日本政府はハリーからの情報、カメリルに日本人が囚われているという情報を、国内だけに公式発表した。衛星を通じて世界に発表するとカメリルにいる日本人が危ない、そんな配慮と国民の意識操作の為だった。
当然、マスコミは飛びついてきた。連日連夜、墓石や航空機の映像と共にその内容が放送され、コメンテーターは宣戦布告を受けている国との交渉なんて無駄、直ぐにカメリルを攻撃すべきと主張する。
新地球事情調査室の中川のもとへは、カーレンの詳細な地図、特にミサイル発射台、海軍、陸軍、空軍の基地、軍港、空港、核施設など軍備関連施設の割り出しが防衛省から催促されていた。
暦の難題、年号と惑星歴との両用は月や日が違うため不便だからそれを解消することはメドがたった。カメリル歴が太陽暦であったことが中川の考えの後押しをした。惑星歴をカメリル歴のように太陽暦にすればいいのだ。そうすれば、過去に年号と西暦の両用で何の問題もなかったように、年号と惑星歴が両用できる。
三木はセイルにどんなところが見たいのか尋ねた。セイルの即答は軍隊だった。考えてみれば、日本を知らないのだから、渋谷、原宿、お台場などと答えるはずがない。
「日本には軍隊はないんだよ。自衛隊という組織はあるけど。」と三木。
「軍隊がない?嘘でしょう。」とセイル。
どの国も日本に軍隊がないなどとは思っていない。軍隊がないと言っているのは日本だけで、そう思っているのは日本人だけだ。
「自らの国を自らの手で守るために武装している組織はある、それが自衛隊だ。どうしてそんな変なことになったのかは、話せば長くなる。とにかく、日本は戦争を禁止していることに由来する。」
「おかしいでしょう。日本はカメリルの戦艦を沈めました。」
「それは攻撃してきたからだ。防衛のための武器の使用は認められている。そのための武装だ。」
そのための武装が、他の国をも攻撃できる武装だから、各国に恐れられているのだ。
「よく分かりません。でも、その自衛隊とやらを見てみたい。」
三木は困った。街やレジャー施設、観光地などなら、どこでも案内できる。しかし、陸上自衛隊の駐屯地や航空自衛隊、海上自衛隊の基地などは、「はい、そうですか。」と案内するわけにはいかない。
「多分無理だ、申請しても許可が下りない。他に見たいものは?」と三木。
「ありません。」とセイル。
(近くだと千葉の習志野駐屯地か埼玉の朝霞駐屯地か、それとも横須賀の基地か。護衛艦が停泊しているかは疑問だが。)
「遠くから眺めるだけになるが、それでもいいか?」と三木。
「・・・・・・しかたがありません。」とセイル。
(セイルは普通の娘ではない。)三木はそう思った。
三木は畑違いで無駄かも知れないが、セイルに質問をしにやって来た新地球事情調査室の中川に連絡してみようと思った。
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映し出されたジャングルの中の日本の航空機が、転移した日にドバイへ向かった航空機だと判明して、鳴りを潜めていた議論がまた蒸し返された。それは、この惑星が地球か、反地球かという議論である。
そもそもきっかけは、量子重力理論を研究している反地球論の高瀬教授であった。情報番組という名の娯楽番組に出演した高瀬は、もし転移した惑星が未来の地球ならば、航空機はドバイに向かって飛ばず、大西洋を南アメリカ大陸へ向かうはずだと声を大にして主張した。
そして、惑星を無視する宇宙形成理論を、宇宙の元素の95パーセントが未知でダークマターなどと呼んでいるのは茶番であると批判した。
彼の反惑星理論によれば、転移には境界現象というものがあって、転移地域の境界にあるものは、空間も時間もずれる。計算によると、日本が惑星歴495年に移転したのであれば、発見された航空機は惑星歴486年頃に転移したはずと予言した。高瀬は日本は反地球に転移したと繰り返したのである。
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三木は茨城空港に来ていた。文部科学省の中川調査官に、セイルが自衛隊を見たいと言っていると連絡したら、瓢箪から駒、防衛省の田村事務官がやって来て、案内してくれたのである。
中川は防衛省から依頼された仕事をしている関係で、防衛省に頼みごとがしやすく簡単に受け入れてくれた。というよりも、政府には別の目論見があった。ハリーはセイルが日本ではなくカメリルで生きていくと選んだことを日本に伝えていた。そして、政府は、スパン南基地の日野三佐からセイルが凄腕の外交官であるとの報告を受けていた。
さすがに3人の護衛課員は茨城まではついて来ていない。代わりに県警の私服が3人、下手な尾行をして、空港のターミナルでたむろしている。
航空自衛隊の百里基地の空港と茨城空港は共用していて、基地の広報係がなんとフランス語で説明するサービスぶりであった。通常は基地のモニターで説明するだけなのに、戦闘機Fー2A、練習機Tー4、多用途のUー125A、ヘリUHー60J、それぞれの前で用途などの説明をしている。
過剰とも思えるサービスであった。三木たちは霞ケ浦駐屯地まで警察車両で送ってもらって、駐屯地の施設まで見学できた。
三木はかつて、日本に帰れば必ずこの場所に来ていた。装備品や弾薬、燃料の補給、整備を行う関東補給処があるからだ。ここには、ヘリの整備員を養成する航空学校霞ケ浦校もあり、航空自衛隊中部高射群第3高射隊もいる。
セイルは目を輝けせて、基地や駐屯地を見学した。三木が感じた通り普通の娘ではなかった。セイルの様子を冷静に観察しメモを取っていたのは田村事務官であった。
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カメリル国では、コンガの絶滅が何の利益ももたらさなかったが、東からの脅威も無くなった。そのため、侵攻の目標が西、トーベ共和国に絞られ、陸軍が動き出した。東で防衛していたイマトとスマルは大尉と中尉になったが、休む間もなく、今度は西で戦うことになった。
トーベ共和国はハルル大統領がガーゴ都市国家を訪問し、市長テーゴと会談をして、国交と同盟が成立していた。カメリルの動きを察知して、早速ガーゴに援軍を願い出ていた。
ガーゴではトーベの要望を受けて、前回の戦いと同様の援軍を送る手配をしていた。その時、リベルテから意外な打診があった。二ホンがカメリルと戦うから、ガーゴの港と空港を使用させて欲しいということであった。市長テーゴはOKの即答をし、二ホンの軍隊が来るのを楽しみにしていた。
カメリルがトーベ侵攻へ動く、はたして?