護衛艦いずもの指令室では、遠山艦長の説明が続いていた。
「敵のミサイルの射程外から攻撃しますので、大丈夫かと思いますが、念のためイージス装置のあるはぐろとあたごの2隻が先頭を航行しています。近づきますと、もがみからUSV(無人艇)を先行させて、戦艦を攻撃します。同時に、ミサイルでミサイル発射台の破壊を行います。狙う発射台はすでに各艦に割り当てています。」
「核兵器などの施設は?」と三木。
その問いには相原が答えた。
「攻撃しません。そこには核爆弾があると想定されるからです。爆発すると大変な事になります。もちろん、原子力発電所も同じです。」
「そうすると、核を使用する脅威から逃れられないのでは?リベルテの時は、核の研究施設を攻撃したのに。」と三木。
「リベルテの研究施設は、人の住んでいない人里から離れた場所にありました。まだ出来ていないという賭けもありましたが、たとえ完成していて核爆発が起こっても被害は少ないと考えて攻撃しました。しかし、カメリルは街の近くにあります。すべて攻撃したら、街全体に被害が及びます。」と相原。
「この遠征は核の脅威を除くためでは?日本人救出はあくまで国民の支持を得る口実で、政府の目的は核の阻止ではないですか。」と三木。
「さすが三木さん、鋭いですね。だから、攻撃するのですよ。軍港、軍事空港など核のない軍事施設全て、航空機も船舶も車両も核を運ぶ可能性のあるものは全て攻撃します。持っていても、運べなければ使用できない。あとは、カメリルに核爆弾を廃棄してもらう。しばらくすると、外交官がこちらへ来る予定になっています。」と相原。
(一度手にした核兵器を手放す国がどこにある。それがいかに難しいか歴史が証明している。戦争は始めるのは易しいが、終えるのは難しいのだ。)
三木はそう思ったが、「そうですか。」とだけ答えた。戦争は人間の知恵に対する侮辱という昭和の経営の神様の言葉が三木の頭をよぎった。
短期間で決着をつけなければならない弱みが日本にあった。人は食べないと生きていけない。砲弾も弾薬も使用すればなくなる。長引けばガーゴまで退却する以外に手はない。食料と燃料はガーゴで補給できるが、砲弾や弾薬は日本からの補給を待たねばならない。補給問題は深刻なのである。
モニターには護衛艦もがみから送られてきたUSV(無人艇)からの映像が映っていた。カーレンの港の映像であった。
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護衛艦もがみでは、日野がセイルやアビル少尉たちに追及されていた。
「どうして、カーレンの港に向かわないで南へ進むのですか。」とセイル。
艦隊が陸地から遠ざかるのは、艦上で誰にでも分かる、おかしいというわけである。
セイルは艦隊がカーレンに向かうものと思っていた。
「分かりません。私はあなたたちを守るために任務に就いていて、軍事行動には関わっていません。」
「そうなら、分かる人に聞いてください。」
「無理です、私にその権限はありません。」
「聞くこともできないのですか?いいです、私が聞きます、誰に聞けばいいのですか?」
「敵いませんね。分かりましたよ、私が聞いてきます。」
そう言って、日野は船室を出て艦長室へ向かった。
しばらくして日野は戻ってくると、すぐにセイルが尋ねた。
「なぜ、カーレンの港に向かわないのですか?」
「向かっているそうだよ。南へ遠ざかってるのはミサイルを避ける為だって。」と日野。
「ミサイル?」
「そうだよ。宣戦布告をしている国だ。国交を結びに来ているとは思わない、攻撃されるのは確実だろう。」
「日本はカメリルを攻撃するの?」
「言っただろう、私は軍事行動に関わっていない。だから知らない。たぶん、危険を取り除いてからでないと上陸できないから、危険物は破壊すると思うよ。」
「・・・・・皆さんの腕輪、捕虜の印だそうだけど、除けてあげないの?」とセイル。
「カメリルに上陸するときに除ける、そう命令されている。」日野はそう答えた。
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カーレンの港からヘリが向かってくるのを、USV(無人艇)のカメラが捕えた。護衛艦いずもの指令室でその映像を観ていた相原三佐が言った。
「三木さん、始まりますよ。」
突如、そのヘリが爆発し撃墜される。
「USVに搭載されているRー73ミサイルですよ。」遠山艦長が説明をする。
モニターの映像がカメリルのミサイル発射台に切り替わる。そして、次々と爆破されていく。しばらくすると、またモニターの映像がカーレンの港に切り替わって、戦艦が爆発する映像が映る。
モニターの映像に音はない、まだ音声のある戦争ゲームの方が臨場感がある 。淡々と破壊されている。現実が現実でないような錯覚、まるで作成された戦闘シーンのプロモーションを見ているようだ。
ゴオーゴオー
護衛艦いずもから2機の改造Cー2爆撃機が順に飛び立つ。積み込んだ爆弾をすべて落として、ガーゴ国際空港に帰る予定だ。空港での着陸許可はすでにおりている。
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トロル軍務大臣がカメリルの軍務省の大臣の椅子に座って、伸ばし始めた髭を触っていると、血相を変えた職員が報告にくる。
「ミサイル発射台が破壊されました。」
「何だと、どうして?敵はどこから?レーダーにかかっていないのか?」
「分かりません。ミサイルのようだと、全ての発射台に1発で命中しているとのことです。」
「近くの海にいるはずだ。戦艦はどうした。」
続いて別の職員が報告にくる。
「軍港が破壊されました。全ての軍用船舶が沈没したと連絡がありました。」
「空軍に出動命令をだせ。空母があったはず、戦闘機は飛び立ってなかったのか?」
「真っ先に空母が攻撃され、飛び立つ間もなかったそうです。」
「空港は大丈夫か、軍港の近くにあった空軍基地に連絡をとれ。出撃命令だ」
2人の職員が大臣室を飛び出していく。
トロル軍務大臣の脳裏に二ホンという国は浮かんでいない。トーベの戦艦をすべて撃沈したという報告はイカサスに届いていて、陸軍にいたトロルには入っていなかった。だから攻撃したのは、トーベの戦艦だと思っていた。
ミサイルを搭載しているのは、カメリルで造られたその艦以外は考えられないからだ。
(ユカルの奴が指揮しているに違いない。あの能無しでも、カメリルのミサイルを使えば攻撃できるということか。奴の指揮なら、簡単に追っ払える。)トロルはそう思った。
トロルは陸軍と海軍の違いがあるが、何度も海軍に出向いていったのに、自分に一切ナビかなかったユカルを毛嫌いしていた。もともとユカルの出身地トーベとトロルの出身地ナーイは隣接していて犬猿の仲なのである。
ついに日本の攻撃が始まった。どう決着をつける?