ナクルの街を出た三木たちのトラックは、農地と果樹園の広がる田園地帯を疾走し、ジャングルの中へと進んできた。
「ここを抜けるとカメリルの陣地ですが、どうします?」とメイキ大尉が尋ねた。
「こちらから敵が来るとは思うまい。ゆっくり通れば通過できるよ。」と三木。
「そうですね。問題は陣地を抜けて戦場に入った時ですね。」
「そうだ、前からも、後ろからも攻撃される。何も前のトーベの陣地に行く必要はない。陣地を避けて草原を走ってトレツの街へ行けばいい。そうだ、後ろの隊員に連絡してくれ。戦車で攻撃される恐れがある。危険回避のため攻撃を許可すると。」
メイキはトラックを止め運転席から降りて、荷台の隊員たちに三木の指示を伝えた。それを聞いた隊員たちは歓声をあげて喜び、じゃんけんを始めた。
セイルはその様子を眺めて、(何なの?この人たちは?)と首を傾げていた。トラックが走り出してもじゃんけんをしていた。
勝者が決まったのだろう。2人の隊員が嬉しそうに木箱を開ける。その中には、ロケット砲が2基入っていた。
トラックがジャングルを出る。カメリルの陣地が見えるとスピードを落とす。そして陣地内の道路をゆっくりと走る。三木の予想通り、誰も気に留めていない。
さすがに陣地を出てトーベ軍の方に向かうと不審車と気付く、
ダダダダ ダダダダ
トラックの荷台のホロに穴が開く。セイルや隊員たちは伏せている。トラックは草原に逸れてジグザグ走行、後方から戦車が出てくる。
ドン ドン
トラックの側面で土煙が舞う。荷台の隊員が後部のホロをあけ、ロケット砲がセットされる。
ドカーン ドカーン
2発とも命中、2台の戦車が爆破される。
セイルは驚きの目で隊員たちを見ていた。セイルとて陸軍少尉、ロケット砲の操作をしたことがある。静止している場所で砲撃しても当てるのは難しい。なのに、ジグザグ運転のトラックから命中させていたのだ。(何という技量だ。)とセイルは恐れた。
セイルはこのロケット砲が誘導弾である事を知らなかった。正確に操作すれば誰でも命中させることができるのだ。それを知ればなお恐れたかも知れないが。
それにしてもしたたかな連中である。攻撃に参加できない6人の隊員は、「戦場を駆けるトラックだ。」と言ったり、「地雷に注意しろよ、ミサイルは回避だよ。」と喜んでいる。
カメリルの陣地の方から砲撃や銃撃の音がする。トーベの陣地が気付かないはずはない。前方からも戦車が出てくる。挟み撃ちになっては敵わない。
メイキは進路を右、北の方向に変え、戦場からの離脱を試みる。敵を倒す必要はない、逃げればいいだけ、簡単だった。戦場から離れることでいいのだ。
遠くで、砲撃と銃撃の音は相変わらずしている。カメリルとトーベが戦っているのだ。音から遠ざかるように、北に進んでいたトラックは、進路を西に変える。
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コンガのカメリル陸軍陣地では、攻撃の成果を確認するためにスマルは部下2人に念のためロケット砲と自動小銃を持たせて地下通路に潜入していた。ロケット弾は在庫が少なく、補給を待っているのであるが、身の安全のためには持ち出さざるを得ない。夜間の偵察とは言え、攻撃されることは常に念頭に入れておかねばならない。
破壊した建物の階段を降りて、地下通路を右に、東へ進む。左右に分かれている通路の手前にロボットの残骸が3体、左側に4体、いつもは右に、南へ進むのであるが、今度は左のガラクタを除いて、北へ進む。この通路にはロボットの残骸が散らばっている。1体、2体、3体・・・・確認しながら進む。地下都市の扉があるところまでに8体の残骸を確認した。こちらの扉からは中の都市を確認し、通りを歩いてロボットを誘い出しただけで、入って調べたことがない。
鍵はかかっていない、そっと扉を開け地下都市に潜入、扉から真っ直ぐ東に舗装された2車線の道路が伸びている。都市の西側の壁はやって来た地下通路の壁と共用のようだ。ずっと南の方向にも壁が目視できる。でも、広い。東側と北側はまだ境界の存在すら分からない。スマルは徒歩では東と北の境界へは辿り着けないと感じていた。
東に向かって歩いて行く。道路脇の建物は住宅のようだ。亜人でも住んでいるのだろう。1つ目の交差点、同じ舗装道路が南北に伸びている。2つ目、3つ目と交差点の数を数えながら進む。5つ目の交差点の近くに、地上へのエレベーターがある建物と同じように天井まで達している建物を見つけた。
スマルは首を傾げる。
(以前入ろうとしたエレベーターのある建物とは違う。それに、この位置、地上には何もないはず。地上は戦いで何度も通過したことのある位置だ。地上に建物はないが、出入口があるのかも知れないな。)
スマルは自作の地図にマークを付けた。
更に東へ進む。6番目、7番目、交差点の数を数える。
ババババ
ロボットの射撃、7番目の交差点の南側からロボットの攻撃。
スマルたちは全速力で駆けだし、引き返す。 亜人たちの家に明かりが灯る。亜人たちが出てくるが武器は持っていない。スマルたちは全力で逃げる。
無事逃げ切ったが、正確に胸に射撃を受けている。防弾チョッキで助かったのだ。
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三木たちのトラックは戦場から逃れ、トーベ地方の草原を西から南に進路を変えて走り、舗装された道路に到着、後は直線道路がトレツ、ガーゴと続いている。
「昼食、どうします。トレツの街に着いてからにします?」と運転のメイキ大尉。
「いや、先に済ましておこう。カメリルに反逆している場所だ、こちらにはカメリルの外交官もいる。トラブルは避けたい。」と三木。
「そうですね、どこかへ停めましょう。」
トラックは道路脇の駐車スペースに入って行って停車する。メイキが運転席から降りて、荷台の隊員たちに指示。「昼食用意!」寝ていた隊員、瞑想に耽っていた隊員、卓上ゲームやトランプをやっていた連中が、すぐに行動を起こす。トラックはエンジンをかけたままで、車内の電源を利用する。電源プラグを取り出し電熱器を接続する者、飲料水タンクから飲料水をポットに注ぎ、湯を沸かす者。ケースから缶詰を取り出し、それを開ける者、即席スープや即席麵を紙コップや紙碗に入れる者など、8人がバラバラで勝手気ままに行動している。そう見えるのだが、あっという間に食事の準備ができる。
セイルの前に差し出されたのは、パン、即席スープ、即席麵、缶詰のサンマ、トマトとパスタのサラダ、バナナ、パイナップルが載っている大きなプレートであった。緑黄色野菜がないのが気になったが、致し方がないことだ。それよりも、短時間にセイルの分も含めて11人分の食事の用意ができることが驚きであった。
隊員たちは思い思いの場所へプレートを持って行って食事をしている。軍隊を経験しているセイルは、この集団を常識外れの軍隊だと思った。3日前からとんでもない連中だと感じていたが、誰も自分を見ていないのに、自分の監視を怠る気配が一時もしないのだ。
(何なの?この連中は?)セイルの行き着く思いは、いつも同じであった。
三木たちは無事脱出できるのか?