ボントの街でロボットの侵攻を警戒していたスマル少尉の部隊に、トーベ征服に遠征していたイマト中尉の部隊が合流した。
「トーベ遠征はどうでした?」とスマルが尋ねる。
「失敗さ、トーベにガーゴ都市国家がついている。」とイマトは、ロケット弾の攻撃がトーベ軍でないことを見抜いていた。
「とにかく、我が国は危うい。特に我が陸軍はメチャクチャだ。」とイマトが続けた。
「どういうことです?」
「陸軍に残っているのは、トロル少佐の顔色ばかりを伺う腰抜けばかり。骨のある人たちは皆、海軍のユカル大佐について行った。ユカル大佐に西方の二ホン遠征でお会いしたことがあるので、分かる気がする。自分の上官を悪く言いたくないが、敗れて帰国してきた部下に名誉挽回の機会をやるからボントの防衛に遠征しろだと。トロル少佐はダメだ、指揮官どころか、人間として失格だ。上の方はどうか知らないが、大臣までがトロル少佐の機嫌をとってる噂を聞いた。」
「上層部がどうであれ、我々は国民を守るために武器を与えられているのですから、イマト殿、よろしくお願いします。地下都市の電源の破壊に成功したようですから、ロボットはこの街を奪いに来ます。この街が奪われたら世界の終わりです。奪われないで何日か耐えれば、敵に電源はないのだから確実に勝てます。防衛の正念場なのです。」とスマル。
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西方大陸東岸地区のハリーの家で昼食を終えた三木たちは、食後の紅茶を飲みながら談笑していた。一緒に食事をと誘われたコリーは、自宅で用意しているからと断ったが、食事が終わるまでその場にいて、紅茶だけは飲んで帰っていった。
食事中に、三木はハリーの忠告通りに丁寧に、自分や弟の先祖がここにいる猫耳のハリーや熊耳のコリーと同じであり、セイルもまたその血をひいていることなどを説明していた。ハリーもまた誤解をしているコリーに、セイルは三木の弟の子であることを話していた。
三木は、日本政府が国賓級と一目置いているハリーに、ボントにいる日本人のことを話してみようと思った。三木は弟の乗った航空機がボントの街のはずれのジャングルに不時着したことから始めて、現在、9人の女性が残されていることをハリーに語った。
しばらく、深刻な顔をして黙っていたハリーが口を開いた。
「その名簿と小型カメラ、明日の昼まで預からせてくれぬか。日本が救出に動けばいいんだな。明日、公事館に出向いてみる。」
「えっ、ありがとうございます。」
「ところで、この娘、どうするつもりだ。」
「どうしようかと困っているんです。」
「困ることはないだろう。決めるのはこの娘だ。出生と育ちは自分で決められないが・・・・・」
突如、セイルが話に割り込んでくる。
「ねえ、何を話してるの?」自分のことを話していることを察知したのだ。
三木がカメリル語(フランス語)で答えた。
「君のことだよ。出生と育ちは自分で決められないないが、これから、どこでどう生きるかは自分で決めることができるとハリーは言っている。君はこれからどうする?」
セイルは、にっこり微笑んでハリーに向かって日本語で答えた。
「カメリルで生きていく。」
ハリーは大きく頷いた。
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ボントの街にいたイマト中尉の部隊とスマル少尉の部隊はコンガ人のテント跡に移動して、すでに掘ってある塹壕の前に、壊れたロボットを並べて壁をつくり、ロボットの侵攻に備えていた。塹壕にはロケット砲の部隊が配置され、塹壕の両側には戦車が待機していた。
人も亜人も原爆の放射線には耐えられないが、ロボットは平気である。時間との競争、夜まで待てない。日が沈む前からゾロソロと地下から出てくる。まるで蟻の大行列である。カメリルの爆撃機が爆弾をばら撒く。爆弾の爆発音が鳴り響き、土煙が舞い上がる。ばら撒いても、ばら撒いても、ロボットの侵攻は止まらない。巣を棄てた蟻が次の巣を求めてやって来るようであった。
ついに、部隊の待機する塹壕の前までやって来る。
ババババ カキン カキン
ドン ドン
ロボットの銃撃と戦車の砲撃が始まる。
遠くで爆撃機の爆撃の音がする。数を減らしているようだが、それでも多い。
ドカン ドカン
戦車だけでなく、ロケット砲も参戦する。
1時間ほど経っても、遠くの爆撃の音は近づいてこない。まだ、ロボットが出てきているという事だ。
戦闘は長期戦、戦車は戦闘組と砲弾のセット組との2隊に分かれ、交代しながら砲撃が途切れないようにしている。ロケット砲も攻撃組と設弾組とに分かれ、いつも攻撃ができるようにしている。ロボットが何体やってこようが砲弾の尽きるまで、ロケット弾のなくなるまでは、街に近づけない、そんな気迫が部隊に溢れていた。
スマルはボントの領事館にカメリルにある戦車の砲弾とロケット弾を全てボントに送るよう依頼していたが、届いているかどうかの確認と届いていたらこちらに運ぶように伝令を走らせた。砲弾とロケット弾が尽きたら負け、時間が稼げたら勝ち、もう退却の選択肢のないロボットとの戦いだとスマルは悟っていた。夜も戦いが続くだろうと考えていた。
2時間、3時間、射撃と砲撃の音が農地の空に鳴り響く。爆撃の爆発音は遠いまま、近づいてこない。まだ、ロボットが出てきているのだ。ロボットは疲れないが、兵たちは生身の人間、疲労とストレスが溜まる。スマルは前線で砲撃している部下たちを交代させ、夜まで休息するように命じた。
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トーベ共和国は、カメリル軍を撃退したガーゴのロケット砲隊の威力を知り、ガーゴ都市国家と同盟を結ぶことの必要性を強くした。色よい返事はもらえないが、根気よく折衝を続けることが外交方針となった。
カメリルがその後、海からも陸からも侵攻してこないことを不思議に思いながらも、カメリルに対する警戒を強めていた。トーベ共和国は、カメリルがコンガのロボットに苦戦していることを知らなかったのである。
ハルル大統領は、首都トレツから直線道路がガーゴにつながっているのに、陸路を選ばず、海路でベルン外交官を派遣した。自分の息子ユカル海軍大将にガーゴ都市国家の軍備を観察させるために、巡視艦でガーゴに向かわせた。
トーベの巡視艦には、ベルン外交官、その警護の陸軍兵2名と、かつてカメリルのガーゴ海軍基地にいたユカル海軍大将とササド少将が乗艦していた。
ユカルは巡視艦の甲板から双眼鏡でガーゴの港を眺める。かつての軍港の面影はなく、貨物船が多数停泊している。軍艦が1隻もないと思っていたら、西の沖に軍艦が何隻か停泊している。そちらに双眼鏡を向けてよく見ると、軍旗が見たことのない旗だったので、他国の軍艦であろうと思った。
ユカルが見た軍艦はリベルテ国の艦であった。ガーゴ都市国家には陸軍はあっても、海軍はない。必要ないから、廃止したのだ。というのは、リベルテ国と隣のシェラリベ共和国との同盟条約で、ガーゴの港はその2か国に守ってもらうことになっていた。
沖に停泊しているリベルテの軍艦は自国の貨物船の警護のためにガーゴの港に来ている。もし、カメリルの軍艦がくれば、そのリベルテの軍艦が戦うことになる。ガーゴの港には2か国のどちらかの貨物船が必ず来ているから、沖にどちらかの国の軍艦が必ず停泊しているのだ。
ユカルはそうとも知らず、首を傾げていた。無防備な港、簡単に占領できる港、ユカルの眼にはそう映った。巡視艦が港に入り、桟橋に着ける。桟橋には貿易局の職員が待機していた。
トーベ共和国はガーゴ都市国家と国交、同盟を結ぶことができるのか?ユカルはガーゴで何を見る?