挿絵は、海面上昇シミュレータ、ペイント、ChatGPT を使用して描いています。
この章で、三木が日本で確認したいことが明らかになる。惑星歴512年、セイル17歳、日本に旅立つ?
惑星歴504年、セイルは17歳になっていた。何の因果か、嫌な男三木と旅をすることになり、気分の悪いことこの上なかった。嫌だなと思って見ると神経をすり減らすから、面白いなって見るといいというメイキ大尉の提言も、拉致の身の今のセイルには酷であった。
三木はガーゴ国際空港からリベルテ国際空港行きの航空機に乗って、子供の様にはしゃいでいる。リベルテの民間機は窓があるからだ。しかも窓際の席、外が眺められるのがそんなにうれしいのか、隣のセイルには理解できなかった。セイルは民間機に乗るのは初めてだが、陸軍に在籍していた時に訓練で何度もヘリコプターに乗っていた。だから、空を飛ぶからと言って、うれしくも怖くもない。
三木とセイルは 傍目から見ると親子の様に見える。肌の色も目も口元も似ている。違和感があるとすれば、三木が子供の様にはしゃいでいて、セイルが大人の様に落ち着いているという事だけだ。
「ねっ、見て、海だよ、海。」と窓の外を眺める三木。
「わあっ、雲だ、雲!」とにかくうるさい。周りの乗客が笑っている。
セイルは三木の様子が飛行機に乗る前とあまりにも違うので、自分の気を引くためにわざと振舞っているのかと思っていたが、どうもそうではないみたい。
「窓から外が見えるのがそんなに面白いですか?」とセイル。
意外なことを聞くという顔をする三木。
「空の上から外が見えるのだよ、そんな経験、滅多にできない。」
三木が空の上から景色を見たのは、10年以上前に自衛隊のヘリで西方大陸東岸へ飛んだ時だけである。航空機には何度も乗ったことがある。でも、日本の民間機には窓がない。できるだけ燃料費を節約して飛行するための究極の形が窓なしになったのだ。もちろん、日本の航空機は座席のモニターで操縦席のモニターと同じ外部の映像を観ることはできる。しかし、窓から見える景色とモニターを通した景色とは本質的に違うものがある。
三木は窓の外を眺めては、ああだこうだといろいろセイルに話しかけたが、全く相手にしてくれない。
「席、変わりましょうか。」と三木。
「いいですわ。ここで。」とセイル。窓の外など見たくもなかった。セイルは目を瞑った。
(年頃の娘は扱いにくいな。)そう思った三木であった。
航空機の移動は早い。リベルテ国際空港に到着した三木は、すぐにそこから西方大陸東岸空港に飛び立ちたかったが、リベルテ軍アドバイザーを拝命している身である。きちんと挨拶をして帰るために、バーダン国家主席のいるカンナの街に向かう必要があった。
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トーベ共和国のドレキの港では、ササド艦長率いる艦隊が、やって来るカメリルの艦隊を迎え撃つべく出航していた。
カメリルの艦隊は戦艦3隻、航空母艦1隻、輸送船1隻、面倒なのは戦闘機、二ホンとの海戦で学習したこと、航空母艦をまず叩く。ササドは指示する。
「ミサイルの射程内に入ったら、空母、戦艦の順で狙え。」
ト-べの戦艦1隻がミサイルを発射、カメリルの空母に命中。続いて残りの2隻がミサイル発射。敵戦艦に命中。トーベの先制攻撃でこの海戦はトーベの圧倒的な優位、当然であった。
ユカル海軍大将がカメリル海軍から引き連れてきたのは艦長、航海士、砲撃士など優秀な乗組員たちであった。敵戦艦はすべて傾いている。
ササドは戦艦による攻撃を止め、訓練した巡視艦に輸送船を攻撃させた。しかも、5隻の巡視艦全てに1発だけ砲撃するように命じた。反撃の能力のない輸送船は5発の砲弾を浴び、沈んでいった。
トーベ軍とカメリル軍が対峙している前線では、カメリル軍にイマト中尉の部隊が合流し、武器や物資が補給された。カメリル軍の総攻撃が開始されると、よく守っていたトーベ軍であったが、じりじりと後退せざるを得なかった。
海軍はユカルやササド、指揮する人材がいたが、陸軍はカメリルから200人の兵がトーベ軍に参入していたが指揮する者がいなかった。そして、何よりもカメリル軍が有利になったのは、イマトの部隊の戦車隊の存在であった。コンガでのロボットとの戦いで足を砲撃する経験から、敵戦車を狙うことなど造作もなかった。
トーベ地方の集落が、1つ、2つ、3つとカメリル軍に占領されていく。伝令はその情報をトレツの政府に伝えているのであるが、返信は防衛の1点張りで援護の軍も補強もない。
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リベルテ国際空港はトイヤ港のすぐ側にある。三木は戦闘艇で川を上ってカンナのトスリン宮殿に入るのも悪くないかなと思ったのだが、戦闘艇に乗ることができないことも確かなので、バスでカンナの宮殿前まで行くことにした。
トイヤの街は選挙一色であった。街のあちこちにポスターが貼られ、スピーカからは演説のがなり声がしている。ポスターの貼る場所は定められていないようである。同じ顔が並んで貼られていたり、破られていたり、広告宣伝のポスターと同じである。
三木とセイルは、トイヤのバスターミナルからトスリン宮殿行きのバスに乗り、カンナの街に向かった。
カンナの街も選挙一色であった。車窓から、若いアイドルのような男が台の上に立ち、周りに集まっている群衆がみえる。声は聞こえないが選挙演説をしているようだ。
その光景はセイルの興味を引いたようである。
「あれは、何をしているの?」とセイルが三木に尋ねる。カメリルでは見かけない光景である。
「演説しているんだ。」と三木。
「演説?何のために?」「選挙だよ。」「選挙?」
カメリルでは選挙が行われるのは、正義院議会で執政官を決めるときだけである。正義院議員は名家の長子と決まっていて、選挙で選んだりはしない。
「国民が大統領、国の政治をする人を決めるんだ。演説していた人は自分に投票してくれと言っているんだよ。」と三木。
そう言われても、セイルには全く理解できなかった。カーレンと比べると、バスも旧式だし、街並みも前近代的だし、蛮国のすることは訳が分からないと思っていた。
そして、バスが宮殿前について降りた時、目の前のトスリン宮殿を見て、その思いを強くした。権威を強調し人を圧迫するような重厚な造りの宮殿、まさに古代の宮殿だと思った。カメリルではサンマル教のバハナミ神殿がそれに似ているが、それは古代の建築物を利用しているだけであった。
三木とセイルはバーダン国家主席と会っていた。
バーダンとセイルは初対面、会うとすぐにバーダンが三木に尋ねた。
「この娘は?三木さんの彼女?えらい若いね。」
「違いますよ。」「じゃあ、隠し子かね、隅に置けない。」
「何言ってんですか。ちょっとした事情で保護しているだけですよ。そんなことより、大統領選、凄いですね。何人立候補しているのですか?」と三木。
「7人、想定していたより多い。まあ、レアルが立候補してくれたので良かったが。」とバーダン。
「レアル?ああ、トイヤの海軍基地にいた人、そうですか、彼が大統領選に。ところで、選挙権は15歳からと伺っていたのですが、思い切りましたね。」
「いやいや、思い切ったと言えば三木さん、あなたの方が。メイキから聞きましたよ。特殊部隊の訓練をあのような形で実施するなんて。」
「いえ、最初からの計画ですから。それよりお願いしていた隊員たちの昇級、報酬アップは?」
「もちろん、帰ってきたら喜びますよ。」
「ありがとうございます。ついでに、しばらく任を解いていただきたい。」
「そうではないかと思ってました。いいですよ。また、お願いします。」
「では、日本に帰ります。新しい大統領によろしく。」
セイルは2人の会話をじっと聞いていた。国の違う2人の関係を見極めようと。しかし、2人の人間関係もまたセイルには不可解な関係であった。
三木とセイルの2人旅、何が待っている?