。なぜだろう。

 まあ、戦争で多くの人がなくなったとはいえ、不時着して、食べ物と住処があったことはラッキーだったのかも知れない。ほとんどの航空機は、何もなくて生地獄だったのだろう。)

 

 三木は思わず、天に手を合わせた。そして、どうしても調べて確認したいことがあって、日本に帰ろうと思った。老婦人に「よく分かりました。ありがとうございます。引き返しましょう。」と言って、もと来た小道を歩き始めた。




三木はどのようにして日本に帰る?ガボリ共和国の日本人は?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。