続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 スマル少尉たちのロボットとの戦いは続く、終焉は?


第5章 8話

 ボントの郊外では日が高く昇っても、銃撃と砲撃の音は鳴り止まなかった。ボントの空港から飛び立った爆撃機の爆撃音も相変わらず遠いままであった。

 部隊の兵たちは交代で休んでいる間に軽く食事を摂っているが、スマル少尉とイマト中尉は昨日から何も食べないで指揮を執っているのである。

 

 バカーン 突如動けないロボットの手が破裂した。砲弾もロケット弾も尽きかけて、太陽が沈みかけた頃である。疲労困憊、ダメだったかと諦めかけた頃である。部隊の兵は皆周知している。

 「あと少しだ、いける。」誰かが叫んで、砲撃の手に力が入る。

 ドン ドン

 近づくロボットだけを止めれば勝てる。

 

 バカーン バカーン あちらこちらで破裂音が連続する。

 自爆装置はそのままであった。人型AIロボットは、偶然、同じロボットを造る技術を発見して、造ることができるようになっても、邪魔な自爆装置を解除する方法は見いだせなかったらしい。同じもののコピーよりも内容を理解することの方が難しいということなのだ。

 スマルは、自爆装置が解除され作動しなくても、エネルギーが切れれば同じことだと思っていた。作動すれば、勝利が少し早まるだけだと。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 西方大陸東岸地区のハリーの集落で、三木はハリーの帰りを待っていた。

 ハリーはコリーの運転する軽自動車で公事館に出向いていた。ボントの街にいる日本人を帰国させる交渉の為にである。三木にはハリーが誰とどのような交渉をするのか知らなかったが、彼に任せることがベストであると思っていた。

 (敵対国との日本人の帰国交渉はあり得ない。とすると、武力しか方法がない。利害関係があっても自衛艦の派遣を躊躇する国だ。宣戦布告を受けても動かない国、全く利害がないのに、戦争なんてするはずがない。ハリーはどう日本政府を動かすのだろう。)

 三木がそんなことを考えながら待っていると、ハリーが戻っていた。

 

 「名簿と写真、映像、電送とかいうもので日本に送ったそうだよ。」と言いながら、ハリーは名簿と小型カメラを三木に返した。

 「で、どうでした?」と三木。

 「何とかするという返事だ。」

 「何とかするって、誰と話したのですか?」

 

 「官房長官、実は、困っていたみたいなんだ。核兵器を使用した敵国をそのままにしておくことが、いかに危険なことか、国民は分かっていないと言ってました。戦争反対の世論で、自衛隊を派遣するわけにはいかない。攻めてきていないのに、派遣なんてとんでもないと。攻めてきて核兵器を使われたら、それからでは遅いのにとも言ってました。で、日本人が何人も囚われているというのは、世論操作のチャンスなのだろう。喜んでいましたよ。今日にでもニュースで流れるはずです。」

 「囚われているですか、その方がインパクトがありますね。国民の生命を守るためというのが、自衛隊派遣のお題目ですから。」と三木。

 (そういえば、私を潜入させて、私を救うためだと自衛隊がやってきたことがあったな。)とトメリア王国との戦いを思い出していた。

 

 「まあ、日本政府が何とかすると言ってるのですから、何とかするでしょう。そんなことより、これからどうするのですか?」とハリー。

 「セイルが日本を見てからカメリルに帰りたいと言っているので、日本旅行の予定です。」

 「そうですか。出発前に私の家へ来てください。日本ならどこでも使用できるカードを渡しますから、交通費などそれで支払って下さい。」

 「カード?貨幣は使用していないのでは?」

 「何年日本と付き合っていると思っているのですか、これは日本で使えます。」

 「ありがとうございます。何から何まで。」 

 「いえいえ、私たちの伝説の子孫ですから。そうそう、忘れていました。セイルのこと、伝えましたよ。」

 「えっ、それはマズい、困ります。」

 「何が困るですか。セイルがカメリル人だと言っても、日本にとっては、助けた日本人なのですよ。国を挙げて彼女を守ります。まあ、マスコミに知れると大騒ぎになるでしょうから、内密にするようお願いしました。心配ないと思いますよ。」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 バカーン バカーン

 ボント郊外の塹壕でロケット砲を操作していた兵たちは、絶え間なく、ロボットの手の破裂音を耳にする。ロボットはやって来ない。勝ったのだ。喜ぶような元気はない、動けないのだ。

 スマル少尉は這うようにして穴だらけのテントに潜り込み、眠ってしまった。イマト中尉もその場に座り込み倒れてしまった。

 戦車は動かない。乗り込んでいる隊員が放心状態で運転などできないのだ。

 

 バカーン バカーン 勝利の破裂音が絶え間なく戦場に鳴り響く。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木とセイルは、コリーの運転する軽自動車で西方大陸東岸空港に来ていた。羽田空港行きの航空機に乗るためである。入管手続きも税関検査もなくなっていることに、三木は不思議な気がしていた。出入国在留管理庁、略して入管庁の役割は大きい。見境なく外国人が入国してくれば、国家そのものが危うくなる。まして、この地域には亜人がいる。

 

 三木がハリーの集落に住み着いていた間に、西方大陸東岸地区は日本となり、西方大陸東岸空港と羽田空港の航空路線は国内線になっていた。確かに集落以外では、日本人で溢れている東岸地区であった。それに、集落の人たちは航空機に乗らないし、貨幣を持たないから乗れない。

 三木は、リベルテ国際空港から西方大陸東岸空港に着いた時に、入管手続きや税関検査があったことを思い出した。

 

 三木は搭乗手続きをして、日本の窓のない航空機に乗った。離陸してシートベルトを外すのはわずかの時間で、直ぐに着陸態勢に入る短い飛行であった。

 

 空港について、セイルは首を傾げた。飛行機を降りたはずなのに、飛行機が見当たらない。それどころか、空がない。立ち並ぶ店舗と人ばかりで、セイルの頭に浮かんだのは話に聞いた地下都市ルマナであった。日本には空がないのかと思った。でも、おかしい、空を飛ぶ乗り物できたはずである。セイルは三木についていくだけであった。

 

 三木とセイルは空のない通路を通って、羽田空港旅客ターミナルで電車を待つ。電光掲示板の数字を見て、またセイルは首を傾げた。数字が乗り物の到着か出発かの時刻を表していることは想像がつく。

 (でも、53分とは。乗り物が分刻みで、正確に発着するのだろうか?電気もガスもない集落の1時間2時間の違いも気にならない時間に対する大雑把さと、この緻密さとのギャップ、理解不能だわ。)

 

 セイルがどうして首を傾げているか察知した三木が声をかけた。

 「あの時刻通りに電車が来ますよ。信じられないかもしれないが、1分も違わない。日本はね、昔から公共交通機関が時間通りに運行することで有名だったんだよ。遅れたりすると責任者が謝罪するような変な国さ。」と言って、三木は自分たちを見る視線に気が付いた。

 

(下手な尾行をしやがって、どこの部署だ、3人もいる。)辺りをキョロキョロと見渡しているその3人は私服の警護課員である。それとなく、セイルを警護するように命令されていた。だから、三木のように尾行などの隠密行動が得意なわけではない。

 品川行きの電車に乗る。慌ててその3人も乗り込む。三木はその滑稽さから素人だと気付く。警護課員とは気付かなかったが、注意をする必要もないと思った。




セイルが日本に、セイルは何を見る?
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