リベルテ国のメイキ大尉と特殊部隊にガーゴ都市国家への遠征命令が下った。セイル警護の任務だ。メイキは(セイルは日本に帰ったはず、何でガーゴなんだ。)と思ったが、尋ねるべきバーダンは引退してしまっていて、黙って引き受けるしかなかった。セイルの警護は、監視を兼ねてずっとやってきたことだから慣れている、なんの問題もなかった。ただ、今回の遠征は少し様子が変であった。
リベルテの軍港トイヤには戦艦5隻、航空母艦1隻、輸送船1隻が出航の準備をしている。メイキは特殊部隊と主に旗艦の戦艦に乗艦し、艦長室でマイト艦長と2人で話をしていた。かつて、メイキは陸軍でマイトは海軍で、共に日本と戦ったことがあり、公的に仕事を共にすることはなかったが、私的に付き合っていた。
「どういうことです?この物々しさは?」とメイキが尋ねる。
「私も聞いていません。ガーゴへの出航命令しか受けていません。あなたがたが乗艦してきて驚いているのです。」
そこへ、ゲイン大佐が入ってきた。
「よお、マイト、元気だったか。」
慌てて、マイトが敬礼をする。それを見て、メイキも敬礼をする。
「とにかく、マイト、しばらく世話になる。船室を2つ用意してくれ。」
「えっ、2つと言っても・・・・・」
「陸軍のイータも来るんだ。ないでは済まない。」
マイトはメイキの顔を見る。
「いいですよ、私たちが他へ移りましょう。」とメイキ。
「すまんな。」とゲイン、少しもすまなさそうな顔をしていない。困り果てた顔をしているのはマイトであった。
「ところで、教えて下さい。私たち部隊はガーゴへ派遣命令を受けたのですが、この大艦隊、どういうことです?」とメイキ。
「ああ、それか。ついに、日本軍がカメリル征伐に動くんだよ。だから、我々も同盟軍として参加するんだ。」と意気揚々とゲイン。
日本に軍はないし、征伐に動いてもいない。まして、リベルテと国交を結び交易は盛んであるが、同盟は結んでいない。勝手に参加しているだけだが、ゲインの答えたことがリベルテ軍全体の認識であった。正確に日本との関係を把握しているのは、リベルテ軍の中ではメイキだけである。
「それでは、私はこれで。」とメイキが艦長室から立ち去ろうとすると、ゲインが、「まだいいではないか、イータも来るんだ、知っているだろうイータ。」と止める。
(知っているどころか、私に直接この遠征を命令したのはイータ大佐だ。)と思ったが、
「部下たち8人もが船室を占領しているのです。あけて移動するように指示しないと。後で、挨拶にまいります。」と言って敬礼をして、艦長室を出て行った。
部下を他の戦艦に移動させたメイキは、旗艦の艦長室に戻ってきた。そこにはすでにイータ大佐がやってきており、「おっ、戻ってきたか。お前の噂をしていたところだ。」とイータが声をかけた。
「噂?碌な噂ではないんでしょう。で、何で言ってくれなかったのですか?カメリルを攻撃すると。」とメイキが問い詰める。
「何を言っている、お前の任務は軍務大臣からの指示を伝えただけだ。わしは何も聞かされていなかった。わしがカメリル攻撃の陸軍司令を仰せつかったのはその後だ。知らなかったんだから言えるわけはない。お前は政府の指示、わしは軍上層部の命令、だから全く違う。」
「まあまあ、イータ殿、親子喧嘩みたいなことはやめて、一杯やりましょ。」とゲインがワイングラスを差し出す。
そこへ「失礼します。」と言って入ってきた男がいた。
「セント、セントではないか。久しぶり。偉くなってしまって。」とイータ。
「お久しぶりです。イータ司令殿。」と頭を掻きながらセント広報官。セントはかつてメイキの部下であったが、バーダン国家主席の側近として広報官を務め、今は新しい大統領の片腕となっている。当然、軍は退いて、広報官という役職に就いている。
「どうしてこんな所へ?」と尋ねたのはメイキであった。
「いえね、皆さんについて行って、戦いを記録して来いと言われましてね。」
ゲインとイータが渋い顔をする。
「いえいえ、皆さんの戦いぶりではないんです。日本のやり方ですよ。よく研究しておけと。」
それを聞いて安心したのか、イータがメイキに言った。
「メイキ、お前はこの艦で寝泊まりしろ、艦長さん、船室は空いているね。」
「はい、1つや2つなら。」とマイト。
「お言葉ですが、お断りします。私は部下のいる艦に戻ります。」そう言って、メイキは艦長室から出て行った。
「失礼な奴ですね。」とワイングラス片手にゲイン。
「いつものことですよ。私の部下は私より有能で優秀なだけですよ。」そう言ってイータは笑った。
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護衛艦もがみと輸送艦しもきたはスパン南基地に到着した。降格した日野一尉とアビル少尉たちカメリル人がもがみに乗り込んで来た。
日野はアビル少尉たちカメリル人をガーゴ都市国家まで連れて行って、そこでセイルの警護に彼らをつけて、盗聴発信機の解除をすることという指示しか受けていない。まして、この艦に三木やセイルが乗艦しているとは思っていない。
寝泊まりする船室を案内してもらった後、日野は艦長室へ挨拶に出向いた。
「あっ、三木さん。」「あっ、日野さん。」2人が叫んだのは同時であった。
「三木さん、どうしたのですか、こんなところで。」と日野。
「それは、こちらのセリフですよ。日野さんこそ。」と三木。
「それはそうと、消音銃、おかげでえらい目に会いましたよ。降格、減俸、そしてこの派遣、どうしてくれるんですか。」と、日野は笑いながら抗議。
「降格?陸上自衛隊も碌なもんじゃあないですね。減俸ですか、弁償しますよ。昇級は無理ですが、お金なら、1千万でいいですか?」と三木。
「あんたねえ、私を収賄で首にする気かね。」と日野が言って、2人で笑った。
2人の会話を聞いていた元木艦長が、2人の関係を図りかねて、
「おふたりはどんな関係ですか。」と尋ねた。
「あは、腐れ縁ですよ。」と日野が答えた。
日野は今回の任務を三木に話すと、三木はセイルがこの艦にいることを日野に告げ、経緯も話した。三木はセイルの警護が2重になると悟ったが、それでもいいと思った。セイルの近辺の警護をカメリル人に任せて、それを特殊部隊に監視させればいいと思ったのだ。とにかく、この艦にいる間は安全だから、警護はガーゴに着いてからと考えた。
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スパン南基地に到着した護衛艦もがみと輸送艦しもきたは、食料と燃料の補給が終わると、ガーゴの港目指して出航した。護衛艦はぐろと護衛艦あたごが先頭で、その後ろを護衛艦たかなみと護衛艦もがみ、最後尾を護衛艦いずもと輸送艦しもきた、2 2 2 の隊形で航行していた。
日本は、どこの国にもカメリルへの自衛隊の派遣を連絡していなかったが、物々しい護衛艦の航行でスパン南基地のあるスパン王国と、近くのロマスク帝国は察知したのか、日本の艦隊の後を2隻の軍艦が追跡していた。スパン王国は国王に、ロマスク帝国は皇帝に、それぞれ、日本の戦いぶりを観戦してくるように命じられたのであろう。
リベルテは違う。三木がバーダンに特殊部隊の派遣を依頼した時から、正式に報告がなくても察知しており、トイヤ港を出港した戦艦5隻、航空母艦1隻、輸送船1隻は、ガーゴの港目指して、とっくに西進していた。航空母艦にはリベルテ最新のジェット戦闘機が搭載されていた。
カメリル陸軍はナクルの街からジャングルに達していた。このジャングルを抜けるとトーベ共和国である。トーベ軍は、ジャングルが目視できる位置に陣地を構えている。ガーゴの援軍なしで撃退しようと待ち構えていた。
カメリルの戦艦5隻、航空母艦1隻、輸送船1隻は、トーベ共和国のドレキ港の近くまで達していた。旗艦の戦艦トスカ号でカガト大佐が双眼鏡を眺めている。港にはトーベ海軍の戦艦や巡視艦が待ち受けていた。
惑星歴504年、カメリルとトーベの激しい戦いが始まろうとしていた。
第5章 (完)
第6章ではカメリルとトーベの戦いに二ホンが参加?