続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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相原のガーゴとの交渉の目的は?


第6章 4話

 相原がガーゴの貿易事務局に来た目的は、燃料と食料を購入するためであった。日本とガーゴ都市国家との国交も交易もないため、通貨は意味をなさない。当然、金で支払われるわけであるが、ガーゴは喜んで売ってくれた。むしろ、それを待っていたようであった。ガーゴの沖には豊富な海底油田があり、郊外には広大な農地と果樹園がある。ガーゴは交易で栄えた港町であるが、資源も食料も豊富なのだ。

 「ありがとうございます。正式には外交官が参りますので、交易の調印ぼどよろしくお願いします。それに先立って購入させていただきます。」

 相原は市長テーゴと貿易局長レンドの2人に礼を言った。

 

 終わるのを待っていたかのようにメイキ大尉が口を開く。

 「セイルは?」

 「日本の護衛艦にいます。」と三木。

 「日本の?セイルの護衛を命令されている。どうすればいいんだ?」

 「当面は必要ありません。そうそう、外の人たち、指示があるまで自由にさせてあげなさい。あんなところにたむろしていたら、誰も怖がって寄り付きませんよ。」

 「あはは、忘れてました。」と言ったメイキは、三木に敬礼をして出て行った。

 それを見た相原が怪訝な顔をして、「外にいる人たちは?」と尋ねた。

 「リベルテの先鋭の特殊部隊ですよ。」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 アビルは1部の人間であるがと断って、日本人の怖い所は、几帳面で泥臭いほど粘り強く、完璧を求めるところにあると話した。こだわりというのだろうか、技術を磨き上げるということだと言った。

 

 アビルは日本が転移した国だと聞いて、半信半疑、調べてみようと思ったのだ。そして、日本の科学技術の歴史をどん欲に学習した。アビルは数か月、日本に滞在しただけで、転移の真偽について判断するほど情報は得られなかったが、そのかわり日本の科学技術の発展の概要を知った。

 

 例えば、カメリルでも携帯電話の電波は街のどこでも届くが、移動しながら電話をかけるという発想はあっても、ビルの陰や塔などの電波への影響が理論的に解明されてなく、実現は不可能であった。そもそもそんな理論などなかった。ところが、日本の通信会社の研究員が、なければ理論を創ればいいと街中隅から隅まで電波の強さのデータをとりだした。街の郊外も含めてである。膨大な量のデータである。データをとるのも大変だが、その分析はもっと大変である。そして、どこに中継の送受信機を設置すればいいか割り出し、そのモデルは世界中で採用されたという。

 

 気の遠くなるような根気強さの例はまだある。地震は地下の岩石が壊れることによって起こるのだから、地下深い所はマグマのように溶けていて、起こらないというのが地震学の定説である時代のことである。地震計に記録される奇妙な波形は機械の誤差だと無視されていた。それを調べ出した学者がいた。毎日、何万枚もの紙の波形を定規と鉛筆で手計算し、几帳面に震源地を地図上に点打ちしていったそうだ。狂気の沙汰と思えるほどの執念である。

 光で汚れや細菌を分解する光媒質の技術もしかり、薄くて軽い魔法のフライパンの製造もしかり、何千回という精密な検証実験や試作を繰り返す忍耐力と執念であった。

 

 歴史が後世に誇張されて伝わるように、科学技術のエピソードも誇張されて伝わる。しかし、アビルはそのエピソードから日本人を見つめていた。 

 アビルはセイルに言った。

 「日本人は穏やかそうな顔をして親切に振舞うが、カゲンというものを知らないから、敵に回すのは気を付けた方がいい。」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 メイキ大尉は貿易事務局の建物を出て、特殊部隊の隊員たちに、

「今日は任務終了。夜までに宿に帰れば良し、解散。」と言うと、

「ワウオー」と下品な叫び声を挙げ、隊員たちは散って行った。

 しばらくすると、日本の車両、16式機動戦闘車とトラックが戻ってきた。建物の窓から眺めるよりも迫力がある。次々とエアクッション艇に積み込まれ、輸送艦へと戻っていく。

 

 (見せるために上陸したのではあるまい。でも、戦ってきたとしたら、帰るのが早すぎる。)

 メイキはそう思いながら眺めていると、建物から三木が出てた。メイキが三木に尋ねた。

 「あの戦闘車両は、何をしに?」

 「何をしにって、戦いに行ったに決まってるだろう。トーベでカメリルを叩いてきたんだろう。」

 (トーベ?行って帰るだけの時間で、戦いが終わったのか、どうなっているんだ?)

 メイキはそう思ったが、「我々はこれからどうしたらいいんだ?」と尋ねた。

 「詳しいことは宿で話すから、宿泊予定の宿に案内して欲しい。」と三木は答えた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カメリルの執務室では、トスカ執政官がイカサス軍務大臣を追及していた。

 「どうしてトーベごときに敗れて戻って来るんだ。戦艦5隻も出航したのに。」とトスカ。

 「二ホンのミサイルにやられたと通信連絡がありました。」とイカサス。

 「二ホン?どうしてトーベに二ホンがいるんだ、敗れた言い訳ではないか。誰だ、司令は?」

 「カガト大佐です。旗艦トスカ号で指揮を執っていました。」

 「カガト?トロルが推薦した奴か。」

 「はいそうです。」

 

 「陸の方はどうなんだ。」とトスカ。

 「陸は順調です。トレツの街を攻撃できる位置に陣地を構えているそうです。砲弾、弾薬を補充するために隊が出発しています。」とイカサス。

 とその時、「失礼します。」と軍務省の役人が入ってきて、イカサスに耳打ち。

 イカサスの顔が真っ青になる。

 「どうしたのだ?」とトスカ。

 「陸軍全滅、わずかの兵がナクルまで落ちてきたそうです。とにかく、詳しいことは調べた後で。」

 そう言って、イカサスはその役人と一緒に執務室を出て行った。

 

 トスカはマズいことになったと思った。前任のバジルは、シェラリベ制圧とコンガ攻撃の失敗だけで失脚したのだ。コンガは絶滅させたが不毛の地にしてしまい何の利得もないし、ガーゴは独立を許し、トーベ制圧も失敗、責任追及は避けられない。

 いつだって政治は民の意思で行われる。トスカはそれをよく知っていた。支持されている間にそれを揺るぎないものにすればいいのだ。




トスカ執政官どんな手を打つ?
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