続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 本作品はフィクションであり、実在する人名、国名、団体名、組織名などが登場するが、それらとは全く関係なく、中傷も賞讃も意図しません。

 挿絵は、海面上昇シミュレータ、ペイント、ChatGPTを使用して描いています。

 惑星歴504年、カメリルは日本の要求を表向きだけの受け入れで、逆転を狙う?


第7章 1話

 惑星歴504年、カメリルは日本の要求を受け入れたが、それは表向きだけであった。2発の原子爆弾の公開破棄をして、核研究施設や製造工場の重要な備品を別の所に移動させてそれらを閉鎖し、日本の調査団を迎えた。

 閉鎖するのは1カ所か2カ所でいいとトロル軍務大臣は主張したのだが、全ての核施設が二ホンにバレているとのゴンタ外務大臣の提言で、トスカ執政官は全ての閉鎖を命じた。トスカは「施設など、いつでもつくれるのだから」とトロルに囁いた。

 二ホンの調査団は全ての核研究施設や製造工場が閉鎖されているのを確認すると、1年どころか3日で帰って行った。

 

 ナクルの街の地方軍の施設に軟禁状態であったイマト大尉やスマル中尉は、敗戦の隠蔽の意味もなくなり、部下と共にカーレンの陸軍基地に戻っていた。ロマスク帝国の捕虜となっていたアビル少尉も陸軍基地に入っていた。アビルが捕虜となる前はイマトもスマルも少尉であったのだが、アビルだけが取り残されていた。

 

 軍務監獄から非常事態で解放されていた前軍務大臣イカサスやカイルなどの囚人たちも元の所に戻って来ていた。そのまま自由を手に入れることもできるのだが、カーレンには裏組織も闇組織もなく、受け入れてくれるところがどこにもない。自由を手にして生きていくためには、自ら犯罪を犯しながら世間を渡る以外にすべはないのだ。帰れば、拘束されるが食べていける。有期刑であれば出所もできる。どちらを選択するかだけであった。

 

 ツイクの自宅に戻っていたセイルは、「二ホンに帰ったのではなかったの?」と尋ねるユリネに、

 「帰るところはここしかありませんわ、お母様。私の名前はミキ セイルではなく、セイル・ド・ツールです。」と答えて、涙を流すユリネの肩を抱いた。

 セイルが帰ってきたことはツイクの街に瞬く間に伝わり、街の有力者たちが挨拶に訪れる。17歳の娘に初老の男女が次々と挨拶に訪れる、それは奇妙な光景であった。でも不思議な事ではない。今でこそ、セイルは正義院議員で外交官であるが、昔であればツール地方の領主様なのである。

 外交官としての任務を果たしている時も寝泊まりはカーレンの官舎で、ツイクに帰るのは2か月か3か月に1度であった。帰った時に街の有力者たちが挨拶に訪れるのは恒例となっていた。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 救出された日本の老女たちは無事にリベルテの戦艦でリベルテ国のトイヤ港まで運ばれると、リベルテ国際空港から待機していた日本の特別機で西方大陸東岸空港経由でなく直接羽田空港まで飛び立った。

 トイヤ港の港湾にある海軍基地本部では、一仕事終えたゲイン大佐が部下のマイト大尉と陸軍のイータ大佐を基地司令室に招いて、ワインを振舞っていた。ゲインの留守の間、代理で基地の司令の任に就いていた少佐は簡単に報告を済ますと敬礼をして司令室から出て行った。

 海軍基地司令室は、ゲイン大佐の趣味・道楽の個室になっており、棚にはいろいろな種類のワインが並んでいた。この部屋が海軍基地の指令室であると分かるのはテーブルとゲインの椅子とその後ろの壁に張ってある白地に赤星のリベルテの国旗だけであった。

 

 「イータ殿、あの小生意気なメイキとかいう奴、戻ってこなかったが、どういうことなのですか?」とワイングラス片手にゲイン。

 「メイキは特殊部隊を率いてアドバイザーのミキさんの指揮下にあります。多分、ガーゴに留まって任務に付いていると思いますよ。」とイータ。

 「ミキ?ああ、あの日本人のミキ。知っていますよ。レアル大統領が少将でこの本部におられた時によく言ってました。只者ではない男だと。そうですか。」とゲイン。

 「誰ですか?ミキって?」と側で聞いていたマイト。

 「只者ではない男。」イータとゲインが同時に答えて2人は笑った。

 ミキを只者ではない男と見抜いた元国家主席バーダンと現大統領レアルがこの国リベルテを率いている。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カメリルに拉致されたと喧伝された日本人たちが到着する羽田空港は大騒ぎになっていた。全国の報道各社のスタッフだけでなく、まるで世界の大スターを迎えるファンの群れのような野次馬たちで大混乱であった。9人の帰還した老女たちの出身地の市町村の職員が老女たちの名前を書いたプラカードを掲げて待っている。その周りにいる老女たちの親類縁者にとっては。9年ぶりの再会である。

 ボントの街に住んでいた9人の老女たちが警備員に守られて現れると歓声と拍手が沸き上がった。フラッシュがたかれ眩しいばかりである。老女たちはその歓迎に驚きながらも、各自の名前が書かれているプラカードの元へ歩いていった。

 

 老女たちの帰還は、ボンタの老女たちが乗っていた航空機の不時着した年を惑星歴486年と推定していた新地球事情調査室の調査結果が正しいことを証明したが、謎が解決したわけではなかった。

 老女たちの親類縁者は9年ぶりの再会であったが、老女たちは18年ぶりの再会だった。老女たちは日本にいる人たちよりも9年も多く年をとって老けていたのである。

 

 どのテレビ局も老女たちの帰還の様子を放映していた。老女たちが拉致されたのではないことが明らかになっても、そのことに触れるテレビ局は1局もなかった。批判されない限り謝罪などしないものだ。話題は直ぐに切り替わり、謎に飛びつくのもマスコミである。

 

 ここでまたテレビに登場するのが量子重力理論を研究している反地球論の高瀬教授である。転移前に国立天文台が発表した20年で明るさが20分の1になった遠方銀河の発見を引き合いに出して、持論を展開した。この極めて珍しい現象は超巨大ブラックホールへのガスの流入の急減が原因と考えられ、宇宙では活動が短時間で大きく変化しうることを意味していた。

 

 彼の反惑星理論によれば、転移には境界現象というものがあって、転移地域の境界にあるものは、空間も時間もずれると以前から主張し、発見された航空機は惑星歴486年頃に転移したはずだと予言していた。予言通りの結果を得て、高瀬は反地球論の信ぴょう性を強く主張した。併せて、反地球論が誤りであるという根拠も見つかっていないと強調した。

 

 とかく理論には矛盾がつきまとうものである。反地球論が誤りであることを証明できないのは、存在しないことを証明することができないことと同じであるが、だからといって存在するとは限らない、正しいとは限らないのである。そして、短時間で大きく変化する宇宙と転移現象の事実とを結びつけたつもりでいた高瀬は、それが反地球論とどうつながるのか説明していないことに気付きもしなかった。

 

 帰還した老女たちの騒動をよそに日本政府は、カメリルへの対応を検討していた。宣戦布告は取り下げられて攻められる恐れはなくなったが、停戦は終戦ではない。核兵器の破棄など信じてはいない。

 偵察衛星がカメリルの核施設からいろいろな物品が別の所に運び出されるのを捕えていた。調査団を形式的な調査で引き揚げさせたのも、茶番に付き合うのは時間と経費の無駄遣いだと分かっていたからである。核兵器の脅威を除くためにカメリルを攻撃した日本であるが、核兵器の破棄を実現しないうちに停戦したのは、国民の戦争に対する嫌悪感であった。国民の安全のために戦っても、国民から支持されなければ政権は維持できない。様子見の停戦が妥当だと判断したのである。

 カメリル政府の場合は全く違っていた。原子爆弾も残っていて二ホンに一矢報いるどころか大打撃を与える気概はあるのだが、二ホンの位置も分からないし、運ぶ手段もない。いずれ攻撃が可能になるだろうから、それまでの停戦であった。

 

 二ホンが攻撃して破壊したのは戦闘用の船舶と航空機、二ホンにまでやってくる恐れのない戦車などの陸上戦闘車両は健在であった。二ホンとは停戦していても、トーベ共和国とは戦争状態、しかもトスカ執政官やトロル軍務大臣の郷里はトーベ共和国と隣接するナーイ地方、陸軍基地のスマル中尉にナーイ地方への遠征命令がでた。イマト大尉とアビル少尉は、高層ビル内の軍務省の調査室で事情聴取を受けるために、遠征が見送られた。軍務省は、西方遠征の経験のあるイマトと二ホンの捕虜であったアビルから、二ホンの位置情報などを探ろうとしていたのだ。




二ホンと停戦してもトーベの独立は許さないカメリル、どうなる?
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