続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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三木たちの脱出の旅は続く、待っているのは?


第4章 11話

 大きなワンプレートで昼食を食べてるセイルのところに、メイキがやって来て言った。

 「どうですか?お口にあわないとは思いますが、機会があれば得意のカレーをご馳走しますよ。」

 「いえ、美味しいですよ。カレーですか、いいですね。それより、私、あのミキとかいう二ホン人と一緒に二ホンへ行かないといけないのですか。あの人、苦手なのです、嫌ですわ。」

 「あははは、そうですか。そうですよね。あははは。」

 「二ホンという国は興味があります。行ってみたいと思っています。でも、あの人と一緒というのはどうも。」

 

 セイルはお嬢様と呼んでいた三木がセイルちゃんと呼び始めたことに嫌悪感を抱いていた。メイキから自分を守れと命令したのが三木であると聞かされても、初めて会った時から自分をコバカにしていた三木を好きになれなかった。

 「お嬢ちゃん、俺もあの方が嫌いだったんだよ。だって、戦って敗れた敵国の人だよ。殺してやりたいと思うのが当然だろう。ところが、上官があの方の命令に従えと言うんだ。俺は軍人、命には従う。でも、嫌だ、嫌いだと思って仕えたら、身も心も削られる。だから、嫌なことを見ないで、凄いところをみようと思って仕えているんだ。そうしたら、凄いところがいっぱいあって、今ではあの方の下で働いて良かったと思っているんだ。お嬢ちゃんだって、嫌な人を嫌だなって見ると神経擦り減らすけど、面白いな、不思議だなって見ると面白くなると思うよ。どうせ、避けられないんだから。」

 「・・・・・・・」

 「お嬢ちゃんとはシュラリべ共和国で会っている、あの時は強くて立派な娘だった。前にも言ったよね。明日は明日の風が吹く。なるようにしかならないさ。セイル外交官殿。」と片目を瞑って、メイキは去っていった。

 

 運転席に戻ったメイキは、食事を終えて助手席で消音銃の手入れをしている三木を見て、(あんなに嫌われているとは)と思わず笑った。

 「何が可笑しい。」と三木が怪訝な顔をする。

 「いえ、別に。ところで、トレツでの検問、どうします。」

 「街に入るのは問題ないだろう。どうも検問所はカメリルが造ったもののようで、カメリル側にはないようだ。ナクルと同じでいい。出れば追ってこないだろう。来たらロケット弾で爆破。隊員にも伝えておいて下さい。それから、荷台の穴だらけのホロ、何とかならないのですか。街中を走るには不自然すぎる。」と三木。

 「予備があるかもしれません。確認します。」そう言ってメイキは再び運転席を降りた。

 

 メイキは予備のホロがあるのを確認すると、食後の後始末をしている隊員たちを呼び寄せてホロを交換させた。そして、三木の方針を伝えると、隊員たちがまたじゃんけんを始めた。メイキはそれを笑いながら眺め、出発の合図をして。運転席に戻った。

 

 トラックはゆっくりと駐車スペースから道路に戻るとトレツに向かって走り出した。のどかな田園地帯がしばらく続いていたが、やがて道路脇の住宅や店舗が増えてくる。街に入ったようだが予想通り検問所はない。

 セイルはホロの隙間から街並みを覗く。トレツはセイルにとって懐かしい街なのである。セイルが正義院議員になったとき、何も分からないセイルにいろいろ教えてくれたのがこの街の出身ハルルであった。そして、よくこの街を訪れていたのだ。

 

 トラックは街中を走り、やがて街の出口の検問所に近づいていくとスピードを落とし、 検問所に達すると急に速く走る。検問所にいた兵は唖然として追ってもこない。唖然としているのは荷台のロケット砲を手にしている隊員たちも同じ。他の隊員は手を叩いて喜んでいる。トラックはガーゴの街へ向かった。

 

 ツイクの検問を突破した三木たちのトラックは舗装された2車線の道路を走り続けた。農地が広がる田園地帯を抜け、ジャングルを抜け、そして、草原と森を眺めながら走った。

 

 ガーゴ都市国家に到着した三木たちは、市庁を訪れた。市長テーゴと面会したのは三木とメイキ大尉だけで、他の人はトラック内で待機であった。型通りの表敬訪問を済ますと、別室で貿易局長レンドと会っていた。

 「メイキ殿、陸軍の指導をお願いしたいのですが、いかがでしょうか?」とレンド。

 「指導?」とメイキ。

 「はい、リベルテから砲や銃、車両などを購入したのですが、その取り扱いを教える者がいなくて困っているんです。3日でも4日でもいいですから。」

 「私は帰国して報告しなければなりませんから、隊員たちを残しましょう。それでいいですか?」

 

 「はい、ありがとうございます。帰国するなら航空機がいいですよ。国際空港も完成してリベルテと1日1往復の定期便も運航しています。」

 「そうですか。私は港に停泊している軍艦から軍に連絡する義務がありますし、艦長とも懇意にしていて話もありますから、それで帰ります。」とメイキは言って、三木を見る。

 「私は航空機で帰ります。席を手配してくれますか、2席?」と三木。

 「はい、いいですよ。2席ですね。ところで、三木さんは二ホン人でしたね。リベルテを通じて二ホンとも交渉しているのですが、航空機の乗り入れ、貿易もですが、いい返事がいただけなくて。」

 「そうですか。」と三木。

 (カメリルと戦っている限りは無理だろうな。危険だけでメリットがない。国は慈善や人道では動かない。ボントの街の日本人たちも帰国できるかどうか。)と思った。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カメリルのツール地方ではバジルが妹ユリネの家にいて、病床のユリネの側で紅茶を飲みながら、セイルのことを尋ねていた。

 「で、セイルちゃんは日本人だと納得したのかね。」とバジル。

 「納得したがどうかは分からないわ。でも、襲ってきた二ホン人は納得したみたい。セイルを殺さなかったのですもの。」とユリネ。

 「その後、セイルちゃんは?」

 「カーレンの官舎だと思うわ、カイルに話を聞くと言ってたけど。カイルはどこにいるのかしら? 」

 バジルの顔が曇った。

 

 リベルテでは大統領選の出馬を固辞していたレアル少将が、度重なるメイキ大佐やセントの説得に折れて、出馬を決意していた。セントは、かつてメイキの下で砲撃隊長をしていたのだが、今はバーダン国家主席の側近として広報官を務めている。

 バーダン国家主席はリベルテ国の発展の為には、初代大統領はレアルでなければならないと信じて疑わなかった。選挙権は15歳以上のすべての国民、15歳で働いている人もいるのだから当然であるというリベルテでは画期的な選挙制度であった。

 「レアル殿は大丈夫でしょうか。対抗馬も多いし、とくに、若者に人気のある人も出ているようですから。」とセント。

 「大丈夫。選挙は、誰が投票するかは、重要なことではない。重要なのは、誰が開票するかだ。」とバーダン。

 惑星歴504年、リベルテの歴史が動こうとしていた。

 

 カメリル軍とトーベ軍が対峙している前線では、三木たちのトラックが通過した時に衝突があったものの、互いの攻撃はすぐに終わり、睨み合いが続いていた。

 トロル少佐から指示を受けたイマト中尉の部隊がカメリル軍に合流すべく、対峙している前線に近づいていた。

 カーレンの港を出航したカメリル海軍の艦隊もトーベの港ドレキに近づいていた。

 惑星歴504年、カメリル軍とトーベ軍との戦局も大きく動こうとしていた。

 

 コンガのカメリル陸軍陣地では、イマト中尉の戻ってくるのを待っていたが、いつまで経っても戻ってこない。それだけでなく、要請していたロケット弾も音沙汰なし。カメリルにとっては、コンガよりもトーベの方が重要だったのだ。

 地下都市の天井まで伸びている建物、マークした地点の地上に何もなかった。出口ではないのだ。スマルは広大な地下都市の天井を支える柱の役割をしているのではないかと考えていた。

 昼間に亜人兵がこの陣地を攻撃してくるが、ロボットは陣地までやって来ないので守りの心配はない。でも、地下通路の偵察でガラクタになっていたロボットは15体、ロケット弾があれば更に破壊できる。イマトの部隊がいなくても作戦は実行できるがロケット弾がないとどうにもならない。

 やっと攻撃の糸口を見つけたのに、武器が調達できない。スマルは苛立ちと不安を覚えながら、本国からの連絡を待っていた。

 惑星歴504年、地下都市ルマナで不穏な動きが始まっていた。

 

 日本との交流はないがガーゴの街は、1日1往復の航空便の他に、船舶が何便もリベルテを往復して人と物の流通が盛んであった。隣のシェラリベ共和国とも軍事防衛同盟を結び、積極的に交流していた。

 借りていたトラックを返し、メイキたち特殊部隊とも別れた三木は、セイルを連れて新しくできたガーゴ国際空港でリベルテ国際空港行きの便を待っていた。

 惑星歴504年、セイル17歳、未知への旅立ちであった。

 

                第4章 (完)

 




惑星歴504年、物語は第5章へ、セイルは何を見る?そして、三木が日本に帰って確認したいこととは?
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