ガーゴの貿易事務局の局長室の窓から、日本の護衛艦を眺めていた市長テーゴは、思わず呟いた。
「あれが日本の軍艦?たいしたことない、リベルテの方が上だ。」
それを聞きつけたメイキ大尉が笑いながら言った。
「誰でも最初はそう思うのですよ。ところが、とんでもない。」
「日本に接岸の許可を出しているのですか?」とレンド貿易局長。
「港の使用どころか、空港、基地の使用、国内の移動、すべて許可を出している。」とテーゴ。
「そうですか、お茶でも用意します。」とレンドは部屋を出ていった。
テーゴとメイキは窓の外を眺めている。
ガーゴ港の沖に停泊した輸送艦しもきたから出てきたエアクッション艇が2隻、その艇に搭載しているものを見て、テーゴもメイキも驚いた。16式機動戦闘車、テーゴやメイキには戦車としか見えないが、タイヤが8個付いていて路上機動性に優れている、とトラックが運ばれているのだ。
ガーゴ港の沖に停泊しているのは、輸送艦しもきたの他に護衛艦いずもと護衛艦もがみで、後の3隻、護衛艦はぐろ、護衛艦あたご、護衛艦たかなみはさらに西へ航行していった。
日本は偵察衛星でトーベ共和国ドレキ港沖の海戦を把握していて、それを互いの艦で共有し、政府からの命令ではなく、戦いの現場の判断で行動できるシステムが確立している。西へ航行している3隻の護衛艦はカメリル軍の攻撃に向かっているのだ。
それを察知したスパン王国とロマスク帝国の戦艦はその3隻の後を追っていく。
当然、陸地でのトーベ軍の戦況も把握していて、着岸したエアクッション艇から上陸した16式機動戦闘車とトラックがガーゴの街を走っていく。あまり驚きを顔に出さないリベルテの特殊部隊も呆然とそれを見送っている。トラックには87式対戦車誘導弾(MMAT)が積み込まれていた。
やがて、ガーゴの街を出るとトーベ共和国のトレツの街に真っ直ぐに伸びる道路を疾走する。
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トーベ軍の防衛が崩れ、カメリル軍が侵攻してきているという連絡を受けたトーベ政府は、陸軍基地に待機していたガーゴの援軍に連絡、直ぐにガーゴのロケット砲隊がトーベ軍に参入した。
ヒューン ドカーン
突然、カメリルの戦車が爆発する。一瞬、攻撃していたカメリルの戦車の砲撃が止まる。
ヒューン
戦車はロケット弾の攻撃に向かって走り出す。
ドン ドカーン
走り出した戦車が爆発する。
ヒューン ドン ドカーン
ロケット弾は確実に戦車に命中する。避けることはできない。
ならば、捨てるしかない。ただでは捨てない。
ロケット弾の飛んでくる方向に砲撃、1矢報いて捨てるのだ。
だが、命は捨てるな、飛び降りろ、それがスマル中尉の命令であった。
戦車の砲撃は目標が定かではない。でも、敵のどこかは破壊する。運が良ければ、ロケット砲を破壊するかも知れない。
ヒューン ドン ドカーン
戦車から飛び降りた兵は、勇敢にもロケット弾の発射されたところへ駆けていく。ロケット弾は戦車に当たるが兵には当たらない。
ダダダダダダ
敵の懐に入り込んだ兵の自動小銃、ロケット砲隊が倒れる。
ダダダダダダ
カメリル兵の方が銃撃は戦い慣れている。ロケット砲隊が全滅する。
・・・・・・・・・・
トーベ共和国のドレキ沖では、トスカ号からのミサイルでリベルテの戦艦はあと2隻になっていた。
(全滅は時間の問題だ。)
遠く離れたトスカ号で悠然と敵戦艦が沈みゆく様子を双眼鏡で眺めていたカガト大佐がそう思った時、
ドカーン
味方の航空母艦が突然爆発して傾いてゆく。
カガトが目にしたのは、リベルテの戦艦の向こうにいる3隻の灰色の艦であった。
ドカーン
味方の戦艦が爆発する。カガトは、それがミサイルだと悟る。
そしてすぐにその灰色の艦に向けてミサイル攻撃を命じ、ミサイルが発射される。
トスカ号から発射されたミサイルはリベルテの戦艦の上空を飛んで行く。ミサイルが灰色の艦に近づくと突然爆発する。護衛艦あたごのイージス装置の発動である。
ミサイルが撃ち落とされたことから、カガトは3隻の灰色の艦が二ホンであることを悟る。カーレンの海軍本部で二ホンはミサイルを撃ち落とすという報告書を読んでいた。
カガトはすぐに退却命令を出す。敵はミサイルを撃ち落とす、こちらはそのすべを知らない。敵うはずがない。だから、逃げる。逃げるものは攻撃しない頼りない海のルールを信じて。
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ガーゴのロケット弾の恐怖が去った戦場は、カメリル軍の圧倒的優勢であった。トーベ軍はトレツの街まで後退していた。
カメリル軍はトレツの街が砲の射程距離に入る位置に陣を張り、砲弾や弾薬、その他の物資が来るのを待っていた。トレツの街の陥落は、物資が届けば確実であった。
トレツの街に日本の車両が入る。見たこともない戦車が街中を走る。16式機動戦闘車である。街の人々は驚きと恐怖の混ざった複雑な顔をしてそれを見送る。
トラックがトーベの陸軍基地に入ると、積みこまれている87式対戦車誘導弾(MMAT)が降ろされて並べられていく。すばやく、誘導弾が設置されて発射されていく。陸軍基地にいたトーベの兵たちは呆然としてそれを眺める。
偵察衛星からの映像は護衛艦だけに送られてくるのではない。トラックのモニターにも機動戦闘車のモニターにも送られて、情報がリアルタイムに共有できるシステムができあがっているのだ。誘導弾を発射している隊員には敵の様子も味方の様子も手に取るように分かっているのである。
驚いたのは前線で防衛しているトーベの兵たちであった。背後から頭上を誘導弾が飛んでいき、敵の陣地を爆破している。背後の見慣れない戦車が砲撃を開始して、敵の陣地を破壊している。
もっと驚いたのは物資の供給を待っていたカメリル軍であった。物資の供給の代わりに、誘導弾と砲弾の雨嵐である。スマル中尉は我が身を守るために身を伏せることが精いっぱいで、退却を命ずることもできなかった。瞬く間に陣地は崩壊、兵のうめき声だけが聞こえる地獄と化した。
ついに日本がトーベを援護、カメリルを叩く、このあと、どう動く?