ボントの街の領事館からコンガの陸軍陣地が奪われたという報告を受けたイカサス軍務大臣は、空軍に偵察と新しい爆撃機による攻撃を命じた。
今までの空軍の航空機は偵察機と輸送機、攻撃機は戦闘機だけだった。それは、爆撃機が造れないからではなかった。攻撃機が戦闘機だけだったというのは、改造Cー2(輸送機を爆撃機に改造したもの)を運用するまでの日本と同じであったが、事情は全く違っていた。
日本の場合は憲法で他国を攻撃することが禁じられていたから、防衛のための戦闘機は必要でも、他の都市を攻撃する爆撃機は必要でなかった。
でも、カメリルは違っていた。都市を爆撃してダメージを与える必要などないほど、他国との軍事力の差がありすぎたからである。ところが、シェラリベ共和国、ガーゴ都市国家、挙句はトーベ地方まで叛乱して、報復の攻撃の為、急遽製造したのだった。
偵察機でコンガの様子をみると、報告通り陸軍陣地はロボットで溢れていた。それだけではない。陸軍陣地とボントの街の中間地点に四角い箱が運ばれている。偵察機の操縦士も搭乗員もその箱が何であるか分からなかった。写真を撮って空軍で検討しても、それが何であるか分かる者は1人もいなかった。
何か分からない箱を攻撃すべきかどうか議論はあったが、その中が何であれ、当面の脅威はないであろうということで、人型ロボットと亜人を攻撃することとした。
カメリルの爆撃機の爆弾は誘導弾ではない。重力に従って落下する。目標に命中させるには、飛行速度と高度など諸条件の計算が必要になる。もちろん、計算と訓練を積んでいるのだが、ピンポイントでというわけにはいかない。そこで、目的の爆撃を達成するためには、大量の爆弾をばら撒くことになる。
ロボットと亜人がたくさん集まっているカメリルの陸軍陣地であった場所に、爆撃機が大量の爆弾をばら撒く。あたり一面、爆発の砂煙が舞い上がる。爆撃の威力は凄まじい。砂煙が収まった後にはロボットの残骸と亜人の死体だけで動くものがない。その様子をカメラに収めた爆撃機はボントの空港に帰った。
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三木とセイルはハリーの家で夕食をご馳走になり、ハリーの家の敷地内に建てられた三木の家に帰っていた。かつて住み込んでいた猫耳の女性たちは1人もいなかった。三木は集落に入るのが夕刻で遅かったから誰もいないのだろうと思った。家は人が住んでいたかのように掃除が行き届いていたからである。
ハリーの家でもセイルの質問攻めにあっていた三木だが、自宅に戻っても質問の嵐であった。電気もガスもないこの集落が日本なのか、違うと答えると、なぜ、ここに三木の家があるのか、どうして亜人と一緒に住んでいるのか、ハリーと言う猫耳の老人がどうして日本に調査を依頼できるのか、そもそも、猫耳、熊耳の亜人は何なのか、三木はできるだけ丁寧に説明していたが、説明したからといってセイルは納得の顔をしなかった。セイルにとっては、納得のできないことばかりであった。三木もまた説明に困る事柄もあった。
「明日はまたハリーの家に昼食を招かれているから、そこで話の続きをしよう、おやすみ。」と言って三木はセイルを空いている部屋に案内した。
自分の部屋に戻った三木は、ベッドに横になり、ボントにいる日本人を救出する方法を思案していた。国交のない国から日本人を帰国させることがいかに難しいかは過去の歴史が示していた。
(このまま政府に日本人の名簿と墓と航空機の写真を届けても、握りつぶされることは目に見えている。マスコミも同じ穴の貉。さて、どうしたものか。新秩序とか血の気の多い保守系の議員なら、すぐに救出のため参戦だと言うだろうが、それがかえって逆効果ということも考えられるし。何よりも懸念しているのは、すべてでっち上げだとみなされること、名簿は勝手に作れるし、写真や映像はAI使用でどんなものもできる。慎重にことを運ばないと。)
三木は、妙案を見いだせないまま、深い眠りについた。
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スマルは送られてきた航空写真を見てすぐに気付いた。ラーテル顔の亜人の死体の数はともかく、ロボットの残骸が少ない。地下に避難しているのだ。そして、陸軍陣地跡とボントの街の中間地点に並べられている四角い箱が充電器であること、恐れていたことだった。
スマルは、ロボットが夜間にやって来ると予想して警戒を強めていた。昼間動けば、爆撃機で攻撃される。敵の立場に立てば、侵攻は夜間しかないと考えていたのだ。
テントの集落にいるゴンガ人にはボントの街の中に移動するように説得したのだが、ボントの領事館が許可しないということで残ったままであった。スマルは、領事館の説得に部下を行かせたのだが無駄であった。そんなとき、恐れていたことが起こった。
スマルには聞きなれたロボットの足音であった。塹壕の前に配置した戦車で対応する。塹壕には、やっと配給されたロケット弾をセットしたロケット砲の部隊が潜む。
ドン ドン
ババババ カキン カキン
戦車の砲撃とロボットの銃撃の音が闇夜に響く。
ドカーン ドカーン ロケット弾が命中しロボットが動けなくなる。
ババババ それでもロボットは銃撃する。
ババババ 動けなくなるロボットが増えていくが、やってくるロボットが減ることはない。
じりじりと戦車が後退し、塹壕の部隊も退却する。砲撃を受けても、破壊されても、恐れることなく侵攻してくる敵に手の打ちようがなくなる。スマルはテントのゴンガ人に避難するように指示した。スマルの指示を待つまでもなく、テントに銃撃の穴が開きだすと住民は皆、ボントの街に向かって逃げ出した。
スマルの部隊もボントの街まで退却、砲撃や銃撃の音が止み、あたりに夜の静けさが戻る。ロボットがそのまま侵攻してこないのはエネルギーの問題があるのだろう。しかし、充電器を移動させて侵攻する方法を学んだロボットは、次にボントの街を襲ってくることは確実であった。
スマルは、翌日、そのことを領事館の館長に伝え、本国の対応をお願いした。
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目覚めた三木は、家政婦の女性たちがいつまで待ってもやって来ないのを不審に思いながら、玄関の戸を開けた。この集落に玄関の鍵を掛ける者はいない。そもそも玄関に鍵などない。その必要がないからだ。家政婦の女性たちは勝手にやって来て、家事をしたり、泊まったり、帰ったりするのだ。
戸を開けると、コリーが焼きたてのパンとミルクを持ってやってきた。
「おはよう、気分はどうかね。はい、これ、朝食に。」とコリーがパンとミルクの入った籠を手渡す。
「おはよう、ありがとう。ところで、家政婦が1人も来ないのだが・・・」と三木。
「もう来ないよ。」 「どうして?」
「だって、奥さんがいるだろう。親子ほど歳の違う可愛い奥さんを連れて帰ってきたと、もっぱらの評判だよ。」
「何だって、違うよ。」
「ここに連れて帰ったんだ、奥さん以外はない、そう噂になっている。」
「そんな噂、お前が広めたんだろう、この野郎。」
「あは、そんなことより、せっかく持って来たんだ。2人で仲良く食べな。」
コリーはそう言って、三木が引き留めるのを無視して去って行った。
ロボットがボントの街に?カメリルは?